Good PRAへ向けたNRRCの取り組み
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カテゴリ: 第15回
Good PRA へ向けたNRRC の取り組み
Approach of NRRC for implementation of Good PRA
電 力 中 央 研 究 所原子力リスク研究センター
西義久YoshihisaNISHI非会員
NRRC (Nuclear Risk Research Center) is focusing on support of voluntary safety improvement activities of electric utilities. In this paper, several approaches to implement good PRA are described.
Keywords: PRA, Risk, Earthquake, Tsunami, Fire, Human Reliability, Severe Accident
はじめに
原子力リスク研究センター(NRRC)は、原子力従事者が原子力発電の利用における安全性をたゆまず向上させていく取組みに必要となる技術やノウハウを獲得するた めの研究開発拠点として、2014 年に電力中央研究所内に発足した。
NRRC は電気事業者と密接に協力しつつ、PRA 手法の高度化と外部事象ハザード評価に関する研究を実施している。
一方、日本の事業者においては、日本の原子力発電所 におけるリスク情報の活用が始まったばかりであり、自立的な安全強化のために加速すべきであると認識してい る。そのため、2016 年7 月にNRRC にRIDM 推進チームが設置され、RIDM 導入戦略計画の策定が開始された。
RIDM 推進チームでは、実 のPRA の開発、のプ ント ータ ド ン、PRA ープロセス、PRA 関連の人材育成プログ ムの開発を支援している。
本論文では、上記に記載したNRRC における研究開発状況について、その一部の進捗状況を報告する。
自然外部事象研究での取り組みの例
大地震や巨大津波等、非常に低い頻度であっても発生 した際には甚大な被害をもたらし得る事象の発生メカニ
ズムの解明や、地震、津波等の自然外部事象を起因とする確率論的リスク評価(PRA)手法の高度化に取り組んでいる。
地震に関する研究の事例
東京電力福島第一原子力事故以降の原子力規制委員会 による規制改訂をうけ、各原子力サ トの基準地震動(決定論)や確率論的地震動ハザードは従前の結果と比較し て増大する傾向にある。増大した地震動に対して、原子 力施設を構成する重要な機器・配管系構造物の耐震裕度、特に動的機器の機能維持確認加速度を確認するため、従 来型の振動実験装置に共振装置を付加し、共振振動台と して最大20g までの加振を可能とし、主蒸気逃し安全弁や電動弁等の最大機能維持確認に関する実験を継続実施している。
地震ハザード評価については、 国で開発された確率論的地震ハザード評価の ド ン( )に基 き電力事業者と協働で初めて我が国に適用し、専門家会合の開催や地震ハザード評価に必要となる研究開発を進めている。同手法により得られた知見は国内の他の原子力地点にも展開されることとなる。また、地震ハザード評価の前提となる活断層評価については、活断層の連動性評価の基準やモ リングの研究を進めている。
機器・配管、構造物や地盤の条件付き損傷確率(フ ジリティ)評価について、現実的な応答・耐力評価を実 現するための非線形特性の導入等の研究を実施している。
〒100-8126 東京都千代田区大手町1-6-1 電力中央研究所 原子力リスク研究センター 西 義久
y-nishi@criepi.denken.or.jp
SSHAC(Senior Seismic Hazard Analysis Committee 地震ハザード解析専門家委員会)にて開発された確率論的地震ハザード評価手順
2 2 津波に関する研究の動向
上で する大規 な津波を、実現象に い形で再現可能な「津波 流水路」を設置して、従前は十分な検討がなされていなかった、津波波力や漂流物の衝突実験を行いこれらの評価式を策定している。また、平成29 年度から包括的な津波PRA 手法構築に電力会社と協働で取組みを開始し、国内外でも最先端の津波PRA 手法を構築する計画である。同手法は国内の他の原子力地点 にも展開されることとなる。
リスク評価手法高度化に関する取り組みの例
内部火災PRA
内部火災PRA については、 国における火災PRA
ドであるNUREG/CR-6850 及びその後の研究 ポートを参考とし、火災発生頻度、発熱速度及び回路解析等の
別課題における評価手法の開発を進めている。また、火災PRA で考慮する火災影響及び発熱速度に係る事象進展の把握や ータ取得のために、国際火災試験プロジェクトヘの参画及び当所での火災試験を実施している。
これらの検討を踏まえた火災PRAの ダンスを整備し、事業者の内部火災PRA ヘの展開を図る。
人間信頼性評価手法の開発(HRA)
現在,国内PRA で使用されている人間信頼性パ メータはTHERP 手法を用いており,人的過誤率(HEP)の値は古いNUREG の引用をしている。一方国外では, 国で認知/ 診断失敗をCBOTM やHCR 等を組み合わせたHRACalculator による評価が標準化されており,仏国等では第二世代評価手法が実用化されつつある。また,NRC/EPRI による文脈を扱う新世代の評価手法としてIOHEAS が開発されている。これらの背景を踏まえ,外部事象PRA や過酷状況下のPRA に用いる分析手法も含め、HRA 評価手法の国内での確立が急 であり、NRRC では、福島第一発電所事故などの経験を反映した過酷状況下のPRA における新HRA パメータ評価手法及びHRA ド ンの開発及び実用化を検討している。
3 3 PRA のためのデータ分析?信頼性評価基盤技術の確立
PRA の知見を活用して原子力安全の継続的向上を図
るためには、自国の運転実績を用いて 別プ ントのPRA を実施することが重要である。また、NRRC に設置したTAC (国内外のPRA のス リストによる技術 委員会) から推奨された検討事項なども踏まえ、従来我が国のPRA に使用されている種 のパ メータ(起因事象発生頻度、機器故障率[緊急・SA 対策機器含む]、共通原因故障率、系統 ン リティ、ハザード発生頻度など)について ータの高度化を継続している。
3 4 過酷事故評価
福島第一発電所事故では、周辺住民の避難という厳し い状況が生じた経験を踏まえ、過酷事故発生のリスク評価としてCs137 放出量が100TB を超えるような事故の頻度を10-6未満とするという指標が示されている。
ソースタームの放出を適切に評価し、 2PRA 実施の高度化に するため、NRRC では、 ロ の動評価、格納容器の過温破損の詳細評価、使用済燃料プー での過酷事故評価、再臨界などに関する研究に取り組んでいる。
これらの成果は、過酷事故解析コードMAAP のモ に反映され、事象進展のより適切な評価が可能となる。
Good PRA 構築に向けた基盤整備
国際的な先行事例に比肩し、必要に応じて日本の状況 を踏まえた改善も加わった、プ ント固有のPRA(Good PRA)をしっかり構築していくことが重要である。そのため、PWR、BWR それぞれの炉型でパ ロットプ ントを選定し、海外の専門家の ー結果などの水平展開を図っている。また、国内 ーの実施体制・方法の確立、および教育 ステムなど構築を図っている。
おわりに
NRRC のリスク評価に関する研究開発の 要を べた。今後も、NRRC は産業界や国際機関と密接な連携を図りながら電気事業者の自主的安全性向上活動のサポートに一層注力していく