重大事故等への対処と設備 -蒸発乾固-
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カテゴリ: 第15回
重大事故等への対処と設備一蒸発乾固一
Countermeasures and facilities for the severe accident
-evaporation to dryness-
日本原燃株式会社
瀬川
智史
Satoshi SEGAWA
日本原燃株式会社
川村
慎
ShinKAWAMURA
日本原燃株式会社
齋藤
義鷹
YoshitakaSAITOU
日本原燃株式会社
有澤
潤
JunARISAWA
日本原燃株式会社
大橋
誠和
Akikazu OOHASHI
Abstract
The evaporation to dryness due to the loss of cooling functions is an event that leads to boiling and dryness if the cooling function to remove decay heat of solution is lost. We will prepare three type countermeasures against evaporation to dryness. The first measure is to prevent the evaporation to dryness. This is the countermeasure for restoring the cooling function and to stabilize the situation. The second measure is to prevent of escalation. This is the countermeasure to prevent solution from entering from boiling to dryness by injecting water. The third measure is to prevent a significant release of radioactive materials. This is the countermeasure to remove emitted radioactive materials as much as possible and suppress release to the outside.
In this paper, we will present an outline of these measures for the evaporation to dryness.
Keywords: reprocessing plant, sever accident, evaporation to dryness, accident management, priority classification
蒸発乾固の特徴
六ヶ所再処理施設は、青森県六ヶ所村に位置している。再処理施設は、使用済燃料をせん断・溶解し、溶解液か らウラン及びプルトニウムを分離・精製した後、製品と なるMOX粉末を製造する工程、お び、ウラン及びプルトニウム以外の核分裂生成物をガラス固化する工程か ら構成される(図1参照)。こ)した工程の特徴から、再処理施設において扱)放射性物質は、広範な工程に分散 して存在し、多種多様で、事故影響も様々な事故の発生 が想定される。
使用済燃料をせん断・溶解し、MOX粉末又はガラス固化体を製造するまでの間は、放射性物質は硝酸に溶解 された状態で存在し、その溶液は放射性物質が有する崩壊熱に 発熱する。再処理施設では、これらの溶液を複数の貯 に貯蔵してお 、特に発熱量の大きい溶液を
する貯 には、溶液を するための ル又は トが られてお 、これに時水 している。
連絡先:瀬川 智史、〒039-3212 青森県上北郡六ヶ所大字尾駁字沖 4 番地108、日本原燃、
E-mail: satoshi.segawa@jnfl.co.jp
図1 再処理施設の主要な流れ図
この 機能が、地震、長時間の全交流動力電源の喪失又は 水を循環するためのポンプ等の動的機器の多重故障を原因として喪失し、代替する措置が講じられない には、貯 に する溶液が有する崩壊熱に溶液の が上 し、 に ることで、 に
溶液に まれる放射性物質が放射性 ルとして気相中に放出される。
さらに、 が継続することで溶液中の硝酸濃 が上
し、かつ、溶液の が上 すると、溶液中に まれる核分裂生成物のルテニウムと硝酸の反応が促進され、ルテニウムが揮発性の化 物へ変化し、溶液からの放射性物質の放出量が増大する。
本稿では、上述の事象進展を辿る事象を「蒸発乾固」 と呼ぶこととする。
蒸発乾固への対処の基本方針
蒸発乾固への対処は、蒸発乾固の発生が想定される貯
