配管減肉のモニタリングと予測に基づく配管システムのリスク管理 (3)固液混相流条件下における流れ加速型腐食の減肉挙動評価
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カテゴリ: 第16回
配管減肉のモニタリングと予測に基づく配管システムのリスク管理(3)固液混相流条件下における流れ加速型腐食の減肉挙動評価
Piping System, Risk Management based on Wall Thinning Monitoring and Prediction
(3) Evaluation of Wall Thinning Profile by Flow Accelerated Corrosion under Solid-Liquid Multiphase Flow
電力中央研究所渡辺瞬
Shun WATANABE
会員
電力中央研究所森田良
Ryo MORITA
非会員
In the nuclear power plant under the severe accident, it is possible that the debris dust and the metallic powder are immixed in the coolant, and then the flow pattern can become the solid-liquid multiphase flow in the reactor coolant circulation system. In this study, the numerical analysis is conducted in order to evaluate the FAC profile in the piping under the solid-liquid multiphase flow. By using the FAC model, the mass transfer coefficient in the elbow was evaluated. The mass transfer coefficient becomes higher at the inlet of the elbow especially ventral part. And such profiles are obtained from both the single phase flow and the solid-liquid multiphase flow.
Keywords: Pipe wall thinning, Solid-liquid multiphase flow, FAC, Mass transfer coefficient, CFD
1 緒言
過酷事故を起こした原子力発電所では、廃止措置時の デブリ取り出しの作業に伴って、デブリ粉塵あるいは金属粉が冷却水に含まれる可能性があり、固液混相流の原子炉冷却循環システムになることが考えられる。しかし
重力方向 水+固体粒子
配管内径 D=50mm
エルボ上流 20D
エルボ下流 20D
エルボ曲率半径 1.5D
8=0o
背
1
0
-1
腹
8=90o
ながら、デブリ粉塵を含む固液混相流条件下での減肉現象は明らかになっていないため、固液混相流体系による配管減肉モデルを構築する必要がある。本研究では、固液混相流体系に適用可能な流動解析モデルを使用し、解析から得られた結果を、当所で開発した配管減肉モデル に投入することで、固体粒子の特性パラメータに応じた減肉評価を う。
2 配管減肉評価モデル
本研究では、固液混相流を計算するためのモデルとし
Fig.1 Pipe geometry and coordinate system
ることで、偏流による物質移動効果の増大を考慮に入れたものである[2]。ここで、kMe、kM0 はそれぞれ、偏流条件、直管条件における物質移動係数を表す。また、U?e、U?0 はそれぞれ偏流条件、直管条件における摩擦速度、? は
ル 数の効果を表す定数、n は壁面 の流速 配に関わる定数である。右辺を決定する際に、当該セルの局所流速、乱流エネルギー、壁面距離を使用する。
? n?1
てParcel 粒子モデル[1]を選択した。本モデルは、ある粒子
? U?e ? n
(1)
群を 1 つの塊として取扱い、液相と固相の相互作用は評価可能であるものの粒子間の相互作用を考慮しないため、
?
kMe ? kM 0 ? U
?
? 0 ?
粒子 1 つ1 つを個別に扱うモデルに比べて計算負荷が軽いという特徴を持つ。また、壁面第一セルにおける物質移動係数は、当所のモデルである式(1)により算出する。このモデルは、直管条件の摩擦速度に変動流速を加味す
連絡先: 渡辺瞬、〒240-0196 神奈川県横須賀市長坂2-6-1、一般財団法人 電力中央研究所
E-mail: w-shun@criepi.denken.or.jp
3 固液混相流条件下における評価体系
固液混相流の評価体系は、図 1 に示すエルボ体系であり、流入方向と同一の方向に重力が作用している。エルボの曲率半径は1.5D であり、エルボの上流と下流に20D の助走区間を設けた。また、表 1 のように、本報では、粒子パラメータとして粒子径を設定した(粒径分布は末考慮)。なお、 用いた粒子の は である。
Table 1 Evaluation conditions
条件CFD解析における設定値
液単相流固液混相流
配管体系流入圧力流速
温度 水の密度配管内径粒子比重粒子径 粒子流量
粒子濃度(体積分率)
直管+エルボ直管+エルボ大気圧大気圧
5.0 [m/s]5.0 [m/s]
20 [℃]20 [℃]
997.6 [kg/m3]997.6 [kg/m3]
50 [mm]50 [mm]
-5.0 [g/cm3]
-10, 30, 100 [?m]
-1011 [個/s]
-0.5"-'15%
粒子形状 球形
Single phase flow
4 減肉挙動評価結果および考察
図 2 に、エルボの各断面における流速分布を示す。断
面の位置や配管径方向位置については、図 1 の座標系の通りであり、局所流速u を入口平均流速um で除した値を示した。固液混相流体系においては、液単相流体系と同様に、エルボ部入口で高流速領域が 成し、エルボ部出口腹側では剥離による低流速領域が生じることが分かった。その一方で、混入する粒子径 dp が大きいほど配管の主流と壁面側の流速差が拡大する傾向が認められた。
Solid-liquid multiphase flow Fig.3 Profiles of mass trans
1
背側
0.5
配管径方向位置
0
-0.5
-1
腹側
8=0o
00.511.5
1
0.5
配管径方向位置
背側
0
-0.5
-1
腹側
00.5
11.5
流動解析結果に、当所の減肉評価モデルを適用してエルボ部 の物質移動係数を評価した。その結果、図 3 に示すように、両体系において、エルボ部入口の腹側およ エルボ部中腹からエルボ部下流の側面側に物質移動係数の高い領域が見られた。一方、固液混相流体系では、液単相流条件に比べて、物質移動係数の高い領域が拡大することが確認され、特にエルボ部の側面においてその傾向が顕著に表れることが分かった。
流速比 u/um [-]流速比 u/um [-]
1
背側
0.5
配管径方向位置
at ?=0o(b) at ?=30o
1
背側
0.5
配管径方向位置
謝辞
本研究の一部は、「文部科学省英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(日仏)」により実施された「配管減肉のモニタリングと予測に基づく配管システムのリスク管理」の成果である。
0
-0.5
-1
腹側
00.5
11.5
0
-0.5
-1
腹側
00.51
1.5
参考文献
渡邊 他、「乱流混合層中の粒子挙動に及ぼす代表粒子モデルの影響」、J. Soc. Powder Technol., Japan, 51, 846-855 (2014)
流速比 u/um [-]
流速比 u/um [-]
田 他、「流れ加速 に する影響 子の定
(c) at ?=0o(d) at ?=30o
Fig.2 Velocity profiles at cross section of the pipe
な評価(その4)」、電中研研究報告 L09006、(2010)