(1)訴訟による運転停止の回避と地元理解促進

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カテゴリ: 第17回
銀ゼオライトによる放射性物質除去システムの高度化 (1)訴訟による運転停止の回避と地元理解促進 Advanced Radioactive Material Removal System by Silver Zeolite (1) Avoid outages due to lawsuit and promoting local public acceptance 東 工 大 奈良林 直 Tadashi NARABAYASHI Member 岡野バルブ 濱田 信善 Nobuyoshi HAMADA Non-member ラサ工業 遠藤 好司 Koji ENDO Member 森村商事 小林 三四郎 Sanshiro KOBAYASHI Non-member A gas-liquid mixing nozzle and a multi-layer metal fiber filter are used, and a silver zeolite filter is installed for the purpose of removing organic iodine. Based on this technology, we have developed a demonstration machine for a large-capacity air purification system that purifies a large amount of contaminated air. A gas- liquid mixing nozzle driven by air blown from a blower sucks and accelerates water to form a high-speed two-phase flow. With this acceleration and centrifugal force field of water, almost all of the fine particles in the bubbles can be transferred to the liquid phase water and dissolved. We have developed a demonstration machine of an air purification system that can remove fine particles and viruses in the air of 100 m3 per hour with a single nozzle. Next, we also developed a large-capacity air purification system that can purify 2400 m3 of air per hour with 24 nozzles. The FCVS system, which is high-performance and passively activated, is thought to help eliminate obvious infringement of personality rights, avoid litigation outages, and promote local understanding. Keywords: Preventive maintenance, AgX, Silver Zeolite, Severe accident, Lawsuit, Public acceptance 1.緒 言 2011 年 3 月 11 日の東日本大震災により発生した福島第一原子力発電所の事故の抜本的安全対策[1][2]として著者らは原子炉格納容器フィルターベントシステムの高性能化に取り組んで来た。研究成果の一部は、既に我が国の原子力発電所に設置されている。このシステムでは気液混合ノズルと多層金属繊維フィルターを使用して、更に有機ヨウ素の除去を目的とした銀ゼオライトフィルターを設置している。この技術を基に、大量の汚染空気を浄化する大容量空気浄化システムの実証機を開発した。ブロワーから送風される空気によって駆動される気液混合ノズルは、水を吸引して加速し、高速の二相流を形成する。この水の加速と遠心力場で、気泡内の微粒子のほぼ全てを液相の水に移行して溶解できる。ノズル 1 個で 1 時間あたり 100m3 の空気中の微粒子やウイルスを除去可能な空 気浄化システムのデモ機を開発した。 次いで、24 個のノズルで1 時間あたり2400m3 の空気を浄化できる大容量の空気浄化システムも開発した。 2.原発の安全対策とフィルターベント 原子力発電所で異常・故障などが発生した際に、放射性物質が発電所の外へ漏れ出ることを防ぐことが重要である。そのための機能は、大きく分けて、①異常を検知し自動的に制御棒を挿入して原子炉を停止させる「止める」機 Fig.1 Concept of new regulatory standards for nuclear power plants [1]. 能、②停止後、原子炉の燃料の破損を防ぐため冷却を続け る「冷やす」機能、③放射性物質を発電所外に出さないため多重の格納をする「閉じ込める」機能の3つからなる。