CdTeピクセル検出器と放射光白色X線による応力評価への挑戦

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カテゴリ: 第16回
CdTe ピクセル検出器と放射光白色X線による応力評価への挑戦 Feasibility Study on Stress Measurements using CdTe Pixel Detector and Synchrotron White X-Rays 新潟大学鈴木 賢治 Kenji SUZUKIMember 量子科学技術研究開発機構 城鮎美 Ayumi SHIROMember 高輝度光科学研究センター 豊川 秀訓 Hidenori TOYOKAWA Non-Member 高輝度光科学研究センター 佐治 超爾 Choji SAJINon-Member 日本原子力研究開発機構菖蒲 敬久 Takahisa SHOBUMember In this study, we proposed a double exposure method using synchrotron white X-rays (DEM-WX) to measure strains of coarse-grained materials, and examined its feasibility. The X-ray diffractions were measured by a CdTe pixel detector. The CdTe pixel detector can resolve photon energy by changing a threshold voltage. Calibrating each pixel of the detector using characteristic X-rays of Pb and W foils, the images by threshold X-ray energy were obtained. The difference image, which is like a diffraction image with mono-chromatic X-ray, could be calculated by the difference between the images by the threshold X-ray energy. The material of the bending specimen was an austenitic stainless steel with a grain size of 300 μm. The strains of the bending specimen were measured using the DEM-WX, and the results corresponded to the applied strains measured by the strain gauge. Keywords: CdTe Pixel Detector, X-Ray Stress Measurement, Coarse Grain, Double Exposure Method, Syn- chrotron White X-ray 緒已 高エネルギー放射光X線を利用したひずみスキャニ ング法は,内部の応力評価法として普及している [1] . しかし,粗大粒材においては連続環が得られないこと から,ひずみスキャニング法を適用することは困難である.著者らは,その解決策として回折斑点追跡法(DSTM) を提案し,粗大粒を持つ材料の応力評価として有効であることを示した[2] .DSTM は,複雑なスリット系である回転スリットを必要とし,その解析にも労力を要するなどの問題もある.また,より簡便な粗大粒のひずみを評価方法として二重露光法 (DEM) を提案し,DEM が粗大粒のひずみ評価に有効であることを示した[3] .この方法で用いた 2 次元検出器 PILATUS は,30 keV を越えると急激に計数効率が低下する.そのため,高エ ネルギーX線の透過力を利用した内部応力評価には適 していない [4] .ゆえに,理想的な DEM の実現には, 合わせて利用することは困難がある. 近年,エネルギー分解能が期待できる 2 次元検出器として,CdTe ピクセル検出器が開発された [6] .この検出器は高エネルギーX線を計数できるので,白色X 線の高輝度かつ高エネルギーX線の透過力とマイクロ ビームを活用した二重露光法による応力評価の新しい展開が期待できる.本研究では,新たに開発したCdTe ピクセル検出器を用いて,二重露光法による粗大粒の応力測定の可能性について実験的研究を実施した. 実験方法 二重露光法 粗大粒からの回折は斑点状になるので,2 次元検出器の利用が適している.Fig. 1 (a) のよ に 系,白色X線,試料および検出器を配置する.なお,z 軸がX線ビームと一致するよ に を設定する.P1, P2 の 2 カ所で回折斑点を測定し,斑点のピーク位置 P (x , y , z ), 11 1 1 高エネルギー放射光X線に適した 2 次元検出器の開発が重要な課題である. さて,シンクロトロン放射光白色X線は,高エネル ギーかつ高輝度マイクロビームを である.放射光 P2(x2, y2, z2) が得られる.P1 および P2 から回折ビームの直線 l が決定できる.