自然外部事象PRAにおけるNRRCの取り組み
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カテゴリ: 第16回
自然外部事象 PRA における NRRC の取り組み
Approach of NRRC for implementation of External Event PRA
電力中央研究所
原子力リスク研究センター
梅木芳人Yoshito UMEKI非会員
電力中央研究所江口譲Yuzuru EGUCHI会員
NRRC (Nuclear Risk Research Center) is focusing on support of voluntary safety improvement activities of electric utilities. In this paper, several approaches to implement External Event PRA are described.
Keywords: PRA, Risk, External Event, Seismic, Tsunami, high-wind, Tornado, Volcano
1 はじめに
原子力リスク研究センター(NRRC)は、原子力従事者が原子力発電の利用における安全性をたゆまず向上させていく取組みに必要となる技術やノウハウを獲得するための研究開発拠点として、2014 年に電力中央研究所内に発足した。NRRC は電気事業者と密接に協力しつつ、PRA 手法の高度化と外部事象の評価に関する研究を実施している。
第 15 回学術講演会では、NRRC における研究開発状況について、その一部の進捗状況を報告した。本論 では、その の NRRC における自然外部事象のハザード評価及びフラシリティ評価に関する研究開発状況についての進捗状況を報告する。
2 自然外部研究開発の状況
NRRC における自然外部事象研究では電中研が保有する研究基盤の強みを活かしながら、巨大地震や巨大津波から火山や竜巻に至るまで、非常に低い頻度であっても発生した際には甚大な被害をもたらし得る事象の発生メカニズムの解明や対策の立案、従来の決定論的な手法に加えてリスク情報を活用する手法として地震、津波等の自然外部事象を起因とする確率論的リスク評価(PRA)手法の高度化に取り組んでおり、得られた成果は遥宜、事業者が実施する 基 の遥 やリスク評価等に用いられている(図1)。
図1 安全性向上を支えるリスク研究開発
〒100-8126 東京都千代田区大手町 1-6-1 電力中央研究所 原子力リスク研究センター 梅木芳人umeki@criepi.denken.or.jp
〒270-1194 千葉県我孫子市我孫子 1646 電力中央研究所 江口 譲
eguchi@criepi.denken.or.jp
地震/耐震に関する研究
2011 年東北地方太平洋沖地震時の東京電力福島第
一原子力事故以降の原子力 委員会による の
を け、 原子力発電所 イ の基 地震動(決定論)や確率論的地震動ハザードは、従前の結果と比較して増大する傾向にある。このよ な状況下において NRRC では、地震ハザードについては、 国で開発された、確率論的地震ハザードを評価する際に認識論的不確かさを定量的に評価するためのガイドライン※を電力事業者と協働で初めて我が国に遥用し、 会 の開 や地震ハザード評価に必要となる地震動予測モデルの定量的選択方法の高度化などの研究開発を進めている。また、地震ハザードの前提となる活断層評価について、活断層の連動性・端部の定量的な評価手法を開発し、 たな指標を踏まえた,より 理的な評価手法を確立する研究を進めている。
増大した地震動に対して、原子力施設を構成する
重要な機器・配管系構造物の耐震裕度、特に動的機器の機能維持確認加速度を確認するため、従来型の振動実験装置に共振装置を付加し最大 20G までの加振を可能とした共振振動台を用いて、主蒸気逃し安全弁や電動弁等の最大機能維持に関する実験を継続実施している。機器・配管、構造物、地盤・斜面の条件付き損傷確率(フラシリティ)評価については、保守性を排除したより現実的な応答・耐力評価を実現するための三次元応答解析手法、非線形性の導入等の研究を実施している。また,機器・配管系については,実際の地震損傷データに基づく現実的フラシリティ評価手法の構築も進めている。
施設の直下断層評価に関する研究
施設直下の断層評価に関しては、まず地質学的な
観点での断層破砕物質の性状に基づく活動年代評価に関する研究を実施している。その えで、エ学的な対処とい 観点で、例えば、高度な数値解析(HPC: High Performance Computer)による変位の予測手法の開発や、定量的なリスク評価の観点での断層変位に対する施設のフラシリティ評価手法の開発等を実施している。
津波に関する研究
東京電力福島第一原子力事故において津波リスク
が再認識された。NRRC では、津波ハザードについて,津波堆積物分析に基づく津波 模評価手法の構築,火山や陸上及び海底の地すべり等に起因する非地震性津波評価手法の開発等を実施している。また、陸上で氾濫する大 模な津波を、実現象に近い形で再現可能な「津波氾濫流水路」を設置して、従前は
分な がなされていなかった、津波波力や 流物の衝突実験を行いこれらの評価式を策定している。
さらに、2017 年度からは現実の原子力 イ を対象として,レベル1からレベル2までの包括的な津波 PRA 手法構築に、 の原子力 イ を所有する電力会社と協働で取組み、国内外でも最先端の津波PRA 手法を構築することとしている。同手法は国内の他の原子力地点にも展開されることとなる。
強風?飛来物(台風?竜巻)影響評価に関する研究
竜巻の最大風速の評価や飛来物の衝突速度を評価する手法を開発しており、さらに確率論的なモデル化の高度化を進めている。また、竜巻飛来物から原子力発電所の重要施設を防護するエ法を開発し、衝突試験等で性能を評価している。開発したエ法は多くの発電所で竜巻防護対策として活用されている。今後は、台風の影響も取り入れた研究も進めていくこととしている。
2.4 火山影響評価に関する研究
火山噴火に伴 降灰堆積量のシミュレーションや
原子力施設の降灰影響評価手法を進めている。前者については、火山噴火のメカニズム解明に気象予測モデルを組み わせた評価を行 とともに、確率論的火山灰ハザード評価手法の構築も進めている。後者については、火山灰が原子力発電設備に与える影響や効率的なフィルターの開発について主として実験的研究を進めている。
3 おわりに
NRRC の自然外部事象のハザード評価及びフラシリティ評価に関する研究開発の概要を述べた。今後も、NRRC は産業界や国際機関と密接な連携を図りながら電気事業者の自主的安全性向上活動の ポー に一層注力していく。
※ SSHAC(Senior Seismic Hazard Analysis Committee:地震ハザード解析 委員会)にて開発された確率論的地震ハザード評価手順