炉内点検効率化のための超音波による表面亀裂検査技術
公開日:
カテゴリ: 第17回
炉内点検効率化のための超音波による表面亀裂検査技術
Inspection technique for surface cracking by ultrasonic wave to optimize in-vessel inspection
(株)日立製作所
三木 将裕
Masahiro MIKI
Member
日立 GE ニュークリア・エナジー(株)
大内 弘文
Hirofumi OOUCHI
小室 秀孝
Hidetaka KOMURO
吉田 功
Isao YOSHIDA
Abstract
Visual testing with underwater camera is performed for the inspection of structures in RPV. It has the case to be difficult to identify whether the indication is the crack or the imitated shape like scratch. In this case, the judgment needs much time. In this issue, the distinction method by surface ultrasonic wave emitted on the structure have been developed. This method could perform the in-situ judgment between the crack and the imitated shape by ultrasonic imaging technique with array probe.
Keywords: Ultrasonic testing, surface cracking, phased array, immersion methods, in-vessel inspection.
1.緒言
原子炉圧力容器内の構造物点検は水中カメラを用いた目視検査(VT)が実施される[1]。目視検査では亀裂と擦り 傷などの疑似模様の区別が難しい場合があり,現状ではその判断に時間を要している。そこで、炉内点検を効率化するために、この判断時間を短縮するVT と超音波検査(UT)を併用した検査手法を開発した。
これまでに構造物表面に接触した超音波センサから表 面超音波を発生させて亀裂の長手方向の拡がりを映像化して検出する方法が報告されている[2]。著者らは、上記 判断時間の短縮のために、炉内構造物に発生する亀裂を 構造物から離した超音波センサで送受信する水中超音波を用いてその場で亀裂を判断するUT 手法を開発した。本報告では、提案したUT 手法(水浸チルトUT 法)の特徴と、表面亀裂の検出試験結果について紹介する。
2.超音波による表面亀裂の検出手法
水中カメラと超音波センサを組み合わせた炉内点検の提案手法を図1 に示す。亀裂を確認するための水中カメラの側方に超音波センサを配置して、カメラで視認した 指示部に対して、その場で超音波を照射して亀裂である
か否かを判断する。亀裂の場合には、健全性評価のため に亀裂の深さおよび長さを詳細に測定する必要がある が、疑似模様である場合には詳細測定を実施する必要が なくなる。これにより、検査員の判断時間を短くすると共に、亀裂が発生していない場合の炉内点検を遅延なく遂行でき、炉内定検を計画通りに実施できる。
本提案手法で用いる水浸チルトUT 法の超音波センサ配置を図2 に示す。超音波センサは、被検部に表面波を発生させるため表面法線から角度(ビーム角度)αを傾斜させ、センサと被検部の距離(水距離)は一定距離H を離す。超音波センサにはアレイセンサを用いてフェーズド アレイ法により映像評価をする。超音波ビームは紙面奥行を含む平面(XY 平面)へセクタスキャンで走査する。これにより、1 回の測定で亀裂の表面開口部を計測し、VT と比較できる画像をリアルタイムで描画する。
Inspection target (Shroud)
Crack
Ultrasonic
beam
三木将裕、〒319-1221 茨城県日立市大みか町 7-2-1、(株)日立製作所 研究開発グループ 脱炭素エネルギーイノベーションセンタ 原子力システム研究部
E-mail:masahiro.miki.np@hitachi.com
Fig.1 Proposal on in-vessel inspection with underwater camera and UT probe
3.表面亀裂の検出試験方法および結果
水浸チルトUT 法の実験体系を図3 に示す。アレイセンサは周波数3MHz のものを用い、水距離H を 150 mm、アレイセンサのビーム角度αを30°に配置した。 フェーズドアレイUT 探傷器はES3500 (日立パワーソリューションズ(株)製)を用いた。
実験結果を図4 に示す。図4(a)はSUS 試験体に付与したEDM ノッチ(深さ1mm, 長さ10mm, 幅0.3mm)の探傷画像である。一回の測定で亀裂の長手方向の形状を取得 した。一方で、試験体表面の擦り傷や研磨痕のような加工模様は検出されず、VT では難しい疑似模様との区別に有効であることを確認した。
図4(b)はニッケル基合金試験体に付与したSCC(応力腐食割れ)の探傷画像である。図4(a)に示したEDM ノッチ時に対して探傷時のゲインを上げて測定したが、亀裂
の視認性を阻害するノイズは検出されず、SCC を高感度
Fig.3 Test setup in immersion tilt UT method
Echo height [%]
に測定した。亀裂開口部の屈曲部などを有したSCC でも検出できることを確認した。
4.まとめ
炉内点検を効率化するためのVT と水浸チルトUT 法を組合わせた検査手法を開発した。アレイセンサを用いた 水中UT 試験でSCC を検出できることを確認した。
参考文献
(社)火力原子力発電技術協会;BWR 炉内構造物点
0
Y
posi.
[mm]
40
-40
20100
Incident point
Defect echo
Actual length
10 mm
040
X position [mm]
検評価ガイドライン[炉心シュラウド] 第2 版 (2004)
Y.Ohara, etc.;Ultrasonic phased array with surface acoustic wave for imaging cracks,065214-1 to 7, AIPAdvances 7, 065214 (2017)
EDM notch on SUS test piece (Length 10mm)
-40
040
X position [mm]
SCC on Nickel based alloy (Gain : Notch+20dB)
Fig.4 Measurement images by immersion tilt UT method (Water gap H 150mm, Beam angle α:30deg.)
Fig.2 Layout of immersion tilt UT method