照明柱の非破壊計測における埋設によるガイド波の減衰

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カテゴリ: 第16回
照明柱の非破壊計測における埋設によるガイド波の減衰 Attenuation of Guided Wave by Buried Part on Nondestructive Testing of Illumination Pillar 神戸大学 梶 晃子 Akiko KAJI 神戸大学 中本 裕之 Hiroyuki NAKAMOTO 神戸大学 小林 太 Futoshi KOBAYASHI Abstract: Recently, the number of aged traffic structures is increasing in Japan. Most of them require constant maintenance to prevent an accident. Kobe city has a lot of aged illumination pillars and had two fall accidents, unfortunately. To detect an illumination pillar with a defect quickly, we apply a guided wave excited by electromagnetic acoustic transducers to a nondestructive testing system. This method has the potential for low-cost and efficient testing. When testing buried illumination pillars, it is necessary to consider the influence on the guided wave by soil. We validate the attenuation of the guided wave by simulating the buried illumination pillar through a laboratory experiment. . Keywords: EMAT, guided wave, nondestructive testing, attenuation 緒言 近年,インフラの設備の老朽化が問題となっている. 道路照明柱においては平成 25 年に根元の腐食が原因で し を するといった しており, や の のために な 検と持管理が必要であると言える. 現 ,照明柱の検査は国土交通省が定める小規模附属物 検要領に則って行われており,検査員による巡視や照明柱の根元 分を し,腐食の有 を 視で するといった方法が主に取られている.このような検査方 法には個人差がある上、膨大な数の照明柱に対して予算と人員の不足が起こっており, 価で効率的な検査方法が求められている[1]. こで,本研究では電磁波音波探触子で励起したガイ ド波を用いて照明柱の検査法を提案している.ガイド波計測は 度の計測で を ることができ,より効率的な検査が期待できる.先行研究ではガイド波計測を用いた配管の欠陥検出や,欠陥から じた反射波の減衰と断 欠損率の相関関係の検証が行われている[2].本研究では実際に運用されている照明柱が地中に埋設されていることに注 し,照明柱を伝播するガイド波が接触する土壌から受ける影響を実験により した.ガイド波が埋設 分で起こす減衰を把握しておくことによって, より正 な欠陥状態の推定が期待できる. 方法 2 1 ガイド波 平板や配管状の材料を長手方向へ長距離伝搬する超音 波を 波と .ガイド波にはFig.1 のように3 の ドが し, れ れ 方向対して対 に変位する L(Longitudial) モード,円周方向へ捻れて変位するT(Torsional) モード,反対 に変位する F(Flexual)モードという.これらのモードは Fig. 2 のように2 つのパラメ n,m でさらに 分化され,L(0,m),T(n,m)のように表記される.ここでn は円周方向の,m は軸方向のパラメ を指す. L モードは円周方向の変位がないため, n が0 のみとなり,1 以上になるとF モードに分 される [3].また,ガイド波は周波数に応じて伝搬速度が変化する速度分散性を有する.本研究では非破壊計測によく使用されるT(0,1) モードとL(0,2) ドを使用した. 波には伝搬中に不 かを通で反射波が生じる性質がある.円筒状の対象物のガイド波検査では菅端からの反射波以外の位置に反射波が検知 できるか否かで欠陥の有 を判断する.菅端で反射したガイド波のみが観測された場合,照明柱は健 であると判断できる. 2 2 電磁超音波探触子 電磁超音波探触子(EMAT: Electromagnetic Acoustic Transducer)[4]は,永久磁石とコイルで構成された素子で Fig.1 Guided wave vibration modes. Fig.2 Vibration modes by parameters m and n. あり,超音波の送受信が可能である.EMAT はこれまで非破壊計測のセンサとして く研究に使用されており, 近年では配管の非破壊計測に 応用されている. EMAT は超音波プローブと異なり,接触媒質か不要であるといった特徴がある.また磁石を使用しているため試験体への 持が容易で,構造 簡易である.以上の性質から,本研究が対象とする照明柱計測おいて 価かつ迅速な検査が期待できる. 本実験では Fig.3 に示すような外径 40.25 mm,内径 30.25 mm,中心角 9.5 °,幅 10 mm のネオジウム磁石を二つ並べたものを巻き数 15 のコイルを重ね,コイルを電流源に繋ぎ,EMAT を作成した.EMAT は同構造でガイド波の送信と受信が可能であり,以下では送信に使用する のを送信 EMAT, 受信に使用する のを受信EMAT . 配管状の試験体表面にガイド波を させるためには,EMAT を 数,円周方向に に配置する 要がある.実験時には送信EMAT,受信 EMAT を 8 個ずつ用 意した.T ドガイド波を させるときにはFig.4 のようにコイル同士が重なるように設置して磁石を共有さ せた.Fig.4 のように縦向きに EMAT を配置することにより,水平方向に振動するガイド波が試験体を伝搬し,T ドガイド波が する.またFig.5 のように横向きにEMAT を設置すると垂 方向の振動が し,L ドガイド波が励起される.こちらはEMAT の構造上重ねて設置できなかったため,送信 EMAT の下に受信 EMAT を設置している. ちらの場合 EMAT の 度を向上させるため,送信 EMAT は直列つなぎ,受信 EMAT は並列つなぎとした. Fig.3 Dimensions of magnet and coil. Fig.4 EMATs for generating Tmode guided waves. Fig.5 EMATs for generating Lmode guided waves. 