磁気飽和ECTによる微小き裂の探傷と傷形状推定

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カテゴリ: 第16回
磁気飽和 ECT による微小き裂の探傷と傷形状推定 Flaw detection for microcrack and crack shape estimation with magnetic saturation ECT 滋賀県立大学 福岡 克弘 Katsuhiro FUKUOKA Member 滋賀県立大学 長谷川 諒 Ryo HASEGAWA Non-member In eddy current testing (ECT), the permeability distribution of the steel materials affects inspection results and the signal-to-noise (S/N) ratio decreases. Therefore, magnetizing the materials is required to reduce the magnetic noise. In this research, the spring steel materials that have artificial microcracks were magnetized and inspected to evaluate detection performance of a developed ECT probe. It was confirmed that the probe is able to detect the 40 ?m depth crack with the S/N ratio of 3 or more. In addition, the permeability distribution around the crack in the magnetic saturation ECT was clarified with a finite element method (FEM) analysis. Keywords: Eddy current testing (ECT), spring steel, magnetic saturation, microcrack, finite element method (FEM) analysis, magnetic noise 1 はじめに Magnetization exciting coils 強磁性体である鋼材に渦電流試験(ECT : Eddy current testing)を 用した 、鋼材 に分布する透磁率のばらつきに起因する磁気ノイズにより、探傷信号の S/N 比が低下し、微小な傷を検出できない間題点がある。そのため一般的には、試験体を磁気飽和するまで磁化すること Magnetizer ECT probe により、磁気ノイズを低減させる磁気飽和ECT が用いられる。先行研究では、高速な探傷に主眼を置き、貫通コイルプローブによる、ばね鋼材における微小傷の探傷を検討した。この貫通コイルプローブを用いて、放電加工 (EDM : Electro-discharge machining)により加工した深さ70?m の微小傷(実現 における性能要求)を、S/N 比2.5 以上で検出可能であることを確認している[1]。 本研究では、ばね鋼材における深さ 50?m の傷を十分なS/N 比(2 以上)で検出可能な探傷システム、および探傷信号から傷形状を評価するのに有利な特徴を持つ ECT プローブの開発を検討した。開発した探傷システムおよび探傷プローブにより微小傷の探傷と探傷信号からの傷形状の推定評価を行った。さらに、有限要素法解析により傷周辺における透磁率分布を評価し、透磁率分布と探傷信号との関係についても考察したので報告する。 2 探傷システムおよび探傷方法 Fig.1(a)に、鋼材を磁気飽和させるための磁化器とECT Fig.1 Magnetizer and ECT probe. プローブの配置図を示す。磁化器の 2 個の磁化励磁コイルがプローブを挟む形で構成される。磁化は直流で行い、試験鋼材が十分な強度で磁化するよう励磁電流は1.3A とした。ECT プローブはFig.1(b)に示すように、2 種類の励磁コイル(励磁コイル A および )とパンケーキ型検出コイルにより構成される相互誘導型の回転コイルプローブとした。励磁コイルA は試験鋼材の外周に沿って巻き、鋼材周方向に渦電流を発生させる。励磁コイル は励磁コイルA の外側に配置し、コイル軸を鋼材の周方向として巻いた瓦形のコイルであり、鋼材軸方向に渦電流を発生させる。この2 種類の励磁コイルを使い分けることで、傷の長手方向に対して直交とI行の 2 種類の渦電流を発生できる。探傷周波数は200kHz とした。 試験体は、ばね鋼材(直径 10.4mm、長さ 395mm)の表面に、深さおよび方向の異なる人工傷(軸方向傷 29, 40, 53, 58, 80, 114?m、周方向傷 51, 68, 98?m)を放電加工して した(以下EDM 傷と )。