軽水炉コンクリート構造物の照射劣化予測手法の開発に係る研究計画

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カテゴリ: 第15回
軽水炉コンクリート構造物の照射劣化予測手法の開発に係 る研究計画 The Research Plan on Development of Evaluation Method of LWR Concrete Irradiation Effect 三菱総合研究所 滝沢 真之 Masayuki TAKIZAWA Member 三菱総合研究所 鈴木 清照 Kiyoteru Suzuki Member 三菱総合研究所 江藤 淳二 Junji ETO Member 三菱総合研究所 河合 理城 Masaki KAWAI Member 三菱総合研究所 藤山 翔乃 Shono FUJIYAMA Member 鹿島建設 紺谷 修 Osamu Kontani Member 鹿島建設 澤田 祥平 Shohei SAWADA Member 鹿島建設 石川 俊介 Shunsuke ISHIKAWA Member 名古屋大学 丸山 一平 Ippei MARUYAMA Abstract (Times New Roman 10pt) should be about 150 words. A new research program of irradiation effects on LWR concrete member has been started since 2017. The previous research results indicate the reference level of neutron irradiation degradation on concrete should be set at 1 x 1019 n/cm2 which is one order of magnitude lower than the conventional reference level used in Japan. Several issues remain after the previous research and the objectives for clarifying the issues are set in the new project which is scheduled for five and half years. And international cooperation research between the US and Japan is also scheduled, in which synergy effects can be expected thanks to each country’s advantage. The research approaches are different between the US and Japan but the final goal of the research is the same, which means some bench mark approach can be performed. Keywords: Irradiation, Concrete, Neutron, LWR, FEM, RBSM 1.はじめに 運転開始後、最大60 ?間運転する軽水炉の高経?化対策のうち、取替えが困難な軽水炉コンクリート構造物については、長期健全性の定量的な評価手法を整備しておく必要がある。特に他産業では類似事例が無い放射線照射影響に関しては、その劣化メカニズムを明らかにし、安全な継続運転が可能か否かを判断するための技術的知見の獲得が求められる。 本研究では、我が国の複数の軽水炉が参照し活用できる基礎データや標準的な評価手法を整備し、安全性向上に資する共通基盤の整備に資する成果創出を目指す。 2.既往研究で得られた知見の概要 中性子照射影響 筆者らは原子力規制庁からの委託事業により平成28 年度末に軽水炉コンクリートの放射線照射影響に係る基礎データに基づく知見を取りまとめ、公開した[1]。 そこでは、保守的な条件設定の下、中性子線の累積照射量が日本建築学会の維持管理指針にて提示されている従来の目安値より一桁小さい1×1019 n/cm2 超でコンクリートの強度低下が生じるとする取りまとめを行った。この結果は、米国の規制当局であるNRC が定めている目安値と一致しており、国際的な見解とも整合していることから、今後国内でも標準的な値として1×1019 n/cm2 が目安値に用いられることが想定される。 課題意識 当該研究では、60 年運転で到達し得る中性子線の累積照射量をカバーするため、加速照射試験を実施してデータ取得を行っている。コンクリート照射では、照射速度効果すなわち加速照射が実際の実機環境における照射影響とは異なる結果を与える可能性が指摘されている。すなわち材料の照射に伴う損傷が治癒する効果を加速照射環境では過小評価する可能性があり、その程度を明らかにする必要がある。 また、コンクリート構造物の照射劣化は、コンクリー トを構成する骨材の照射に伴う膨張とセメントペースト の乾燥に伴う収縮の体積変化のギャップがコンクリート にひび割れを引き起こすことで生じることが明らかとな っているが、上述の当該研究では照射による膨張が生じ やすい石英を多く含む骨材を用いて照射試験を実施して いる。