RPV胴板の内部亀裂に対する構造健全性評価

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カテゴリ: 第15回
RPV 胴板の内部亀裂に対する構造健全性評価 Structural Integrity Assessment for Internal Crack in RPV Shell 東芝エネルギーシステムズ 板谷雅雄 Masao ITATANI 東芝エネルギーシステムズ 新川嘉英 Yoshihide SHINKAWA 東京電力ホールディングス 神長貴幸 Takayuki KAMINAGA Member When quasi-laminar defects are detected in the RPV shell, these defects are modeled to single circular crack with a diameter of 2a and an angle of ? from RPV wall enveloping these micro-defects like as the model used in the structural integrity assessment for Doel-3. An acceptable crack size is investigated for fracture assessment and initial crack size considering the fatigue crack growth by 60 years operation due to the JSME Fitness-for-Service (FFS) code. It was found that the initial crack with 2a of 4% smaller than the acceptance crack for fracture at the same location is accepted to exist. Although some discrepancies between Appendices E-1 and E-5 of the JSME FFS code exist for the treatment of internal crack, the structural integrity assessment can be performed for internal crack with some conservative assumptions. Keywords: RPV, Internal Crack, Structural Integrity, Acceptable Crack, Fatigue Crack Growth 1.はじめに RPV 胴板内部に準ラミネーションの亀裂が多数検出された場合に、Doel 3 号機について実施されたRPV 構造健全性評価[1]と同様の評価手法をJSME 維持規格[2]を用いて検討した。亀裂群を包含する直径が2a の円形でRPV 内面に対して? の傾きを有する亀裂にモデル化し、その後は維持規格に従って構造健全性評価を実施する場合の内部亀裂(欠陥)に対する評価方法を検討した。まず、 2.許容内部亀裂寸法の評価方法 維持規格の内部亀裂評価 Fig. 1 を参照して、JSME 維持規格(2012 年版)[2]添付E-1 による内部亀裂の表面亀裂への置換え条件は以下の式で表される。 S≦0.4a'(1) S'≦0.4a'(2) 添付E-1 とE-5 とで異なる記号を用いている部位があるため、ここではFig. 1 の記号で統一する。また、最新の K=KIc/ を許容基準として破壊評価により内部亀裂と 2016 年版でも本報告に係る部分は同じである。 して許容可能な寸法を求めた(本報ではこれを許容亀裂と称する)。次に60 年運転相当の期間中の疲労亀裂進展を想定した場合に初期亀裂として許容可能な寸法を求めた。また、円形亀裂では維持規格 添付E-1 により面状欠陥として扱う範囲で、添付E-5 の応力拡大係数をそのまま適用できない範囲があるものの、保守的仮定を置くことで、内部亀裂の評価は可能であることが示した。なお、本報では維持規格で欠陥としている用語も亀裂で統一する。 連絡先:板谷雅雄 東芝エネルギーシステムズ(株) 〒235-8523 横浜市磯子区新杉田町8 E-mail: masao.itatani@toshiba.co.jp 一方、添付E-5 に記載の内部亀裂に対する応力拡大係数(K)算出式の適用範囲は以下の通りである。 0<a'/?≦0.5(Point 1 and 2)(3) 0.1≦a'/?≦0.5(Point 3)(4) a'/t≦0.8(5) 0.2≦d/t≦0.5(6) これらを図示するとFig. 2 となる。図中の領域I は添付E-1、E-5 ともに内部亀裂として扱う(扱える)範囲、領域II は添付E-5 に記載の内部亀裂のK の式を適用可能であるが、添付E-1 により内部亀裂に置き換えられない範囲である。