産業界におけるリスク情報活用の実現に向けた取り組み状況について
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カテゴリ: 第16回
産業界におけるリスク情報活用の実現に向けた取り組み状況について
電カ中央研究所
岡本拓男
Takuo OKAMOTO
会員
白井一、
Kazushi SHIRAI
非会員
原子カリスク研究センター
電力中央研究所
原子カリスク研究センター
概要
原子力事業者は自律的な安全性向上に向けてリスク情報を活用した意思決定を導入し、パフォーマンスベース・リスクインフォームドの自律的なマネジメントに変革することを宣言した。原子力リスク研究センター(NRRC)は、事業者のリスク情報活用の実現に向けた取り組みに対し、PRA を中心として様々な形で、電気事業連丘会、原子力安全推進協会(JANSI)と連携しながら支援しており、 今後も継続していく。
Keywords: リスク情報活用
1 リスク情報活用の実現に向けた戦略プラン及びアクションプラン
事業者はすでに実施している安全性向上対策にとどまることなく、発電所の安全性を向上するべく、リスク情報を活用して、プラントの設備や運用において強化すべ き点を特定し、有効な対策を取っていくために、リスク 情報を活用した意思決定(以下「RIDM」という)プロセスを、発電所のマネジメントに導入することとした。そして、産業界一体となって取り組む基本方針や計画を「リスク情報活用の実現に向けた戦略プラン及びアクション プラン」としてとりまとめた(図1および図2)。
同プランで示すRIDM を導入したマネジメントシステムに必要な機能を整備し、そして最新の研究成果等の知見を随時取り込む改善を、産業界一丸で取り組むととも に、原子力発電事業者が発電所の現場においてRIDM を実践して、規制当局をはじめとするステークホルダーにその有効性を示していくことが、RIDM の活用の拡大につながり、原子力発電の自律的な安全性向上にとって重要である。
図1 パフォーマンスベースのリスク情報を活用した意思決定によるリスクマネジメントの概念図
図2 RIDM プロセスの導入に向けた戦略プランの基本方針
2 NRRC における取り組み
NRRC では、事業者におけるリスク情報活用の展開に関する支援、リスク評価の高度化に向けた技術基盤整備の支援、人材育成、学協会との連携等、様々な活動を展開している。
リスク情報活用の展開支援
NRRC では、リスク情報活用に係る理解醸成支援のため、米国経験の調査や、シンポジウム/ワークショップを開催してきた。また、NRRC 所長と事業者CEO との対話等のハイレベルコヽュニケーションだけでなく、原子力安全推進協会(JANSI)と連携し、現場に対するリスクマネジメントの取り組み支援を進めている。
PRA 高度化支援
技術基盤支援として、海外専門家によるPRA 高度化パイロットプロジェクトヘのレビューをコーディネートしており、出力運転時内的事象レベル1 のPRA モデルの高度化が進んでいる。また、PRA モデルだけでなく、高度化に必要な機器信頼性パラメータ整備、データベースの構築やPRA ピアレビュー体制の検討等を進めている。
人材育成
リスク情報活用に必要な人材育成のため、NRRC では以下の3 つの教育コースを提供・計画している。
PRA 初心者向け基礎教育
PRA ー (運転、 修部門等)が対象。NRRC にて研修を実施していたが、今後は研修資料を作成し、各社で実施する方向で検討している。
PRA 実務者育成
PRA 実務者(安全部門等)が対象。米国EPRI が実施しているコースと同等の内容。年間6 週間かけて専門的内容を習得する。
マネジメント層向け演習
意思決定を行うマネジメント層向けの演習。ケー ススタディを中心とした演習を計画中であり、2019 年度に試行予定である。
学協会との連携
原子力学会によるPRA 等のリスク表のための実施基準類(PRA 学会標準)の改訂検討に参画し、継続的整備を支援している。また、PRA 学会標準の整備方針議論や米国JCNRM(Joint Committee On Nuclear Risk Management)との連携を推進している。
3 事業者における取り組み
事業者は、「リスク情報活用の実現に向けた戦略プラン 及びアクションプラン」に沿って取り組みを進めており、 その進捗状況を2019 年5 月に公表した。事業者は着実に取り組みを進めており、今後もリスク情報を活用した自律的な発電所マネジメントを継続的に改善するとともに、RIDM 活用範囲を拡大し更なる安全性の向上を目指して
いく方針である。
連 :白井一、、 100-8126 大 1-6-1
(一財)電力中央研究所 原子力リスク研究センター
E-mail: k-shirai@criepi.denken.or.jp