それぞれの回折半径は, r1 = x2 + y2 ,r2 = x2 + y2(1) 白色X線のビームラインでは,これまで半導体検出器 を用いた応力測定が試みられている[5] .しかし,半導体検出器は0 次元の検出器であり,二重露光法には利用できない.2 次元検出器で高エネルギーX線の計測に利用できる検出器として,イメージングプレートやCCD カメラもあるが,積分型の検出器はX線エネルギーの 分解能がないので,これらの検出器を白色X線と組み 1 1 2 2 連絡先: 鈴木賢治 〒 950-2181 新潟市西区五十嵐 2 の町 8050、新潟大学教育学部E-mail: suzuki@ed.niigata-u.ac.jp で される.P1 とP2 の を L (= z2 - z1) とすると,回折角 2θ は 2θ = arctan ( r2 - r1 \(2) L となる. 一方,X線ビームの直線 lX と回折ビームの直線 l の交差について考えると,Fig. 1 (b) のよ になる.直線 CdTe detector yy2 P1Lz2 P2 l X r2zl Specimen White X-ray y1 l0 z1 r1 Ox1 2θα LDx2 beam Pcx (xc,yc,zc) Coordinate system and con?guration of detector DiffractedPCl1 beam X-ray beam OXl 0 P1 e P2 l eX lX O Fig. 2. Experiment of DEM using synchrotron white X- ray at BL14B1 in SPring-8. Intersection of X-ray and diffracted beams Fig. 1. DEM using synchrotron white X-rays. lX および l の単位ベクトル eX, e は eX =(0, 0, 1)(3) e =(x2 - x1, y2 - y1, z2 - z1) cos 2θ(4) L で される.図のベクトル P--C-O→X は, デバイスであり,検出面積 20 × 19 mm2,ピクセルサイ 0.2 × 0.2 mm/pixel である[6] .本実験に したCdTe ピクセル型検出器は SP8-04F10K を 2 × 2 で構成され, 各SP8-04F10K の間に 1 画素に相当する 0.2 mm のギャ ップを設けているので,検出面積は 40.2 × 38.2 mm2 になる.検出画像は,201 × 191 画素で構成される. これまで,DEM に利用していた 2 次元検出器 PLA- TUS は,30 keV 以上のX線エネルギーでは検出効率が急激に低下した.これに対して,本実験に用いたCdTe P--C-O→X = O--O→X - O--P→C = -l0 e - (PC - l1 e)(5) ピクセル検出器の は,高エネルギーX線の検出が可能であること,エネルギーの が可能であること で定義され,線分PCOX は,直線 lX と l に直交するので,それぞれの内積は 0 になる.それを利用して未知数 l0 および l1 を求めることができ,その結果 cot2 2θ である.検出面積が小さいので,自 ステージに搭載 した CdTe ピクセル検出器を することで検出面積を広げることにした.また,CdTe ピクセル検出器は, コンパレータの閾値電圧で検出する光子エネルギーの l0 = l L[(x2 - x1) x1 + (y2 - y1) y2](6) cot2 2θ 閾値を できるので,放射光白色X線によるDEM に道を拓くことが期待される. 2.3放射光実験 1 = L cos 2θ [(x2 - x1) x1 + (y2 - y1) y2](7) となる.最終的に,2 直線の交差位置 PC(xC, yC, zC) は, xcot2 2θ 一 xxx C = 1 - L2 ( 2 - 1) 2 本研究では,大型放射光施設SPring-8 の量子科学技術研究開発機構専用ビームライン BL14B1 を使用した. BL14B1 では,偏向電磁石による放射光白色X線を光源 として利用できる.入射X線ビームは,4 象限スリット + (y2 - y1) y2一(x2 - x1)(8) ycot2 2θ 一 xxx C = 1 - L2 ( 2 - 1) 2 にて 0.1×0.1 mm の寸法に絞られ,透過法で試験片に入射された. ひずみ測定に した試験片は,鍛造により製造された オーステナイト系ステンレス鋼 SUSF316L である.長 + (y2 - y1) y2一(y2 - y1)(9) さ 45 mm,高さ 6 mm,輻 7 mm に加工した後,焼鈍熱処理した.実測した粒径は 300 μm であり,粗大粒 cot2 2θ 一 xxx yyy 一(10) であった.この試験片を 4 点曲げの治具に組み込んで C = -L が得られる. ( 2 - 1) 2 +( 2 - 1) 2 曲げひずみを負荷した.ひずみゲージを引張側 面に貼り付け,負荷ひずみを計測しながら,弾性変形の範 CdTe ピクセル検出器 SP8-04F10K は,Al ショットキーバリアダイオードと計数型 積回 で組み合わされたCdTe ピクセル型検出 囲内の 762 με (148 MPa) の曲げひずみを負荷した.X 線ビームは曲げ試験片の輻方向に透過させて回折を測 定した.