高速炉の運用性分析のための点検工程スケジューリングシステムの 開発

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カテゴリ: 第17回
高速炉の運用性分析のための 点検工程スケジューリングシステムの開発 Development of Inspection Process Scheduling System for Analyzing Operability of Fast Reactor 中京大学 鈴木 正昭 Masaaki SUZUKI Member 東京理科大学 伊藤 真理 Mari ITO Non-member 日本原子力研究開発機構 橋立 竜太 Ryuta HASHIDATE Member 日本原子力研究開発機構 高橋 慧多 Keita TAKAHASHI Non-member 日本原子力研究開発機構 矢田 浩基 Hiroki YADA Member 日本原子力研究開発機構 高屋 茂 Shigeru TAKAYA Member Maintenance scheduling is currently manually handled, which is a time-consuming process because of the large number of components and constraints that must be taken into account when creating a schedule. Besides, to develop next-generation power plants with excellent operability, it is necessary to make it possible to evaluate operability and maintainability in advance at the design stage. Our objective is to develop and implement an automatic scheduling system using the mathematical technique of Operations Research for addressing the inspection process scheduling problem in a sodium-cooled fast reactor plant. This study constructs a scheduling model that performs optimization in two stages to reduce the computation costs. Keywords: Fast reactor, Inspection process, Plant life management, Scheduling, Operations research, Optimization, Mathematical programming 1.はじめに もんじゅにおいては点検に要する期間が長期化する傾 向が報告されており[1]、次世代高速炉の開発に向けて課 題の抽出と対策が求められている。次世代炉において安 全性と経済性を両立した円滑な運用を実現するためには、安全設計やシステム設計に加え、あらかじめ保全を考慮 した設計の実施が重要となる。そこでは、設計の進捗に応 じて機器の追加やシステムの変更に柔軟に対応しながら 運用性を繰り返し評価し、保全上の課題となる設計を抽 出して対策を講じることが求められる。本研究では、従来 は手作業で行われているナトリウム冷却高速炉のプラン ト点検工程の組み立てを、オペレーションズ・リサーチの 数理的な手法を用いて自動で行い最適化するシステムを 開発する。 連絡先: 鈴木正昭、〒466-8666 愛知県名古屋市昭和区八事本町101-2、中京大学、 E-mail: msuzuki@lets.chukyo-u.ac.jp 2.手法 ナトリウム冷却高速炉の1 次冷却系(3 ループ)を模擬したプラントモデルを考える。想定する主な点検対象とその点検項目・点検間隔上限・台数・制約条件を表1 に示す。ここでは、各点検対象についてその点検間隔が上限値を超えない制約の下で、10 年間の合計点検回数を最小化することを目的とする。 著者らはこれまで、上記点検工程スケジューリング問題を2 段階の最適化問題に分割し、1 段階目の最適化としてまずどの月にどの点検を行うかを決定し、次に2 段階目の最適化としてどの日にどの点検を行うかを決定するスケジューリングモデルを提案している[2]。そこで は、1 段目の問題を混合整数計画問題として、2 段目の問題を0-1 整数計画問題として定式化した。 本稿では、2 段目の最適化計算において点検工程をその作業内訳までより詳細化して定義し、付随する制約条件を新たに定式化して実装することでモデルを精緻化し 表1 想定する点検対象とその点検項目・間隔上限・台数・制約条件(抜粋) 点検対象 点検項? 点検間隔 上限(?) 点検台数 (台/ループ) 制約条件 ナトリウムドレン セル室開放 A/B/C ループ 1次主ポンプ 本格点検 72 1 設置ループのドレン - 弁 分解点検 120 40 設置ループセル室の空気置換 ナトリウム漏洩検出器 フィラメント交換、計器校正 12 10 - 配管?持装置 外観検査 120 400 設置ループセル室の空気置換 電源設備 分解点検 12 1 - 表2 各点検対象の1 台あたりの点検工程(抜粋) 点検対象 1台あたりの点検?程 ?程① ?程② ?程③ ?程④ A/B/C ループ 1次主ポンプ 対象取外 20? (クレーン作業) ?場点検 45? 対象取付 20? (クレーン作業) 試運転 2? (NSL) 弁 作動試験 0.25? (電気要) 分解・??れ・組み?て 8? 作動試験 0.25? (電気要) ナトリウム漏えい検出器 交換・校正 2? 配管?持装置 点検 0.1? 電源設備 受電部点検 15? (停電要求) 試 試 分解・??れ・組み?て 試 試 分解・??れ・組み?て 図1 2 段目の最適化計算で得られた点検スケジュールの例(抜粋) た。表2 に各点検対象の作業内訳を示す。付随する制約条件として、例えば詳細工程①?④の実施順を規定する順序制約、クレーン作業の同時実施不可を規定する資源制約などが挙げられる。本研究では最適解の求解に数理計画ソルバーIBM ILOG CPLEX 12.6.3 を用いた。計算機環境はIntel Core i5-6200U@ 2.30GHz, 8GB RAM である。 3.結果 図1 に2 段目の最適化計算から得られた点検スケジュールの例を示す。1 次主ポンプと弁において詳細工程の実施順が規定どおりであることや、電気を要する弁の作動試験と停電を要求する電源設備の受電部点検とが同日には予定されていないことなどが見てとれる。また、弁の点検時にはナトリウムドレンの後セル室が空気置換されている必要があり、一方、1 次主ポンプの試運転には事前にセル室を窒素置換し8 日以上経過した上でナトリウム充填が必要であるが、それを満足する解が得られている。なお、2 段目の最適化計算に要する時間は1 ヶ月分のスケジュールあたり数秒程度である。 4.おわりに 次世代炉の運用性分析のために、ナトリウム冷却高速炉の点検工程組み立てを2 段階の数理計画問題として定式化し、点検スケジュールの自動最適化システムを構築した。特に、ナトリウムのドレン/充填やセル室の空気置換/窒素置換等に係る順序制約、クレーンや電気等の資源制約などを定式化することで、どの日にどの点検を行うかを決定する2 段目のスケジューリングモデルを精緻化し、想定する主な制約条件を満足する日単位の最適スケジュールを得ることが可能となった。 参考文献 橋立竜太ら,“「もんじゅ」点検期間長期化の要因分析及び次世代高速炉の保全合理化案の提案 1; 低温停止中の「もんじゅ」のプラント工程の分析”, 保全学,19 (4),pp.115?122,2021. M. Suzuki et al., “Fundamental study on scheduling of inspection process for fast reactor plants”, Proc. 9th International Congress on Advanced Applied Informatics, pp.801-805, 2020.
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