AEセンサーを用いた打音検査によるグラウンドアンカーの緊張力評価 その2
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カテゴリ: 第15回
AEセンサーを用いた打音検査による グラウンドアンカーの緊張力評価 その2
Evaluation of tension of ground anchor by hammering test using AE sensor Vol.2
西日本高速道路(株)
浜崎智洋
TomohiroHAMASAKI
原子燃料工業(株)
松永嵩
TakashiMATSUNAGA
Member
原子燃料工業(株)
小川良太
Ryota OGAWA
Member
原子燃料工業(株)
蟻部仁博
YoshihiroISOBE
Member
(有)マサクリーン(有)マサクリーン
佐山政幸佐山勝一
MasayukiSAYAMA ShoichiSAYAMA
Abstract
The purpose of this research is development of tension measurement method using diagnostic technique of hammer sound using acoustic radiation sensor. This report summarizes the method of evaluating the anchor tension based on the natural frequency of the anchor head and the applicability of the method to measured data at the site.
Keywords: ground anchor, nondestructive inspection, tension, acoustic emission sensor
はじめに
社会インフラや工場設備等の維持管理において,健全度を調査する手段の一つとして従来から打音点検が行われてきた.打音法は,調査対象をハンマで打撃し,その
の打撃により た音とハンマを した打 との つから,検査者が の有 を判定する手法である.しかしながら,打音法の判定結果は検査者の熟練度に大き 依存しているため,判定結果に対する信頼性が充分とは言えず,調査対象の健全性の定量的な診断を精密に行う ことが困難であった.そこで,筆者らは,あと施工アン カーの健全性 を目的として開発されたAcoustic Emission(以下,「AE」という) ン を いた 性? 録性?定量性のある打音診断技術[1-2]を,土木構造物のグラウンドアンカー(以下,「アンカー」という)の緊張力
さ ることを た.
連絡先:蟻部 仁博、〒590-0481 大阪府泉南郡熊取町
一 目 、 工 、
E-mail: tk-matunaga@nfi.co.jp
既往の研究により、アンカー頭部の振動特性がアンカー導入された緊張力と相関があることが、実験及びFE M理論から明らかになった[3-5]。したがって、本報では、 高速道路のり面に施工されたアンカーの頭部振動特性と、そのアンカーに導入された緊張力を することで、アンカー頭部の振動特性に 緊張力 の 場性を検討した。
AEセンサを用いた打音診断技術
測定、評価方法
AE ン を いた打音診断技術の振動測定方法は、図 1に すように、アンカーの頭部 面に ン を し当て、アンカー頭部 面を打撃する。これにより、信号波形が得られ(図 2上図)、この信号波形を高速フーリ
(FFT) 理することにより、 数の固有振動 ークを含んだ周波数分布を得る(図 2下図)。
既往の研究により、緊張力と曲月振動の固有振動数に相関があること、さらに、1次モードの固有振動数と
し、2次モードの固有振動数の方が緊張力に対する度が高いことが されたため[6]、本報では、2次モードの曲月振動の固有振動周波数(以下「2 次周波数」という) を緊張力 指標とした。
ここで、曲月振動の固有振動数 f は、以下に す片持ち梁の曲月振動の理論解から算出した。また、軸力を受ける場合の固有振動数 f ' は、式 (2)となる。但し、入 ; 固有 、L ;振動 さ、E ; 性係数、I ;断面定数、
? ;密度、A ;断面積、T 軸力、PC オイラーの限
界荷重、n ;振動モードである。
f ?(1)
動数は、梁の曲月振動理論を参考にすると、以下の関係があると推察される。
① アンカー頭部の形状と周波数の関係 曲月振動の固有振動数は、頭部 さの に 例し、頭部径に
例
② 緊張力と周波数の関係 緊張力を受けた周波数と任意の周波数の (以下「周波数 」という)は、緊張力の平方根に 例
そこで、アンカー頭部の振動特性に 緊張力 の
アプローチを2段階に分けて検討した。
f ? ? f
(2)
アンカー頭部の形状と周波数の関係式の導出
緊張力は一定であり、頭部形状(頭部 さ、頭部径) が なるアンカーの振動測定データに き、アンカー頭部の形状と周波数の関係式(式(3))を算出する。
本式は、式(1)を参考に、頭部形状の項を 数として抽出している。また、片持ち梁の理論と 実のアンカーの固定状態は なることから、切片を加える形でモデル化した。
但し、L ;頭部 さ、D ;頭部径、? , ?? ;回帰係数
である。
図 1 AEセンサを用いた打音検査の概略図
f0 (L, D) ? ?