圧 面を ζ = 0 mm として,測定部位は, X-ray energy keV Threshold voltage ?200 mV keV ?60 Photons mV Fig. 3. Mechanism to distinguish photon energy by the CdTe pixel detector. ζ = 0.2 ? 5.7 mm まで 0.5 mm 間隔で 12 点を測定した. Fig. 2 に示すよ に,CdTe ピクセル検出器を 3 軸自 ステージに搭載し,前方 P1 で 2 × 3 枚,後方 P2 で4 × 5 枚で回折斑点を測定した.P1 とP2 の L は500 mm である. 結果および考察 検出器のエネルギー較正 まず,本研究で重要な検出器である CdTe ピクセル検出器のX線エネルギー認 のしくみについて説 する. Fig. 3 に示すよ に,コンパレータの閾値電圧を変化させることにより,各ピクセルの計数する光子の閾値 エネルギーを変化させることができる.例えば,閾値 電圧 -200 mV のときは,X線エネルギーの大きな光 子をカウントするので,計数される光子は少ない.これに対して,閾値電圧を -60 mV にすると,図のよに高エネルギーから低エネルギーの光子まで計数でき るので,大きいカウント数になる.このよ に,CdTe ピクセル検出器は,各ピクセルごとにエネルギー ができる を持つ. Fig. 4 は,実際に検出器で測定した回折像である.Fig. 4 は閾値電圧 -130 mV で測定された像であり,閾値電圧が低いので,高エネルギーの成分が計測されている.それに対して,Fig. 4 (b) は閾値電圧 -80 mV で測定された 合であり,高エネルギーから低エネルギー までの成分を含んだ像が得られる.本実験では,閾値電圧を -210 ? -70 mV の範囲で 1 mV 間隔で 1 s の露光時間で 141 枚の画像を測定した. さて,Fig. 4 の測定されたままの像は,各ピクセルの閾値電圧による像であり,X線エネルギーとの対応は であり,ひずみ測定には利用できない.本実験では, Pb と W の箔に白色X線を照射して蛍光X線を発生させ,それぞれの 性X線をCdTe ピクセル検出器で測定し,全ピクセルのエネルギー較正を試みた. CdTe ピクセル検出器の閾値電圧を変化させながら, Pb およびW からの蛍光X線をそれぞれ計測した結果をFig. 5 に示す.この図は,一例としてCdTe ピクセル検 出器のあるピクセルの結果を示している.Fig. 5 (a) は -130 mV -80 mV Fig. 4. Images measured with CdTe pixel detector. Pb 箔の蛍光X線を照射しながら閾値電圧を -200 mV から -60 mV まで変化させながらX線強度を測定した結果を示している.実線で示す強度は,-140 mV を過ぎたところで立ち上がり,さらに -120 mV 付近でさ らに急増する.X線カウントの閾値電圧による差分を 線で示すと,Pb-Kβ とPb-Kα のピークが現れる.図 の差分を見ると,その他の 性X線も混ざっているよ に見受けられる.Fig. 5 (b) には,W 箔の 性X線を測定した結果を示す.X線カウントの閾値電圧によ る差分には,W-Kβ と W-Kα のピークが現れる. Pb-Kα と W-Kα のピークが なので,各ピクセルのエネルギー較正には,これらのピークを利用する. 意のピクセル i に対して,閾値電圧 Vi (mV) と蛍光X線のエネルギー Ei (keV) との関係が線形であることを仮定すると Ei = ai Vi + bi(11) が成り立つ.Pb-Kα および W-Kα を利用して,全ピクセルに対してエネルギー較正式の係数 ai と bi の係数を 求めた.その係数 ai と bi の分布をFig. 6 に示す.その 20000 X-ray intensity I, counts 1500 40000 3000 0000 X-ray intensity I, counts Differential, dI/dmV Differential, dI/dmV -140 -130 -120 -110 -100 -90 -80 -70 -60 Threshold voltage, mV -140 -130 -120 -110 -100 -90 -80 -70 -60 Threshold voltage, mV Pb-foil(b) W-foil Fig. 5. Relation between threshold voltage and photon counts for a pixel. Fig. 6. Distribution of coe?cients for energy calibration of CdTe pixel detector. 分布を見ると,係数 ai は -1 付近であるが,正の値も一部あることから,較正が十分されていないピク セルもあり,まだ改善の余地がある.CdTe ピクセル検出器のゲイン およびエネルギー較正は,ひずみ測定の 度に直結するので,それらの改善も 後の課題である. 波長エネルギー像の作成 前述の係数 ai と bi のデータベースを利用してエネルギー較正した画像を作成した. 意のX線エネルギーEi を決定し,各ピクセルごとに ai と bi の関係から相当する閾値電圧 Vi を決定し,そのピクセル位置のカウントを拾い出す.この操作を全ピクセルについて行 ことで,目的の Ei (keV) 像が完成する.