高速増殖原型炉もんじゅの点検期間に関する課題の分析 ~(2)保全計画の分析?

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カテゴリ: 第16回
高速増殖原型炉もんじゅの点検期間に関する課題の分析 ~(2) 保全計画の分析~ Analysis of issues related to maintenance period in the fast breeder prototype reactor Monju ,-._ (2) Analysis of plant maintenance plan,-._ 原子力機構 豊田 晃大 Kodai TOYOTA Member 原子力機構 橋立 竜太 Ryuta HASHIDATE Member 原子力機構 原子力機構 高橋 矢田 慧多 浩基 Keita TAKAHASHI Hiroki YADA 原子力機構 高屋 茂 Shigeru TAKAYA Member Abstract In order to achieve both safety and economic efficiency of a nuclear power plant, it is necessary to realize rational maintenance based on characteristics of the plant. The fast breeder prototype reactor, Monju, spent most of the year for the maintenance. It is important to identify causes of the prolonged maintenance of Monju and to investigate countermeasures for implementation of rational maintenance of a next fast reactor. In this study, causes of the prolonged maintenance of Monju during reactor cold shutdown were investigated based on the plant maintenance plan of Monju. In addition, proposals for the maintenance optimization idea of a next generation fast reactor were presented to address the revealed issues. Keywords: Fast reactor, Monju, Maintenance, Sodium, Plant maintenance plan, Maintenance optimization はじめに 原子力発電所の安全と経済性を両立させるためには、プラントの特徴を踏まえた合理的な保全を実現させる必 要がある。 研究開発段階発電用原子炉である高速増殖原型炉もんじゅ(以下、もんじゅ)も、平成21 年1 月の保全プログ ラム導入以降、実用発電用原子炉並みの保全が要求され た。平成22 年8 月の炉内中継装置の落下事故以降プラント停止期間が続いていたもんじゅであったが、プラント 停止中においても、燃料が炉心に装荷された状態であり、燃料の崩壊熱を除去するため、低温停止中の除熱機能を確保する必要がある。もんじゅの低温停止中の特徴とし て、冷却材であるナトリウムが常温で固体であるため、 徐熱機能を確保するためにはヒ タにて200 oC に昇温し、冷却材を循環させる必要がある。そのため、もんじゅで 連絡先: 豊田 晃大 〒311-1393 茨城県大洗町成田町4002 番地日本原子力研究開発機構 E-mail: toyota.kodai@jaea.go.jp は低温停止中の状態でも付帯設備も^め多くの設備が稼働状態で設備の保全を行ってきた。また、その保全に要する期間は長期化していた。 もんじゅでの経験を次世代の高速炉に活かし、合理的 な設計や保全を実現するためには、もんじゅの点検期間が長期に及んだ要因を分析し、課題を整理するとともに、その対策案について検討する必要がある。 もんじゅの点検期間長期化の要因としては、個々の作業に要する時間に関するものと、作業物量に関するものが考えられる。 本研究では、今後の保全最適化検討の第一段階として、 もんじゅの保全の現状を把握することを目的とし、もんじゅの保全計画を分析した。本報告の中では、主に作業 物量に関する調査結果を報告する。 