金属製フィルタを用いた火山灰除去システムの検討
公開日:
カテゴリ: 第16回
金属製フィルタを用いた火山灰除去システムの検討
Examination of volcanic ash removal system using metal filter
中部電力(株)
川井
貴弘
TakahiroKAWAI
Member
中部電力(株)
水野
道太
MichitaMIZUNO
Member
中部電力(株)
加藤
寿宏
ToshihiroKATOU
中部電力(株)
大山
隆令
TakanoriOOYAMA
新日本空調(株)
藤芳
正司
MasajiFUJIYOSHI
新日本空調(株)
(株)ユニパック
黒田尚紀松江昭彦
NaonoriKURODA AkihikoMATSUE
Abstract
Nuclear power plants are required not to lose safety functions against assumed natural phenomena as damage prevention from external impact. Among possible natural phenomena, it is known that blockage of the intake filter by volcanic ash occurs due to the volcanic effect. Therefore, we are investigating a volcanic ash removal system that uses a metal filter that can remove volcanic ash before the intake filter and supply clean air.
Keywords:
Volcanic ash, Metal filter, Bug filter, JIS B9908, Tephra2
はじめに
原子力発電所は、外部からの衝撃による損傷防止として、想定される自然現象に対して安全機能を損なわないことが求められている。想定される自然現象のうち火山影響の評価方法については、「原子力発電所の火山影響評 価ガイド」[1](以下、火山影響評価ガイド)に示されており、各原子力発電所は、火山影響評価ガイドに従って、 立地評価や影響評価を実施している。
火山事象の影響としては、降下火砕物、火砕物密度流、 溶岩流、地滑り及び斜面崩壊等がある。このうち、降下火砕物(火山灰)については、風等によって遠方まで運ばれ最も広範囲に影響が及ぶ火山事象であることが知られており、原子力発電所の構造物への静的負荷、粒子の衝突、水循環系の閉塞及びその内部における磨耗、換気系、電気系及び計装制御系に対する機械的及び化学的影響、並びに原子力発電所周辺の大気汚染等の影響が考えられる。
連絡先 大山隆令
〒461-8680 愛知県名古屋市東区東新町1 番地中部電力株式会社 原子力部 設備設計グループE-mail: Ooyama.Takanori@chuden.co.jp
浜岡原子力発電所では、屋内に給気する空気は、空調 設備によって外気を取入れているため、このような火山 灰を含んだ空気を空調設備が吸気すると、空調設備のバ グフィルタが火山灰を捕集することによって時間経過と ともに圧損が上昇し、閉塞していくことが考えられる。 そして、最終的には外気を吸気できなくなり設備への悪 影響が発生し、原子力発電所の安全機能を損なう恐れが ある。
原子力規制委員会規則「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」及び火山影響評価ガイドでは、火山影響発生時における非常用電源等の機能維持を求められており、その降灰継続時間を推定できない場合は24 時間とすることが定められている。
火山灰を含んだ空気を吸気することによって、24 時間以内にバグフィルタが空調設備の許容圧損に到達した場合、バグフィルタの交換が必要であるが、非常用電源等に関する空調設備を停止し、バグフィルタを交換することは、一時的に非常用電源等の機能を喪失することになるため規制要求を満足することができない。また、空調を運転、継続しながらバグフィルタを交換することは、空調風量が大きいため、作業安全上、不可能である。
そこで、空調設備に金属製フィルタを設け、吸い込んだ火山灰を除灰し、24 時間機能維持が可能なようにバグフィルタの圧損上昇を抑えることによって、非常用電源等の機能を維持し、原子力発電所の安全機能を確保する対策を検討した。