特に「冷やす」機能の確保は、冷却に失敗し、燃料が損傷してしまった福島事故の教訓からも、新規制基準の中で重要視されている。原子炉を停止した後でも、燃料のウランは核分裂生成物(Fission Product: FP)が安定な部室になるまで核壊変し、崩壊熱を発生し続ける。十分に冷却しないと高温になって水ジルコニウム反応燃料被覆管の酸化による発熱により燃料が溶融(メルトダウン)する。このため、この熱を継続的に取り除き、原子炉内の水温を100℃以下の安定した状態(冷温停止)にする必要がある。新規制基準では、とくに津波対策は大幅に強化され、事 業者(電力会社)は、防潮堤の建設、水密扉の設置などの対策を実施した(Fig.2)。このため、津波への耐性は、大 幅に高まった。 更に、フィルターベントはFig.3 に示すように、原子炉格納容器の過圧破損防止と炉心や格納容器への注水に対する排気(Feed and Breed)により、除熱を確実にした。意図的な航空機衝突を想定した、特定重大事故対処施設 (特重)の設置が要求された。原子炉建屋への衝突やエンジンが建屋に衝突後に他の重要構造物などへの衝突、構 Fig.2 Countermeasures for tsunami [3]. Fig.3 Prevention of overpressure damage and heat removal by containment filtered vent system [2]. 造物などへの衝突、航空機燃料の飛散や火災鎮火なども考慮された。意図的な航空機衝突やテロ攻撃に対処するため、堅牢な地下要塞(バンカー)のなかに炉心損傷を防ぐ注水ポンプや非常用発電機、原子炉の操作盤、水源なども設置され、PWR においてはフィルターベントも特重施設として設置され、BWR では過酷事故時の対策として設置した。このフィルターベントの設置により、格納容器の過圧破損や大漏洩を防ぎ、地元の汚染を防止できる。 フィルターベントの高性能化 湿式フィルターの高性能化 筆者らは、既存のFCVS の性能把握と更なる改良のため,可視化模擬実験・TRAC コードを用いた二相流解析を実施してFCVSに関する基礎的な特性を把握することと、更に有機ヨウ素に対し筆者らは、既存のFCVS の性能把握と更なる改良のため,可視化模擬実験・TRAC コードを用いた二相流解析を実施して FCVS に関する基礎的な特性を把握することと、更に有機ヨウ素に対して高い除染係数 DF=min/mout(1) を有する銀ゼオライト(AgX)を使用し,より高性能なFCVS の開発を実施してきた。DF は出口質量 mout が分母なので、フィルター性能が高くなるほど値が高くなる。蒸気やフィルターの内部挙動を把握するため、Fig.4 に示すポリカーボネート製の可視化装置を用いて、蒸気試験を実施した。Fig.5 に示すように、ベンチュリノズルは蒸気噴流によって水を吸引する蒸気インジェクタとして作動 し、冷水から飽和水まで広範囲に安定して作動する。 多孔管のクエンチャーに見られるチャギングと呼ば れる蒸気の凝縮界面の移動に伴う圧力脈動の発生などもほとんど発生しない。ディフューザ出口上部に設置した アーチ状のバッフル板の安定化や DF 向上の効果は大きく、ベンチュリノズル情報の気液二相流の先端に生ずる二相水面の飛び跳ねを抑制する効果やプール水に循環流を生じて、プール水の汚染物質濃度の均一化によるベンチュリノズル本数の大幅削減が可能であるなど、顕著な効果があることが判明した。 Fig.4 Rectangular venturi nozzle and steam test このバッフル板を付けた 2 次元スクラバーノズルを供試体とし、模擬物質に硫酸バリウムを用いて実測した湿式フィルターの除染係数DF は2,300 であった。 蒸気を用いた試験では、Fig.6 に示す測定所で、プール水温は、常温水から飽和温度まで次第に上昇していく。ミストセパレータ出口にオリフィスを設け、装置を加圧することにより、飽和温度でのガイセリングやそれに伴う不安定挙動などが抑制されることを確認した(Fig.7)。 Fig.5 Flow pattern in the Venturi nozzle. Fig.6 Pressure, temperature and void measurement. 乾式フィルターの高性能化 乾式フィルターには、Fig.8 に示す綿状(WEB Type) のステンレスのファイバー径が 2μm から 30μm のメタルファイバーフィルターを用いた。電界型電子 顕微鏡(FE-SEM)により2μm 径のファイバーを観察するとFig.8(c)に示すように線径は2μm~3μm で、 表面に引抜き圧延加工による微細な溝が観察できる。 WEB 2μm(b)WEB 30μm (c) Photo of 2μm fiber by SEM Fig.8 Metal Fiber Filter (WEB Type). Non pressurizePressurerize 400400 Temperature[K] Temperature[K] 350350 300300 250250 200 150 100 50 0 1.2 1.0 Vapar faction 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 1 2 3 0 100 200 300 400 500 600 Time[s] 2 3 200 150 100 50 0 1.2 Vapar faction 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 0 100 200 300 400 500 600 Time[s] 2 3 0 100 200 300 400 500 600 Time[s] 0 100 200 300 400 500 600 Time[s] Non pressurize test(b) Pressurize test Fig.7 Effect of pressurizing system pressure. Fig.9 Particle observation by FE-SEM (×200). 