音響診断による設備監視効率化の検討

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カテゴリ: 第15回
音響診断による設備監視効率化の検討 Study of efficient condition monitoring method by acoustic diagnosis 株式会社 llu 角皆 学 Manabu TSUNOKAI Member 株式会社 llu 萱田 良 Ryo KAYATA Member 株式会社 WlT 黄 皓宇 Haoyu HUANG Non Member In order to investigate a method for efficiently monitoring multiple machines in a building with an acoustic sensor, an experiment was performed to acquire acoustic data of three rotating machines running simultaneously in a state in which all three machines are normal or one of three is abnormal, with two microphones placed at different positions. The abnormality can be detected from the acoustic signal level, and it can also be specified that the bearing abnormality has occurred by frequency analysis. A method to identify the machine in which the abnormality occurred from the ratio of the increase amount of the signal level of the two microphones was proposed, which showed the ability of identifying the abnormal machine correctly under 5 conditions out of 6 conditions Keywords: Condition monitoring, Acoustic diagnosis, Acoustic source localization ー 背景 日本保全学会では平成18 年度以降「状態監視技術の回度化に関する調査検討分科会(CMT 分科会)」を設置し、海外調査、文献調査、検証・確認試験等を通じて状態監視技術及び状態基準保全に対する様々な調査、検討を行ってきた。平成 28 年度から、CMT 分科会技術ワーキンググループでは、プラントの広範囲を効率的に監視する技術の検討をテーマとしており、本研究はそのような技術の候補の1つと考えられる音響診断の有効性を評価するため、実験データの取得及び分析・検討を行ったものである。 2 回転機器異常付与試験 建屋内の複数の機器を音響センサで効率的に監視する手法を検討するため、実験室内で 3 台の回転機器を同時に運転し、音響センサによりデータを取得する試験を行った。3 台のうちのいずれか1台に異常を付与し、異常の有無の検知、および異常発生機器の特定が可能かどうかを評価した。異常発生機器の特定には異なる箇所で同時 測定した音響信号が有用と考えられるため、複数の音響センサで同時測定を行った。ただし、設置するマイクの 数 連絡先: 角皆学、〒110-0008 東京都台東区池之端2-7-17 池之端 ル、 03-5814-5350 E-mail:tsunokai@iiu.co.jp が増えるほど、振動計等により個々の設備を監視する状態に近くなり本検討の目的から外れるため、対象機器数よりも少ない2 個のマイクを使用した。 2.1 試験条件 図 1 に試験環境の模式図を示す。マイク位置の異常検出性への影響を評価するため、各試験条件につきマイク 1のみ位置を 3 通り変化させてデータを取得した。表 1 にマイクと各機器間の距離の一覧を示す。 図 1 試験環境模式図 表 1 マイクと各機器間の距離 (cm) マイク1 マイク2 P1 P2 P3 軸受試験機 410 300 275 175 ターポポンプ 140 247 330 348 式ポンプ 546 438 315 420 表 2 に回転機器の異常付与条件を示す。3 台すべてが正常な場合(条件1)の他、内輪に傷加工を施した軸受を軸受試験機に組み込んだ場合(条件2)、および条件2 と同一の傷加工軸受をターボポンプに組み込んだ場合(条件3)の3 通りの条件で試験を行った。 