連続肉厚測定が可能な超音波探触子の耐熱性向上および遠隔測定装置の開発
公開日:
カテゴリ: 第15回
連続肉厚測定が可能な超音波探触子の耐熱性向上および遠隔測定装置の開発
Development of heat resistant ultrasonic probe for continuous wall thickness measurement and remote measuring equipment
東京電カホールディングス株式会社
酒井
裕介
Yusuke SAKAI
東京電カホールディングス株式会社
吉田
正志
Masashi YOSHIDA
Member
東京電カホールディングス株式会社
松下
義昭
Yoshiaki MATSUSHITA
Pipe wall thickness in power plant have been measured during the periodic inspection to evaluate soundness and safety by Ultrasonic Testing (UT). But it takes a long time and man power to complete measurement and evaluation. In this study, “Flex Dry UTM” is developed as a new kind of UT system for making it possible to monitor pipe wall thickness continuously. It is attached directly to pipe under the lagging material without using coupling medium. The maximum temperature it can be applied is developed to be 473K so that on-line monitoring can be performed during plant operation. Furthermore, UTM remote measuring equipment is developed to make it possible to monitor continuously by wireless communication.
Keywords:
Pipe wall thinning,On-line monitoring,Nondestructive inspection,Wall thickness measurement, Ultrasonic testing probe,Dry coupling, Remote monitoring,Condition-Based Maintenance, Reduction of radiation exposure,IoT
1 緒言
発電所や工場等の様々な施設・設備において、数多くの配管がその目的に応じて、様々な条件下で使用されている。特に高温高圧配管の減肉事象の場合、事故が生じた場合の影響が甚大であるため、発電所や工場等の安全 な稼働には、配管減肉の管理が必要不可欠である。
現在の発電所における配管減肉管理では、検査対象と なる配管数は膨大であるにも関わらず、大半の配管は、検査作業員の手作業による超音波肉厚測定により実施しており、自動化は進んでいない。また、配管肉厚測定ができるのが、プラントが停止している定期検査期間中のみの配管も多く、限られた期間に数多くの配管肉厚測定が 中してしま 。また、測定場所から れた場所えば中央制御室や事務所 から肉厚測定値を常時監視するオンラインモニタリングができるまでには至っていない。
この点の解決のための課題は、以下の通りと考えられた。
連絡先: 酒井 裕介、〒230-8510 神奈川県横浜市鶴見区江ヶ崎町4-1、東京電カホールディングス株式会社、E-mail: sakai.yusuke@tepco.co.jp
【超音波探触子の課題l
① 超音波探触子の小型化・柔軟化による配管表面への常時設置
② 接触媒質の不要化
③ 耐熱化
【肉厚測定装置の課題l
①無線通信による連続的な遠隔監視化
2 FDUTM のこれまでの研究開発と課題[1]
①超音波探触子の小型化・柔軟化、②接触媒質の不要化の2 点を満たす超音波探触子として、“フレックスドライUTM Flex Dry UTM、以下FDUTM を 発し Fig.1 その性能評価に取り組んできた[1]。また、遠隔地からでも肉厚測定データを確認できる無線対応の連続肉厚測定装置UTM オンラインモニター 以下UTMOM Fig.2 を 発した[2]。これらについて、現場環境での耐久性確認のため、発電所配管での1 年間の実証試験を行ったので、結果を報告する。また、実機適用を考慮して耐熱温度を向上させる改良を行ったので、あわせて報告する。
Fig.1 (a) Appearance of FDUTM probe, (b) Probe fitted on pipe surface.