放射性粒子の模擬物質として硫酸バリウム粒子を用いた。Fig.9 に示すように、FE-SEM により、200 倍、2000 倍、20000 倍の撮影画像を撮影し、画像処理ソフ トにかけて粒径と個数を測定し、ヒストグラムを作成した(Fig.10)。フィルターを1 枚も入れていない場合の各粒径範囲における粒子の個数と、剛体球を仮定して求めた質量の分布を Fig.11 に示す。同様の測定を各線径のメタルファイバー毎に充填率を変えて実測し、以下に示すように各粒径範囲で吸着係数????を求め、最終的に出口に出てくる粒子の質量を求めた。 ここで、充填率は、メタルファイバーを入れる箱状の治具の体積に対するメタルファーバー(MF)の体積比をとることとし、(2)式で定義した。 (充填率) =(WF の体積) (冶具内部の体積) X 100 [%) (2) BaSO4 particle diameter measurement by using “Azoukun” Obtained BaSO4 particle size distribution by using “Azoukun” Fig.10 BaSO4 particle size distribution measurement.. Number of particles in each diameter range (No filter) Calculated mass of particles in each diameter range (No filter) Fig.11 Measured BaSO4 particle size and mass distribution. 多層フィルターの性能予測では(3)式に示した粒径分布毎の吸着係数????を用いた。??iは、粒径範囲i におけるフィルターに投入される粒子で、??iはフィルターを通過した粒子であり、(3.1.4-4)式と(3.1.4-5)式が成立する。それを(3.1.4-6)式を用いて乗じることでフィルターを通過する模擬物質の質量M0 を計算し、最終的に(3.1.4-1)式の DF を求めることとした。これにより、計算途中でのゼロ割を回避でき、最終性能は、除染係数DF(Decontamination Factor)の整数値の大小で評価する ???? = (??i???i)(3) ?? = ∑ ??i(4) ?? = ∑ ??i(5) ?? = ∑(???? ? ??i)(6) 本研究でのメタルファイバーの吸着は、AgX のような化学吸着や静電気による吸着(Absorption)ではなく、ファイバーにトラップされる、あるいは捕獲される (Capture)という物理捕捉を表している。本研究では、一層のフィルターの粒径分布毎の吸着率の関数????を求め、得られた結果から Fig.12 に示す多層にした複合フィルターの性能を予測し、フィルターの目詰まりのしにくさや圧力損失が過度に大きくならない範囲で、 Fig.12 Merits of multi-layer filters. 最適な組み合わせの複合フィルターを用いるものとした。充填率を1%に統一して圧損を低下させ、様々な線径のフィルターを用いる事で、各層で、大きい粒子から順に濾し取っていくために、圧力損失の上昇も抑えることができる。30μm、12μm、8μm と20μm の焼結型フィルター(NF-Type)をそれぞれ1 枚用いた。この条件にて、得られたDF 値はDF=67506 となった。最終的に選択したのは、Table 1 に示すように、最大のDF を示した組み合わせのフィルター(Fig.13)の約半分の質量で、DF=67506 のCase 10 (Fig.14)を選択した。 Fig.13 Best DF multi-layer metal fiber filter (Case 6) Fig.14 Selected multi-layer metal fiber filter (Case 10). Table 1 Improved test result:Case 6 vs Case 10 試験後にフィルターを分解してみると最下層の NF- 20 まで粒子が届いており、複合フィルターが目詰まりを防止する上で重要であることが確認された。 なお、Case 6 では、Fig.13 に示す構成とした。 Table.1 に示すとおり、実機で用いる際にはDF をそれほど落とさずに、フィルタの物量を減らしたCase10 が最も適していると考えられる。DF 値をDF=75155 から DF=67506 とわずかに減少したものの、用いたフィルターの総質量を 121g から 62g まで半減させることが出来た。 実機フィルターベントの設置 国内のフィルターベントの設置に当たり、日本機械学会動力エネルギーシステム部門で、2011 年11 月にフィルターベントの海外調査を実施した。