α汚染遠隔計測における3次元空間再構築技術の開発

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カテゴリ: 第17回
α汚染遠隔計測における 3 次元空間再構築技術の開発 Development of 3D reconstruction for remote alpha contamination measurement 東芝エネルギーシステムズ(株)、 技術研究組合 国際廃炉研究開発機構 坂本 直弥 Naoya SAKAMOTO Member 東芝エネルギーシステムズ(株)、 技術研究組合 国際廃炉研究開発機構 大甕 舜一朗 Shunichiro OMIKA Member 東芝エネルギーシステムズ(株)、 技術研究組合 国際廃炉研究開発機構 三浦 崇広 Takahiro MIURA Non- member 東芝エネルギーシステムズ(株)、 技術研究組合 国際廃炉研究開発機構 久米 直人 Naoto KUME Non- member 東芝エネルギーシステムズ(株)、 技術研究組合 国際廃炉研究開発機構 松崎 謙司 Kenji MATSUZAKI Non- member 東芝エネルギーシステムズ(株)、 技術研究組合 国際廃炉研究開発機構 宮原 康文 Yasufumi MIYAHARA Non- member 東芝エネルギーシステムズ(株)、 技術研究組合 国際廃炉研究開発機構 高木 純一 Junichi TAKAGI Non- member Abstract Alpha Camera has been developed to check the alpha contamination of solid wastes generated during decommissioning of Fukushima Daiichi Nuclear Power Station (1F). A lot of measurements are needed to reveal the alpha contamination distributions due to the narrow field of view of the Alpha Camera. Therefore, in this paper, we propose a novel approach which reconstructs the divided measurement data in a three-dimensional space to identify the contaminated area easily. In primitive demonstration using new reconstruct algorithm,3D model was constructed in 98 seconds. It was fast enough to grasp the alpha distribution on time. We have achieved visualization of alpha contamination distribution that contributes to planning of dismantling and decontamination work. Keywords: 1F, Decommissioning, Alpha contamination, Alpha Camera, 3D reconstruction 1.開発背景 福島第一原子力発電所(以下、1F)は震災による事故に 伴い放射性物質が飛散しており、調査により原子炉建屋 内の一部にα核種の付着が確認されている。α汚染の可 能性がある廃棄物に対しては、スミヤ測定を行い、一定以上の汚染が検出された場合は分別した上で保管容器に収納・保管している。しかし、全ての廃棄物をスミヤ測定す る場合、測定に係る時間が膨大になり、測定作業を行う作 業員の被ばくが増加する懸念がある。 そこで、遠隔から解体前建屋など構造物の表面α汚染分布を測定し、解体や除染工事に寄与できる汚染評価技 術を開発している。表面α汚染分布を検出する装置とし てアルファカメラと呼ばれる装置を開発している[1]。ア ルファカメラの視野は狭いため、1F の現場で使用する際 連絡先: 坂本 直弥、〒183-8511 東京都府中市東芝町1 東芝エネルギーシステムズ(株)、 E-mail: naoya2.sakamoto@toshiba.co.jp には対象を分割して計測する必要がある。そこで、分割さ れた計測データを 3 次元空間で再構成する技術を開発したので報告する。 2.アルファカメラによる計測 計測フロー アルファカメラによる計測は、対象を床面、壁面、天 井面とし、計測と移動を繰り返し行う計画である。作業 員の被ばくを低減するために、計測場所に装置を設置し た後は遠隔地から操作して計測する。検討中の計測対象毎の計測フローをFig.1 に示す。 Fig.1 Measurement flow システム概要 広範囲の表面α汚染分布を計測するためには、アルファカメラを移動しながら撮影方向を変更し、分割して計 測する必要がある。