領域III は添付E-1 では内部亀裂として扱う範囲であるが、添付E-5 に記載のK の式の適用範囲外である。この場合は、FEM 等、別の手法によりK を評価する ことにより、内部亀裂として扱うことは可能である。その他の領域は、添付E-1、E-5 のいずれによっても表面亀裂として扱うことになる領域である。従って、維持規格に記載されている手法で内部亀裂を評価する場合には、添付E-1 と添付E-5 とで内部亀裂として扱う範囲に差異 る際に許容基準を算出する上でのKIcは220 MPa√m を超えるため、維持規格 添付E-6 に従ってKIc=220 MPa√m と置換える。RPV 胴部の板厚はt=156.7 mm である。 RPV 板厚内の複数の位置d/t に傾きが? の小さい円形亀裂を仮定し、亀裂寸法を徐々に大きくしていったとき があることになる。本報では領域I の亀裂を対象とする。 にKmax=KIc/ となる寸法2aをその位置における破壊に Fig.1 Parameter for crack size and location. Fig.2 Map for internal or surface crack by the JSME Code. 破壊評価に対する許容亀裂寸法算出方法 直径が2a でFig. 1 左図に示すようにRPV 内面に対して傾き? の円形内部亀裂を、Fig. 1 右図のように RPV 軸方向断面に投影した時の亀裂深さ2a'及び亀裂長さ?は、 2a' = 2a sin?(7) ? = 2a(8) となる。 RPV に耐圧・漏えい試験時の周方向応力として膜応力 ?m=160 MPa、曲げ応力?b=5 MPa が作用したときに、Fig.1 のPoint 1, 2, 3 のK の最大値Kmax=max{K1, K2, K3}が許容値 対する許容亀裂寸法として決定する。 亀裂の傾き? は以下のように設定した。まず、式(7), (8) より投影後の亀裂のアスペクト比は、 a'/? = 0.5sin?(9) となる。このa'/?が式(4)の0.1≦a'/?を満足するためには、 ?≧11.54°でなければならないことから、数値を丸めて? = 12°を選定した。次にDoel 3 号機の報告書[1]で設定されている値を参考に?=20°を選定した。さらに? を大きくしていくと、?=27.5°より傾きの大きい亀裂では、寸法2a を大きくしていくとKmax が許容値に達する前にFig. 1 の領域I を逸脱する、すなわち表面亀裂に置換えることになるため、?=27.5°を選定した。 許容初期亀裂寸法算出方法 60 年相当の運転による疲労亀裂進展を考慮したときの許容初期亀裂寸法を求める。Doel 3 号機の報告書[1]では、評価期間中に亀裂寸法が3.19%拡大したとあることから、これを参考に許容亀裂寸法よりも直径2a が3%, 4%及び5%小さく、許容亀裂寸法と同じ位置d/t に同じ傾き?の初期亀裂を設定し、疲労亀裂進展評価を実施する。進展後 の亀裂寸法が許容亀裂寸法を超えなければ、その亀裂は初期亀裂として許容されるとする。 疲労亀裂進展解析に用いる応力は、まず、60 年相当の設計過渡による膜+曲げ応力(?m+?b)を大きい順に並べ、次に通常の疲労解析と同様にその最大値(?m+?b)max と最小値(?m+?b)min の差?(?m+?b)が大きくなる順に最大・最小応力を組合わせた。Fig. 3 に?m, ?b及び?m+?bの最大・最小値の履歴を示す。(?m+?b)max 及び(?m+?b)min の時のPoint 1, 2, 3 におけるK を添付E-5 に記載の線形応力分布に対する内部亀裂のK の式により求め、?K1, ?K2, ?K3 を算出し た。 疲労亀裂進展速度には、維持規格 添付E-2 に記載のフェライト鋼の大気中疲労亀裂進展速度を適用した。 da/dN = 3.78×10-12S?K3.07(10) KIc/ に達した時点で破壊が生じるとする。評価の対象 S = 25.72(2.88-R)-3.07(0≦R<1)(11) とした110 万kW プラントでは、60 年運転時における耐圧・漏えい試験温度を54℃とした場合の許容亀裂を求め R : 応力比(=Kmin/Kmax) da/dN (m/cycle), ?K (MPa√m) Fig.3 Stress history for fatigue crack growth analysis.(a) 2a - d relationships. 3.評価結果 許容亀裂寸法評価結果 Fig. 4 に?=12°の場合を例に、2.2 節に記載した方法により求めた亀裂中心位置、すなわちRPV 内表面から亀裂中央までの距離d と、その位置における許容亀裂深さ2a の関係を示す。Fig. 4 中、薄墨の領域が内部亀裂として許容 される範囲の2a であり、プロット点がKmax=KIc/とな ることを示す。