金属製フィルタの換気空調設備の構成
浜岡原子力発電所4号機の外気取入れ部はFig.1に示す 構成となっている。ルーバーは、雨水の侵入を防止し、 ワッシャブルフィルタは、粗大な塵埃の侵入を防止し、 バグフィルタは、微細な塵埃の侵入を防止している。浜 岡原子力発電所は噴火を想定する給源火山より遠方に位 置しており、数値シミュレーションの結果、火山灰は500μm 以下の微粒子であることがわかった。このため、ほとんどがルーバー及びワッシャブルフィルタを通過し、 バグフィルタで捕集されることから、バグフィルタの圧 損が上昇していき、閉塞し、外気取り込みを必要とする 非常用電源設備等が機能喪失へと至る。
Fig.2 Metal filter and pleated structure
金属製フィルタ性能試験
想定火山灰条件
地質調査や文献調査の結果を元に、火山灰の数値シミュレーション「Tephra2」を実施し、火山影響評価ガイドに従い、降灰時間を24 時間と想定し、当所で想定される火山灰量および粒径分布を算出し、その結果から気中降下火砕物濃度を推定し、Tabel1 のとおりの降灰条件を設定した。
Table 1 Properties of volcanic ash
Volcanic ash concentration[g/m3]
2.51
Mass rate at each particle size
[%]
250,... 500μm
8.32
125,... 250μm
59.2
63,... 125μm
19.8
31,... 63μm
10.6
16,... 31μm
1.85
8,... 16μm
0.19
4,... 8μm
0.01
Fall ash thickness[cm]
10.0
Fig.1 Structure of outside air intake
このため、敷地内への火山灰の降灰が予想される場合 には、火山灰に対して捕集効果の薄いワッシャブルフィ ルタを、火山灰対策用の金属製フィルタに取り替え、バ グフィルタに到達する火山灰量を低減する対策を検討し た。
金属製フィルタは、従来のフィルタに使用されている ような不織布等によるフィルタではなく、火山灰が付着 しても洗浄すれば再度使用可能となるように、金属メッ シュのフィルタとした。火山灰を捕集することにより後 段のバグフィルタへの通過火山灰量を低減するのではな く、火山灰をフィルタ手前に落下させることによって後 段のバグフィルタへの通過火山灰量を低減させる設計と した。また、金属製フィルタは、表面積を増やし、単位 面積当たりの風速を低下させることにより、除灰効率は そのままにフィルタ圧損上昇を抑制可能なプリーツ構造 を有する設計(Fig2)とした。
金属製フィルタ試験条件
Fig.3 のとおり、試験装置はJIS B9908 換気用エアフィルタユニット・換気用電気集じん機の試験方法に基づくフィルタ試験装置を使用して、Table1 の火山灰条件にてオートフィーダーから火山灰を実際に散布し、HEPA で整流した空気とともにフィルタ検査部に非常用電源の風量[3,400m3/h]で降灰条件を模擬して、金属製フィルタの性 能試験を実施した。
Fig.3 Test apparatus
フィルタ検査部にはFig.4 のとおり、バグフィルタの上流に金属製フィルタを設置し、それぞれの圧力損失を測定し性能を確認した。
今回、金属製フィルタは、目開きの異なる2 種類の金属製フィルタを使用して試験を実施した。(Table2)
火山灰を全量除灰するためには目開きを最小火山灰粒 径付近に設定することで、さらなる火山灰の除灰が可能 となるが、その場合、火山灰によって目詰まりし、圧損 がすぐに上昇してしまうことが考えられるため、金属フ ィルタの目開きについては、Table1 の想定火山灰条件において、大部分が除灰できるような目開きを設定した。
Fig.4 Inspection filter detail Table 2 Specification of metal filter
Filter type
Specification
Metal filter(109μm)
External dimensions:600H*600W*65D Fiber interval: 109μm
Fiber diameter: 60μm
Material: Stainless steel (SUS316)
Metal filter(45μm)
External dimensions:600H*600W*65D Fiber interval: 45μm
Fiber diameter: 25μm