もんじゅの概要 2 1 もんじゅプラント概要 もんじゅの主な仕様をTable 1 に、概要図をFig.1 に示 す。主冷却 は 立した3 プ(A プ、B プ 及び C プ)で構成されている。炉心で発生した 714 MW の熱は、1 次ナトリウム冷却材(1 プ当たりの流量は5,100 t/hX3 プ)で熱輸送され、中間熱交換器を介して非放射性の 2 次ナトリウム冷却材(1 プ当たりの流量3,700 t/hX3 プ)に伝達される。この熱はさらに蒸気発生器(分離貰流ヘリカ コイ 型)で2 次ナトリウム冷却材から水・蒸気への熱交換を行い、ここ 低温停止中は、炉心に制御棒が挿入され、水・蒸気タ ン設備は 止しており、 冷却設備の 気冷却器により原子炉容器内に有する燃料を冷却する。また、原子炉容器及び1 次冷却 設備が設置されている部屋は、1 次ナトリウム冷却材漏えい時のナトリウム火災の防止のため、低酸素濃度の窒素雰囲気を維持している。 もんじゅは冷却材にナトリウムを用いていること等か で発生した蒸気(温度483 oC、圧力12.5 MP(a 127 kg/cm2)、 ら、軽水炉とは異なる機器を有する。ナトリウム関連機 3 プ合計の全蒸気量約1,100 t/h)で発電機の蒸気タ ンを駆動し発電する。 Table 1 Main specification of MONJU 原子炉の形式 ナトリウム冷却高速増殖原型炉 熱出力 714 MW 電気出力 280 MW 燃料の種類 プ トニウム・ウラン混合酸化物 器等の、ナトリウム冷却型高速炉で特有な 統および機器(以下、もんじゅ特有 統(機器))の保全は、以下のような方法で設定されている。 2 2 もんじゅ機器の保全重要度及び保全方式の設定方法 もんじゅにおける機器の保全は、核原料物質、核燃料 物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規 制法」) 第43 条の3 の22 第1 項を受けた研究開発段階発電用原子炉の設置、運転等に関する規則 第76 条 第1 項に基づく必要があるが、JEAC4209-2007[1]を満たして いる場合は、当該規則が要求する保守管理として十分であるとの見解が示されている [2] ことから、JEAC4209-2007 に準じて実施されている。 JEAC4209-2007 では保全の効果的な遂行のため、保全重要度を設定することとしており、もんじゅにおいてもFig.2 に示すフロ に従い保全重要度を設定し、以下のように保全方式を決定している。 ・機器の保全重要度A 時間基準保全(Time Based Maintenance (TBM)) 一定周期で点検、部品交換、更新を行う保全)に、必要に応じ状態基準保全※を追加する。 ※ 状 態 基 準 保 全 (Condition Based Maintenance (CBM)) 運転中の機器から異常の兆候を検知し、適切な時期に処置を行う保全。 圧力開放板 ・機器の保全重要度B TBM 又はCBM を選択する。 ・機器の保全重要度C 事後保全(Break Down Maintenance (BDM) 故障発生の都度、 修を行う保全)を選定する。 補助冷却系空気冷却器 2次主循環 ポンプ 1次主冷却室 1次冷却系 2次冷却系 水?蒸気系 Fig.1 Outline of Monju 過熱器 蒸発器 1次主循環 ポンプ 中間熱交換器 原子炉 Fig.2 Maintenance importance setting flow for Monju なお、Fig.2 中のPS-1、2 及びMS-1、2 は、安全機能の重要度であり、もんじゅでは、「発電用軽水型原子炉施設 の安全機能の重要度分類に関する 査指 」[3]や JEAG 4611[4]、JEAG 4612[5]等を参考に、軽水炉の重要度分類指標と同等の指標を用いて設定している[6]。 点検内容の分析方法 本研究では、次世代高速炉で合理的な保全を実現する ために、 ? 今後の保全最適化検討において合理化の 地が大きいと考えられる保全タスクおよび 統の抽出 ? 保全の合理化に するための、保全タスク数や保全頻度に関する課題の抽出 ? プラント 作等、点検のための準備作業(以下、制約条件)の影響を評価するための、プラント条件の整理 に主眼を置き分析を行った。 まず、もんじゅで計画されている保守点検の計画(保全計画)について、「保全の方式」「点検の頻度」「対象設備」の観点で整理した。更に、制約条件は点検工程に影響を及ぼす重要なファクタ であるため、タスク数が多いものや点検周期が短くもんじゅの保全における課題となることが考えられるものについて確認し、分析を行った。 もんじゅは平成30 年3 月に廃止措置計画が認可されており[7]、プラントに要求される保全内容も大きく変化している。