電気系のアイソレーション支援システムの開発

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カテゴリ: 第16回
電気系のアイソレーション支援システムの開発 Development of Electrical-Isolation support system 東芝エネルギーシステムズ(株) 高倉啓 Kei TAKAKURA Member 東芝エネルギーシステムズ(株) 芝 広樹 Hiroki SHIBA 東芝エネルギーシステムズ(株) 西優弥 Yuya NISHI Member 東芝エネルギーシステムズ(株) 高司旭 Akira TAKAJI (株)東芝内藤晋 Susumu NAITO 東芝エネルギーシステムズ(株) 藤牧 拓郎 Takuro FUJIMAKI Abstract An electrical isolation planning system is now under development to improve the efficiency of operating and maintaining nuclear power plant. The system automates electrical isolation planning, and evaluates the influence of the isolation plan. It also equips an algorithm that automatically adds information such as circuit connection and device attribution to the original paper-drawing. A demonstration of automatic isolation planning was conducted that used actual plant drawings. The system successfully reproduced an actual isolation plan and evaluated the validity of the plan. Keywords: Isolation, Paper drawing, Deep learning 1 はじめに 原子力発電所の点検・改造工事では、電気系の隔離(ア イソレーション)作業を実施することで、安全に作業で きる環境を構築している。アイソレーション(アイソレ) の立案では、専門の知識と経験を有するエンジニアが、膨大な図書を基に時間を掛けて隔離範囲を決定しており検討、評価に時間を要していた。またプラント図面の多 くは紙であるため、立案、評価に必要な回路情報をデジ タル情報として活用することができず、効率的に回路情報を取り出すことも課題であった。そこで隔離計画の立 案や評価の効率化を目的に、電気系のアイソレーション作業を支援するシステムを開発している[1]。 2 電気系のアイソレーション支援システムの構成 開発中の電気系アイソレーション支援システムの構を図1に示す。支援システムは深層学習等の技術を活用した の3 つの機能で構 されている。 紙図面の構造化機能 紙図面からアイソレの解析に必要な回路情報(構造化情報)を抽出する。 連絡先: 高倉 啓 〒183-8511 東京都府中市東芝町1 東芝エネルギーシステムズ(株) E-mail: kei.takakura@toshiba.co.jp アイソレ自動立案機能 図面の情報(構造化情報)と作業条件を設定して、隔離計画を自動立案する。 アイソレ計画評価機能 立案した隔離計画の妥当性を評価して、図面上に評価結果を可視化する。 このアイソレーション支援システムを活用することで、作業の効率化やヒューマンエラーの低減による安全性向 上が期待される。 本稿では支援システムの3 つの機能である紙図面構造化機能、アイソレ自動立案機能、及び計画評価機能について詳細に述べる。 3 紙図面の構造化機能 支援システムでは図面中の回路(経路)解析を行うため、図面中の回路の ・ 性情報( 、構造化情報) が必要となるが、プラント図面の中には元のCAD データが存在しない、または存在しても構造化情報が付与され ていない図面が多く存在する。図2 には構造化情報の例を示す。 図1 電気系アイソレーション支援機能の構成 図2 アイソレーションの立案、評価で必要な構造化情報 このような場合、一般的には人手で図面をトレースし 構造化情報を付与する方法がとられるが、数百冊(1 冊あたり最大999 ページ)に及ぶ図面に対応するためにはコストや時間が掛かるため、改善が求められている。 そこで展開 図を対象として、アイソレの解析に必要な図面中の器具/配線、他図面との 関係と、器具の種別やリレー関係等の 性情報を付与する紙図面構造化機能を開発した。 紙図面構造化機能のフローを図3 に示す。構造化機能は 大きく分けて3 つのステップから る。 スキャナで読み取り画像化した紙図面は、単純なヒクセルの集合体のため回路シンボルや文字情報等は一切付与されていない。そこでステップ1 では、線分等の描写をベクトル(座標)で記述するベクタ化処理、および画 像、文字認識処理を行っている。画像、文字認識処理で は、図面中の器具名や盤名等の文字認識や、コイルや点、ヒューズといった90 種類 上の回路シンボルを認識する処理を行っている。なお回路シンボルの認識では深層学習による画像認識技術を活用することで、従来5% の認識率であった渡り線等のシンボルについても最大 90%の認識率を達 した。 ステップ2 ではステップ1 で作 したベクタ化結果、認識結果を用いて構造化情報の作 を行う。具体的にはベクタ化された線分や丸オブジェクトに対して、配線や盤枠等の 性や 関係を付与する処理や、ベクタ化された線分や丸といった図形に対して、回路シンボルとしての 性(例えば器具番号や種別など)を付与する。 上のアルゴリズムによって 性情報と 情報とを有する構造化図面を自動で作 することが可能となった。ただし対象となる紙図面の歪みや欠け、ノイズ等の状態によっては、誤った 性のシンボルが付与されたり、図中の配線が断線してしまったりする場合がある。 このためステップ3 では構造化した図面について人手にて 認、 を行う。図面の 認や を効率化する機能として、断線個所の表示やシンボルや盤枠の を支援するアルゴリズムを組み込んでいる。 図3 紙図面構造化機能のフロー 構造化前の紙図面 構造化した図面図4 紙図面構造化結果 3.1 紙図面の構造化結果 紙図面構造化機能を用いて、実際の図面を構造化した例を図4 に示す。