したがって、実機の健全性予測の観点から、実際 の実機で採用されている骨材ではどの程度の膨張が生じ、コンクリート構造物としての強度がどの程度低下するの かを明らかにする必要がある。 さらに、実機において照射環境が厳しいPWR の一次遮蔽壁やBWR のペデスタルは大断面構造体であり、照射影響は断面の表層ほど厳しく、内側に入るほど影響が緩和する状態となることから、照射に伴う劣化影響は材料レベルのみならず部材レベルでの評価が必要である。 3.研究計画 治癒効果の確認試験 照射速度効果の程度を確認するためには、照射速度をパラメータに振った試験を実施することが望ましいが、照射炉の制約から当該試験の実施は難しいため、本研究計画では温度環境をパラメータに振った照射試験を実施し熱的治癒効果の有無を確認する。 Fig.1 に熱的治癒効果のイメージ図を示す。 温度低 温度高 Fig.1 熱的治癒効果のイメージ 試験炉で加速照射されたコンクリートは、照射により遷移相に移行し、その一部は治癒効果により元の結晶相 の状態に戻るが、遷移相に継続的に照射が加えられることで元の状態に戻らない非結晶相が形成される。実機では試験炉より照射速度が小さいため、遷移相から元の結晶相の状態に戻る割合が大きいとする仮説に対して、ここでは治癒効果に温度依存性があることに着目して、熱的な治癒効果の大きさから、理論的に換算して治癒効果の照射速度依存性を求めるアプローチを取る。現状の試験計画では、約20℃、約60℃、約120℃の3 水準での照射試験を計画している。 骨材種別依存性の確認試験 上述の通り、コンクリートを構成する骨材の種別に応じて中性子照射に伴う骨材の膨張、ひいてはコンクリートの強度低下の度合いが異なるため、実機に採用されている骨材種別の調査を行い、実機コンクリートの照射影響評価が可能な照射試験を行う。 照射影響の骨材依存性を確認する際、全国の軽水炉の全てをカバーできる様、骨材を構成する鉱物の割合を分析し、鉱物レベルでパラメータを振る。 Fig.2 に骨材種別依存のイメージ図を示す。 Fig.2 骨材種別依存性のイメージ 部材レベルでの評価手法の構築 既往研究を通じて開発してきた大断面コンクリートの熱や乾燥に伴う長期物性変化の分布を評価する解析コー ドや骨材膨張等によるコンクリートの物性変化を予測する剛体ばねモデル(RBSM)を組み合わせて、骨材の膨張等によるコンクリートの膨張率と物性変化に係る構成則を導出し、FEM 解析で評価できる体系構築を目指す。その際、コンクリート中の水分挙動は、乾燥に伴う物性変化の主要因となり、放射線照射環境下では乾燥影響を助長するため、適切な評価が求められる。また、コンクリートの割れに伴う鉄筋付着挙動の評価も重要となる。 Fig.3 に構築する解析評価フローのイメージ図を示す。 図られる。 Fig.4 およびFig.5 に実施工程および体制図を示す。 Fig.4 実施工程 Fig.3 部材レベル評価フローのイメージ 5.終わりに Fig.5 実施体制 4.実施体制およびスケジュール 経済産業省資源エネルギー庁の委託事業として、三菱総合研究所が主幹事となり、名古屋大学、鹿島建設等の複数の国内機関が参画するコンソーシアム体制の下で実施する。計画では平成29 年度から開始し6 か年計画としている(平成29 年10 月から開始のため実質5 年半)。 照射試験はコンクリート照射に適したガンマ発熱が小 さい重水炉を有する海外照射施設を活用する。また、民生用原子力研究開発ワーキンググループ(CNWG)の枠組 みの下、米国オークリッジ国立研究所(ORNL)との共同研究も合わせて実施していく。日米共同で実施していくことで、役割分担を伴う両国のそれぞれの強みを生かした研究推進が可能となり、また人材交流に伴う国際貢献や若手人材の育成機会にもつながる。得られた成果に基づき、日本においては最長60 年運転の健全性評価への活用、米国においては60 年超運転のライセンスリニューアルや更なる長期運転に向けての健全性評価への知見の拡充が 先行して実施した規制庁事業での研究成果は規制庁の ホームページ上で最終報告書が公開されている[1]。また、今後進めていくエネ庁事業は、電気事業者や学術界の有 識者と密に情報交換や意見交換を行いながら研究を進め、得られた知見は学術論文に投稿し、成果は積極的に公開 していく予定としている[2]。 本研究の知見が今後の国内外の軽水炉の長期健全性評価に資する様、取り組んで参りたい。 参考文献 株式会社三菱総合研究所、“平成28 年度原子力施設等防災対策等委託費(高経年化技術評価高度化(放射線照射によるコンクリート構造物の長期健全性評価に関する研究))事業”成果報告書、2017. 3 M.Takizawa, “A new project plan on concrete irradiation effects”, International Committee on Irradiated Concrete Annual Meeting held in Prague, the Czech Republic, 2017
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