1 つは、Fig.15 に示す加圧水型原子炉(PWR)で、フランスのショー(Chooz)発電所 で、他の1 つはFig.16 に示す沸騰水型原子炉(BWR) スイスのライプシュタット(Leibstadt)発電所である。前者 は、サンドフィルターと呼ばれる金網の上に砂利を重ねたタイプで砂利の表面と水膜で放射性物質を吸着するもの。後者はスクラバーノズルと気水分離羽根のミストセパレータを用いたものである。Fig.17 に示すように万一の全電源喪失時にも、ハンドルと延長シャフトで駆動されるギヤでバタフライバルブを手動で開けてベントできるように工夫されていた[1]。 Fig.15 Visit Chooz NPP, EDF France [1]. Fig.16 Visit Leibstadt NPP, KKL, Switzerland [1]. Fig.17 FCVS vent valve at Leipstadt NPP [1]. その後、機械学会の同部門にフィルターベント WG を設置し、アレバ社(現フラマトム社)のフィルターベントも含めてヒアリングを行い、技術的な仕様検討を実施して、日本機械学会編「フィルターベント」の本を出版した。Fig.18 に示すように、浜岡原子力発電所や東京電力柏崎刈羽原子力発電所等に順次、フィルターベントが設置された。 国内に設置されたフィルターベントの内部構造の代表例を Fig.19 に示すが、①スクラビングノズルとプール水とで構成される湿式フィルターの次に、②メタルファイバーフィルターで構成される乾式フィルターに加え、更に第3 段の③気体有機ヨウ素フィルターとしてAgX やモレキュラーシーブなどの銀ゼオライトのフィルターを世界で初めて設置した。①の湿式フィルターの除染係数DF が例え1000 と低くても99.9%の放射性物質は液相でトラップされ、崩壊熱が水に伝わる。②の乾式フィルターは微粒子に加え、汚染されたプール水のエントレインメントを除去する。③の銀ゼオライトフィルターは小児甲状腺癌の原因物質を除去できる。これらの活動成果は海外でも高く評価された。 Fig.18 Filter vent installation work for Hamaoka NPP and Kashiwazaki Kariwa NPP [4]. Fig.19 Schematic structure of FCVS vent filter. 5.福島第一原子力発電所の地元汚染の分析このときの格納容器圧力は設計圧Pd の2倍、つまり2Pd・200℃以下の1.5Pd で漏洩している[9]。これはフランジのO リングのシリコンゴムのパッキンが150℃ の蒸気中で弾力性を失い、フランジが内圧上昇で隙間を生じた際に、Oリングがその変形に追従できないためで ある4)。当時の格納容器設計者はこれを認識していた が、社内や関係先と情報共有していなかった。この大漏洩の発生した3月15日に風が飯館村の方向に吹いていてFig.20 に示す飯館村などの地域に深刻な汚染を発生した。 Fig.20 Contaminated area from Fukushima Daiichi NPP 事故を深刻にしたのは、2 号機や3 号機でウェットベント(圧力抑制プールの水をくぐって放射性物質を1/100~1/300 に低減)していない高濃度に汚染された放射性物質(FP)を直接大気にリークさせてしまったことである。そして、2 号機では15 日午後に格納容器圧力が再びV 字回復している(Fig.21)。MAAP 解析によれ ば、原子炉圧力容器(RPV)底部の損傷が起こり、高温のデブリが雨のようにペデスタル底部まで落下し、格納容器内の気体を直接加熱したためとされている。このときの格納容器内の放射線はCAMS の測定値に依れば、63Sv/h から135Sv/h に倍増しており、RPV 底部破損がCAMS データから裏付けられている。Fig.22 に示すように耐圧ベントのベント弁のエア源喪失によりベントができなかった。このように事故の経過を事故シーケンスを元に分析すると、冷水・電気・空気の支援系(サポート系)が脆弱であり、補機冷却不能、弁操作直流喪失、空気源喪失による弁操作不能などを引き起こした。このように、地元を汚染した原因がベント弁のエア源喪失とO リングからの漏洩である[1]。従ってO リングやパッキンなどの材質までチェックが必要であり、PRA の精緻な解析の前に、PRA の元になる事故シーケンスベースで、 重要な弁やパッキンなどを抽出することができる。そして、条件を満たさないものがあれば、弁操作を手動で可能とし、材質を変更して、過酷事故時であっても必要な機能を果たすようにしなければならない。単なる部品検査のQMS だけでは、潜在的なリスクを炙り出し、対策をとることでリスクを下げることができない。常に安全性を向上させるために潜在的リスクを事故シーケンスとリスク評価から抽出する職場における是正処置活動 (CAP)が必要である。 Fig.21 PCV pressure transient at 1F-2 NPP Fig.22 Rupture disc failed to open by loss of air for MO vent valve. なお、格納容器のパッキンは、耐熱耐放射線の改良EPDM ゴムが開発され、BWR では、格納容器(PCV)の全パッキンが交換されている。2 号機では空気源の喪失からラプチャーディスクが割れずにベント弁を開けてもベントが出来なかったとされた.