PWRプラントにおける最近の被ばく低減に関する取り組みについて
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カテゴリ: 第16回
PWR プラントにおける
最近の被ばく低減に関する取り組みについて
The approach about the reduction of dose rate in Japanese PWR Plants
二菱重工業株式会社
山崎
慎吾
Shingo YAMAZAKIMember
二菱重工業株式会社
前田
哲宏
Akihiro MAEDA
二菱重工業株式会社
石原
伸夫
Nobuo ISHIHARA
ニュークリア・デベロップメント株式会社
長嶺
邦孝
Kunitaka NAGAMINE
The zinc injection has been applied to the Japanese PWR plants for reduction of dose rate of main equipment into the middle of the 2000s. As a result, the dose rate of main equipment was reduced about 40%. In addition to the zinc injection, new measure to reduce of dose rate is demanded. We note the primary water radiation changes significantly, even when water quality and a plant operation parameter are similar value. It is introduced that the approach for identifying the unexplained radiation factor.
Keywords: PWR, Reduction of dose rate, Water Chemistry, Operation parameter, Multivariate analysis
1 はじめに
国内のPWR プラントでは,機器の線量率低減のために
1 次系冷却材への亜鉛注入を2000 年代中期に本格導入し, その結果,主要機器の線量率は約40 %低減した。以降, 更なる被ばく低減に向けて,亜鉛注入の次の抜本的な対 策の創出が求められている。
その対策案の創出に向けて,1 次冷却材の水質や,プラント運転手順に大きな変化が無いにも係らず,プラント 運転後の機器線量率が変動していることに着目している。 これは,機器の線量率に影響を与える未解明の因子の存
在を示唆するものであり,この因子の解明によって新たな被ばく低減対策の創出につながる可能性がある。
2 現状の被ばく低減への取り組み
米国の取り組み
米国での取り組みの一例として,運転サイクル末期の ほう素濃度レベルと運転後の機器線量率との関係性から, ほう素濃度が高いと線量率が低い事例が報告されている。
ただし,この相関がないプラントもあり,他の因子による影響である可能性も否定はできない。加えて,運転サイクル末期のほう素濃度上昇は燃料経済性を悪化させるため,この適用には課題もある。
山崎慎吾、〒652-8585 兵庫県神戸市兵庫区和田崎町1-1-1、三菱重工業株式会社原子力事業部プラント設計部系統設計課、shingo_yamazaki@mhi.co.jp
日本の取り組み
日本では,主要線源58Co の親元素Ni について,発生抑制と放射化抑制に着目してきた。
腐食生成物中の金属Ni 割合と溶存水素濃度の関係をFig. 1 に示し,燃料付着クラッド量の溶存水素濃度依存性をFig. 2 に示す。
PWR プラントの1 次冷却材には,水の放射性分解を抑制するために水素を添加している。Fig. 1 にて,水の放射性分解抑制に影響のない範囲で溶存水素濃度を下げるこ とで,燃料表面に付着しやすい腐食生成物中の金属Ni 割合が低下することが報告され,また,Fig. 2 にて,溶存水素濃度低下で燃料に付着するNi 量の減少も報告された。日本では,これらの研究報告に基づき,溶存水素濃度低 下による被ばく低減研究への取り組みが進められてきた。
Fig. 1 Relation between dissolved hydrogen concentration and Ni (metal) ratio in particulate[1]
その後の持続的な改良が可能であると期 している。
1.00
change rate of analysis radiation
0.95
0.90
0.85
Fig. 2 Clud amount on fuel surface[2]
3 新たな被ばく影響因子の分析
0.80
0.800.850.900.951.00
change rate of measure radiation
pH や溶存水素濃度 の化 的な単相関関係の解明による被ばく低減対策は,論理的であり理解しやすいが, 機器の線量率は単なるpH や溶存水素濃度からの影響のみではなく,プラント全体のパラメータの影響を受けていることが考えられるため,機器の線量率全体に与える影響因子の把握は,単相関解析では容易ではない。
そこで,それらプラント全体のバランスによる影響因子の把握には,プラント運転パラメータと線量率データを列挙して多変量解析を行うことで,先に線量率との相関関係を 出して, のプラント運転範囲で線量率低減に 果が期 できるような運転パラメータの 適化を行い,後から相関の高い因子について現象面からメカニズムを解析するアプローチが有 と考えた。
開発中の多変量解析ツールによるプラントデータの 解析結果の一例をFig. 3 に示す。実測値に対する因子数が多いため,現状では一部のデータ整理を手作業による 行錯誤で行っているが,予測値は概ね実測値と整合して
り,多変量解析による線量率の予測解析は可能であると期 して り, 解析の結果からは新たな知 が得られつつある。ただし,被ばく低減のメカニズムの解析には,さらなる運転実績データ数の拡大が必要であり,メカニズムの解明には至っていない。
また,このアプローチは,運転実績データに基づく線量率影響因子を 出すため,スピーディーな対策反映や
Fig. 3 Result of test analysis using plant parameter
4 まとめ
PWR では,亜鉛注入による機器線量率の低減が達成され,亜鉛注入の次の抜本的な被ばく低減対策の創出が求 められている。
国内外で様々な取り組みがなされているが,プラント全体のバランスで結果的に線量率に影響する因子の把握は,単相関解析では容易ではない。
そこで,先に線量率との相関関係のあるパラメータを
出して,後からメカニズムを解析するアプローチを行し,新たな知 が得られつつある。
参考文献
K. Hisamune, M. Sekiguchi, and H. Takiguchi, “New Aspect of DH Control in PWR Primary Water Chemistry”, 1998 JAIF International Conference on Water Chemistry in Nuclear Power Plants, Tokyo(Japan), 1998, p595-598.
N. Ishihara, M. Tanaka, E. Nishizawa, and K. Kasahara, “Investigations for Optimal Dissolved Hydrogen (DH) Concentration in Reactor Coolant System (RCS)”, 1998 JAIF International Conference on Water Chemistry in Nuclear Power Plants, Tokyo(Japan), 1998, p102-107.