表 2 回転機器異常付与条件 軸受試験機 ターボ ポンプ 式 ポンプ 条件1 正常 正常 正常 正常 条件2 異常 (軸受試験機) 軸受傷 正常 正常 条件3 異常 (ターボポンプ) 正常 軸受傷 正常 3 分析結果 3.1 簡易分析結果 ず も 的な分析法として、それ れのマイクで取得した音圧レベルを試験条件 とに し、異常の有無が検出可能かどうか評価する。図 3 に試験条件 との音圧RMS を示す。マイク1についてはそれ れの設置位置P1~P3)の場合の値を示している。 0.25 0.2 0.15 音圧RMS 0.1 2.2 測定条件 2 つのマイクによる同時測定で、サンプリングレート 44.1kHz、各条件につき約1 分間のデータを取得した。マイクは無指向性マイク(ベリンガーECM8000)を使 用した。 0.05 0 条件1(3台正常) 条件2(軸受試験機異常) 条件3(ターボポンプ異常) 図 3 音圧RMS 2.3 異常付与の詳細 ターボポンプ及び軸受試験機は同じ型式の軸受を組み込めるようになっており、内輪に傷加工を施した同一の軸受を、それ れの機器に に組み込 ことで異常付 与試験を行った。 たターボポンプ及び軸受試験機は同一の軸回転周波数(48Hz)で運転している。表 3 に使用した軸受の特徴周波数、図 2 に傷加工軸受の外観を示す。 表 3 深溝球軸受6304 の特徴周波数(軸回転周波数48Hz) 内輪に対する転動体の通過数 212Hz 内輪に対する保持器の相対回転数 30.4Hz 内輪に人工的に 傷加工を施した いずれのマイク(位置)においても、正常時と し て異常時の音圧レベルが上昇しており、異常の検知が可能である。 なお、今回与えた異常の場合、単一の機器のみの運転であれ 、 間の により 的 に異常に 付くことが可能であったが、3 台同時運転した場合、 も音が大きい 式ポンプの影響が大きく、異常の有無を判別することは ではなかった。 周波数分析結果 各試験条件においてマイク2 で取得した音圧信号生波 形及び周波数スペクトルを図 4 に示す。マイク2 は軸受試験機に近い位置に設置されているマイクである。 条件1 正常条件2 異常(軸受試験機)条件3 異常(ターボポンプ) 生波形 周波数 スペクトル 低周波帯が増大3kHz近傍が増大 軸受6304 図 2 傷加工軸受 周波数 スペクトル (低周波帯) 内輪傷の特徴周波数212Hzと424Hzにピークが現れ 直接のFFTでは内輪傷の特徴周波数は現れていない 図 4 音圧信号生波形と周波数スペクトル(マイク2) 条件2 は条件1 と して生波形からも信号レベルが増大していることが確認でき、さらに周波数スペクトル においても内輪傷周波数のヒークが表れており、軸受試 験機の異常を明確に えていることが分かる。一 距離が いターボポンプの異常については3kHz 近 の増大としてとらえられているが、軸受試験機の異常ほど変化は ではなく、検出性が ちている。 次にマイク1 設置箇所P1 で取得した音圧信号生波形、周波数スペクトル、および1~5kHz をバンドパスした後エンベロープ処理をした信号の周波数スペクトルを図 5 に示す。マイク1 設置箇所P1 は、全測定条件のうちターボポンプに も近い場合である。 条件1 正常条件2 異常(軸受試験機) 条件3 異常(ターボポンプ) 異常発生機器を特定することが可能な場合もある。しかし今回の試験では、同一の機器が複数運用されているよ うな環境を想定し、ターボポンプと軸受試験機で同じ型式の軸受を使い、同じ軸回転周波数で運転しているため、軸受異常を示 する周波数が れても、いずれの機器で軸受異常が発生しているかを特定することはできない。 音源の位置・ 向の特定手法としては、複数マイクで同時測定した信号の位相差を評価する手法が一般的であ り、本試験データについても ずはこれらの手法を検討したが、満足な結果が得られなかったため、結果の記載は省略する。これは、回転機器の運転音が周期的で持続 的な信号であるため位相差が明確に得られにくいことや、今回の問題が単純な音源特定ではなく、異常により変化した信号成分の音源を特定する必要があるということが、手法の 用を にしていると考えられる。 そこで、異常機器に近いマイクでは信号の変化が大きいという、 分析・周波数分析の知見を踏 え、それ れのマイクの信号レベルの増加量から異常機器を特定する手法を検討した。 音響インテンシティ(単位時間に単位面 当たりを通過する音響エネルギー)は音源からの距離の2 乗に反 するため、各マイクに する、異常により増加したエネルギーの と、各マイクと異常源との距離の の関 は、反 や回 等を考 せず単純化すれ 、以 の式で表すことができる。 図 5 音圧信号生波形と (マイク1-P1) d1II - I2 = 2 d2II - I1 1 (1) 条件3 の生波形は条件1 と して周期的なパルス状の波形が になっており、距離の近いターボポンプの生波形から明確に異常の検知が可能であることが分かる。 