電磁誘導法による肉厚測定装置の開発について -加熱ジャケット付き容器への適用-
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カテゴリ: 第16回
電磁誘導法による肉厚測定装置の開発についてー加熱ジャケット付き容器への適用ー
Development of Measuring Techniques of Thick Wall Samples by Electro-Magnetic Induction
-An Application for Vessels with Heating Jacket-
日本原燃株式会社
下川原茂
Shigeru
SHIMOKAWARA
日本原燃株式会社
日本原燃株式会社
小泉英明長澤和幸
Hideaki
Kazuyuki
KOIZUMI
NAGASAWA
Member
日立GEニュークリア・エナジー株式会社 日立GEニュークリア・エナジー株式会社 日立GEニュークリア・エナジー株式会社
大日機械工業株式会社
李典燦ChunchanLEE
鈴木智彦TomohikoSUZUKI
清水
悟史
SatoshiSHIMIZU
上田
浩久
HirohisaUEDA
Abstract: It is necessary to conduct development to measure the thickness of the inner wall for each vessel from the outer wall, because there are double-walled vessel with a heating jacket in reprocessing plant Therefore, we have developed sensors based on electromagnetic induction test (EMIT).
In this paper, we report on the development results of the device for transporting the sensors
Keywords: ECT, Eddy Current Testing, Electro-Magnetic Induction Testing, EMIT, Vessel, Tank, Dual Wall Vessel, Remote Robot, Mecanum Wheel
1 緒言
再処理施設のセル内には加熱ジャケットが付属している二重缶構造容器が設置されており、厳しい腐食環境下にあることから、腐食評価を行う為、遠隔による二重缶 構造の容器内側の肉厚測定が可能な保全技術を必要としている。そこで、既存技術である渦流探傷法を応用した電磁誘導法による肉厚測定センサを開発し、二重缶構造容器の内缶の肉厚測定技術の研究開発を行ってきた。
開発にあたり、先ずは電磁誘導法による肉厚測定センサの開発を行い、外缶厚さ30mm、内缶厚さ35mm の
二重缶構造容器の内缶厚さを測定できることを確認している。
肉厚測定センサの開発について、一定の成果が出たこ とから、現在は肉厚測定センサを再処理施設セル内に搬出入させる導入装置、セル内に搬出入する際に必要な遮蔽装置、セル内に搬入された肉厚測定センサを二重缶構造容器下部にアクセスさせ、容器にセンサを押し付けるためのアクセス装置の開発に着手しており、概念設計、要素試験の一部の成果が纏まったことから、その成果を発表する。
連絡先:下川原 茂 〒039-3212 青森県上北郡六ヶ所村大字尾駁字沖付4-104 日本原燃株式会社
E-mail: shigeru.shimokawara@jnfl.co.jp
2 測定装置の概要および構成
電磁誘導法肉厚測定原理
電磁誘導法による測定原理は、既存技術として既に確 立している渦流探傷法を応用した技術である。渦流探傷 法は導電性のある測定物の近くに交流を通じたコイルを 接近させ、電磁誘導現象によって測定物に発生する渦電流の変化を検出して探傷試験を行う方法である。電磁誘 導法による肉厚測定原理は、渦流探傷法と同様に測定物に発生する渦電流の変化を測定物肉厚の変化量に変換し、測定する手法である。渦流探傷法の測定概念 をFig.1 に、電磁誘導法による二重缶構造容器の測定概念 をFig.2
に示す。
装置全体構成
二重缶構造容器の肉厚測定装置は前述で説明したセンサの他、導入装置、遮蔽装置及びアクセス装置で構成する。装置全体構成 をFig.3 に示す。
3 開発結果
導入装置設計検討結果
導入装置はセンサを積載したアクセス装置をセル外からセル内に搬入する装置である。
導入装置の設計として2018 年度開発時はTable.1 に示す項目を実施した。遠隔による操作が必要な装置において、非常時にセル内から装置を回収する機構の検討につ いては重要な課題であり、本機構については概念設計を完了させたが、今後、実際に回収が可能なことを要素試験を実施して検 する必要がある。装置外 をFig.4 に示す。
導入装置検討内容
検討結果
アーム挿入.引き抜き構造の検討
アームを伸ばした際の装置の浮き上がりを防止するためのストッパーを設置する。
ケーブル送り出し. 巻き取り構造の検討
プーリによるケーブル送り出し、巻き取り構造とする。
アクセス装置格納部の検討
導入装置アーム部にカメラを搭載し、アクセス装置がセル内に搬入されたことを確認できる構造とする。