廃止措置移行前の保全計画に基づき保全を実施 してきた最新の情報を用いるため、分析対象は廃止措置移行前の最終版である平成29 年度の保全計画とし、対象機器は主にもんじゅ特有機器とした。 保守点検の全体計画(保全計画)の分析 もんじゅ保全計画での対象は約 32,000 機器であり、約 100,000 タスクとなる。この内、もんじゅのように長期間停止したプラントに適用される「特別な保全計画」と呼 ばれるもので管理されているものが約 85,000 タスクあった。1 章で既述のとおり、もんじゅはプラント停止中においてもナトリウムを循環させる必要がある。このため、 低温停止状態であってもナトリウム循環に係る設備については通常運転時と同様の機器が稼働しており、通常運転時に行う点検タスクは特別な保全計画で管理されている約85,000 タスクと同様のものが多く、この85,000 タスクを分析することによる特徴の把握は有効であると判断した。 このため、本研究においては平成29 年度にもんじゅで 実施された特別な保全計画に基づく約85,000 タスクについての分析を行った。 4 1 保全方式の分析結果 もんじゅの特別な保全計画で管理されているタスク約 85,000 タスクを、保全重要度により整理した結果を Fig.3 に示す。Fig.3 より、保全重要度A およびB のTBM で管理されている保全タスクが全体の約 9 を めていることがわかる。 Fig.2 に示した通り、安全重要度の高い設備やもんじゅ特有設備、かつ、故障した場合に 統機能に影響を与える設備については保全重要度をA に設定するようなフロ であるが、安全重要度の低い設備については、⑥における判定で保全重要度 B(TBM 又は CBM)と保全重要度C(BDM)にわかれるようになっている。もんじゅの保全計画においては、⑥の判断において保全重要度 B (TBM)を選択した機器が全体の約77%を め、大多数のものについて TBM を実施していたことに加え、CBM は実施されていなかった。 Fig.3 The ratio of maintenance method in number of maintenances 16M未満 16M 24M 25M 28M 30M 36M 39M 40M 48M 52M 60M 64M 70M 76M 88M 100M 112M 120M以上 その他 4 2 点検周期に関する分析結果 保全計画では、TBM で管理されている各保全タスクに ついて点検周期を設定しており、本章では点検周期の面から分析を行う。点検周期 とに保全タスクを 計した結果を Fig.4 に示す。なお、Fig.4 中、その の周期とは 「燃料交換1 15 毎」や「 用前」等を指す。 Fig.4 より、もんじゅの保全タスクでは16 か月に一度行う点検(16M)が多く、 合にしてTBM での点検全体の約 34%であった。更にFig.4 をみると16M の次に点検が多い周期が40M となっている。これはもんじゅが3 プの構成をとっているプラントであることが反映されていると考えられる。すなわち、単一 プに対し 1 年に一度行う点検があり、3 プ分終了し、一巡する3 年相当の40M も比較的多い。 本研究では、点検周期が短く、かつ、保全タスク数が多いことから、16M の保全タスクに焦点を当て分析を進める。 Fig.4 Number of maintenances in each maintenance cycle 5 点検周期16M の保全に関する分析 5 1 系統毎の分析結果 もんじゅの機器、設備はTable2 に示す16 の区分に分け られており、このうち 16M の点検が行われていた 13 統について、 統毎の全保全タスク数ともんじゅ特有統の保全タスク数を示したグラフをFig.5 に示す。13 統中、もんじゅ特有機器の保全タスクが するのは、原子炉構 、1 次冷却 設備、2 次冷却 設備、原子炉・タ ン 設備、燃料 及び 設備、換気 調設備、計測制御設備(以下、7 統)であり、もんじゅ特有機器に関する保全タスクは16M 全体の41%を めていた。なお、諸設備に関するタスク数は多いが、諸設備とは、放 射線監視設備や消火設備、クレ ン設備等の設備を指し、これらは高速炉特有の機器、設備ではなく、もんじゅ特有機器の保全タスクも しない。 このため、以後は、点検周期が16M 保全タスクのうち、7 統におけるもんじゅ特有機器に関する保全タスクを分析する。 