PRA技術の改善に係る東北電力の取り組みについて
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カテゴリ: 第16回
PRA 技術の改善に係る東北電力の取り組みについて
Tohoku Electric Power's efforts to improve PRA method
東北電力株式会社
高橋
利昌
Toshimasa TAKAHASHT
Non Member
東北電力株式会社
佐藤
大輔
Daisuke SATO
Non Member
東北電力株式会社
松藤
芳宏
Yoshihiro MATSUTO
Non Member
東北電力株式会社
田中
晃
Akira TANAKA
Non Member
東北電力株式会社
益田
真之介
Shinnosuke MASUDA
Non Member
東北電力株式会社
錦見
篤志
Atsushi NTSHTKTMT
Non Member
東北電力株式会社
小林
重継
Shigetsugu KOBAYASHT
Member
Tohoku Electric Power Co., Ltd. plans to continuously improve its safety, based on high-quality risk management. Tn the risk management framework, quantification of risk by PRA plays an important role. Here, we introduce the status of our efforts to improve our PRA method, such as refined internal event level l PRA models, improved data, and the expanded scope of PRA.
Keywords: Safety improvement, PRA, RTDM, risk management
はじめに
福島第一原子力発電所事故を契機にリスクマネジメント強化の必要性が認識されている。そこで当社は,平成26 年6 月に,「原子力の自主的安全性向上に向けた取り組みについて」において, 質の高いリスクマネジメントに基づく自主的な安全性向上を継続的に図っていくためのロードマップを公表した。
図1 自主的安全性向上に向けた対策
リスクマネジメントの枠組みでは,確率論的リスク評価(PRA Probabilistic Risk Assessment)によるリスクの定 化が重要な を果たす。PRA は,これ で,安全性向上の一環として,アクシデントマネジメント整備, 定期安全レビュー,停止時リスク管理等に利用されてきているが,我が国のPRA は先行する欧米と比べてモデル詳細 ,データおよび評価範囲に改善の余地があるこ
とを認識し,国際的な水準に比肩するPRA の構築に向けて取り組んでいる。
PRA 技術の改善に係る取り組み
2 1 内的事象レベル1PRA モデルの詳細化
当社は,日本原子力学会標準および米国ASME/ANS PRA 標準[l]等(以下,国内外PRA 標準という)を参照するとともに,一般財団法人電力中央研究所原子力リスク研究センター(NRRC)が支援するPRA 改善のためのパイロットプロジェクトの検討成果や先行する国外のPRA モデルに倣い,女川原子力発電所2 号機を対象として,PRA 技術の改良に取り組んでいる。
具体的な目標として「国内外PRA 標準への適合」を設定し,次のプロセスに従って進めている。
① 国内外PRA 標準と既存PRA モデルとのGAP 分析による課題抽出
② モデル詳細化のための手順検討
③ 手順に基づく改善の実施と文書化の充実
④ 国内外PRA 標準への適合性の確認
なお,女川原子力発電所2 号機は,現在,新規制基準適合性審査中であり,再稼働時点の設計や運転手順書等の検討を進めていること ,以下に す手法の高化・モデルの詳細化を優先して取り組んでいる。
(l) 起因事象の詳細化
網羅的に起因事象を抽出するために,文献調査,前兆事象分析,FMEA,保安規定等の調査を実施している。
従属性を有する起因事象(サポート系故障や起因事象従属性を有する事象)が従 の7 20 に詳細化される見 みである。
(2)シス 性 析
モデル化対象範囲について, にサポート系を中 に
している。 具体的には, 気 調系および 調 却の補機 却系, 気作 弁等を 作させるための圧縮
気系等をモデル化している。(3)人間 性 析手法の改善
