電磁誘導法による肉厚測定技術の開発 -加熱ジャケット付き 容器への適用-
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カテゴリ: 第17回
電磁誘導法による肉厚測定装置の開発について
-加熱ジャケット付き容器への適用-
Development of Measuring Techniques of Thick Wall Samples by Electro-Magnetic Induction
- An Application for Vessels with Heating Jacket-
日本原燃株式会社
東野勝之
KatsuyukiHIGASHINO
Member
日本原燃株式会社
下川原茂
ShigeruSHIMOKAWARA
日本原燃株式会社
小泉英明
HideakiKOIZUMI
日本原燃株式会社
石尾貴宏
TakahiroISHIO
日立GEニュークリア・
エナジー株式会社
李典燦
ChunchanLEE
日立GEニュークリア・エナジー株式会社
大澤栄之
HideyukiOSAWA
日立GEニュークリア・
エナジー株式会社
高野健太
KentaTAKANO
大日機械工業株式会社
竹田智
SatoshiTAKEDA
Abstract: It is necessary to conduct development to measure the thickness of the inner wall for each vessel from the outer wall, because there are double-walled vessel with a heating jacket in reprocessing plant Therefore, we have developed sensors based on electromagnetic induction test (EMIT).
In this paper, we report on the development results of the device for transporting the sensors.
Keywords: ECT, Eddy Current Testing, Electro-Magnetic Induction Testing, EMIT, Vessel, Tank,
Dual Wall Vessel, Remote Robot, Mecanum Wheel
1.緒言
再処理施設のセル内には加熱ジャケットが付属してい る二重缶構造容器が設置されており、厳しい腐食環境下 にあることから、腐食評価を行う為、遠隔による二重缶構造の容器内側の肉厚測定が可能な保全技術を必要とし ている。そこで、既存技術である渦流探傷法を応用した 電磁誘導法による肉厚測定センサを開発し、二重缶構造 容器の内缶の肉厚測定技術の研究開発を行ってきた。
2019 年度までの成果として、肉厚測定センサの開発については、二重缶構造容器の内缶厚さを測定できることを確認出来ていたが、目標とした測定精度±0.3mm の達成には至っていなかった。そこで従来の16bit 測定システムから、測定の高精度化を図る目的で24bit 測定システ
ムの開発に着手し、このほど目標とする精度を達成する 成果が得られた。
また、肉厚測定センサを二重缶構造容器下部に移動させて容器にセンサを押し付けるアクセス装置、アクセス装置を再処理施設セル内に搬入出させる導入装置、および搬入出させる際に必要な遮蔽装置の開発は、2019 年度までに概念設計が完了している。2020 年度では、アクセス装置の試験機製作、その試験機で実施した要素試験、およびセル内で放射線に曝される各要素の耐放射線性試験を実施した。
今回、肉厚測定センサ、アクセス装置の開発における
2020 年度成果・知見について発表する。
連絡先:東野 勝之 〒039-3212 青森県上北郡
六ヶ所村大字尾駮字沖付4-104 日本原燃株式会社
E-mail: katsuyuki.higashino@jnfl.co.jp
2.測定装置の概要および構成
電磁誘導法肉厚測定原理
電磁誘導法による測定原理は、既存技術として既に確 立している渦流探傷法を応用した技術である。渦流探傷 法は導電性のある測定物の近くに交流を通じたコイルを 接近させ、電磁誘導現象によって測定物に発生する渦電 流の変化を検出して探傷試験を行う方法である。電磁誘 導法による肉厚測定原理は、渦流探傷法と同様に測定物 に発生する渦電流の変化を測定物肉厚の変化量に変換し、 測定する手法である。渦流探傷法の測定概念図をFig.1 に、電磁誘導法による二重缶構造容器の測定概念図をFig.2
に示す。
Fig.1 渦流探傷法測定概念図
Fig.2 電磁誘導法による二重缶容器測定概念図
装置全体構成
二重缶構造容器の肉厚測定装置は前述で説明したセン サの他、導入装置、遮蔽装置及びアクセス装置で構成す る。装置全体構成図をFig.3 に示す。
Fig.3 二重缶構造容器肉厚測定装置全体構成図
3.開発結果
センサ開発