Fig.2 Appearance of UTM online monitor
3 FDUTM の現場実証試験
試験方法
FDUTM の耐久性や高線量配管への適用性 耐放射線性 を評価するため、福島第一原子カ発電所 以下1F の燃料プール冷却系配管の1 か所へFDUTM 4 枚 を取付けて、測定を行った。Table 1 に示す通り、試験期間は1 年間、設置箇所は、流動加速腐食による減肉影響を得や
すい箇所とされている[3]エルボー部とした。配管温度は季節により変動はあるが、おおむね313K 未満である。
FDUTM の貼付箇所はFig.3 のA~D とし、通常の超音波肉厚計 以下UM と併せて肉厚計測を実施した。FDUTM とUM の両計測方法の測定変化値を比較することにより、FDUTM の測定値の妥当性を確認した。
計測結果および評価
Table.2 に、各計測箇所におけるFDUTM とUM による計測結果を示す。2017 年と2018 年の計測結果を比較すると、両者は、ほぼ同等の結果となっている。また、1 年間の計測値の変化を比較すると、FDUTM は -0.04 ~
+0.05mm、UM は -0.1 ~ 0.0 と、共に100?,m 以下であり、また、A~D の各部位で、ほぼ同じ傾向を示している。よって、FDUTM の肉厚測定結果は妥当である。なお、当該配管の線量から求めたFDUTM の1 年間の積算放射線量は17.5Sv である。計測時の超音波減衰量が小さく、計測波形が十分な振幅量であったので、17.5Sv 程度の累積放射線量では、FDUTM の肉厚測定性能への影響は小さいと判断できる。
Table 1 Specifications of verification test
Location
Fukushima Daiichi Nuclear power plant
Type of piping
Cooling water circulation piping for spent
fuel pool
Size
150A, sch40
Measuring points
4 Points on elbow of piping in downstream
Probe type
FDUTM, UM
Temperature
Ambient temperature (Max. 413K)
Period
One year(2017. 3-2018. 3)
Fig.3 Measuring points
Fig.4 FDUTM attached on the test location
Table 2 Results of verification test
Measured Thickness[mm]
FDUTM 1
UM 2
Date
①
2017.3
②
2018.3
Variance
① - ②
③
2017.3
④
2018.3
Variance
③ - ④
A
6.72
6.68
0.04
6.9
6.8
-0.10
B
7.10
7.05
0.05
7.5
7.4
-0.10
C
7.05
7.09
+ 0.04
7.2
7.2
0
D
6.34
6.33
0.01
6.6
6.6
0
1 Single transducer type for measuring
2 Dual transducer type for measuring
4 FDUTM の高温環境下動作確認試験
流れ加速型腐食 以下FAC による配管減肉は、水溶液温度が423K 付近の環境下において最も進行する[3]とされている。さらに、配管減肉が問題となる原子カ発 電所の復水・給水系配管の配管温度はおおよそ473K 程度であり、FDUTM による高温配管減肉管理への適用が期待されている。
そこで、耐熱性の向上を図ったFDUTM 以下高温FDUTM を 発した。高温環境下で、肉厚測定可能であるかど かを確認するため、473K 近くの高温環境下で、高温FDUTM の超音波波形形状を確認した。肉厚計測対象物は4mmのSUS304 板材である。計測結果をFig.5 に示す。厚さ測定が可能な、第一回底面エコー 第一回目の反射波のピーク が明瞭に確認でき、S/N 比も優れており、高温環境下でも肉厚計測可能であることを確認 した。
Fig.5 Wave form from High Temperature FDUTM probe at 473K measurement.
開発 の の 証
発した高温FDUTM およびUTMOM を用いたシステ
について、 度の検証を行った。JIS G 0801 2008 にて規定される 正用試験 RB-E Fig.6 及び、JIS Z 2355 2016 にて規定される 正用試験 RB-T Fig.7 について、同一種類の2 個の探触子 Probe No.1, Probe No.2 による室温での厚さ測定試験を行った。Fig.8 に測定結果を示す。測定値と 正試験 厚さとの は最大で0.1mm
RB-T 正試験 1.0mm 測定時 であり、JIS[4]の誤 範囲内であった。従って、本システ による肉厚測定の 度は、妥当な水準であることが確認できたと言える。
Table.3 Results of thickness measurement of calibration test pieces by High Temperature FDUTM /UTMOM at room temperature.
Measured thickness
B [mm]
Variance
A B [mm]
Nominal Thicknesses
A[mm]
Probe No.1
Probe No.2
Probe No.1
Probe No.2
1.00
0.99
1.10
-0.01
+0.10
1.50
1.47
1.57
-0.03
+0.07
2.00
2.01
2.08
+0.01
+0.08
3.00
3.01
3.05
+0.01
+0.05
4.00
3.99
4.04
-0.01
+0.04
5.00
5.00
5.00
0
0
6.00
6.01
6.03
+0.01
+0.03
7.00
7.00
7.05
0
+0.05
8.00
8.01
8.04
+0.01
+0.04
9.00
8.98
9.02
-0.02
+0.02
10.00
9.95
10.01
-0.05
+0.01
Fig.8 Result of thickness measurements of calibration test pieces by High Temperature FDUTM/UTMOM at room temperature.
まとめ
・FDUTM の福島第一原子カ発電所における実機配管への現場実証試験により、1 年間のFDUTM 期間測定耐久性能が されていることを確認した。
・高温FDUTM を 発し、473K 程度の高温環境下において、厚さ測定可能であることを確認した。
・UTM オンラインモニターを 発し、UTM による肉厚測定 性能が妥当であることを確認した。
・ は、高温FDUT の実機高温環境下における 期測定耐久性能試験を実施し、 期耐久性能を確認する。
参考文献
ほか、“高線量配管における配管減肉オンラインモニタリングシステ の検証 、日本 全
学会 第14 回学 会要 、 2017
吉田 正志ほか、“エ ー ンによる減肉に対するオンラインモニタリングの検討 、日本 全
学会 第14 回学 会要 、 2017
“発電用設備規格 配管減肉管理に関する規格 2016 年版 、日本機械学会、 2016、 pp.39
“非破壊試験- 超音波厚さ測定?第2部:測定方法”
JISZ2355-2、 2016、 pp.11