D ? ??
L2
(3)
400
200
Amp ltude [mV]
0
-200
-400
0
1.0
0.8
5101520
-3
Tlme
[10 s]
緊張力 式の導出
式(3)と緊張力が なるアンカーの振動測定データに
き、緊張力 式(式(4))を算出する。
本式は、式(2)を参考に、周波数 の2 に 例する形とした。また、片持ち梁の理論と 実のアンカーの固定状態は なることから、切片を加える形でモデル化した。
但し、T ;緊張力、 f ' ;振動測定で得られた曲月振動の固有振動周波数、? ,? ;回帰係数である。
2
f
?
?
?
Magunltude[a.u]
T ? ? ?
f '? ? ?
(4)
0.6
? 0
0.4
?(L, D) ?
0.2
0.0
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
現場測定データに基づく緊張力評価
現場測定アンカーの諸元
高速道路のり面に施工されたアンカーに対し、AE
Frequency[Hz]
図 2
2.2 緊張力評価のアプローチ
緊張力が導入されたアンカー頭部の曲月振動の固有振
ン を いた打音診断技術を いて、アンカー頭部の振動を測定した。アンカーの種類は、上部固定形式がナッ ト定着タイプで,緊張材が PC 鋼より線タイプのものを
対象とした。各 験箇所とその諸元を表 1 に す。緊張材の構成が1Xが 1.8 である。なお,新設アンカーについては,頭部の緊張?定着作 が完了した後に打音診断を行った。一方,既設アンカーについては,打音診断後にリフトオフ 験を行い,緊張力を把握した。
表 1 現場調査箇所及びアンカー諸元
試験
区分
試験
数
外径 [mm]
長さ [mm]
緊張カ
[kN]
カーカに
緊張カ比
カーカ
0.6Tus [kN]
1
新設
19
48
119~
145
244
71%
343.8
2
新設
21
161~
268
319.6~
339.6
93%~
99%
3
既設
4
165~
173
237~
273
69%~
79%
頭部 状 2次 の関係式の導出
アンカー振動部の形状と周波数の関係式については、
頭部 さの なるデータが多 、また緊張力がほぼ一定の表 1 の 験箇所 の 場データを いた。 軸に振動測定結果より抽出した2次周波数、横軸にアンカー頭部の形状に関する ラ ータ(D/L- )としたグラフを図 3に す。
緊張力がほぼ一定の場合、得られた2次周波数はD/L- と 例関係があり、R =0.97 で良い相関がある。
10000
8000
6000
周波数 [Hz]
験で得られた、緊張力が増加/低下に伴い、周波数が上昇
/低下する傾向と符合する。
次に、緊張力 式を導出するため、横軸を周波数の 、 軸を緊張力としたグラフを図 5に す。これらのプロットの単回帰線が緊張力 式となる。この緊張力 式から算出した推定緊張力と実際の緊張力の対
を図 6に す。
推定緊張力の 精度としては、 本 本( 7 ) のアンカーが アンカー力の 10 ( 3 )の で推定可能であり、 0 に全アンカーが収まる結果となった。 回の 場データについては、調査箇所によって、アンカーの設置状況(アンカープレートや受圧版) が なるため、これらの影響についても 後検証してい
ことが重要である。
その上で、① 準周波数の決定精度、②2次周波数の抽出精度、を改善さ るにより、緊張力 精度を向上さ る。①に関しては、頭部 さが なるアンカーのデータを 充することで精度を向上することが可能である。また、②に関しては、 検証 めているが、振動測定方法によって改善可能である見 しを得ている。
3
14x10
12
10
周波数 [Hz]
8
6
4
2
4000
2000
0
0.5
1.0
1.5
2.0
2 -1
0/L [m ]
2.5
3.0
3.5
0
0.6
0.8
1.0
1.2
1.4
1.6
1.8
2.0
