運転・保守訓練用ハイブリッドコンパクトシミュレータ(J-HySIM)の開発と活用実績
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カテゴリ: 第16回
運転・保守訓練用ハイブリッドコンパクトシミュレータ
(J-HySIM)の開発と活用実績
Achievement of development and operation of “J-tech hybrid compact simulator (J-HySIM) for operation and maintenance training”
閻ジェイテック電気・計装保修部向川大敬HirotakaMUKAIKAWA
中山大幹
HirokiNAKAYAMA
佐々木 崇文
TakafumiSASAKI
設備運転部
高橋盛治佐藤賢太
ShigeharuTAKAHASHI
KentaSATO
技術開発推進室
畑中明
AkiraHATANAKAMember
J-tech developed the compact-sized training system by itself, which simulated industrial plants with key components such as operation control console, electric control panel, instrumentation, and mechanical equipment. The requirement and expectation of the member of the operation and maintenance departments were reflected, and this enables them to implement not only operation training at normal/abnormal situation, but also various kinds of maintenance work such as isolation, disassembling, reassembling, test and check after maintenance, or systematical training for replacement of any components. These achievements of development and operation of this system are described.
Keywords: hybrid, compact simulator, J-HySIM, maintenance and operation training, replacement of components
1 緒言
当社は、日本原燃株式会社六ヶ所再処理工場やウラン濃縮工場の設備の運転、および機器類や電気・計測制御設備、放射線監視設備、並びに建物の保守・保全等を担当している。どのようなプラント状態においても安全で高品質な作業を行えるためには、現場でのOJTとともに基本となる体系的な技術力と高い力量(以下 技術力と略す)の継続的な強化が重要である。社員の早期かつ 確実な技術力向上を目的として、運転部門と保守・保全部門が協力し、実機プラントの様々な設備における共通 的な機能を模擬したハイフリッド運転保守訓練用コンハクトシミュレータ(以下J-HySIMと略す)を自社で短期間に開発して、2018年10月から運用を開始 した。(図1、2参照)
J-HySIMは六ヶ所再処理工場に隣接した当社の技術・訓練センター内に設置し、運転監視制御 、現場制御 、電気 、機器類など大 プラントを模擬する
連絡先:向川 大敬
株式会社ジェイテック
電気・計装保修部 制御グループ
〒039-3212
青森県上北郡六ヶ所村尾駁字弥栄平1-108 E-mail: hirotaka-mukaikawa@j-tech66.co.jp
図1 J-HySIM 全体図(模擬制御システム)
図2 J-HySIM 全体図(現場模擬機器類)
要装置から るもので、通 や における運転訓練の他、隔離、保守作業、保守後の試験等における一連の保守作業や、高経年化等に伴う設備の部分的な更新工事に関する体系的な訓練を可能としている。
本稿ではJ-HySIMの開発内容と教育訓練の実績等を報告する。
2 J-HySIMの導入経過
再処理工場やMOX燃料製造工場、ウラン濃縮工場のように、膨大で複雑なシステム のプラントにおいて、運転や保守・保全等の作業を安全かつ高品質に実施する ためには、表1に示す様々な作業に対する体系的な技術 力が必要であることから、この早期強化と定量化に向けた方法を検討した。
表1 運転、保守・保全技術
No.
部門
主な技術項目
運転
プロセス運転技術
2
異常時対応技術
3
日常巡視技術