Material: Stainless steel (SUS316)
金属製フィルタ試験結果
はじめに金属製フィルタを使用せずにバグフィルタのみで想定降灰条件での圧損上昇傾向を確認した(Fig.5)。一般的にバグフィルタは2 次関数的に圧損が上昇するため、試験時間の2 時間以降は、外挿にて圧損上昇カーブを求
めた。その結果、バグフィルタ単体では150 分程度で空
調設備の許容圧損である350Pa に到達することを確認した。なお、今回の試験風量ではバグフィルタ前段のダク ト上に重力落下等の傾向が認められた。
次に金属製フィルタ(109μm)を使用した場合の圧損上昇傾向を確認した(Fig.6)。金属製フィルタの圧損は飽和す る傾向にあることを確認した。また、金属フィルタとバグフィルタの合計圧損が350Pa に到達するまで240 分となり、火山灰フィルタを前段に設置することでバグフィルタの圧損上昇を単体の時と比較して約7/10 程度に抑えられることを確認した。
さらに、金属製フィルタ(45μm)を使用した場合の圧損上昇傾向を確認した(Fig.7)。金属製フィルタの圧損は、時 間経過とともに上昇していくことを確認した。また、金属製フィルタとバグフィルタの合計圧損が350Pa に到達するまで270 分程度となり、火山灰フィルタを前段に設置することでバグフィルタの圧損上昇を単体の時と比較して約6/10 程度抑えられることを確認した。
また、これらの試験終了時の試験装置内の各部位の重量を測定し金属フィルタ前後における火山灰量をTable3 に示す。Table1 の火山灰条件において金属製フィルタ(109μm)では81%、金属製フィルタ(45μm)では95%の火山灰が除灰できていることを確認できる。
以上から、金属製フィルタによって火山灰が除灰でき ることを確認した。その除灰量は、目開きのサイズによ って異なり、目開きを小さくすると除灰効率の上昇が見 込まれる。しかし、目開きを小さくすると目詰まりが起 こりやすくなり、金属製フィルタの圧損が上昇する。そ のため、金属製フィルタの洗浄によって、金属製フィル タに付着した火山灰を定期的に除去し、圧損を回復させ ることによって、空調設備の圧損に極力影響を与えない ようにし、金属製フィルタとバグフィルタの合計圧損が 空調設備の許容圧損に到達する時間を することができる。
150min
Fig.5 Bug filter pressure loss trend
Fig.6Filter pressure loss trend
(Metal filter(109μm))
270min
Fig.7 Filter pressure loss trend (Metal filter(45μm))
Table 3 Volcanic ash removed and catched rate
Fig.8 Filter pressure loss trend (Regular cleaning of Metal filter(45μm))
しかし、どちらの金属製フィルタにおいても、バグフィルタの圧損上昇をある程度低減することはできたが、金属フィルタの定期清掃等を実施したとしても24 時間以内に許容圧損に到達する。今後は、今回の金属フィルタを活用しつつ後段のバグフィルタの大容量化等によって24 時間以上、機能維持可能な対策の検討を めていく。
参考文献
原子力規制委員会、原子力発電所の火山影響評価ガ イド(実用発電用原子炉の規制基 に関連する内規、
Beforre metal filter[%]
Bug filter[%]
Bug filter only
-
79
Bug filter+Metal filter(109μm)
81
18
Bug filter+Metal filter(45μm)
95
4
成25 6 19 日原規 発13061910 号にて制定、
成29 11 29日原規 発17112910号にて 正)、
2018.
まとめ
空調設備に金属製フィルタを設置することによって、 火山灰に対して以下の効果があることを確認した。
金属製フィルタ(109μm)
バグフィルタの圧損上昇低減効果は金属製フィル タ(45μm)と比較して小さい。時間経過とともに圧損はほとんど上昇しないため、定期的に取替や清掃は 不要である。
金属製フィルタ(45μm)
バグフィルタの圧損上昇低減効果は金属製フィルタ(109μm)と比較して大きい。金属製フィルタは時間経過とともに圧損が上昇していくため、定期的に取替や清掃を実施することで、圧損上昇を抑え許容圧損に到達するまでの時間を することができる(Fig.8)。