高周波超音波を用いたW-Cu固相接合界面検査技術の検討

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カテゴリ: 第17回
高周波超音波を用いた W-Cu 固相接合界面検査技術の検討 Nondestructive inspection of W-Cu bonded interface using high frequency ultrasound 東北大学 遊佐訓孝 Noritaka YUSA Member 発電設備技術検査協会 古川敬 Takashi FURUKAWA Member 核融合科学研究所 増崎貴 Suguru MASUZAKI Non-member This study evaluated the applicability of high-frequency ultrasonic testing to the inspection of W-Cu bonded interface aiming at the development of a non-destructive testing technique for the inspection of the cooling channel of the divertor of a fusion reactor. Tungsten blocks measuring approximately 30×30×13 mm were bonded with oxygen-free copper blocks using a high temperature vacuum furnace with uniaxial pressure and the thickness of the oxygen-free copper blocks was reduced to 2.5 mm. Artificial grooves were machined to some of the tungsten blocks to introduce artificial delamination at the bonded interface. Subsequent immersion ultrasonic inspections were carried out using a 30 MHz transducer. The results of the inspections provided C-scan images clearly showing the artificial grooves with a diameter of 1 mm. Keywords: nondestructive testing and evaluation, solid state bonding, fusion reactor, imaging, diverter 1.緒言 将来のエネルギー源として期待される核融合発電の実現に向けた重要な工学的技術の一つに、高熱流束を受けるダイバーターの徐熱技術[1]がある。現状ダイバーター の基本的な設計の一つが高融点金属であるタングステンに熱伝導率の高い銅合金製の冷却管を接合し、冷却管に流れる冷却水により徐熱するというものであるが、融点が大きく異なるタングステンと銅合金の接合は必ずしも容易ではない。実際に、当該部の接合方法として有力な候補である固相接合を適用した場合、接合条件が同一であったとしても接合状態は必ずしも同一とはならないことが問題とされている。よって、接合技術そのものの高度化に加えて、接合の状態を非破壊的に検査する技術の開発も重要な技術課題である。しかしながらその一方 で、熱輸送阻害欠陥の有無を直接確認評価できるサーモグラフィーは、当該部の形状ゆえに適用困難である。 以上を鑑み、本研究においてはダイバーター冷却管接 合界面の健全性評価技術としての高周波超音波の適用性 評価を実施した。超音波技術で測定されるのは対象の機 械的な性質であるが、近年の研究[2]により、金属材料の 接合部検査において、高周波超音波により得られる信号 連絡先: 遊佐訓孝, 〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-01-2、東北大学大学院工学研究科 E-mail: noritaka.yusa.d5@tohoku.ac.jp はフラッシュサーモグラフィーによる熱画像と整合性があることが確認されており、よって高周波超音波はダイ バーター冷却管接合面の熱的な接触状態評価にも有効で あると期待される。 2.高周波超音波試験 本研究において製作した試験体の一部の外観をFig. 1 に示す。厚さ12.8 mm、26.4×28.4 mm のITER グレードのタングステンブロックに無酸素銅をホットプレスにより接合した後、無酸素銅を2.5 mm に減厚したものである。接合に際してはタングステン、無酸素銅双方の接合面を1μm のバフ研磨にて鏡面とし、タングステンの接合面中央に深さ0.5 mm、直径1~10 mm の機械加工による窪みを設けることで人為的な剥離の導入を行った。接合における温度、圧力、接合時間はそれぞれ900℃、10 MPa、1 時間、昇温速度は毎時600℃、そして接合雰囲気はAr である。 高周波超音波測定試験は超音波C-SCAN 画像診断装置(インサイト社製 IS-350)を用いて実施した。周波数は 30 MHz とし、水浸式にて、無酸素銅側よりパルス―エコー法による測定を行った。測定においては、概ね試験体表面 が焦点となるようにプローブの垂直方向位置を調整し、 0.1 mm ピッチにてプローブを水平方向2 次元的に走査させた。無酸素銅内部における音速を4660 m/s と仮定し、得られた反射波の強度をその飛行時間に基づいて表面か らの深さに換算し、画像化した。 Fig.1 W-Cu bonded samples fabricated in this study 接合面中央部に直径10 mm の窪みを加工した試験体からの、深さ方向0.5 mm 間隔での反射波強度をFig. 2 に示す。反射波強度はグレースケールで示されており、白いほど強い反射波が確認された場所となっている。深さ2.0~ 2.5, 2.5~3.0, 3.0~3.5 mm の断面では接合面に加工した窪みを明瞭に確認できるが、無酸素銅の厚みが2.5 mm であり、タングステン側に加工した窪みの深さが0.5 mm であ ることを踏まえると、これは妥当な結果であるといえる。 また、それ以外の断面では大きな信号が確認されないことから、無酸素銅およびタングステンからの反射は生じておらず、得られた信号は接合界面の状態を反映したものと結論付けられる。尚、Fig. 2(d),(e)に示した画像端部からの強い反射は、タングステンに比べて無酸素銅がやや大きかったため、Fig. 1 に示したようにタングステンから無酸素銅がはみ出していることに起因したものである。 (a) 1.0-2.0 mm (b) 1.5-2.0 mm (c) 2.0-2.5 mm (d) 2.5-3.0 mm (e) 3.0-3.5 mm (f) 3.5-4.0 mm Fig. 2 High frequency ultrasonic images of a sample with a 10 mm groove at the interface 接合部に加工した径が 5, 3, 1 mm の窪みを加工した試 験体からの信号をFig. 3 に、接合部に窪みを加工していない試験体 3 体からの信号をFig. 4 に示す。いずれも深さ2.0~4.0 mm からの箇所から得られた信号を画像化したものである。径 1 mm の窪みからと思われる反射波も確認することができるが、その一方で、Fig. 2 に示した結果 と同様、接合面の窪みを加工した以外の箇所からも反射波が発生していることが見て取れる。Fig. 4 に示した結果でもこれは同様であり、さらに加えて、接合条件が同一で あるにもかかわらず、接合界面からの反射の度合いは顕 著に異なったものとなっている。特にFig. 4(a)に示した試験体1 からは、Fig. 3(c)に示したφ1mm の剥離と同程度の反射波が数多く観察されており、実際の接合状態も踏ま えた上での伝熱特性との整合性を評価する必要性を示した結果といえる。 (a) φ5 mm (b) φ3 mm (c) φ1 mm Fig. 3 High frequency ultrasonic images of samples with artificial grooves with different diameters (a) unflaw TP#1 (b) unflaw TP#2 (c) unflaw TP#3 Fig. 4 High frequency ultrasonic images of samples without artificial grooves on the bonded surface 3.結言 核融合炉ダイバーター冷却管接合界面の検査手法とし ての高周波超音波技術の適用性評価を行った。数mm 厚の無酸素銅―タングステン接合界面の状態を非破壊的に評価可能であり、将来の検査技術としての可能性が確認された。一方で接合不良が生じていないと思われる界面からもある程度の信号が反射が確認されたため、今後試 験体の内部観察及び接合界面の伝熱特性評価結果を踏まえての分析が必要と考えられる。 参考文献 Tamura et al., Design status of the structural components of the Helical Fusion Reactor FFHR-d1, Plasma and Fusion Research 11 (2016), 2405061. 遊佐ら、高周波超音波による摩擦攪拌処理を施した 高強度タングステン被膜下欠陥検出の試み、日本原 子力学会2020 春の年会、2020/03/16-18.
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