4
隔離作業技術
5
保守
・保全
計器などの点検・保修技術
6
各制御盤、電気盤などの点検・保修技術
7
弁・機器類の点検・補修技術
計 制御機器類の更新技術( 、 など)
,
隔離作業技術
その結果、再処理工場の各設備の多様な特性を詳細に 模擬した既存の再処理運転訓練シミュレータの共同利用に加え、再処理工場やウラン濃縮工場等に共通する標準的な機能を 、高い 用性と社員が利用し 、コンハクトで現場に密着した訓練装置を当社独自に早期に
することが有効であると評価した。
このため、各種工場等を する様々な仕様のシステムや設備に共通の標準的な機能をソフトウエアとハードウエアを組合せて模擬したいわゆる「ハイフリッド式の訓練装置 を当社で開発し、こ によ 育 や 訓練をするとともに、この結果を自社の技術力指標として定量化することとした。
こ ら運転・保守各部門のニーズに基づいて整理したJ-HySIMの基本 を図3に示す。
図3 J-HySIMのシステム構成
3 J-HySIMの開発
J-HySIMの に当た 、図 の で開発を行った。
図4 運転・保守用訓練装置の導入手順
設計コンセプトの設定と進め方
前記J-HySIMへのニーズに基づき、以下のコンセプトで することとした。 た本コンセプトに基づ
体系的な技術力向上の流 を図5に示す。
再処理工場やウラン濃縮工場の膨大で複雑なシステム等における共通的な機能を標準モデル化して
用範囲の拡大を図る。
ソフトウエアによるシミュレーション機能と、運 転監視制御 から現場制御 、電気 (MCC)、現場機器 での一連のプロセスの作動状態を確認でき、かつ直接保守作業も行える や機器類(ハードウエア)を組み合わせ、ハイフリッド化を行 う。
各 や機器類を同一エリアに近接して設置することによ 、運転員が自らの運転操作による本装置のシー ンシ ルな動きを直接リアルタイムで体感でき、かつ全体 のコンハクト化を図る。
( )運転訓練と保守・保全訓練との連携や、両者が同
独立並行した訓練が可能な設計とする。
訓練実績をフィードバックし、更なる技術力向上に繋がる改良や機能の拡張、増設が可能な 造とする。
自社で開発と設計、製作、試験を行うことによ、利用部門のニーズを適確に反映するとともに、詳細な設計や 造、特性、製作 や調整等を自ら経験することで、自社でJ-HySIMの保守 ・補修や改造を可能とする。
設 計
作
図5 体系的技術力向上の流れ
導入範囲の設定
J-HySIMの設計コンセプトに基づき、模擬対象
とする 、および各機器や 類の模擬方法(ハードウエアとソフトウエアの選択)、並びにこ らによる運転と保守・保全の訓練項目を設定した。
実機プラントの や、機器類等の模擬方法、および 要な訓練項目に関する従来のシミュレータとの比較をそ ぞ 表2、表3、および図6に示す。
表2 盤構成の比較
No.
項目
実機の盤
従来のシミュレータの盤
J-HySIMの盤
当直長
当直長盤
当直長盤
インストラクタ盤
2
運転操作
運転操作監視制御盤
運転操作監視制御盤
運転操作監視制御盤
3
運転監視
運転操作監視制御盤
運転操作監視制御盤
運転操作
監視制御盤
大型表示盤
4
系制御
制御盤
ミュレータ盤
盤
シミュレータ盤
5
安全系監視制御
安全系 運転操作 監視制御盤
安全系 運転操作 監視制御盤
安全系 運転操作 監視制御盤
6
安全系制御
安全系制御盤
ミュレータ盤
安全系 運転操作
監視制御盤
7
高・低圧しゃ断器
M/C盤P/C盤M 盤
ミュレータ盤
M 盤
表3 J-HySIMの模擬方法の比較
No.
機器・ ・盤類
従来のシミュレータ模擬
J-HySIM 模擬
ー
ー
ポンプ
゜
゜
2
電動機
゜
゜
3
送風機
゜
゜
゜
4
圧縮空気 造器
゜
゜
゜
5
非常用発電機
゜
゜
6
空気作動弁
゜
゜
゜
7
電動弁
゜
゜
調節弁
゜
゜
,
手動弁
゜
0
しゃ断器(MCC)
゜
゜
゜
制御盤(現場含)
゜
゜
゜
2
計器
゜
゜
3
器( )
゜
゜
4
ろ過装置
゜
5
脱塩装置
゜
6
蒸発缶
゜
7
熱交換器
゜
異常
ス
プロセス
図6 主要な訓練項目の比較
保守・保全
操作
運転
模擬範囲の選定
J-HySIMに装荷する模擬プロセスとして、再処
理工場やウラン濃縮工場にある共通した運転プロセスを共通モデル化した。再処理工場では に溶液を様々な式や容量の処理装置に移送し、精製等を行って次の装置へ払い出す(図7)。ここでの共通機能はポンプ等によって溶液を移送 容器( )から移送先容器( 類)へ移送・受 する単位プロセスである。
た、工場設備の の を図るための建気空調設備の他、電力供給機能として電気設備と、外部電源系統と非 用電気の 荷投 プロセスを対象とした安全系設備も共通機能として選定した。
図 場の の 図
機能の詳細内容
J-HySIMに採用する溶液移送・受 設備、建