測定した閾値電圧 像の全イメージ群のピクセルデータから逐次X線エネ ルギー像を作成する.例えば,P2 の画像は,201×191 ピクセルを 20 枚で構成され,-210 ? -70 mV のデー Fig. 7. Image for 73 keV processed by energy calibration. ギー像を促成する.この作業はビッグデータとその計算に, 大な処理時間を要する.このよ にして作成された閾値エネルギー画像群は,DEM-WX のデータ処理の核となる. 作成された各X線エネルギー (keV) 像の一例を Fig. 7 に示す.Fig. 7 のX線像はCdTe ピクセル検出器としての閾値エネルギー 73 keV 像であり,高エネルギーから 73 keV までの積分像である.X線エネルギー 73 keV の単色X線の像ではない.閾値エネルギー像の回折斑 点は,波長に依存して回折角度も変化するので,ビー ムセンターから放射状に斑点が伸びる形を示しており, 単色X線の回折斑点像とは異なる. 閾値エネルギー像から単色X線エネルギー像を作成 することを試みた.例えば,i - 1 と i + 1 keV との閾 タがあるので,1.08 × 108 のデータから各閾値エネル 値エネルギー像 Ith(i - 1), Ith(i + 1) の中間差分から,i (b) Fig. 8. Examples of processed images at P1. (a) Dif- ferential image for X-ray energy with 74 keV, (b) peak position of di?raction spots. が最大を示すX線エネルギーの時であると定義した. 本研究においては,位置P1 において各斑点の強度が最大値を示すX線波長の条件を探し,そのX線波長の 位置P2 の回折像の中からP1 斑点の対を探す.このP1 と P2 の斑点対から,DEM で回折位置 PC と回折角 2θ を求めた. P1 とP2 の斑点の対を探すとき,実際には多数の組み合わせがある.さらに,回折位置が異なる上に回折格子面 (hk l) の組み合わせはいくつか考えられる.単色X 線の画像ではP1 とP2 の回折像が 1 対 1 に対応するが, 白色ではそれが成立しないので,単純なマッチングは適用できない.また,検出器の較正にムラがあることも考えられる.本研究では,P1 の斑点のX線エネルギーにた対応するP2 像のあらゆる回折斑点の中から,以下の条件に合 P2 の斑点を した. (x2 + y2 )1/2 ? 5,すなわち交差位置が光軸から C C 500 400 X-Ray indensity, % 300 200 100 0 0 100 80 78 76 74 72 70 68 66 64 200 62 5 mm 以内. 交差位置 zC が,ー 170 ? ー 330 mm の範囲内. 測定された格子面間隔 d が,f. c. c. の回折格子面 (hk l) と 合性のある斑点. 4点曲げひずみの測定 Fig. 10 に DEM-WX で測定した格子定数 a1 を示す. 図の ζ は圧 側 面からの を示している.図中のプロットの横棒は,回折斑点から得られた各測定値を示している. 前述の手続きに従いDEM-WX で回折角 2θ と hk l 回 Fig. 9. Change in peak intensity of di?raction spots with increase in X-ray energy. keV の差分像 I(i) を計算した. 1 折の格子面間隔 dhkl を求めた.格子面間隔 dhkl では,そのまま 較することが困難なので,格子面間隔 dhkl を 3.64 I(i)= 2 {Ith(i - 1) - Ith(i + 1)ー(12) 3.62 この差分像を Fig. 8 (a) に示す.Fig. 8 (a) に示すよ に, 単色X線らしい回折斑点像が得られている.その回折像の各斑点のピークトップの7 割の領域の輝度の重心を回折斑点の位置とした.その結果をFig. 8 (b) に示す.本 研究では,この差分処理を連続して行い 60 ? 80 keV の回折像 I を得た. 60 ? 80 keV の一連の差分像の斑点のピーク強度と位置の挙 を観察すると,波長の変化と共に回折斑点 は しながら,ピーク強度が大きくなり,やがて最大値を示して消えて行く挙 が見られた.その様子をFig. 9 に示す.各回折ピークが出現してからのピーク強度の増分を z 軸に示している.このよ な回折強度の変 は,各結晶粒の格子面の方位と波長の関係によるものであり,回折斑点のピーク強度が最大値を示す時のX線エネルギーが,,ラック条件を最もよく満足している.ゆえに,各回折斑点の最適な波長は,斑点ピーク 3.60 3.58 Lattice constant a , ? 1 3.56 3.54 3.52 0123456 Position , mm Fig. 10. Lattice constants measured using DEM-WX. a1 is the lattice constant in the direction of a length of the specimen. 800 600 400 200 Strain , ? 0 -200 -400 -600 -800 0123456 Position , mm 測することを試みた.