プロット点の両側の薄墨領域では、2a が 大きくなるとKmaxがKIc/ に達する前にS≦0.4a'あるい (b) 2a' - d relationships. はS'≦0.4a'となって表面亀裂に置換えることになる。すなわち、亀裂中心位置d がこれらの範囲にある場合は、内部亀裂としての最大許容亀裂寸法は添付E-1 の表面亀裂への置換え条件により決まることを示している。 Fig. 5 に?=20 及び27.5°の場合も併せて、亀裂中心位置d と、その位置における許容亀裂寸法2a の及び軸方向断面に投影した許容亀裂深さ2a'の関係を示す。同じ亀裂位置d における許容亀裂寸法2a は? が小さいほど大きく、 一方、投影後の許容亀裂深さ2a'は? が大きいほど大きい。 Fig.4 An example of allowable crack size (?=12°). Fig.5 Calculated allowable crack size. 維持規格では添付E-1により?≦10°をラミネーション欠陥、?>10°を面状欠陥として扱う。一方、2.2 節で直径2a、傾き? の円形の内部亀裂に対して維持規格 添付E-5 のK の式を適用するためには、?≧11.54°である必要があると述べた。従って現行の維持規格では10°<?< 11.54°の円形内部亀裂に対して、添付E-5 に記載のK の式 を適用できないことになる。この領域ではFig. 5(a)より、 ? が小さいほど許容亀裂寸法2aが大きくなるため、?=12° の許容亀裂寸法を10°<?<11.54°の範囲に適用することで安全側の評価とすることができる。 許容初期亀裂寸法評価結果 前項で求めた許容亀裂に対して、同じ位置d に許容亀裂寸法よりも3%, 4%及び5%小さい亀裂を初期亀裂とし、 節に述べた条件及び方法により疲労亀裂進展解析を実施した。 Fig. 6 に例として、?=12°、d=66.7 mm (d/t=0.426) のときの疲労亀裂進展解析による投影断面上の亀裂位置S, d, S+2a'及び寸法2a'と累積繰返しの関係を示す。 Fig.6 An example of crack growth curve. Projected crack depth 2a'. Crack length ?. Fig.7 Comparison of final and allowable crack size. Fig. 7 に疲労亀裂進展後の亀裂寸法と許容亀裂寸法を、解析条件(亀裂の傾き、初期亀裂の位置及び許容亀裂寸 法からの縮小率)ごとに示す。解析を実施したケースの中では、許容亀裂寸法を3%縮小した初期亀裂のうち、 ?=12°でd≧72.5 mm の6 ケース及び?=20°でd≧82.7 mm の2 ケースで、60 年運転相当の期間後の亀裂寸法が許容 亀裂寸法を上回った。 許容亀裂寸法よりも4%小さい初期亀裂については、60 年運転相当期間後の亀裂寸法は許容亀裂寸法を上回ることはなかった。亀裂確認後に60 年運転相当期間後の亀裂進展を考慮して、許容初期亀裂寸法は許容亀裂寸法に対し、4%程度の縮小で良いことが分かった。 4.結言 RPV 胴板内部に準ラミネーション亀裂が多数検出された場合に、それらを包含する直径が2a でRPV 内面に対する傾きが? の円形内部亀裂にモデル化し、JSME 維持規格[2]に従って構造健全性評価を実施する場合の評価手法を検討した。その結果、以下の結論や課題が得られた。 維持規格(2012 年版)の添付E-1 による内部亀裂の表面亀裂への置換え条件と、添付E-5 に整備されている内部亀裂の応力拡大係数算出式の適用範囲の間に差異がある。 胴板内部の各位置において、破壊に対する許容亀裂寸法を算出した。許容亀裂寸法は亀裂の傾き及び位置に依存し、投影前の円形亀裂の許容寸法は傾きが小さいほど大きい。添付E-5 のK の式を適用できない10°< ?<11.54° (≒12°)の円形亀裂に対しても?=12°に対する許容亀裂寸法を適用することで安全側の設定となる。 初期亀裂として許容亀裂寸法よりも4%以上小さい亀裂であれば、60 年運転相当の期間中の疲労亀裂進展後の寸法は許容亀裂寸法を超えない。 維持規格EB-1320「第二段階の欠陥評価」の前段で、本研究の手法による許容初期亀裂寸法を導入するこ とにより、多数の亀裂の破壊評価をまとめて評価することが可能となる。 本研究は、東京電力ホールディングス(株)、東北電力(株)、中部電力(株),北陸電力(株)、中国電力(株),日本原子力 発電(株),電源開発(株)、日立GE ニュークリアエナジー (株)、東芝エネルギーシステムズ(株)の共同研究として実施したものである。 参考文献 "Doel 3 Reactor Pressure Vessel Assessment", Safety Case 2015, Electrabel, (2915) "発電用原子力設備規格 維持規格(2012 年版)", JSME S NA-2012, (一社)日本機械学会, (2012)
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