図 4 アンカー頭部の 状 2次 の関係(全データ) 回帰線 f0 (L, D) 緊張力が319 6-339 6 kN における任意の
2 -1
0/L [m ]
図 3 アンカー頭部の 状 2次 の関係(調査箇所2) 回帰線 f0 (L, D) 緊張力が319 6-339 6 kN における任意の頭部長さ、頭部径における基準の
頭部長さ、頭部径における基準の
400
350
緊張力 [kN]
緊張力評価式の導出 評価誤差
軸に振動測定結果より抽出した2次周波数、横軸にアンカー頭部の形状に関する ラ ータ(D/L- )とした
グラフを図 4に す。
調査箇所2より低い緊張力である、調査箇所1および
300
250
200
0.6
0.7
0.8
0.9
(f/f )2
0
1.0
1.1
1.2
3のアンカーの2次周波数は、調査箇所2の直線回帰線より概ね低周波 の となった。これは、既往の室内
図 5 緊張力 比の関係
回帰線 緊張力評価式
400
350
推定緊張力 [kN]
300
250
200
200
250
300
実緊張力 [kN]
350
400
推定した結果、 本 本( 7 )のアンカーが アンカー力の 10 ( 3 )の で推定可能であり、 0 に全アンカーが収まる結果となった。 回の 場データについては、調査箇所によって、アンカーの設置状況(アンカープレートや受圧版)が なるため、これらの影響についても 後検証してい ことが重要である。
後の展開として、① 準周波数の決定精度、② 2次周波数の抽出精度を向上さ ることにより、緊張力 精度を向上さ る。①に関しては、頭部 さが なるアンカーのデータを 充することで精度を向上することが可能である。また、②に
図 6 緊張力評価式による 定緊張力 緊張力の 比
ま め
本稿では、アンカーの頭部振動特性から緊張力をする方法を検討し、その手法を高速道路の法面に施工されたアンカーに した結果について取りまとめた。以下、得られた知見をまとめる。
緊張力 のアプローチとして、梁の曲月振動理論を参考とし、①緊張力一定下におけるアンカー頭部形状と周波数の関係式( 準周波数)を算出し、②実際の測定で得られた周波数と先に導出した 準周波数との (周波数 )と緊張力との関係式より、アンカーに導入された緊張力を する手法を考案した。
一定緊張力下のアンカーでは、その頭部外径D と頭部 さL を いた、アンカー頭部の形状に関する ラ ータ(D/L- )と周波数の関係は、理論 り 例関係となり、R =0.97 で良い相関があることが分かった。
アンカー頭部の形状に関する ラ ータ(D/L- )一定下では、緊張力が増加/低下に伴い、周波数が上昇/低下する結果が得られ、このことは既往の室内 験で得られた知見と符合する。
場で測定したデータおよび緊張力から、緊張力
式を導出し、同一のデータで 精度を検証、
関しては、 検証 めているが、振動測定方法によって改善可能である見 しを得ている。
参考文献
熊谷秀樹ら,ケミカルアンカの検査技術開発,”,日本保全学会第13 回学術講演会,pp.267-268.
小川良太ら,“AE ン を いた打音検査システムによる カニカルアンカ検査技術の開発2,”土木学会第71 回年次学術講演会,pp.1423-1424.
"松永 嵩ら, ”グラウンドアンカーの頭部振動特性による緊張力 システムの開発(その1)一振動特性
に関する考察一”,第 52 回 盤工学研究発表会,
pp.1295-1296, 2017
浜崎 智洋ら, ”グラウンドアンカーの頭部振動特性による緊張力 システムの開発(その2) 一
計測結果に関する ?検証一”,第52 回 盤工学研究発表会, pp.1297-1298, 2017
小川 良太ら, ”グラウンドアンカーの頭部振動特性による緊張力 システムの開発(その3)一FE M解析による検証一”,第 52 回 盤工学研究発表会, pp.1299-1300, 2017
浜崎 智洋ら, ”AE ン ーを いた打音検査によるグラウンドアンカーの緊張力 その1”, 保全学会 第15 回学術講演会, 2017 投稿予定