アクセス装置をセル内に搬入するためのワイヤを4 本吊りとし、重心のズレ等による傾きを軽減させる構造とする。
非常回収方法の検討
非常時は手動によるアーム回収、ケーブル巻き取りが可能な機構とする。
Table.1 導入装置検討 果
Fig.3 二重缶構造容器肉厚測定装置全体構成Fig.4 導入装置外
アクセス装置の位置決め方式検討結果
アクセス装置はセンサを積載し、セル内に設置されている二重缶構造容器下部にアクセスし、容器下部にセンサを押し付けて肉厚測定を行うための装置である。
アクセス装置の設計要求の一つとして、測定の都度セ ンサを決まった場所に押し付けることが求められる。
2018 年度開発時はTable.2 に示す項目を実施した。位置決め方式の概念 をFig.5 からFig.7 に示す。
アクセス装置位置決め方法の検討内容
検討結果
装置位置確認方法の検討
床勾配を予め制御盤にインプットし、走行時は床勾配を計算した位置情報をセル外に設置した制御盤に表示する。
センサ位置決め方法の検討
.導入装置に三次元測定器を搭載、アクセス装置に三次元測定マーカを搭載し、アクセス装置の位置およびセンサの位置、高さを制御盤に表示する。
.位置決めカメラを搭載し、カメラモニタで二重缶構造容器ドレン配管を基準点としてセンサ押付け位置を決める装置とする。
Table.2 アクセス装置位置決め方式検討 果
Fig.5 を したアクセス装置位置決め方式概念
Fig.6 三次元測定によるアクセス装置位置決め方式概念
Fig.7 カメラモニタによるアクセス装置位置決め方式概念
アクセス装置によるセンサ押し付け方法検討結果
アクセス装置の設計要求として、センサを二重缶構造容器に均等に押し付けることが求められる。
2018 年度開発時はTable.3 に示す項目を実施したが、今後要素試験を実施し、均一な押し付けが可能であること を確認していく必要がある。
センサ押し付け方式の概念 をFig.8 に示す。
アクセス装置押付方法検討内容
検討結果
センサ押付方法
(折り畳み機構)の検討
当初は多軸稼動によるアーム方式としていたが、セル内への搬入 ス ースが で ること 、パンタグラフ方式を採用することとした。
パンタグラフの押し付けはエア駆動によるシリンダ方式とする。
Table.3 アクセス装置によるセンサ押し付け方式検討 果
Fig.8 アクセス装置によるセンサ押し付け方式概念
アクセス装置走行車輪型式の検討結果
アクセス装置の設計要求として、センサを積載し、セ ル内を二重缶構造容器下部にアクセスできることが求め られる。
2018 年度開発時はTable.4 に示す項目を実施した。検討の 果、アクセス装置の走行車輪は平行移動が可
能であり、位置決め性が高いメカナムホイールを採用することとした。また、メカナムホイールローラの材質、個数等の検討を行い、複数の種類のメカナムホイールを使った要素試験を実施し、ケーブルを牽引するために必要な摩擦力が得られるメカナムホイールの選定を完了させた。
アクセス装置走行車輪の要素試験実施状況をFig.9 に示す。
アクセス装置走行方法検討内容
検討結果
走行ホイールの選定
走行ホイールはメカナムホイールとし、アクセス装置の向きを変えずに、測定対象物にアクセスできる構造とする。
メカナムホイールの必要摩擦力はケーブル牽引する際に発 する摩擦力とセル勾配を る際に発 する 重の摩擦力の和で り、これを満足するメカナムホイー
ルを選定する。
選定した走行ホイール要素試験
メカナムホイールの要素試験を実施し、要求摩擦力を満足するメカナムホイールが市販品として存在することを確認した。
Table.4 アクセス装置走行車輪型式の検討 果
装置に関する開発については、現時点で概念設計を完了し、メカナムホイール性能確認等の要素試験を実施しているが、今後、他機構の要素試験を追加実施していく必要がある。また、本開発の最終目的はセル内に収められている二重缶構造容器の実測定であることから、セル内での実測定の前に実規模の模擬セルを製作し、センサと装置の せた試験を実施して実測定時の機器 リスクを低減していく必要がある。
4 今後の課題
特に非常時の装置の回収方法については、万全を期して開発を進めていく必要がある。
5 結言
これまでの開発により、センサ、装置ともに実機製作に着手するための概念設計が完了した。今後は要素試験を実施し、そこで得られた知見を設計にフィードバック していき、開発を進めていくこととなる。
本開発は測定対象物にセンサを接触させずに測定する技術開発であり、難しい技術であるが、一つずつ課題を解決しながら開発を進めていく予定である。
参考文献
K NAKAMURA A new approach to the Electromagnetic Induction Nondestructive Inspection
-Preceding of Symposium in the Japan Society of Mechanical Engineers.
Electro-Magnetic Induction Testing for Inspection of Wall Thickness and Inner-surface Defects-“I Eddy’’System Vol.5,No.3,NT58,EJAM