そこで、パン・チルト回転動作と昇降動作が可能な運搬台車装置を試作してFig.2 に示す計測システムを構築した。アルファカメラには撮影方向以 外の放射線の影響を受けないように遮蔽体を組み込んで おり重量が大きいため、パン軸およびチルト軸の軸心が アルファカメラの重心位置近傍を通るように設計することで安定した回転動作ができるようにした。また、現場での運用性を考慮して電気工事が必要なAC200V ではなく、AC100V のコンセントから給電して駆動できるようにした。昇降機能には市販の電動式リフターを活用したが、手元スイッチで昇降操作する仕様であったため、昇 降高さをワイヤ式のポテンショメータで計測し、目標高さに位置決めできるように制御装置から操作できるよう に改良した。パン・チルト機構およびリフター昇降の制 御装置は台車上に搭載し、遠隔地にある操作用PC からイーサネット経由で操作できるようにした。計測時のパン・チルト角度および昇降高さ等の位置決めに係る測定 情報は時刻情報とともにファイルに記録している。 開発したアルファカメラには、α線強度を計測するセ ンサのほか、距離補正のために距離画像とカラー画像を 同時に取得可能なTOF(Time Of Flight)カメラを組み込んでいる。 Photograph of exterior System diagram Fig.2 Measurement system 現場適用における課題 開発したアルファカメラの視野角は±13.6°である。しかし、この視野では1 回の計測で得られる範囲が狭く、例えば1m 先の2m×2m の範囲を計測するには少なくとも16 回計測する必要がある。そのため、計測漏れを調べるには大量のデータを確認する必要があり、確認作業に時間がかかる、分割して計測されているために全 体像の把握が難しい、などの課題があり、計測したデータを集約し、俯瞰的に確認するための技術が求められ る。そこで、複数の計測データを3 次元的に再構成する技術を開発した。 3.3 次元空間再構築技術について 3 次元空間再構築技術の概要 計測したデータを集約し、俯瞰的に確認するための技 術として、パノラマ合成がある [2] 。この方法は、合成したパノラマ画像を任意の画角で俯瞰的に見ることができる。しかし、今回の運搬台車装置では、パン、チルトの回 転移動に加え、昇降や台車自体の移動といった並進移動を行う。パノラマ合成では回転移動と並進移動を行う場合、視差が生じるためパノラマ合成は困難である。 今回、回転移動と並進移動両方を組合せた移動に対応する合成技術として、取得したデータを 3 次元点群に変換し、3 次元点群を運搬台車装置の移動量に応じて3 次元空間で再構築していく技術を開発した。処理の流れをFig.3 に示す。これにより、すべての計測データを3 次元空間上で 1 つのデータに集約することができる。また、任意の画角、位置から計測結果を視認することができる。 Fig.3 Processing flow 3 次元点群への変換 本システムでは1 回の計測により、Fig.4 に示すアルファカメラによるα線強度、TOF カメラによる距離画像とカラー画像が得られる。なお、Fig.4 に示すα線強度は表示用のサンプルデータである。 各カメラは運搬台車装置に固定されているため、カメラの位置関係をあらかじめ計測しておくことで、距離画 像とα線強度、距離画像とカラー画像を画素単位で対応 づけることが可能である。 距離画像は各画素に距離情報が入っているため、カメ ラ画角と組み合わせると各画素の3 次元座標が得られ、対応づけた情報とともに距離画像を3 次元点群に変換することができる。 これにより、Fig.4 のデータをα線強度とカラー情報を保有するFig.5 に示すような3 次元点群へ変換することを可能にした。 Alpha intensity(b) Depth(c) Color Fig.4 Camera images Front view of color and alpha intensity point cloud Side view of color and alpha intensity point cloud Fig.5 Generated point cloud 3 次元空間での再構築 変換した3 次元点群は、それぞれ計測した位置を原点とする3 次元点群になっている。そのため、計測した位置を推定し、3 次元点群間の位置合わせを行わなければ、1 つの3 次元点群に集約することができない。これに対して、運搬台車装置に保存されたパン・チルト角度 および昇降高さを利用し、アルファカメラの移動量を算 出し、3 次元点群の位置合わせを行うこととした。 また、位置合わせ精度の向上のため、計測地点が異な る点群間で最近傍の点同士をペアとし、ペア間の距離が 最小となるような3 次元点群間の移動量を推定し、移動後に再び最近傍の点を求める演算を繰り返して移動量が収束するまで反復計算する反復最近接点(Iterative Closest Point:以下、「ICP」という)アルゴリズム[3]を用いて、位置合わせの最適化処理を行うこととした。 本処理の確認試験として、パン角度を3 条件、チルト角度を5 条件、昇降量を3 条件組み合わせ、合計45 条件で自社の実験室を計測した。