高クロム鋼の微細構造変化に与える熱時効と電子線照射の影響に関する基礎的研究

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カテゴリ: 第15回
高クロム鋼の微細構造変化に与える熱時効と電子線照射の影響に関する基礎的研究 Effect of Thermal Aging and Electron Irradiation on Microstructure Changes of High Chromium Steels 福井大学 鬼塚 貴志 Takashi ONITSUKA Member 福元 謙一 Ken-ichi FUKUMOTO Member 鹿児島大学 佐藤 紘一 Koichi SATO Non-Member 京都大学 徐軋 Qiu XU Non-Member 薮内敦 Atsushi YABUUCHI Non-Member 木野村淳 Jun KINOMURA Non-Member The phase decomposition behaviour of an experimental High-chromium Ferritic steel containing 40 wt.% chromium (Fe-40Cr) irradiated with 8 MeV electrons was studied by positron annihilation lifetime (PAL) measurements and coincidence Doppler broadening (CDB) of positron annihilation radiation measurements. Electron irradiation at 100 and at 475 ?C were performed on the specimens to nominally 0.03 to 0.3X10-3 dpa. The rapid increase of W-parameter obtained from the specimen irradiated at 100 ?C is most likely caused by the microstructure change by phase decomposition evolution, however the data by W-parameter varies widely due to the presence of vacancies. On the other hand, the result of the specimen irradiated at 475 ?C shows no irradiation effect. Keywords: High Chromium Steels, Phase Decomposition, Thermal Aging, Electron Irradiation, Positron Annihilation Spectroscopy 1 緒言 原子炉機器材料として広く用いられる高クロム鋼(Cr 含有量が約9-12 mol.%のフェライト鋼)においては、300℃ 以上の高温に長時間さらされた場合に母相がFe リッチ相とCr リッチ相へ相分離することによって脆化する、いわゆる「熱時効脆化」が重要な経年劣化事象として知られている。オーステナイト鋼とフェライト鋼が共存するニ 相ステンレス鋼においても同様に、フェライト相部分が相分離することによって熱時効脆化する。この高クロム鋼は原子力プラントの一次冷却水系配管やポンプケーシングだけでなく、軽水炉圧力容器鋼のオーバーレイクラッド材や高速炉の燃料被覆管材などの厳しい照射環境下でも用いられるにも関わらず、相分離におよぼす熱時効脆化と照射 の相 効 に いては だ 分に理解されていない。 そこで本研究では、熱時効と照射 の相 効 にいて基礎的知見を得ることを目的とした。本研究では熱 時効による相分離が比較的短時間で起こりやすい Fe-40Cr 合金を対象材料とし、照射手法としては試料の放射化が起こらない低エネルギー電子 照射を選択した。照射後評価手法としては、原子レベルの微細構造変化を敏感に検出できる陽電子消滅法を用いた。 2 実験方法 試料 純度99.99%の純Fe および純Cr を原料として、高純度アルゴン雰囲気中にてアーク溶解法によりFe-40%Cr 合金の鋼塊を溶製し、1077℃X2 時間の固溶化熱処理後、氷水中に急冷して溶体化処理を施した。この鋼塊から放電加工により陽電子消滅測定用試験片を切り出し、機械研磨および電解研磨にて表面を清浄にし、最終的に?5mmX 0.5mmt のディスク状試料を作製して実験に供した。 電子 照射試験には 学原子炉実験 の電子加速器(KURRI-LINAC)を用い、加速電圧8MeV で照射を行った。照射中の試料温度は100℃ たは475℃とした。照射した試料は再度機械研磨および電解研磨を施して表面の不純物を除去し、照射後評価に供した。 連絡先:鬼塚貴志、〒914-0055 福井県敦賀市鉄輪町 1-3-33、福井 学附属国際原子力工学研究 、E-mail: onitsuka@u-fukui.ac.jp 陽電子消滅測定 陽電子消滅測定には鹿児島 学佐藤研究室の陽電子寿命測定装置および陽電子消滅同時計数ドップラーブロードニング(CDB)測定装置を用いた。陽電子 源としては22Na を用い、陽電子寿命測定装置は文献[1]、CDB 測定装置は文献[2]と同形式のものを使用した。 3 結果と考察 100 ?C 照射材のCDB 測定結 から得られたS-W パラメータ相関図をFig.1 に示す。照射材は全体的に未照射よりもS パラメータが増加している。S パラメータの増加は一般に空孔 欠陥の増加に対応する。陽電子寿命測定からも、100 ?C 照射材は単一原子空孔程度の空孔 欠陥の存在を示す結 が得られている。一方、W パラメータの増加は相分離の進行に対応し、0.2mdpa で顕著なW パラメータの増加を示している。100 ?C では照射試験中の熱時効のみで相分離は起こらないため、照射による相分離促進 効 と考えられる。しかしながら、S パラメータが増加するとW パラメータが見かけ上減少する関係にあるため、残存空孔の によりW パラメータの変動が きい結 Fig.2 S-W plot of specimens irradiated at 475 C. Unirradiated Fe-40Cr (W.Q.) and pure bulk Fe are also plotted. 4 結言 現在のところ、照射温度が低い方(100 ?C)が相分離に となった。 与える照射の が きく、高温(475 )では 照射の 次に、475 C 照射材のCDB 測定結 から得られたS-W パラメータ相関図をFig.2 に示す。照射後はW パラメータが増加して、相分離が起きていることを示している。 現在のところ実施できた照射条件は2例だけであるが、照射量に依存せず照射後のS-W 占はほぼ一致した。陽電子寿命測定の結 はバルクの材料とほぼ一致し、照射後の空孔 欠陥は存在しないことを示す結 が得られた。 Fig.1 S-W plot of specimens irradiated at 100 C. Unirradiated Fe-40Cr (W.Q.), pure bulk Fe and Cr are also plotted. は小さいことを示す傾向が得られている。今後、100 ?C 照射材に対して相分離の が無視できる程度の短時間の焼きな しを行って残存空孔を除去し、再評価を実施する予定である。 参考文献 H. Saito, Y. Nagashima, T. Kurihara, T. Hyodo, “A new positron lifetime spectrometer using a fast digital oscilloscope and BaF2 scintillators”, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A, Vol.487, 2002, pp.612-617. P. Asoka-Kumar, M. Alatalo, V. J. Ghosh, A. C. Kruseman, B. Nielsen, and K. G. Lynn, Physical Review Letters, “Increased Elemental Specificity of Positron Annihilation Spectra”, Vol.77, pp.2097-2100.
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