減衰の評価方法 照明柱は通常下端 分が地中に埋設されている. のため,計測の際ガイド波は埋設 分を通 することになり,土壌との接触によって起こる影響を する 要がある.以下に埋設 分がガイド波に与える影響を評価する方法を 明する.試験体が埋設されている場合と試験体のみの場合, れ れで同条件の計測を行い二つの受 信波形の振幅を比較する.Fig.6 に示すように長さ d の試験体上端センサを取り付けることを える.この時, 試験体のみを計測した受信波形の1 回 ・2 回 の反射波振幅は れ れ次のように表される.ただし, A は送信EMAT で励起されたガイド波の初期振幅,e-ad はガイド波が試験体を距離 d 伝搬することによる減衰,rbは試験体の下端での反射係数,rt は試験体上端での反射係数とする. Alst = Ae-adr e-ad = Ar e-2ad ゜bb A2nd = Ar2r e-4ad ゜b t (b) また,埋設状態での1 回 ・2 回 の受信振幅は次にようになる.e-a,ds はガイド波が埋設 分を距離 ds 伝搬することによる減衰を表す. Alst = Arbe-2ade-2a'ds A2st = Ar2r e-4ade-4a'ds Fig.6 Guided waves propagating in the bare and buried illumination pillar. (a)The bare illumination pillar. (b)The buried illumination pillar. b t 同様に計算すると n 回 の受信振幅は れ れ,次のようになる. Anth = Arnrn-1e-2nad Ob t Anth = Arnrn-1e-2nade-2na1ds b t 式(5)と式 (6)より式(7)を得る. - log Anth Anth = 2na'ds ゜ 式(8) では右辺の値が大きいほ 減衰が大きいことが分かる.ここでは, とおき反射回数 に埋設 分を することによって起こる減衰係数 を計算する. 実験 4 1 実験方法 実験装置を Fig.7 のように配置する.ガイド波を励起するため, ( , JRP-600C)から送信のコイルに交流電流を流す.試験体を 伝搬し,再び受信 EMAT に到達して得られた信号をプリアンプ(ジャパンプローブ ,PR-60)で増幅した後,パルサレシ で A/D 変換した波形を観測した..パルサレシーバの制御は PC で行い,送受信設定は Table.1 のようにした. 試験体には照明柱の代わりに外径 60.5 mm,凹さ 5.5 mm,長さ 1 m の炭素鋼管を使用した.EMAT は送信EMAT,受信 EMAT 共に試験体の上端に取り付け,下端からの反射波を計測する のとする.配管の下端 分は 径 0.3 m の に れ, を き めること によって地下への埋設を再現した. の さは 0.15 m , Fig.7 Experimental setup and specimen of healthy illu- mination pillar. 0.20 m ,0.25 m の3 とし,比較のために から出した状態の配管で 同様に計測した.T ドガイド波,L ドガイド波 れ れ計4 の計測を行った. Table 1 A list of the measurement conditions Pulsar Voltage[V] 400 Receiver Gain[dB] 29.2 Pre-amplifer Gain[dB]60 Frequency[kHz] 100 HPF[kHz] 70 -- Cycle 5 LPF[kHz] 130 -- 4 2 実験結果 試験体のみの場合において,得られた受信波形を れ れ Fig.8(a)(b) に表す.これらのグラフから下端からの反射波が 間隔で観測されていることが できる.また,埋設状態の計測において 同じ位置に波形が できた.この波形の振幅の変化から埋設 分の減衰を評価する.ここでは式(8) に い,3 の の さに応じて1 回 から4 回 の反射波について,減衰係数 nas を計算した. を Fig.9(a)(b) に示す.減衰係数の変化より,試験体の下端 分を砂利で覆うことによってガイド 波の振幅に減衰が起こることが確認できた.ガイド波の に依らず減衰係数は試験体と の接触面積が大きくなるに って増加している.この から,地中に埋設されている照明柱にカイド波検査を行う場合には土壌との接触がガイド波の振幅に減衰を引き起こすことを する 要があると えられる. (a) T(0,1) mode T(0,1) mode L(0,2) mode Fig.9 Relationship between number of reflection and attenuation. (b) L(0,2) mode Fig.8 waveform without gravel. ガイド波は照明柱の下端で反射する に との接触 分を通 しているため,減衰係数は反射回数に応じて 増加することが予測できる.しかし,T ドでは4 回 が,L ドでは 2 回 以降が, れ以前の反射波と比較して減衰が小さくなる が得られ,T ドで測定した の方がL ドより 減衰が大きく できた.また れ れのグラフについて線形近似曲線の傾きを計算すると,T ド L ド共に, の さが いほ 大きい値となった.この より との接触 が大きいほ ,ガイド波に与える影響が大きいとえられる. まとめ 埋設された照明柱において埋設部がガイド波に与える影響を検証するため,根元を埋設した状態を模擬した 配管を試験体とし,減衰係数を求める実験を行った. ,試験体と の接触 分でガイド波が減衰することを できた.試験体固有の減衰係数を求めることで, 欠陥から反射波の振幅の値を用いてより正 な腐食具合の推定が期待できる. 今後の課題は,ガイド波計測を用いて照明柱の埋設に する欠陥からの反射波を観測し,欠陥位置と減肉具合を推定することのできるシステムの構築と検証である. 参考文献 国土交通省道路 ,”小規模附属物 検要領”,2017. 問山,佐野,“デジタル信号処理を用いたガイド波配管検査 技術の 度化 (第 2 報)”, 島県立西 工業技術セン 研究報告,48,pp9-12,2005. 西,石 ,大 ,” 波を用いた配管腐食検査技術”,NKK 技報,177,pp38-42,2002. A. FURUSAWA,F. KOJIMA,A. MORIKAWA, ”Mode Control of Guided Wave in Magnetic Hollow Cylinder Using Electromagnetic Acoustic Transducer Array” , Nuclear Engineering and Technology,47-2,pp196-203,2015.
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