タスク数 Table2 Monju's system configuration and typical equipment examples 系統の分類 6Mでの点検 の有無 もんじゅ(高速炉) 特有機器の点検の有無 具体的な機器の例 原子炉構造 遮蔽プラグ、制御棒駆動機構関連設備 等 原子炉格納容器 原子炉格納容器雰囲気 装、非常用エアロック 原子炉格納容器 構築物 炉上部ピット蓋 次冷却系設備 次主 ンプ、 次主 換器、 検出設備 等 2次冷却系設備 蒸気発生器、過 器、 検出設備 等 水・蒸気?タービン・発電機設備 主蒸気系(含抽気系、空気抽出系)、蒸気タービン、 蒸気発生器回り水・蒸気系、復水・給水・補給水系 等 原子炉・タービン補助設備 次メンテナンス冷却系、2次メンテナンス冷却系 燃料取替及び貯蔵設備 燃料 換装置、炉外燃料貯蔵槽、燃料検査設備 等 性廃棄物処理設備等 気体廃棄物処理系、液体廃棄物処理系、固体廃棄物処理系 等 換気空調設備 炉外燃料貯蔵槽冷却系室換気装置、ディーゼル建物一般換気装置 等 制御設備 性子 装、原子炉容器 装、 液 等 電気設備 ディーゼル発電機設備、一般 装電源設備 設備 設備、 、 用 器、 全保 系設備 建物 気密扉、防 扉 等 建物・構築物等 床ライナ、一般扉、特殊扉、融雪設備 等 敷地等 補機送水管路地下排水設備、デウォータリング設備 Fig.5 Number of maintenances in each Monju's system configuration 5 2 点検項目及び設備の分析結果 7 統のもんじゅ特有機器に関する保全タスクを調査 した結果、点検の 90%以上が計測制御設備の点検であることが判明した(Fig.6)。ただし、1 次冷却 、2 次冷却 、メンテナンス冷却 の計測制御設備は、Fig.5 中でそれぞれ1 次冷却 設備、2 次冷却 設備、原子炉・タン 設備に^まれている。計測制御設備の点検が多い理由は、点検が設備一式(例えばナトリウム漏えい検出 設備)で行われるのではなく、 統を構成する機器毎に行われている(ナトリウム漏えい検出設備であればナトリウム漏えい検出器+情報処理盤+etc.)ためである。また、Fig.6 中の計測制御設備と機械 設備における点検項目の 合を示したグラフを Fig.7 に示す。Fig.7 より点検周期16M におけるもんじゅ特有機器の点検では、そのほとんどが外観点検と作動確認、計装の校正等の機能・性能試験であることがわかった。更に、計測制御設備、機械 設備の双方で交換や分解点検といった点検はほとんど行われていないことが判明した。 Fig.7 The ratio of each maintenance method in number of maintenances Fig.6 The ratio of each maintenance equipment in number of maintenances タスク数 5 3 制約条件に関する分析結果 これまでは、もんじゅ特有機器の点検の内訳について 分析を行った。それぞれの点検にはもんじゅ特有の制約条件が付帯する場合があり、それが点検期間を大きく左右するため、点検工程を策定するために整理された制約条件を分析した。 16M のもんじゅ特有機器に関する保全を分析した結果を Fig.8 に示す。Fig.8 より、制約条件がないものが 45% を める反面、ナトリウムドレンとセ 室の開放という、プラント工程を決めるために重要な制約条件を必要とす るタスクも多数 することがわかった。また、橋立ら[8] の分析によると、ディ ゼ 発電機設備の点検のために、3 プ合計で年57 日間のプラント 作を要していた。 セ 室の開放とは、Fig.1 中の1 次主冷却室内にある機器の点検のために作業員がアクセスできるよう 気置換する 作である。ナトリウムが漏えいした場合、 気との接触によるナトリウムの燃焼を防ぐために、セ 室開放を行うためにはナトリウムドレンを行う運用としている。したがって、Fig.8 中、セ 室開放にはナトリウムドレンの 作も^まれている。 制約条件の多くはナトリウムドレンであり、この 作を必要とする点検はほとんどが 1 次冷却 設備と 2 次冷却 設備である。またその多くはナトリウム漏えい検知設備や 熱設備いったナトリウムに関する設備であり、ナトリウム プが する1 次冷却 設備や 2 次冷却 設備では多くの機器で点検を行うためにナトリウムドレンが必要であった。 もんじゅ特有機器を点検するための制約条件を分析したところ、点検の準備に必要なプラント 作に時間を要していることも、もんじゅの点検期間が長い一因となっている可能性が示唆された。 本研究では、点検周期16M の保全タスクのうち、もんじゅ特有 統に関する保全タスクを抽出し、保全タスクの数、点検作業内容、および制約条件の観点で分析を行 った。 実証炉以降の次世代高速炉ではプラント効率等の経済性が重視されることから、安全性、信頼性を保ちつつ保全に係る期間やコストを可能な限り抑えた保全の最適化が必須となる。