耐放射線性の加速度および温度複合センサの開発
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カテゴリ: 第16回
耐放射線性の加速度および温度複合センサの開発
Development of radiation-resistant integrated sensor of acceleration and temperature
再処理機器株式会社
今ー将
Kazumasa KON
Member
再処理機器株式会社
木村敏也
Toshiya KIMURA
The status monitoring of the stirrers installed in the reprocessing plant are carried out by monitoring the vibration of the bearing using the radiation-resistant acceleration sensors. Additionally it is furthermore effective to monitor the increase of the temperature due to the deterioration of the grease or the foreign substance invasion into it. RECO manufactured the prototype sensor which could measure both the acceleration and the temperature simultaneously and verified the proper performance before and after the irradiation test under the condition of 1000kGy, i.e. region of acceleration as fc~10KHz, and that of temperature as ~90℃.
Keywords:Preventive maintenance, Integrated sensor, Acceleration, Temperature, Radiation-resistant
1 緒言
原子力施設では、放射線環境下での機器の安全運転が要求され、保全高度化の強いニーズがある。
弊社では、再処理施設の攪拌装置の軸受状態監視を遮
内の装置 に設置した 放射線性加速度センサを使用して長年実施してきた。今回さらに保全の高度化を目指すため、軸受のグリス劣化や異物混入の監視にも有効な温度センサを追加した 放射線性複合センサを開発したので報告する。
2 複合センサ
加速度センサ
圧電セラミック製センサを次の理由から採用した。ー般的な軸受監視の振動検出器には、M MS センサやア
ンプ内蔵式の加速度センサ(IC センサ)等が採用されているが、検出回路に半導 等の電子部品が内蔵されている場合、放射線の影響を受けてその特性・性能が変化するため測定結果の信頼性に問題がある。今回採用のセンサは、放射線環境下での使用実績のある圧電セラミック製の加速度センサを採用した。
要求性能としては、異常の兆候を早期から検知できる よう加速度検出領域は広範囲のfc~l0kHz とした。
温度センサ
型熱電対を次の理由から採用した。
連絡先今 ー将、〒039-3211 青森県上北郡六ケ所村大字尾駁字上尾駁22 番338
E-mail kon@reco-ltd.co.jp
①小さく加工性がよい
②狭監な環境でも取り付け可能
③酸化性雰囲気に強い
④低コスト
軸受温度の異常上 が できれ である となお、要求性能としては、通常運転が30℃程度のため
異常検知するために な上限90℃とした。
照射試験
放射線性を確認するために照射試験を実施した。 照射試験は、国内最大規模の放射線施設を所有する大
阪府立大学地域連携研究機構放射線研究センターで行い線源はCo-60 を使用した。
仕様の照射線量は装置設置環境等を勘案してl000kGy
とした。
3 試作結果
試作センサ
表1に、当該センサの設計仕様を示す。図1にセンサ外形図、図2 にセンサの外観写真を示す。
センサのケーシングはステンレスとし、内部はジルコン酸鉛系の圧電セラミックをシェア型に配置した構造としている。また、 型熱電対はケーシング内壁に溶接し、直接センサ温度を計測する様にした。加速度信号と温度 信号は、 放射線性に れた外 2 0 の
熱電対線(0 32sqX4C)で取り出している。
表1 設計仕様書
項目
単位
規格
l
電荷感度
pC/ /s2
約2 0
2
共振周波数
kHz
30 以上 設計目標
3
周波数範囲
Hz
fc~l0000 設計目標
4
静電容量
pF
800士20%
5
絶縁抵抗
MQ
l0000 以上
6
最大横感度
%
5 以下
7
最大使用加速度
/s2
9800
8
使用温度範囲
℃
-40~+90
9
素子材質
-
圧電セラミック
l0
外形寸法
l9(Hex)X26(H)
ll
外装ケース材質
-
ステンレススチール
l2
ケーブル
-
2 0
図1 センサ外形図
図2 センサ外観写真
照射試験前の性能
図3 に、加速度性能曲線(試験前)を示す。 軸はResponse(dB)、横軸はFreqency(kHz)を表している。試作した加速度センサの固有振動数は30kHz 付近に存
在し、計測可能範囲は目標とするl0kHz を満足する性能を示している。電荷感度は圧電式センサのー般的な感度である2pC/ /s2とした。電気的な絶縁抵抗はl000MQ以上である。
を使用した 型温度計の温度検出特性は90℃ まで計測可能な とを確認している。
図3 加速度性能曲線(試験前)
照射試験後の性能
表2 に、照射試験前後特性比較を示す。図4 に、加速度性能曲線(試験後)を示す。
照射線量 l000kGy の照射試験後、加速度センサの固有振動数、電荷感度、静電容量等の変化を確認した結果、 実用化済みの先行事例と同様の 定値である変化率5%以内を満足し、照射試験前後において特に著しい変化は確認されなかったため、試験は合格となった。
また、温度検出特性も合格となった。
表2 照射試験前後特性比較
照射前
照射後
変化率
電荷感度
2 l66 pC/ /s2
2 098 pC/ /s2
-3 l%
静電容量
9l0pF
900pF
-l l%
図4 加速度性能曲線(試験後)
4. 結言
今回、加速度検出範囲/fc~l0kHz、温度検出上限/90℃、
放性/l000kGy を満足する複合センサを開発できた。今後、再処理施設等の高放射線環境下で運転する回転機器 の 兆 理に有効 用可能と る。
参考文献
原子力発電所の運転期間と機器・構造物の経年劣化に関する技術レポート(平成30 年11 月第1 回改訂版 11 電力会社共著)
天然ゴムの 放射線性(町 末男 日 原子力研究所)
New Bearing Doctor(NSK 株式会社 2010 年11 月発行)