変換対象の図面(図4(a))にはコイルや 複数種類のa 点、b 点などのシンボルがあり、構造化機能を用いてシンボルに 性を付与し、かつ配線で (繋がり情報を付与)することに 功した(図4(b)) 構造化機能を用いることで、人手で1 からCAD を作する時間(平均3.5 時間/枚)と比べて効率的( 認/ 含めて平均30~40 分/枚)に図面に 性情報や 情報を付与することができた。 4 アイソレ自動立案機能 アイソレ計画の自動立案、評価を行うためには、図面内の回路情報をもとに膨大な回路の経路を探索し、シー ケンスを評価する解析システムの構築が必要である。そこで隔離対象や作業条件を入力することで、アイソレ計画を自動で立案するアイソレ立案機能を構築した。 アイソレ計画の立案システムを図5 に示す。アイソレ支 援システムではまず図面(器具の 性情報と繋がり情報) 及び器具の初期状態を入力し、隔離作業対象と作業要件を設定する。 デフォルトの初期状態は、例えばa 点はOpen、b 点はClose である。なお器具の初期状態は実際の器具状態に応じて、任意に設定可能である。また作業要件とは、隔離作業する上での制約条件、例えば操作可能な器具や動作禁止の器具を定めたものである。 図5 アイソレ自動立案機能のフロー 図6 隔離作業対象設定の例 図7 隔離計画の出力の例 アイソレ立案機能では入力した図面情報を元に、図面上に存在する全ての回路上の経路を探索する。次に経路上の操作可能な器具を抽出する。すなわちOpen、Close 状態を切り替えることができる器具で、例えばスイッチやMCCB、ヒューズ、リフトできる 子などがある。 次に操作可能な器具の状態を切り替えた際のシーケン ス動作を評価し、回路の通電状態を評価する。そして最後に、作業要件を満たし、隔離作業対象をOFF の状態にできる器具をスクリーニングする。 図 に示すように作業対象の設定や作業要件の設定は GUI(Graphical User Interface)上で設定可能である。また立案された隔離計画案についても図7 示すようにGUI上で 認することができる。 開発したアルゴリズムで展開 図(ECWD)のサンプル図面1000 枚を評価したところ、HPC (CPU: Intel Xeon E5-2690, RAM: 192GB, GPU: Tesla K20Xm) で、図面ごとの全経路と、図面間の経路及び操作対象器具は10 秒程度で抽出された。 なおこれらのプロセスを、深層学習を用いて高速に抽出する取り組みも行っている[2]。 5 アイソレ計画評価機能 アイソレ計画の妥当性の評価では、通常は、エンジニアが紙図面上に通電箇所を色塗りすることで、対象箇所 が電気的に隔離できているかを 認しており、作業の効率化や 認漏れの防止などが求められていた。 そこで我々は構造化した図面上に通電状態を自動的に可視化して、アイソレ計画の妥当性を評価する機能を開 発した。 アイソレ計画の妥当性を評価する機能のフローを図8 に示す。 図8 アイソレ計画評価機能のフロー この評価機能は、立案した計画、器具の状態及び、図 面情報を入力して、各器具の通電状態を評価する。通電状態は図面上に可視化することができる。これにより対象の器具が隔離されているか、すなわち通電していないかを、作業員が評価可能となる。またアイソレ計画が作業条件を満たしているかも 認することができる。例えば動作が禁止されている器具が、アイソレ作業を行うことでON になってしまう場合には、画面上に警告を表示させることができる。 実図面を用いたアイソレ計画の立案、評価結果 実際のECWD を用いて隔離計画を自動立案した。ここでは図9 に示すように7 枚のECWD の中の対象A を隔離するための計画を立案した。7 枚の図面には配線や器具など2000 点の回路要素がある。 アイソレ立案機能は の2 つの隔離計画を立案した。1 つ目の案はMCCB をOpen にする計画である。2 つ目の案は 子1と2をリフトするものである。 次に立案した計画を、評価機能を用いて評価した。図 10 には、隔離案1について評価した結果を示す。 通電状態になる配線は画面上では赤色、非通電の場合 は緑色で表示される。 図10(a)は隔離処置前の状態で、主電源に されてい るMCCB がClose のため、隔離対象A が通電状態となっている。すなわち隔離対象A は隔離できていないことが分かる。図10(b)は隔離案1で示したようにMCCBをOpen にすることで、主電源から切り離され、対象A が非導通 となったことがわかる。すなわち対象A が電気的に隔離されており、立案した計画の妥当性が 認された。なお2 つ目の計画案の妥当性についても評価されている。 なお実際の工事では、対象A を隔離するために、MCCB をOpen にする処置を行っており、本機能を用いて実際のアイソレ計画を再現することに 功した。 図9 対象A を隔離する計画の立案結果(対象図面7 枚) 隔離作業前の状態(MCCB : C ose) 図10 隔離案1の評価結果 7 まとめ 原子力発電所の電気系のアイソレーション(隔離)作業を支援するシステムを開発した。本システムは隔離計 画を自動立案及びその妥当性を評価する機能、これらの 解析に必要な図面情報を紙図面から抽出する機能からなる。 紙図面から図面情報を抽出する機能では、展開 図を対象に、図面の構造化を効率的に行うことを可能とした。アイソレの自動立案、計画評価機能では、実工事で の隔離計画を模擬することに 功した。 盤等の設備構 を本機能で模擬・評価することで、工事等に関する様々な情報を可視化するなど、保全活動支援への展開が可能となった。 参考文献 高倉啓, 他, “電気系のアイソレーション支援システムの開発 (3)図面構造化、計画立案・評価機能のシステム化”, 日本原子力学会2017 年秋の大会予稿集,3O06. S. Naito et al., “APPLICATIONS OF DATA MINING TECHNOLOGY TO ENHANCE O&M: AUTOMATIC PLANNING OF ELECTRICAL ISOLATION WITH DEEP LEARNING,” 10th International Conference on Nuclear Plant Instrumentation, Control, and Human-Machine Interface Technologies (NPIC & HMIT 2017) (2017)
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