得られた結果を示すと以下のよ である. Pb, W の 性X線を利用して,CdTe ピクセル検出器のエネルギー較正を行い,波長エネルギー較正した像を作成することができた.それらの差分像を作成することで,単色X線による回折像と等価な像を得るこ とができた. 波長の変化に伴い,各回折斑点の強度は最大を示す挙 を示す.その最大を示す波長が,その結晶粒の最適な回折条件である. 回折斑点の最適波長での回折斑点の対を用いて,二重露光法により回折角を決定し,4 点曲げのひずみを求めた.その結果,DEM-WX によるひずみは,ひずみケージから得られた負荷ひずみとよく一致した. Fig. 11. Strains measured using DEM-WX under 4-point bending. すべて格子定数 a に変換して規格化した.さらに,単純曲げの応力条件 (σ2 = σ3 = 0) を用いて,測定した格子面方位の格子定数 a を試験片長手方向の格子定数a1 に変換した.このよ にして,曲げひずみの分布を べることができる. かなり大きなばらつきになっているが,各 ζ 位置における平均値は直線関係を示し,曲げ応力の関係を反 している.また,図中のエラーバーは 偏差を示している.4 点曲げ試験片の中立面 (ζ = 3.0 mm) は無ひずみであるので,Fig. 10 の平均値を直線近似してζ = 3.0 mm の a1 の値を無ひずみの格子定数 a0 と仮定して,a0 = 3.57985 A? を得た. 本来は,P1 の斑点は,P2 の斑点と 1 対 1 に対応するはずであるが,それがすべて利用できた訳ではない.これは,CdTe ピクセル検出器のエネルギー較正が 分であり,検出面積のすべてを利用できていないことが 原因であると思われる.また,P1 とP2 では,CdTe ピクセル検出器を させて大きな領域を構成しているため,実際の有効な面積は限られているかもしれない. さて,前述の手続きで得られた無ひずみの格子定数a0 を利用して,DEM-WX で測定した曲げひずみの関係を示したのが Fig 11 である.ひずみゲージから得られた曲げひずみを 線で図中に合わせて示した.DEM- WX で測定されたひずみは,負荷ひずみによく一致している.この結果は,DEM-WX によるひずみ測定の可能性を証 するものである.DEM を利用することで粗大粒の応力測定ができること,白色X線による透過力と 微小領域の応力測定ができることなど, 後のX線応力測定の新たな展開が期待できる. 結已 本研究では,放射光白色X線と二重露光法を利用し て粗大粒のひずみの測定を行った.それを可能にするために,CdTe ピクセル検出器を利用して回折斑点を計 謝辞 本研究は平成 29 年度学術研究 成 成 研究(C) 課題番号 17K06046 の援 によるものである.また,本実験はQST 施設共用 2018B-H13,JASRI 利用課題 2018A3653, 2018B3653, 2018B3684 および文部科学 省ナノテクノロジープラットフォーム事業(A-18-QS-0032) の支援を受けた.ここに記して謝意を します. 参考文献 P.J. Withers," Use of synchrotron X-ray radia- tion for stress measurement", Analysis of Resid- ual stress by Diffraction using Neutron and Synchrotron Radiation, Ed. by M.E. Fitzpatrick and A. Lodini, Taylor & Francis, pp.170-218 (2003). 鈴木賢治,菖蒲敬久,城 鮎美,張 朔源," 2 次元検出器を利用した粗大粒の内部応力評価 ", 材料, Vol. 63, No. 7, pp. 527-532 (2014). 鈴木 賢治, 菖蒲 敬久, 城 鮎美," 二重露光法による粗大粒材の応力測定 ",材料, Vol. 68, No. 4, pp. 312-317 (2019). K. Suzuki, T. Shobu, A. Shiro and S. Zhang, " Evaluation of welding residual stresses using diffraction spot trace method ", Advanced Ma- terials Research, Vol. 996, pp. 76-81 (2014,). 柴野純一,菖蒲敬久,鈴木賢治,平田智之, 子 ,小 道 ," 高エネルギー放射光白色X線を用いた材料内部ひずみ測定 ",材料,Vol. 56, No. 10, pp. 985-992 (2007). H. Toyokawa, C. Saji, M. Kawase, K. Ohara, A. Shiro, R. Yasuda, T. Shobu, A. Suenaga and H. Ikeda, " Development of CdTe pixel detec- tors for energy-resolved X-ray diffractions ", Proc. 2nd Int. Symp. on Radiation Detectors and Their Uses (ISRD2018), JPS Conf. Proc. Vol. 24, 011015 (2019).
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