毎に、 機能の喪失から に るまでの時間及び蒸発乾固発生時の環境への放射性物質の放出量を指標と して重要 を設定し(表1参照)、重要 に応じた対処を整 する。具体的には重要 中に分類される貯 に対しては、蒸発乾固の発生を未然に防止するための発生防止対策を、重要 高に分類される機器に対しては、発生防止対策の他、放射性物質の発生を抑制し、蒸発乾固の進行を緩和するための拡大防止対策及び放射性物質の放出に る影響を緩和するための異 な水準の放出防止対策を整 する。
1 重要
環境影響の大きさ
大きい
小さい
(0 01TBq
(0 01TBq
事象進展
の早さ
以上)
未満)
早い
(7日以 )
重要 高
重要 低
(早)
遅い
(7日を超 て1 年以 )
重要 中
重要 低
(遅)
極めて遅い
(1年を超 る)
重要 低
(極遅)
重要 低
(極遅)
これらの対策に使用する設 は、再処理施設において発生が想定される重大事故が、原子力発電所において発 生が想定される重大事故に比べて事象進展が緩やかであ
、 機能の喪失から に るまでの時間が最も短い貯 で約11 時間であること、地震等の外的事象に対する信頼性を考慮し、可搬型の設 を優先して整 する。また、恒設設 を活用する は、これらを多重化す
る等の信頼性確保のための措置を講じる。
発生防止対策
機能が喪失した には、蒸発乾固の発生を未然に防止するため、 ル又は トに水を供給する配管(以下、本稿では「 部ループ」とい
)。)に建屋の外部から注水し、蒸発乾固を想定する貯に する溶液を する(図2、4参照)。
さらに、 部ループへの注水が実施できなかったにおいても、 ル又は トに建屋の外部から直接注水することに 、蒸発乾固の発生が想定される貯 に する溶液を する(図3、4参照)。
建屋の外部からの 水の供給に使用する設 は、可搬型のポンプ及びホースとし、対処に必要な個数の他、必要な予 を整 するとともに、これらが想定されるハザードに対して 時に損傷しない )分散して保管する。
部ループ、 ル又は ト、水源の貯水 等の恒設設 は、高い 震性を確保するとともに多重化することで 時に機能喪失しない設計とする。
図2 発生防止対策概要図(内部ループ注水)
図3 発生防止対策概要図(冷却コイル注水)
図4 発生防止対策設備イメージ
拡大防止対策
貯 に する溶液が に った には、貯 の
部に建屋の外部から直接注水することに (図5、6参照)、揮発性のルテニウムが気相中に大規模に放出されるのを抑制し、蒸発乾固の進行を緩和する。
建屋の外部からの希釈水の供給に使用する設 は、可搬型のポンプ及びホースとし、対処に必要な個数の他、必要な予 を整 するとともに、これらが想定されるハ ザードに対して 時に損傷しない )分散して保管する。
機器への注水に使用する注水配管、水源の貯水 等の恒設設 は、高い 震性を確保するとともに多重化することで 時に機能喪失しない設計とする。
図5 拡大防止対策概要図
図6 拡大防止対策設備イメージ
異常な水準の放出防止対策
貯 に する溶液が に った には、機器に接続する排気系統の配管の流路を遮断することに 、放射性物質をセルに導出し、セルに閉じ込めることで放射性 ルの沈着を図る。
また、放射性物質をセルに導出する前に、導出経路上に設置されている凝縮器に注水することで、 に い発生する蒸気を凝縮し、放射性 ルを除去する。セルの 圧が上 し、経路外放出の可能性が高まった
には、排風機を起動し、高性能粒子フィルタに 放射性 ルを除去することで大気中へ放出される放射性物質を低減し、管理しながら放出する(図7、8 参照)。
放射性 ルを除去するための設 は、可搬型の排風機、高性能粒子フィルタ及びダクトとし、対処に必
要な個数の他、必要な予 を整 するとともに、これらが想定されるハザードに対して 時に損傷しない )分散して保管する。
恒設設 の凝縮器は、高い 震性を確保するとともに多重化することで 時に機能喪失しない設計とする。
図7 異常な水準の放出防止対策概要図
図 異常な水準の放出防止対策設備イメージ
水供給
蒸発乾固への対処に必要な水は、建屋の外部にある貯 水 から、対処が必要な建屋へ供給する。
また、貯水 の水が足 ない は、敷地外水源(沼や川)から取水する(図9、10 参照)。
水供給に使用する設 は、可搬型のポンプ、ホース及び大型移送ポンプ車とし、対処に必要な個数の他、必要な予 を整 するとともに、これらが想定されるハザードに対して 時に損傷しない )分散して保管する。
恒設設 の貯水 は、高い 震性を確保するとともに多重化することで 時に機能喪失しない設計とする。
図9 水供給概要図
図10 水供給設備イメージ
有効性評価
周辺環境が最も厳しくなると想定される地震を原因として 機能が喪失することを想定し、蒸発乾固への対処の有効性評価を実施した。
蒸発乾固への対処に必要な設 を上記のとお 整 することで、発生防止対策に 蒸発乾固の発生を未然に防止でき,これが機能しなかったとしても拡大防止対策に 放射性物質の発生を抑制し,蒸発乾固の進行を緩和できることを確認した。
また、異 な水準の放出防止対策を講ずることに , 放射性物質の放出量は平 運転時程 に抑制することができ、その放出量が基準値である100TBq(セシウム137 換算)を下回ることを確認した。