重大事故(SA)等対処設備の運転中保全の考え方と課題

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カテゴリ: 第17回
重大事故(SA)等対処設備の運転中保全の考え方と課題 Application rules and future tasks of On-Line Maintenance for systems & components against Severe Accidents 東芝エネルギーシステムズ(株) 石橋文彦 Fumihiko ISHIBASHI Member 東芝エネルギーシステムズ(株) 西優弥 Yuya NISHI Member 東芝エネルギーシステムズ(株) 峯村武宏 Takehiro MINEMURA Member Abstract It is important to improve both plant safety and plant operability simultaneously in nuclear power plants (NPPs). “On-Line Maintenance (OLM)” is one of solutions for this issue. This paper proposes “Application rules of OLMs for systems & components against Severe Accidents” based on IRIDM (Integrated Risk Informed Decision Making). In this proposal, implementation of OLMs should be decided by CDF (Core Damage Frequency) and CFF (Containment Failure Frequency) under system configuration during OLM, and completion time of OLMs should be decided by increment of CDF and CFF. Before implementation of OLMs in real NPPs, several issues should be discussed between utilities and NRA (Nuclear Regulatory Authority). Keywords: OLM, PRA, CDF, CFF, ICDP, ICFP, RIDM 1.緒言 2020 年4 月より新検査制度が本格運用を開始した。この制度は規制活動にリスク情報が活用されるものであり、 事業者としても自主的な安全性向上の取り組みの中でリスク情報を活用することの重要性が増すこととなる。福 島第一原子力発電所事故の反省として新規制が制定され、 再稼働に際し多くの追加安全設備(SA 設備・特定重大事故(特重)等対処設備等)が設置され、プラントの安全性が向上した。また、プラントの確率論的リスク評価(PRA) 技術が進歩し、リスクを定量的に評価できるようになりつつある。設備増強による保守物量増大等の課題もあり、リスク情報を活用して安全性を確保しつつ、効果的な保守を実施することが重要である。 ここでは、日本機械学会「リスク低減のための最適な原子力安全規制に関する研究会」(A-TS 08-11)で議論し提言している“SA 設備の運転中保全(以後 OLM と略す) 実施基準案”を紹介し、実機適用に向けた課題についての私見を述べる。 2.運転中保全実施の意義 従来、国内ではプラント定期検査中(停止中)での設備 点検が主であるが、定期検査中より運転中に保全した方が安全な設備等に対しては、安全性向上の観点からOLM を積極的に適用することを検討すべきである。また、福島 連絡先:石橋文彦、 〒235-8523 横浜市磯子区新杉田町8、東芝エネルギーシステムズ(株) E-mail: fumihiko.ishibashi@toshiba.co.jp 第一原子力発電所事故後に多くの設備が追加されたこと から、定期検査中の作業量が増大し、保守作業が重畳する ことで作業員が手薄となる事が懸念されるが、OLM を計画的に実施できれば上記の保守作業が分散され、経験豊 富な作業員を通年に渡って確保することができる。OLM 実施によるプラント安全性への一時的な影響が極めて小 さければ、OLM 適用は安全性の向上に寄与するとともに、定期検査期間が短縮され発電所稼働率向上が期待できる。また、定期検査時の作業員ピークも低く抑えることが可 能となり、セキュリティ(作業員管理)の面でもプラント安全性に寄与するものである。 3.SA 設備の運転中保全実施基準案[1] OLM 適用に関する基本的な考え方は、①OLM 実施の可否、②OLM 実施可能期間、③補償措置について基準を策定することである。①については、OLM 実施時に計画しているシステム構成であっても安全性が性能目標を満足することを確認することであり、その時の(瞬間の)炉心損傷頻度(CDFinst)<10-4/炉年、及び格納容器機能損失頻度(CFFinst)<10-5/炉年を満足することを条件とした[2]。②については、OLM 期間中に増大する炉心損傷確率の増分(ICDP)及び格納容器破損確率の増分(ICFP) で判断するのが妥当と考え、原則 ICDP<10-5, ICFP<10-6 を満足すること[2]を原則とし、可能な限り安全性を高めるため補償措置を検討することとした。③については補償 措置ガイダンスを作成し、補償措置として活用できる設備の考え方、定性的リスク評価の進め方を提言した。これ らの考え方は参考文献[2]の考え方に沿ったものとしてお り、確率論的リスク評価は外的事象を含むことを原則と しているが、困難な場合は定性的な検討も許容した。 4.運転中保全実施に当たっての課題 表1 OLM 実施可否および実施期間の判断基準 OLM を実機に適用するに当たっては、上記の実施基準案に準じOLM 計画を立案し、リスク情報を活用した保全の経験を積むことが重要であるが、以下の課題を検討す る必要がある。 保安規定解釈について 現状の保安規定の審査基準では計画的OLM は認められていないと解釈されることから、計画的OLM の許可条件について原子力規制委員会(NRA) と議論を進める必要がある。この時、許容待機除外時間(AOT)とOLM 実施期間との関係も整理が必要。(OLM 実施期間<AOT) PRA 高度化・品質向上 外部事象を含め、多様な条件での PRA が可能なように PRA モデル高度化が必要であると共に、PRA 品質向上のための規定が必要。 OLM 適用範囲拡大 OLM 適用範囲の拡大を目指し、SA 設備だけでな 参考文献 (参考文献[1]より引用) 図-1 CDF の判定基準 (参考文献[2]図O.1 より引用) く、DB 設備・特重設備も含めた OLM 実施基準の検討が必要。 5.まとめ カーボンニュートラル2050 を実現するために原子力発電に求められる役割は大きく、稼働率向上を確実に達成 する必要がある。リスク情報を活用した保全を積極的に 導入することで、安全性を維持・向上しつつ稼働率を向上 することが可能となる。その利益の一部を安全向上対策 に還元することでさらなる安全性向上につなげるという 正のスパイラルを実現することが重要である。 日本機械学会、“平成30 年度 リスク低減のための最適な原子力安全規制に関する研究活動報告書”、平成31 年3 月 日本原子力学会標準、“原子力発電所の継続的な安全性向上のためのリスク情報を活用した統合的意思 決定に関する実施基準:2019 (AESJ-SC- S012:2019)”、2020 年6 月11 日
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