傷の は100?m、長 連絡先:福岡 克弘、〒522-8533 滋賀県彦根市八坂町 2500、滋賀県立大学、E-mail: fukuoka.k@usp.ac.jp 35 30 25 20 S/N ratio 15 10 5 0 020406080100 120 Depth (?m) Axial crack 200 150 S/N ratio 100 50 0 020406080100 120 Depth (?m) Circumferential crack コイルA を用いた探傷では、周方向傷対して直交方向に磁 が発生するため、傷からの 磁 が なる。この 磁 に起因した信号が、渦電流による信号に加されるためであると考察される。孔食の信号強度は、傷の深さおよび体 による変化は な 、 傷で 度の Fig. Cra dept and S/N ratio o igna . 8150 7 Signal strength (V) 6130 hase (deg) 5110 4 390 270 1 050 となる。また、軸方向および周方向EDM 傷のいずれの 直線にも乗らず、孔食の深さよりも深いEDM 傷(軸方向80?m)と 度の信号強度となることが確認される。つまり、孔食では錆による材料変質(導電率と透磁率の変化)が傷周辺の広範囲に及び、それに起因して渦電流分 020406080 100 120 Depth (?m) 020406080 100 120 Depth (?m) 布が変化しているものと考 られる。Fig.3 (b)の 相に Signal strength(b) hase Fig. igna trengt and p a e. すると、EDM 傷に関しては深い傷 相が小さ な 20 0 Depth (?m) -20 -40 -60 -80 0 2 4 6 8 10 12 14 16 osition (mm) Flat crack bottom 0.1 0 Detection signal (V) -0.1 -0.2 -0.3 -0.4 20 0 Depth (?m) -20 -40 -60 -80 -100 0 2 4 6 8 10 12 14 16 osition (mm) Slope crack bottom 0.1 0 Detection signal (V) -0.1 -0.2 -0.3 -0.4 -0.5 る。また、傷深さが 、軸方向傷の探傷信号は周方向傷に比 て、 相は大き なることが確認できる。孔食では、軸方向の いEDM 傷と ぼ 相となる。 Fig. ete tion igna di trib tion and ra pro i e. さは6mm 一定とした。軸方向傷における傷深さは、による変化がない傷(前述の傷深さの傷)に加 て、傷 部に 斜があり傷深さが により異なる傷についても検討した。周方向傷については一様な傷深さの傷のみ を検討した。さらに、EDM 傷の試験体と 形状材質のばね鋼材に付 した錆による孔食の検出感度も評価した。 3 探傷結果 まず、本プローブの微小傷に対する検出感度を検証した。ここでは、励磁コイルA を用いてプローブの感度を評価した。探傷 から S/N 比を評価して Fig.2 に示す。 深さの傷において、周方向傷は軸方向傷よりも高いS/N 比で探傷されることが確認される。傷が深 なると、S/N 比は ぼ比例して増加する。S/N 比の低い軸方向傷においても、深さ 40?m の傷では S/N 比が 3.7、29?m では 2.6 であるため、傷深さ30"-'40?m が本プローブの検出性能の限 であると される。ばね鋼材の生 現 における検出感度の要求は、伸線過 において発生する深さ70?m の軸方向傷の検出であるが、本プローブは性能要求の ぼ2 倍の性能を有していることが確認された。 次に、EDM 傷および錆による孔食を探傷した際の、探傷信号の強度と 相を評価してFig.3 に示す。孔食は、傷の深さおよび体 が異なる 8 個の傷を評価した。まずEDM 傷に すると、傷深さに比例して信号強度が増加することが る。また、傷深さが 、周方向傷の方が軸方向傷に比 て信号強度が大きい。これは、励磁 探傷 と傷形状との 軸方向傷を励磁コイルA により探傷した 、傷部に集 する渦電流により探傷信号が出力される。一方、励磁コイル を用いて軸方向傷を探傷した 、傷長手方向の側面部を流れる渦電流分布に起因する探傷信号が出力される。したがって、傷の深さが一様ではない傷の 、傷の深さに て実 的な傷の 面 は変化し、傷の深さに対 した強度の探傷信号が出力される。よって、傷とI行に渦電流を流した探傷信号の強度は、傷の深さ方向の輪郭と相関関係があるものと考察される。傷とI行に渦電流を流した条件での探傷信号を、レーザ変 により 定した傷プロ イルと比 してFig.4に示す。Fig.4(a)は傷深さ 58?m の傷 部が一様な傷の 、Fig.4(b)は傷 部に 斜が付いた傷(I均傷深さ57?m)の である。Fig.4(a)の傷 部が一様である 、傷部における探傷信号強度は一定となる。Fig.4(b)の傷 部に斜が付いた傷においては、傷の深さが深い では、それに て探傷信号が大き なる。この探傷信号の形状は傷プロ イルとよ 一致しており、傷とI行に渦電流を流した探傷 により、傷の深さ方向の形状を推定できることが確認された。 本研究の一部は、科研費(18K03843)の研究助成を受け実施したものである。 参考文献 [1] K.Fukuoka, Int. J. of Appl. Electromagn. Mech., Vol.52, No.3-4, 2016, pp.1177-1183.
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