認知 確率の評価にはCBDTM 手法又はHCR/ORE 手法,操作 確率の評価には従 採用しているTHERP 手法とし,米国電力中央研究所(EPRI)が開発 したソフトウェア「HRA Calculator」を用いる。これでに運転員による緩和操作を抽出するとともに,より現実的な評価をするために運転員インタビューを実施している。
2 2 データの改善
実際のプラント状態に即したPRA を実施するための実施事項の一つが機器故障率に個別プラントのデータを用いることである。
これ では機器故障率を推定するためのデータとして,原子力施設情報公開ライブラリー(NUCIA)[2] [3]を参照して推定された機器故障率をPRA に適用してき
た。個別プラントの機器故障情報を活用するために,一般財団法人電力中央研究所原子力リスク研究センター(NRRC)が策定した「確率論的リスク評価(PRA)のためのデータ収集実施ガイド」[4]に基づき,発電所の過去の不適合情報,運転日誌および定期試験記録等 , 図2 および図3 に すフォーマットを用いることにより,技術的妥当性と判断根拠等のトレーサビリ ィが確保された機器の故障回数,運転時間等を収集している。
なお,これ のデータを収集するためには,PRA だけではなく,設備や運転に関する専門的な知識が要求されるため,当社では故障回数は保全部門,運転時間は運転部門がそれぞれ主体となって収集し,安全部門がとり とめる部門横断の体制で取り組んでいる。
機
敗
敗
間合計
200
9
2
010
間合計
出
機
機
出 間
間
発電機
起
算出
発電機
起
算出
発電機
継続運転
間
算出
発電機
起
算出
発電機
起
算出
発電機
継続運転
間 算出
発電機
起
算出
発電機
起
算出
発電機
継続運転
間 算出
図3 露出データ収集フォーマット(機器別)
現在は,継続的にデータを収集していくために,適切なデータを効率的に収集できる仕組みの構築に向けた取り組みを開始している。
2 3 PRA 評価対象範囲の拡大
先行する欧米では,地震や津波以外を対象としたPRA が実施されている。我が国においては,NRRC を中 に火災・溢水PRA 実施ガイド等,PRA 評価対象範囲の 大に向けた研究が進め れている。当社は,内的事象レベル1PRA 技術の改善に並行して,NRRC の研究に参画するとともに,米国の取り組みを参考に火災および溢水PRA モデルの構築に取り組んでいる。
まとめ
当社における質の高いリスクマネジメントに基づく自主的安全性向上に向けた活 のうち, PRA 技術の改善に係る取り組みを紹介した。当社は,-,友も国際的な水準に比肩し,女川原子力発電所2 号機の設備や運用等を適切に反映した発電所固有のPRA を整備するための技術改善に取り組んでいく。
参考文献
ASME/ANS, ASME/ANS RA-Sb-2013,“Addenda to ASME/ANS RA-S-2008, Standard for Level 1/Large Early. Release Frequency.
(一社)原子力安全推進協会,ニューシア原子力施 設情報公開ライブラリー,http://www.nucia.jp/
(一社)原子力安全推進協会,“故障 数の不確実さを考慮した国内一般機器故障率の推定(1982 年
~2010 年 29 ヵ年56 基データ)”、2016
合
の
の
a
b)
c)
d
e
f
能
1
2
ン 1
【女川発-2号- 2009-
1】LPCS注
入ライン試験可能逆止弁均圧弁開動作 良
21 12 7 ,LPCS 弁 動開 試験1のうち,注入ライン試験可能逆止弁(E21-NO-F004)の動作確認を行ったところ,標記弁(E21-NO-F016)が中央制御室の表示で中間開となり,全開表示に至らなかった。このことから,注入ライン試験可能逆止弁(E21-NO-F004)の動作確認
ができなかった。
.
LPCS注入ライン試験可能逆止弁均圧弁(リミッスイッチ
【女川発-3号- 2009-
4】女川原子力発電所3号 における制御棒の過挿入について
制御棒駆動水圧 の復旧作業に伴い,
HCU隔離解除作業を実施していたところ,14 33に 制御棒 リ報が発生した。
13 49 HCU隔離解除作業開始
14 23 42-39のアキュムレ夕水張り開始(43本目
14 30頃 42-39の隔離解除開
始
.
制御棒
機
高橋宏行,“ 質の高いPRA 用 性データベース構築のための取組み”、日本原子力学会2018 年秋の大会リスク部会セッシ ン,2018
図2 故障回数収集フォーマット