関西電力グループ「ゼロカーボンビジョン2050」について

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カテゴリ: 第17回
関西電力グループ「ゼロカーボンビジョン 2050」について “Zero Carbon Vision 2050” of the Kansai Electric Power Group 関西電力(株) 片岡 秀哉 HideyaKATAOKA Non-member 関西電力(株) 前原 啓吾 KeigoMAEHARA Member 関西電力(株) 山下 裕太 YutaYAMASHITA Non-member Abstract : The Kansai Electric Power Group declared “Zero Carbon Vision 2050” on February 26, 2021 to achieve a zero-carbon society in 2050 and would be committed to implementing the following three approaches. (i) We will provide our society with the best available solution toward zero-carbon emissions on the demand side along with supporting its implementation across all sectors. (ii) With priority given to safety, our group will seek to achieve the best energy mix which can lead to full decarbonization ensure secure stable supply with an increasing energy self-sufficiency ratio, and enhance economic efficiency. Especially, to achieve zero-carbon emissions on the supply side, we aim to maximize nuclear power by working on the following; (1) Advanced operational protocols introduced to improve the operation rate, with priority given to safety and (2) Installation, expansion or replacement of facilities. (iii) To create a hydrogen-based society, we will consider hydrogen production using electricity and heat source of nuclear power in the future. Keywords: Zero Carbon , Maximize Nuclear Power ,Installation, Expansion or Replacement , Hydrogen Production 1.はじめに 現在、世界中で脱炭素化に向けた動きが加速してお り、例えば、2019 年12 月に欧州委員会は「欧州グリーンディール」を発表し、2050 年までの気候中立(Climate Neutrality)の実現を目標として掲げた。また、米国におい ても、2021 年2 月19 日に「パリ協定」への復帰の実現や「2 兆ドル クリーンエネルギー投資計画」の策定など、脱炭素に向けた具体的政策を推進しつつあり、2050 年までのカーボンニュートラルに対して、我が国を含 め、123 カ国・1 地域(2020 年12 月12 日断面)がコミットしている。 我が国においては、2020 年10 月26 日、菅総理による 「2050 年カーボンニュートラル宣言」を受け、経済産業省が中心となって、同年12 月に、「2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を作成した。また、381 もの自治体が「2050 年 二酸化炭素排出実質ゼロ表 連絡先: 前原 啓吾 〒530-8270 大阪府大阪市北区中之島 3 丁目6 番16 号 原子燃料サイクル室 E-mail: maehara.keigo@a3.kepco.co.jp 明」をするなど、脱炭素化に向けて国内の動きも非常に 活性化している。 こうした状況下で、関西電力(以下、当社)は、2021 年2 月26 日に、持続可能な社会の実現に向け、ゼロカーボンエネルギーのリーディングカンパニーとして、社会のゼロカーボン化に向けて当社グループのリソースを結集して取り組むとした「ゼロカーボンビジョン2050」 (以下、本ビジョン)を発表した。本稿では、本ビジョ ンの内容とその実現に向けた取組みの一例を報告する。 2.関西電力グループが考える2050 年のエネルギーシステム 2050 年の社会では、脱炭素化、分散化、およびデジタル化の3 つのD に、「電化」を加えた”3D+D”が劇的に進展し、その結果、利用されるエネルギーは、「電気」と 「水素」に集約されるとともに、エネルギーシステムは 分散化、多様化するものと考えている。また、エネルギ ー供給はゼロカーボン化される一方で、エネルギー利用 者自身が発電した電気を消費し、余剰分の電気を売電す る生産消費者となり、エネルギー供給も行うなど、デマ ンドサイドの役割が拡大しているものと考えている。 3.「ゼロカーボンビジョン2050」取組みの3 つの方向性 当社は、2050 年のゼロカーボン社会実現に向けた取組 みとして、次の3 つの方向性を設定している。 ①デマンドサイドのゼロカーボン化 ②サプライサイドのゼロカーボン化 ③水素社会への挑戦 以下、それぞれの取組みの概要や方向性を記す。 デマンドサイドのゼロカーボン化 社会の全ての分野(家庭、業務、産業、運輸)が脱炭 素化を実現できるよう、原子力を含めたゼロカーボン電 力・分散型再エネ等の脱炭素エネルギーラインナップの 充実、エネルギー消費機器の電化推進、蓄電池等を活用 したエネルギーマネジメントの高度化に取り組む。 これらの取り組みを組み合わせたコンサルを通じて、 最適な脱炭素ソリューションの提供を実現する。 サプライサイドのゼロカーボン化 安全確保を前提に、全ての電気をゼロカーボン化し、 エネルギー自給率向上による安定供給や経済性を同時に 達成できる電源の最適な組合せの実現を目指す。 分散型エネルギーリソースの活用やレジリエンスの強 化等、多様化する社会ニーズも踏まえて再エネを最大限 導入・主力電源化し、それを可能にする送配電系統の高 度化、再エネ大量導入に必要な調整力等に優れた火力の ゼロカーボン化等に取り組む。 その中で、出力安定性に優れエネルギー密度が高い原 子力エネルギーは、安全最優先を前提として、最大限の 活用を目指す。具体的には2050 年に向け、①安全最優先を前提とした稼働率の改善に向けた運用の高度化と、 ②次世代軽水炉、高温ガス炉やSMR 等を視野に入れた 新増設・リプレースの実現に取り組む。 特に、①安全最優先を前提とした稼働率改善に向けた運用の高度化として、(1)トラブル低減の取組みの強化と、(2)定期検査の効率的実施に向けた取組みを行ってい く。これらの取組みにおいては、国内外のトラブル事例 の収集・分析や、米国を中心とした海外の活動状況を詳 細に分析し、良好事例の日本への導入や、定期検査中に実施している保全の最適化の検討を行っていく。 水素社会への挑戦 水素はゼロカーボン社会の実現のために必要不可欠な エネルギーであることから、水素社会の実現に向け、水 素のあらゆる可能性を追求し、関連する研究開発・実証・検討を積極的に行う。 その中で、原子力はこれまで安定的に大量のゼロカー ボン電力を供給するものとして活用されてきたが、将来 的にはその電気や高温熱を使った水素製造も検討してい く。 また、水素製造におけるイノベーションは、新たなビジネスチャンスを生み出すものと考えており、2050 年ゼロカーボン社会において、社会にとって価値のあるサービスやソリューションを提供できるよう、当社としても積極的に取り組むこととしている。 4.まとめ ゼロカーボン社会の実現に向け、ゼロカーボンエネル ギーのリーディングカンパニーとして、当社はグループ のリソースを結集し、かつビジネスパートナー、国や自 治体、研究機関など、産学官での連携により、社会に貢 献し続けていく。この取組みをより確実なものとするた め、当社においては、社長を委員長とするゼロカーボン 委員会を2021 年4 月1 日に設置し、本ビジョンの実現に向けた基本方針や、それを踏まえたロードマップの策 定に加え、取組みや進捗状況について、幅広く議論し、 実行することとしている。 本ビジョンの達成に向けた取組みにより、2021 年4 月22 日に公表された我が国のNDC である2013 年度比で温室効果化ガスの排出量46%削減の達成に積極的に貢献していきたい。 参考文献 [1] 関西電力株式会社 “ゼロカーボンビジョン2050” (2021 年2 月26 日)
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