たエネルギーの増大が見られる3kHz 近 を残すバンドパスフィルタ後、エンベロープ処理した周波数スペク トルでは、内輪傷の特徴周波数が明確に れている。一 距離の い軸受試験機の異常に対しては、内輪傷周波数が明確ではなく、マイク2 の場合と して検出性が ちている。 異常発生機器の特定 次に、得られた信号から、いずれの機器で異常が発生 したかを特定する手法を検討する。対象とする複数機器の仕様や運転条件が異なれ 、増大した周波数のみから di:マイクi と音源との距離 Ii':マイクi の音響インテンシティ(異常時) Ii:マイクi の音響インテンシティ(正常時) 式(1)が成り立つとすれ 、得られた信号から(1)式の右辺を計算することで、2 つのマイクと異常発生源との距離 が推定できる。推定した異常発生源とマイクとの距離 と、実際の機器とマイクとの距離 を することで、異常が発生している機器の特定を試みる。 マイク1の位置がP1~P3 の場合のそれ れについて、正常時と異常時の音響インテンシティの増加 (式(1)の右辺)と、実測した距離 (表 1 の数値から計算)のグ ラフを図 6 に示す。 推定した距離比 (音響インテンシティの増加比) 2 推定した距離比 1.5 1 0.5 0 条件2 軸受試験機異常 条件3 ターボポンプ異常 2.5 2 実際の距離比 1.5 1 0.5 0 実際の距離比 マイク1までの距離/マイク2までの距離 軸受試験機 ターボポンプ 容積式ポンプ 4 まとめ 本研究では、建屋内の複数の機器を音響センサで効率 的に監視する手法を検討するため、3 台の回転機器を対象とし、全て正常 たはいずれか1台に異常を付与した状態で運転し、2つのマイクにより音響データを取得する試験を行った。3 台同時運転の場合、 間の による異 マイク1の設置位置P1 推定した距離比 実際の距離比 常の有無の判別は ではなかったが、異常時に取得し た音響信号レベルは正常時と して明確に上昇してお 1.8(音響インテンシティの増加比) 1.6 1.4 推定した距離比 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 条件2 軸受試験機異常 条件3 ターボポンプ異常 1.8 マイク1までの距離/マイク2までの距離 1.6 1.4 実際の距離比 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 軸受試験機 ターボポンプ 容積式ポンプ り、音響信号からは異常の検知が可能であった。 た、周波数分析により、付与した異常(軸受内輪傷)に特徴的な周波数も確認でき、音響センサにより軸受異常が発生していることを特定できることが示された。 さらに、各マイクにおける音響インテンシティの増加 マイク1の設置位置P2 推定した距離比 実際の距離比 率から異常発生源との距離 を推定し、異常機器を特定する手法を考 し、特定性能の評価を行った。この手法 (音響インテンシティの増加比) 1.8 1.6 1.4 推定した距離比 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 1.8 1.6 1.4 実際の距離比 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 マイク1までの距離/マイク2までの距離 により、多くの条件 において異常発生源を正しく推定可能であることが示され、一定の有効性が示された。 ただし、異常発生源の特定に している ースもあり、対象機器の数が増えれ 特定性能が ちることは自 0 条件2 軸受試験機異常 条件3 ターボポンプ異常 0 軸受試験機 ターボポンプ 容積式ポンプ 明であるため、周波数分析等、他の手法と組み合 せて (c) マイク1の設置位置P3 図 6 音圧信号生波形と周波数スペクトル(マイク2) マイク1の設置位置がP1 の場合、条件2 における異常発生源との推定距離 は、 式ポンプのものと も近く、異常発生源を正しく特定出来ていない。条件 3 における異常発生源との推定距離 は、ターボポンプの距離 に も近く、異常発生源を正しく推定出来ている。 マイク 1 の設置位置が P2, P3 の場合、条件 2、条件 3 ともに異常発生源を正しく推定出来ている。 6 つの条件(異常2Xマイク位置 3)のうち、5 つの条件で異常発生源を正しく推定できており、本手法のある程度の有効性を示す結果となった。 用いることが必要と考えられる。 今後の 題として、異常発生源の特定性能を向上させる信号処理 法の検討や、指向性マイクを使用することによる効果の検証等が挙げられる
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