気空調設備、電気設備、安全系設備の詳細機能を明確化した。
(1)溶液移送・受 設備
ポンプによる の撹拌と移送運転、および移送先の 類での 口弁の切 替えを含む溶液受 運転を対象とした。溶液移送・受 設備の系統図を図8に示す。
図8 移送・受入設備の系統図
(2)建 気空調設備
送風機と排風機の切替や片系運転移行訓練の他、 電気設備P/Cでの電源喪失による送排風機等の停 を対象とした。建 気空調設備の系統図を図9に示す。
図9 建屋換気空調設備系統図
(3)電気設備
所内部分停電と復電、母線連絡や復旧訓練の他、外部電源喪失 のBOシー ンス(ディーゼル発電機による停 した機器類の自動 動)を対象とした。電気設備の系統図を図10に示す。
図10 電気設備の系統図
( )安全系設備
安全系機器や弁の操作は、安全系監視制御 からの単独運転を最優先とする設計とした。 た、電気設備とBOシー ンス対象の安全系機器類が連携する設計とした。BOシー ンスの概要を図1 1に示す。
図11 BOシーケンスの 要図
(5)インストラクタ
訓練指 者となるインストラクタが、独立したインストラクタ からの操作によ 、訓練項目の選定や訓練開始指示、および各設備の を発せて訓練員に対 せるとともに、その進捗状況を確認できる設計とした。
(6)隔離箇所
電気回路の部分的な隔離処置によ 、運転訓練と様々な保守訓練が同 独立並行できる設計とした。J-HySIMの隔離可能箇所を図12の①~⑦
に示す。
図12 J-HySIMの隔離可能箇所
3 5 システム構成の設定
J-HySIMの詳細なシステム を設定した。システム 図を図13に示す。
運転監視制御 、現場制御 、MCC、機器・弁を同一の部 内に近接して設置した。こ によ運転員が現場機器の状態を監視制御 モニタと現場機器を直接目視で確認でき、 らに保守員も設
備の運転操作状態を容 に確認できる とした。
プロセスや機器等の 状態を自動表示する大表示 を設けることによ 、各設備の情報を運転員以外の当直長や関係者が速やかに把握できるようにした。
インストラクタ 、大 表示 、運転監視制御 、現場制御 は、制御LANと情報LANで接続し、ソフトウエアによって連携する設計とした。
( )安全系の機器と弁の制御機能は、ハードリレーによって した。
建 気空調設備の送排風機として、小 の電動ファンを設置した。
縮空気製造装置(コンプレッサ)を設置し、 縮空気を電磁弁の開閉等で制御して空気作動弁を作動 せる とした。
AC200 系の機器と電動弁は、MCCからの給電によ 作動 せる設計とした。
図13 J-HySIMのシステム構成図
J-HySIMを する機器類の外観を図1 、および図15に示す。
図14 移送・受入設備用の弁
[電気 (MCC)][ファン]
図15 安全系機器類のファンおよび弁
3.6 設計・製作・試験
(1)体制
J-HySIMの に当たっては、当社の設計・開発部門が中 とな 、運転や保守・保全部門のニーズ等を取 とめ、設計に反映した。
た品質保証部門は、設計、製作、試験の各段階において立会を含むQMSに沿ったレビューを実施した。体制を図16に示す。
(3)設計
基本・詳細・製作の各設計段階における設計図書を作 した。 要な設計図書を表5に示す。
表5 主要な設計図書
No.
作 設計図書
設備設計仕様書
2
電気設備インターロックブロック線図
3
建屋換気設備インターロックブロック線図
4
溶液移送・受入設備インターロックブロック線図
5
インストラクタ インターロックブック線図
6
溶液移送・受入設備 計装ループ図
7
運転監視制御盤 画面集
展開接続図
,
裏面図(盤 配線図)
0
盤外形図
/0リスト
2
盤リスト
3
配置図
( )製作と試験
安全系監視制御 と現場制御 は、 の組立から機器の取付や配線の他、空気作動弁用の空気配管工事や、各 と機器間の外線 ーフル工事を社員で実施した。 た、一部の (運転監視制御 、インストラクタ 、大 表示 )は当社の設計に基づいて協力メーカーで製作し、各 と機器の単体試験から総合組合せ試験を当社で実施した。製作作業および試験作業状況を図17に示す。
(2)ス ジュール
図16 体制表
J-HySIMの早期に に向け、2018年10月からの訓練開始を目標として、2017年
月よ 全18 月の短期集中工程を設定して作業を推進した。 なス ジュール実績を表 に示す。
表4 実績スケジュール
図1 製作・試験作業状況
4 J-HySIMの活用実績
J-HySIMは計画通 2018年9月に完 し、10月よ 運用を開始した。2019年3月 での6 月間の活用実績を以下に示す。
運転訓練項目と実績
各訓練員の技術レベルに じて7種類の基本運転訓練項目を設定し、各基本項目は計130組の個別訓練項目で 、所要 間は約1 5 間/組としている。この全体概要を表6に示す。
表6 運転訓練項目と 所要時間の集計
No.