本パラメータは、アルファカメラの視野角±13.6°を考慮し、隣接する計測位置で視野の一部が重なり合うように設定した。計測では、 運搬台車装置を用いてアルファカメラを移動させてい る。計測対象と本処理による結果をFig.6 に示す。再構築時の位置合わせに誤差が生じると、同じ構造物が異なる場所に投影されるので二重に見えてしまう。本処理結果では窓枠や仕切りといった構造物、床面にある通路を 示す黄色線は二重に見えておらず、再構成が可能なこと を確認した。 Measurement area Result of 3D point cloud Fig.6 Registration result 現場に向けた処理フロー構築 現場では、後戻り作業低減のために計測できていない領域がないか、計測後すぐに結果を確認する必要があ る。しかし、Fig.6 の3 次元再構築にはCPU6 コア、メモリ16GB のPC で約12 時間を要していた。そのため、3 次元再構築処理を3 段階に分ける構成とした。ステッ プ1 は運搬台車装置に保存されたパン・チルト角度および昇降高さによる移動量算出と位置合わせまでを行う。ステップ2 はICP アルゴリズムによる最適化を行うが、新規に計測されたデータのみを対象とし処理の高速化を 図る。ステップ3 は全計測データに対してICP 処理を適用し位置合わせを行う構成とした。また、それぞれのス テップで結果を出力するようにしている。 これにより、ステップ1 では計測直後から合成結果を簡易的に確認することが可能になる。また、ステップ2 は最小の計算量で位置合わせを行うため、次の計測準備 中に再構築結果を確認することができる。さらに、ステ ップ3 はオフライン処理で行うことにより、より高い精度で再構築結果を得ることが可能である。 各ステップの処理時間を3.3 のデータ用いて計測した。ステップ1 は10 秒以下の処理時間であることを確認した。また、ステップ2 では、1 か所の計測データを追加する場合の処理時間が平均98 秒、最大で161 秒で あり、現場で結果を確認するには十分短い時間であるこ とを確認した。 4.性能確認試験 開発した3 次元空間再構築技術により、α線強度の計測結果を重畳させて表示可能か検証するために、実際のα線源を用いた計測を実施した。アルファカメラの計測は、α線が空気中の窒素に衝突することで発生する微弱な紫外線を検出するため、暗所で行う必要がある。そこで、約1.6m×5.2m の暗室内にアルファカメラおよび4 個のα線源をFig.7 のように配置した。アルファカメラの向きをパン方向に20°刻みで4 回変更し複数回計測を実施し、3 次元空間での再構築を実施した。結果をFig.8 に示す。α線源#1 はTOF カメラに対して角度が大きいため距離情報が得られず、α線強度を補正することができないため、α線強度が表示されていない。これは、対象とTOF カメラを正対に近づけることで解決できるた め、計測手順を反映することとした。また、#4 は線源が弱いためα線強度は背景と同色になっている。#2 および#3 については、3 次元空間上で#2 が壁面に、#3 がパネルに存在していることが確認できる。これによりα線強度とその位置関係を3 次元空間で確認することができ、本技術により再構成ができることを確認した。 Fig.7 Positional relationship between Alpha Camera and sources Fig.8 Result of alpha intensity of 3D point cloud 5.まとめ 表面α汚染分布の可視化に向けて、広い空間を分割し て計測した場合に生じる課題に対して、3 次元点群を用いた3 次元空間再構築技術を開発した。 今後の開発課題として、再構築時の位置合わせの誤差 がある。この位置合わせは、対象の形状に特徴的な変化 がある事が前提となっている。しかし現場では、形状変 化がない壁面等が存在する可能性があり、位置合わせが できず誤差が発生する可能性がある。そこで、今回使用していない、カラー情報など、より多くの情報を用いて 詳細な位置合わせを可能にするため、より高精度な3 次元点群の再構築技術を開発していく。 本研究開発は、経済産業省 資源エネルギー庁の平成 30 年度補正予算「廃炉・汚染水対策事業費補助金. (固体廃棄物の処理・処分に関する研究開発)」の一部として、技術研究組合 国際廃炉研究開発機構の組合員である東芝エネルギーシステムズ株式会社が実施した内容の 一部である。 参考文献 技術研究組合 国際廃炉研究開発機構、 “「平成30 年度補正予算「廃炉・汚染水対策事業費補助金(固 体廃棄物の処理・処分に関する研究開発)」2019 年度成果”、 pp40-73、 2020 画像情報教育振興協会、 “ディジタル画像処理 [改訂第二版]”、 画像情報教育振興協会、 2020 増田、 “ICP アルゴリズム”、 研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM)、 Vol.2009-CVIM-168、 No.23、 pp.1-8、2009
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