本章においては、高速炉の保全最適化に するためにこれまでに分析された結果を元に考察を行 う。 6 1 保全タスク数の合理化に関する考察 もんじゅにおいては、Fig.2 で示したフロ に従い保全 重要度および保全の方式を設定しており、その結果TBM が全体の約90%となっていた(Fig.3)。これに関し、保全重要度を2.2 章で述べた安全重要度のみでなく、リスク評価等を活用した定量的な判断に基づき適切に設定することで、保全タスクの数を減らすことや、BDM 等 の保全方式で管理することが可能であると考えられる。Fig.9 に16M におけるもんじゅ特有機器に関する保全タスクを安全重要度別にまとめたグラフを示す。Fig.9 中、計測制御設備(中性子計装や 気雰囲気セ ニタ等を指し、1 次冷却 設備や 2 次冷却 設備の計測制御設備を除く) で安全重要度クラス1 の機器が しない理由は、①16M でそれらの点検が行われていないことや、②これらの保全タスクが特別な保全計画で管理されていることが挙げられる。通常運転時とプラントの長期停止時とで、機器の安全重要度に差異が する 統もあるが、本研究においては上記に関する詳細は考察の対象外とする。 Fig.9 より、もんじゅにおいては安全重要度が低い高速炉特有機器が多数 することがわかる。これらの保全 Fig.8 ratio of each limiting conditions in number of maintenances タスク数 6 保守点検の全体計画(保全計画)の分析から得られた保全最適化に関する考察 Fig.9 Number of tasks by safety importance in each Monju's system configuration タスクの中には、原子炉等規制法以外の法令上実施しなければならない点検等も する。しかし、それ以外の機器に関しては高速炉特有機器であっても安全重要度が低い機器の保全合理化の 地が大きいと考えられる。米 では、リスク情報を活用した10CFR50.69[9]を導入することで保全の合理化を行っている事例があるが、わがにおいても今後の高速炉開発ではリスク情報を活用した保全の合理化が重要であるといえる。 6 2 点検作業の合理化に関する考察 もんじゅ特有機器では、計測制御設備の点検が 93%、 機械 設備の点検が7%あり、設備毎に点検項目を分析すると、計測制御設備では 58%が外観点検、41%が機能・性能試験であり、機械 設備では 89%が外観点検であった(Fig.6、Fig.7)。 上記の点検に対しては近年の技術発展がめざましいAI (Artificial Intelligence)やIoT(Internet of Things)の技術を活用、若しくはこれら技術と状態監視保全( 知保全) を組み合わせることで保全の合理化が見込める。例えば、インフラ構 物の分野では、カメラで撮影した構 物の映 から 化や を可視化する技術[10]が開発されており、また、ガス採 の分野では AI、IoT を保全に組み込んだ CBM を活用することで機器の異常の兆候を判断し、適切な時期に機器の保修、交換を行うことで保全を合理化した事例[10]も する。高速炉においても、外観点検にカメラやセンサ にで得られたデ タにAIおよびネットワ クを組み合わせて異常診断を行うことで、現行の TBM 管理による外観点検を状態監視保全に変更できる可能性がある。また、計測制御設備の 41%を めていた機能・性能試験に関しても、上記の技術等を計装類 に組み込むことで、保全方式の変更や作業の大幅な合理化が期待できる。 6.1 章で示した、リスク情報を活用した保全の合理化に加え、今後は最新の技術を点検に組み込むことによる保全の合理化も必要になると考えられる。 6 3 制約条件の合理化に関する考察 5.3 章で述べた通り、高速炉における保全では点検に際 し長い期間が必要なプラント 作を行わなければならない等、制約条件が する。もんじゅにおいては16M で行うもんじゅ特有機器に関する保全の約半数に制約条件が付帯していた(Fig.8)。 点検を合理化するためには①制約条件を付帯させない ことや、②制約条件の緩和が挙げられる。上記の課題に対して、①に関しては、ナトリウム配管に二重管を 用することでナトリウムドレン、セ 室開放を行わずにセ 室内にアクセスできるようにすること[11]で制約条件を 減することができる。二重管は内管と外管の間が窒素ガスで満たされており、もんじゅにおけるセ 室と同等の役 を果たす。また、内管と外管の間の窒素ガス中のナトリウムを分析することでナトリウム漏えいを高精度かつリア タイムに判断できることから、現行の外観点検のように作業員が目視でナトリウム漏えい痕を確認 する必要もなくなる。