このため、格納容器の損傷を招き、地元を放射性物質で汚染したことになる.これを防止するには、空焚き状態であった炉心へ注水する前にフィルターベントを用いて速やかにベントできるようにしなければならない.つまり、FCVS の運用上からもPCV の過圧破損を防止する運用が求められる。 FCVS 高度化による訴訟回避 以上の福島第一原子力発電所の事故の教訓として、格納容器の内圧と温度が上昇し、格納容器から放射性物質 で汚染された蒸気や水素のリークが発生する前に、フィルターベントを用いて、放射性物質を濾し取ってから圧力と崩壊熱をベントし、格納容器の内圧を下げてからであれば、主蒸気逃がし安全弁などを用いた原子炉の減圧が可能となり、低圧ポンプを用いた炉心注水が可能となる。炉心注水に伴う多量の蒸気発生に対しても格納容器の内圧が低ければ格納容器の損傷やリークを防止することができ、地元の汚染も防止できる。 また、我が国全てのフィルターベントに銀ゼオライト (AgX またはモレキュラーシーブ)により有機ヨウ素が1/100 以下に除去されるため、小児甲状腺癌の発生リスクも大幅に低減できる。このように、フィルターベントの設 置は、福島第一原子力発電所および第二原子力発電所で 発生した内圧の上昇をベントにより低下させることがで き、地元の汚染も防止することができるのである。また、 改良EPDM 材のゴムの耐熱・耐温度・耐放射線を特性が大幅に向上しており、格納容器はよりリークしにくい構 造となっているのである。フィルターベントによる圧力 逃がし機能に加え、格納容器の熱に対する堅牢(ロバスト) 性を向上させることが可能となった[1]。 Fig.23 に示すように、DF が 1000 でも敷地境界から外は有意な汚染を生じなくなる。また、令和 2 年度から開始された、「銀ゼオライトによる放射性物質除去システムの高度化」の経済産業省の補助事業では、FCVS の更なる性能向上により DF は 1 億以上に上昇するため、敷地内での汚染や被曝が防止可能となる。特に、補助事業では、水素対策の触媒やキセノンなどの希ガスの吸着も可能となるので、FCVS の性能は更に飛躍的に高まり、緊急時対 Fig.23 Prevention of local area contamination 策所などの希ガス対策にも貢献できると考えられる。 Fig.24 は、中部電力浜岡原子力発電所のPRA の解析結果である。フィルターベントの設置により、格納容器の減圧とそれに続く低圧炉心注水に依り、炉心損傷確率は 3 桁低下した。また、大型ガスタービン発電機の設置などにより全交流電源喪失のリスクも低下し、合計で炉心損傷頻度は 3.8×10-9/炉年と大幅なリスクの低減となった。このように、大幅なリスクの低減と放射性物 ボイラー (PCV相当) SR弁 臨界流 ミスト セパレータスクラバー メタル ファイバー AgX 質の飛散防止により、Fig.25 に示すように、万万が一の場合の緊急時避難も屋内退避となり、立地地域にお 住まいの皆様に、明確な命の危険が及ぶことはなくな った。これにより、訴訟の場合の、人格権の侵害は、 根拠を失った。人格権の侵害は原告本人や身近な人に 明白な命の危険が迫っている場合のみ成立するからだ。 更に、Fig.26 に示すように、SR 弁によりFCVS をパッシブに起動するようにすれば、格納容器の圧力が設計圧力の2 倍の2Pd の限界圧力に達した際に、自動起 Fig.24 Result of PRA showing very low CDF (Hamaoka NPP) Fig.25 Evacuation shelter in PAZ area and stay in home in UPZ area. 臨界流系統加圧オリフィス Fig.26 Concept of passive FCVS start-up system by using SRV. Fig.27 Steam test at Okano Valve for scrubber nozzle. 起動するので、火山の噴火やテロリストの攻撃を受けても格納容器の健全性は確保され、放射性物質の飛散は防止できる。SR 弁メーカである岡野バルブ製造のバルブの試験ボイラーを用いて、スクラバーノズルの蒸気試験を実施し、安定作動を確認した(Fig.27)。 結 言 フィルターベントが作動していれば、敷地境界の放射線レベルも1mSv/y 以下に抑制することが可能であり、その測定値が低く安定していれば、半径 5km から 30km 内の UPZ の範囲の住民は、緊急時避難をしなくても済む。FCVS の高度化によって、更なる安全性向上と訴訟による長期の運転停止を回避することを提案したい。 参考文献 Tadashi Narabayashi, “Fukushima Nuclear Power Plant Accident and Thereafter”, Energy Technology Roadmap of Japan, Springer Japan, 2016, pp.66-67. T. Narabayashi et.al, Development of High Efficiency Containment Venting System and Air Cleaning System by Using RASA AgX, ICONE25-68030 (July,2017).
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