(3)移動式空気浄化システムの開発

公開日:
カテゴリ: 第17回
銀ゼオライトによる放射性物質除去システムの高度化 (3)移動式空気浄化システムの開発 Advanced Radioactive Material Removal System by Silver Zeolite (3) Development of mobile air purification system 木村化工機 川原康博 Yasuhiro KAWAHARA Member 東京工大 奈良林直 Tadashi NARABAYASHI Member ラサ工業 遠藤好司 Koji ENDO Member 森村商事 小林三四郎 Sanshiro KOBAYASHI Non-member "Advancement radioactive material removal system by silver zeolite" was adopted in the 2020 fiscal year as a project "nuclear-power-industry base strengthening enterprise" of the Ministry of Economy, Trade and Industry. We propose developed FCVS, air purification system, and rare gas adsorption system to in and outside the country. Keywords: Preventive maintenance, AgX, AgR, XeA, Silver Zeolite, FCVS, Radioactive iodine, Adsorbent, SGTS, Annulus, Severe accident 1.緒言 原子力施設向け空気浄化システムは、従来から HEPA フィルタと活性炭を用いた技術があった。福島事故においては、これらの技術を用いた非常用ガス処理システム: SGTS(Standby Gas Treatment System)の作動のために空気駆動弁(AO 弁)が開き、ハードベント(圧力抑制プール からの耐圧ベント)ができないトラブルが発生した。また、 多数の弁が存在するため手動での作業ができず 4 号機で は水素を含む汚染気体が 3 号機から逆流し、水素爆発を発生させた。[1] このような事故を想定した場合、高温、高圧、高湿の条 件と水素ガスが含有されることなどの制約で、従来の技 術を使用することは難しいと考えられる。そこで、フィル タベントシステム:FCVS(Filtered Containment Venting System)で確立されたメタルファイバ技術、銀ゼオライト 技術、スクラビング技術などを利用することで、より広範 囲の条件で使用可能な空気浄化システムが期待される。 従来の活性炭を用いた空気浄化システムでは、HEPA フィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)で0.3μm 以上の粒子状物質を除去し、KI 炭、TEDA 炭、もしくは、KI・TEDA 混合炭で放射性の無機ヨウ素や有機ヨウ素を除去するものであったが、HEPA フィルタ、活性炭ともに高温での使用が困難である。また、活性炭は可燃 性であり水分も物理吸着してしまうことから、早期の交 換が必要となる場合があり、乾燥設備の設置も必須であ った。 これを FCVS で確認されたメタルファイバや銀ゼオライト(AgX・AgR など)を用いることで、不燃化と高温対応が可能となる。さらに銀ゼオライトでは、ゼオライト という構造から選択的な吸着が可能となり、高湿度とい う条件下でも吸着性能が高いことが確認されている。ま た、FCVS では、スクラビング技術を用いて放射性物質の除染係数(DF)を大きく向上させることに成功している。さらに、空気浄化システムの堅牢化と小型化を図り移動式にすることによって、事故時に緊急避難場所や汚染 度が高い場所に移動して清浄な空気を供給するにより、 周辺住民や放射線作業従事者の被ばくを低減することが 可能となる。 これらの技術を応用することで、緊急避難場所、緊急 時対策所での利用や福島廃炉用空気浄化システムとして の利用、さらには、再処理施設向け用途など多岐に亘っ て利用されることが期待される。これらの技術の開発状 況について報告する。 2.メタルファイバフィルタ メタルファイバフィルタとは 従来技術のHEPA フィルタは、極細のガラス繊維を容器に充てんし、固体粒子を除去するフィルタである。メ タルファイバフィルタは、このガラス繊維の代わりにス テンレス製の極細繊維を採用するものである。 ガラス繊維の場合、形状を保つための補強材や隙間が 生じないようにするための接着材等が必要な場合があ り、これらの補助材料の耐火性・耐熱性に制約がある。 一部の製品では耐熱性を高めたHEPA フィルタも製品化されているが、素材そのものがガラスであるため金属と 比較して本質的な安全性は劣ると言わざるを得ない。 一方、メタルファイバフィルタはステンレス製容器に ステンレス製繊維を充てんする構造であり、すべての材 料がステンレス製であるため、従来品に比較して耐火 性・耐熱性が格段に向上している。