ただし、二重管の採用には構 面や 熱の観点での課題、更には内管の支持構 等の課題も する。 ②に関しては設計面での対応と運用面での対応が考えられる。 設計面での対応として、安全評価が必要であるが、ナ トリウムドレンの速度を向上させる等が考えられ、具体策としてはナトリウム充填ドレン 配管(ナトリウムを抜き りするための配管 Fig.1)の内径を大きなものにする方法が挙げられる。 また、運用面での保全合理化策として、ナトリウム漏 えい検出器の点検を例に挙げると、もんじゅではナトリウム漏えいを検出できない状況を避けるために、検出器 を点検する際はナトリウムドレンを行う運用としている。しかし、点検期間中のプラント状態(200 oC、温度一定、低流速)を考慮したナトリウム漏えいのリスクは、運転状態に比べ低いと考えられる。 よってリスク評価を行い、漏えいのリスクが十分に低いことを示せば、ナトリウムドレンを行わずに検出器を停止し、点検を行うことができる可能性がある。 点検期間を短縮し運転時間を確保するためには、構 や原子力安全等の観点も^めた総合的な判断に基づき、設計段階から①、②を考慮する必要がある。 保全最適化は次世代炉での大きな課題であり、今後は保全タスクや制約条件についてより詳細な分析を行っていく。 7.まとめ 保全計画を分析することで低温停止中のもんじゅの点 検が長期化していた要因の一部を確認できた。 もんじゅではほとんどの点検が TBM で管理されており、その中でも16 か月に一度の周期で行われる点検が多かった。このため、本研究では16 か月に一度行う点検を 対象として分析を行った。分析の結果、もんじゅ特有機器では計測制御設備と機械 設備に対する保全が実施されており、その点検項目は外観点検と機能・性能試験であることが分かった。また、上記の点検の約半数には制約条件が付帯しており、保全タスク数が多数 することの に、制約条件による点検長期化の可能性も示唆された。 以上の分析結果をもとに、保全タスクの数、点検作業内容、および制約条件の観点から高速炉の保全最適化に するための考察を行った。 本報告では16 か月に一度行う点検のタスク数に着目して分析を実施してきた。今後は、長周期の保全ではあるも のの、多大な時間を要するために大きな負荷となってい る点検等、 の周期の保全タスクを調査する必要がある。また、点検周期の分析を拡充するだけでなく、本報告で分析に用いた特別な保全計画で対象外となっていた 統の分析や、各々の点検に必要な 用、点検期間等にも着目した分析も必要となる。 参考文献 日本電気協会、 原子力発電所の保守管理規程”、 JEAG4609-2007 経済 業 、 実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則第 11 条第 1 項及び研究開発段階にある発電の用に供する原子炉の設置、運転等に関する規則第30 条第 1 項に掲げる保守管理について (内規)の制定について”、平成20・12・22 原院第3 号、2008 原子力安全委員会、 発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する 査指 ”、2009 日本電気協会、 安全機能を有する計測制御装置の設計指 ”、JEAG4611 日本電気協会、 安全機能を有する電気・機械装置の重要度分類指 ” 、JEAG4612-2010 日本原子力研究開発機構、 原子炉設置 可 (高速増殖原型炉もんじゅ原子炉施設)”、2006 原子力規制委員会、 高速増殖原型炉もんじゅ原子炉施設廃止措置計画の認可について”、原規規発第1803282 号 橋立 、 高速増殖原型炉もんじゅの点検期間に関する課題の分析 (1) プラントの運用方法に関する分析 ”、第16 保全学会学術講演会 稿 、2019 EPRI, “Program on Technology Innovation: 10CFR50.69 Implementation Guidance for Treatment of Structures, Systems, and Components”, EPRI Technical Report 1011234, 2006 日本保全学会、 第 19 保全セ ナ AI 導入によ る保全の技術革新に向けて” 、JSM SEM 019、2019 日本原子力研究開発機構、 高速増殖炉サイク 実用化研究開発(FaCT プロジェクト)ーフェ ズI 報告 ー”、JAEA-Evaluation 2011-003
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