基本項目
設備
訓練項目(件)
所要時間(H)
通常運転訓練
溶液移送・受入設備
3
4.5
建屋換気空調設備
4
2
電気設備
32
4
2
異常訓練 (単独故障)
溶液移送・受入設備
,
3.5
建屋換気空調設備
7
0.5
電気設備
36
54
3
異常訓練 (複合故障)
溶液移送・受入設備
2
3
建屋換気空調設備
2
3
電気設備
2
4
事故対応訓練
(共通)
4
6
5
通報連絡訓練
(共通)
4
6
6
直員連携訓練
(共通)
7
0.5
7
隔離作業対応訓練
(共通)
2
3
計
30
,5
運転訓練は、訓練員 名とインストラクタ1名を1組として実施し、基本運転訓練項目No 1,2,3, の個別117項目の訓練を約172 間かけて実施した。本訓練員数は下記のとお である。
当 社 全 運 転 員 数: 169名
運転訓練項目1,2受講者数: 169 名運転訓練項目3, 受講者数: 39名
(3)所 要 間 数:計195 間運転訓練状況を図18に示す。
図18 運転訓練状況
保守・保全訓練項目と実績
各要員の技術レベルに じて、表7に示す保守・保全
訓練11項目を設定した。各訓練項目と所要 間を表7 に示す。
表 保守・保全訓練項目と訓練時間の集計
No.
訓練項目
所要時間
(H)
受講数
(人)
実績時間
隔離作業訓練
4
2
2
ソフトインストール/ダウンロード訓練
2
4
3
T ソフトインストール/ダウンロード訓練
2
4
4
ソフト 作訓練
4
4
6
5
T ソフト 作訓練
4
4
6
6
更新訓練
4
4
6
7
盤点検作業訓練
4
4
6
電気盤(M )点検作業訓練
4
4
6
,
弁、ファン点検作業訓練
4
2
0
コンプレッサ点検作業訓練
4
2
計
36
34
20
保守・保全訓練は2名~ 名を1組とし、保守・保全員数: 6名中3 名を対象として全項目を計36
間かけて実施した。保守・保全訓練状況を図19に示す。
図19 保守・保全訓練状況
運転員と保守・保全員の同時独立並行訓練
運転訓練員と保守・保全訓練員の日程調整等を行い、
隔離作業を実施の上で、同 独立並行して訓練を実施した。建 気空調設備の運転訓練と、溶液移送・受
設備のソフトウエア改造訓練を同 並行実施した際の状況を図20に示す。
図20 運転訓練とソフト改造訓練の同時独立並行作業
5 課題と今後の活動
J-HySIMによる約6 月間の訓練で確認 た
課題は以下の通 であ 、い も速やかに対 中である。
(1)J-HySIMという標準的な指標となる運転・保守訓練装置の によ 、社員一人一人の技術力の定量化が可能となった。この結果各人の経歴等に基づ 技術力と訓練内容が必 しも合致しない例が確認 た。このため、各人の技術力を再度評価し、訓練における目標レベル設定の適正化を図る。
(2)運転員は日 の実機運転と並行して訓練も受講するため、プラントの状況等によっては計画通 に訓練が出来ない場合があるので、年間訓練計画の事前調整をよ 強化して進める。
(3)J-HySIMは現在、訓練に使用しながら更な る機能強化中であ 、こ と並行した本装置の点検計画の確立に向けて、運用開始1年後の201 9年9月迄に保守・保全計画を整備し、定期的な保守を実施する。
6 結言
運転や保守・保全のプロフェッショナルを育 するた
めには、教育や訓練による体系的な技術力の強化を自ら考え、意思を って継続的に進めることが重要である。一方、再処理工場等の原子力施設での現場業務においては、安全と品質確保等に関する管理面から従事者はに強いプレッシ ーを背 ってお 、この結果、既存の作業 書の記載文面に大き 依存する傾向がある。
た近年の机上教育の強化も、自ら考え自信を って行動する機会を減少 せる面もあ 、こ らのことからプロフェッショナルとしての技術力の強化に長期間を要している。
J-HySIMはこ らの課題の解決策の一つとし、運転や保守・保全に従事する社員の早期育 と、 による更なる技術力強化を 目的に したものである。作業 書に記載 た一つ一つの の意味を自ら考えて行動し、更なる の高度化を考えるとともに、
書から逸脱した際の影響と対 や、万一 書にないプラント事象が発 した場合の対 等を に考え、実際にこ らを模擬経験することで、技術力の強化を図るものである。
J-HySIMの運用を開始してから約1年が経過し、こ を活用した社員のプラントの状況把握能力や現場で
の気付き力は確実に向上したと評価している。
き続き技術力評価や運転訓練計画、保守・保全訓練計画等の課題を解決してい とともに、J-HySIM の機能の追加や改善等を継続的に実施して進化 せる計画である。
併せて、今後 六ヶ所燃料サイクル施設の運転や保守に係る他の多 の企業にもJ-HySIMの利用を呼びかけ、地域全体の技術力を向上 せていきたい。