当初、センサは16bit 測定システムを開発し、二重缶構造容器の肉厚測定法の確立を目標に開発を行ってきた。その成果として、電磁誘導法を応用した二重缶の内缶厚測定を行うことの有効性が確認できた。しかしながら、精度においては、目標とした±0.3mm を達成出来なかった。これは16bit では分解能が不足していたことによる。そこで2020 年度は、24bit 測定システムの開発、最適化を行い、測定の高精度化を実施した。
内缶厚測定に影響を与える誤差要因にはTable.1 に示すものがあるが、24bit 測定システムを用いることで分解能を上げて誤差そのものを小さくすることが可能となった。また、センサ台座に金属が含まれると測定誤差へ与える影響が大きいことから台座材質は非導電性材料が望ましく、センサの押し当てを安定させるための押し当てガイドとともに、その効果確認実験を行った(Table.2 , Fig.4)。その結果、非導電性台座条件で目標測定誤差
±0.3mm が達成された。16bit 測定システムによる内缶厚測定誤差の一例をFig.5-1 に、24bit 測定システムによる一例をFig.5-2 に示す。
Table.1 内缶厚測定誤差要因
Table.2 センサ台座材質の測定誤差に及ぼす影響
Fig.4 押し当てガイド構成図
Fig.5-1 16bit 測定システムによる内缶厚測定誤差
Fig.5-2 24bit 測定システムによる内缶厚測定誤差
アクセス装置試験機の製作・要素試験
アクセス装置はセンサを積載し、セル内に設置されて いる二重缶構造容器下部にアクセスし、容器下部にセン サを押し付けて肉厚測定を行うための装置である。
アクセス装置の設計要求は、測定の都度、アクセス装置を容器外缶下部の決まった場所に移動させ、センサを同じ位置に均一に押し付けることが求められる。2020 年度に実施した試験機製作、試験機による要素試験での検証結果をTable.3 に示す。また、試験機動作試験状況をFig.6 からFig.8 に示す。アクセス装置の移動(走行ホイール,位置決め方式)、センサ測定位置精度ともに、試験 機での検証試験は良好な結果が得られた。
Table.3 アクセス装置・位置決め方式検証試験結果
Fig.6 アクセス装置-位置決め検証試験
Fig.7 アクセス装置-昇降装置検証試験
Fig.8 センサ押付機構検証試験
導入装置・アクセス装置各要素の
耐放射線性試験
導入装置およびアクセス装置の設計要求の重要事項の一つに、最低1回の肉厚測定においてセル内で受ける放射線に対して、各装置を構成する各要素がその機能を損 なわれない耐性を持つことが求められる。
そこで、装置各要素に放射線照射を行った後にその外観、動作、その他(繰返し精度、漏洩、電気特性)の確認をした結果をTable.4 に示す。その結果、2 軸傾斜センサを除く他の構成部品には、動作不良、エア漏れ、異常電流、絶縁性の喪失および精度の低下はなく問題はなかった。
Table.4 導入装置・アクセス装置各要素の耐放射線性試験結果
4.今後の課題
肉厚測定センサについては、ジンバル構成部品の一部 (台座、機台)を樹脂に変更した。しかし、その他は強度 確保のため、非磁性体金属(アルミ合金,リン青銅)であり、過電流、温度補償への影響が懸念される。そのため、 本年度の組み合わせモックアップ試験にて確認していく必要がある。また、センサ押し当てガイドは、クリアランスの問題から装置側設計に反映できない。これについても検討、対策を施す必要がある。
耐放射線性試験でNG となった2軸傾斜センサについては、鉛遮蔽を追加することを対策として考えている。しかし、鉛遮蔽を行っても動作不良になった場合を想定する必要があるなど、更に検討していく必要がある。
5.結言
これまでの開発により、肉厚測定センサ、アクセス装置ともに試験機を製作して各要素試験を実施し、また、そこで得られた知見を設計にフィードバックして改良を施して装置の凡その完成に至った。現在、導入装置、遮へい装置を製作中である。2021 年度は、モックアップ設備を使用して、総合的な装置組み合わせ試験を実施し、再度問題点を洗い出し、更なる改善を行っていく予定である。また、2022 年度には、実機にて測定試験の実施を予定している。
本開発は、人が立ち入ることが出来ないセル内容器の肉厚測定を遠隔操作で測定する技術開発であり、難しい技術であるが、再処理工場における実機測定計画(2022 年度下期)までに測定技術の確立・装置完成を必達すべく開発を進めていく。
参考文献
K.NAKAMURA,A new approach to the Electromagnetic Induction Nondestructive Inspection
-Preceding of Symposium in the Japan Society of Mechanical Engineers.
Electro-Magnetic Induction Testing for Inspection of Wall Thickness and Inner-surface Defects-“I Eddy’’System Vol.5,No.3,NT58,EJ