このメタルファイバ 技術は、これまで欧州の限られた企業でのみ実現されて いたが、国内材料メーカーとの提携によってHEPA フィルタ以上の性能が実現できることを確認している。 図1に、ファイバー径が8μm 及び2μm のウェブ状ステンレス繊維の写真を示す。 ファイバー径:8μmファイバー径:2μm 図1 ステンレス製繊維写真(ウェブ状) ベントガス出口 金属フィルタベントガス入口 水気泡細分化装置 スクラバノズル 図2 柏崎刈羽原子力発電所のFCVS の概略構造図 また、ステンレス製繊維は焼結処理を行うことにより シート状に加工できるため、種々の形状のフィルタとす ることも可能である。一例としてシートをプリーツ状と し円筒容器に収納した金属フィルタは、柏崎刈羽原子力 発電所向けFCVS に採用されている。 柏崎刈羽原子力発電所のFCVS の構造図を図2に示す。 メタルファイバフィルタの性能 メタルファイバフィルタとしての種々の性能試験が実施されている。図3に、メタルファイバフィルタに捕捉されたエアロゾル模擬粒子(BaSO4)の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)画像を示す。[2] 最大粒径は、約1mm、最小粒径は数十nm でメタルファイバにトラップされている。SEM 画像の倍率を上げると外径約2μm のメタルファイバには無数の溝があり、数十nm のナノ粒子がこのファイバの溝にトラップされていることがわかる。 図3 メタルファイバフィルタに捕捉された粒子 HEPA フィルタでは想定粒子径0.3μm のフィルタが用いられるが、一挙に放射性物質が詰まることにより、 圧損が高まりフィルタとして機能しないこととなるが、 除去すべき物質の粒子径に合わせた多層のメタルファイ バを採用することにより、圧損の上昇を緩和することが できる。 第一報で紹介したように、放射性固体粒子をBaSO4 で模擬した試験ではDF63,900 が確認できている。[3] 性能予測は、フィルタ通過後の粒子分布測定に基づくi 番目の代表粒子径ごとに次式で計算される質量の総和を求 め、出口質量を予測し、除染係数DF の計算を行った。CFi は、i 番目の粒径範囲のなかで粒径から剛体球を仮定して、FE-SEM の画像解析から得られた粒子数の個数から計算される透過質量mOi を投入粒子の質量mIi で除して得られた物理吸着係数である。 ???? = (mOi)(1) mli 図5 装着冶具にメタルファイバフィルタ挿入時の断面模式図 ?? = ∑(???? ? ??i)(2) (????) = (????) ? (????) ?. .? (????)(3) DF = ?????(4) ここで、????は i 番目の粒径範囲における CF を表す。 ??iと??iは通過粒子と投入粒子のi 番目の粒径範囲での質量を表し、?? と??はその総質量を表す。(????) はj 個のフィルタでの複合フィルタでの i 番目の粒径範囲でのCF である。 図4に示すように、実機で使用する際には、使用後に放 射性粒子を含んだフィルタを処理しなければならないこ とを考えると、用いるフィルタ質量は少なくすることが 求められる。そのため、最も高いDF 値を記録した多層複合フィルタを基準として、最終的に高い DF 値と用いるフィルタ質量も少ない、両方の条件を満たす多層フィル タを選定した。 図4 多層複合フィルターのメリット説明図 綿状(WF)のWEB タイプのフィルタを用いる場合は、以下の(5)式で定義される充填率と投入枚数を変更 し、除染係数(DF)の測定を行った。実験時にはフィル タ装着冶具内に図6のようにフィルタを挿入し、同様に空気漏れを防ぐため、四隅に不乾性パテを用いた。図5 の模式図のとおり、パンチングメタル下部分の体積を冶具内部の体積とした。WF の体積は、WF の重量を高精度の電子天秤を用いて測定し、密度から算出した。 図6 多層複合フィルタを挿入したフィルタ治具外観 各実験は硫酸バリウムを25g ずつ投入していき、フィルタ前後の差圧の変化が見られなくなった時点で終了とし た。フィルタが目詰まりを起こした後に投入される硫酸 バリウムを投入粒子として考えてしまうと、フィルタの 除染能力を評価する際に通常よりも DF が大きく算出されてしまうため、目詰まり後に投入された硫酸バリウム は評価に含めないこととした。投入した粒子のうち、フィ ルタを通過した粒子は出口に設置したHEPA フィルタに堆積するため、HEPA フィルタの質量の変化から通過した硫酸バリウム質量を測定し、粒径範囲毎に吸着係数を 求め、画像処理に依って得られた粒径を剛体球近似して 得られた各粒径範囲の吸着係数から求める除染係数 DF の予測と多層フィルタを通過して出てくる実測値の DF との比較を図7と表1に示す。 (充填率) = (WF の体積) (冶具内部の体積) × 100 [%](5) 図7 CF の実測値と予測値の比較 表1 各粒径範囲毎の吸着係数から求める通過質量 ここで送風機直後の風速を??、その箇所の断面積を?? とした。同様に、フィルタ入り口の風速を??i 粒径範囲 CF(予測値) 投入粒子質量(g) 通過粒子質量(予測値)(g) X≦0.01 2.5.E-02 2.2.E-04 5.3.E-06 0.01
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)