予兆監視システム(SIAT)とWatsonの連携によるプラント監視技術の高度化

公開日:
カテゴリ: 第15回

予兆監視システム(SIAT)と Watson の連携によるプラント監視技術の高度化
Times New Advancement of the plant monitoring technology by the cooperation of omen monitoring system (SIAT) and Watson


中国電力株式会社
林司
Tsukasa Hayashi
Member
中国電力株式会社
谷川稔
Minoru Tanigawa
Member
日本電気株式会社
山本敬之
Takayuki Yamamoto
Member
日本 lBM 株式会社
宇治原里志
Satoshi UJihara
Member
株式会社 llu
高瀬健太郎
Kentaro Takase
Member


Abstract
We applied NEC SIAT engine in cooperation with an NEC stock and developed the system which detected the abnormality of the plant early. This system was able to demonstrate that I could detect abnormality early by the inspection of conventional actual machine data. However, I depended on the experienced engineer about the details of the phenomenon, the cause. I applied Watson of IBM this time and developed a technique to study to the details of the phenomenon, a cause by letting you cooperate with an omen system if it was a phenomenon less than accident, accident that I experienced until now.

Keywords: JANSI,NUCIA,phenomenon less than trouble and trouble,indication,AI,SIAT,Watson, phenomenon grasp and the investigation,link,advancement of the monitoring technology

はじめに
当社は,発電プラントが蓄積している膨大なプラントデータいわゆるビッグデータに着目し,日本電気株式会社と共同で,このプラントデータを活用することにより,
の をできるだけ早い で,かつ 確に検知する予兆監視システム(以下SIAT という。)の開発を行ってきた。2013 年には種々の機能確認を経て,実用化の目途がついた。2014 年には島根2 号機に導入,運用を開始, また,2015 年には3 号機に導入した。
SIAT 導入にあたっては,実機データを用い様々な使用環境や条件に即した検証試験を実施することにより,システムの有効性を十分に確認した。検証試験の結果としては,2006 年10 月13 日に発生した主蒸気圧力検出器からの微少な蒸気漏えい事象を代表として挙げると運転員が検知するよりも7 時間強早く検出できることが確認できた。総じて,過去のトラブルおよびトラブル末満の事

連絡先:林 司、〒730-8701 広島市中区小町4-33、中国電力株式会社 電源事業本部 原子力安全技術
E-mail:463377@pnet.energia.co.jp
事象について運転員が検知するよりも早く検知できる ことを確認した。
しかし,検知・捕捉した事象の展開や原因および対策 については経験を積んだ運転員や保修員いわゆるベテラ ンおよびプラント ー の知 に る が大きく,ベテランがこれまでの経験を参考にして回答を導きだすま での時間をどれだけ確保できるかということもSIAT の大きな目的のひとつでもあった。
昨今,プラント運転・保守の経験を積んだ技術者の大 量の退職に加え,福島第一原子力発電所事故以降プラントが長期停止しており発電所では運転中のプラントを知らない世代の社員も増加しているのが実態である。これらを考慮すると本システムで検知・捕捉した事象を経験の乏しいヒトだけの力量で早期かつ 確に判断することができるか否かという点が憂慮されるところである。
ここで,現在,話題となっている人工知能(以下AI という。)とSIAT を連携させることを検討した。つまり, 過去原子力プラントで発生しているトラブルおよびトラブル末満の事象をAI に し,SIAT からの を に

してある事象と照合し,類似事象をAI の検索機能により抽出し運転員・保修員に提示する。これであれば, 経験者へのアシストはもちろん退職して行く経験者が持つ知 をいわゆるベテランの知 をAI が肩代わりすることにより経験の浅い技術者も経験者に近い判断を下すことができる。このようにAI を使用することにより,結果としてヒトの問題は解決できるという結論に至りSIAT とAI のシステム連携の検討がスタートした。
実際は,AI がこれまで過去国内の原子力プラントで経験したトラブルおよびトラブル末満の事象をデータベース(以下DB という。)としてあらかじ し, したDB は系 ,事象,原因等共 事 により,いくつかの テゴリに分類しておく。 に,SIAT が検知・捕捉した予兆をAI に伝送する。ここで,連携しているAI はあらかじ 分類している テゴリに,事象の共 事 等を参照にSIAT を振り分ける。SIAT から送られてくる
はAI の検索機能により最も類似した テゴリに分 類されるので,SIAT の が振り分けられた テゴリの
が運転員・保修員に提示されると,SIAT からのに関係した として,ある確率を持って参照できる。これにより,運転員・保修員は経験者の知 に相当する知 をAI から得ることができることになり,SIAT が検知・捕捉しAI に伝送した予兆に対する対応が過去の対応結果に き,過去と同様にスムー に対 できることになる。
ここで,SIAT と連携するAI であるが,医学,銀行から工場管理まで広範囲で活用されており,かつ,今後他のシステムとの連携,システム自体の 性等を考慮した結果,IBM Watson を 用することとした。
システム構成・目的
Watson 導入の目的
島根2号機は現在,技術 への 合性審査中であり, 福島第一原子力発電所事故以降運転を停止し7 年が経過しており,今後の審査 を勘案すると10 年近い停止期間も される。
審査後の再稼働に当たっては,我々がこれまで経験したことのあるトラブル等の事象に加え,末経験の事象の発生も される。末経験の事象について考えて ると, 発生した場所,系 については,これまで経験はないが, 発生した 事象の原因に関しては,発電所を構成している機器を考えると,これらの機器の劣化モードから想
定される事象・原因に関しては,これまで経験している
事象に分類できるとものと想定される。従って,これまで経験したトラブルおよびトラブル末満の事象を教師データとしてWatson により ・整理しておけば, SIAT が検知・捕捉したトラブル等の兆候に対して,早く
確に, 判断 展予 ,原因 定を行い運転員・保修員に提示可能である。また,提示された を参考に決してベテランではない運転員・保修員でも な対応を効率的に取ることができる。
以上から,Watson 上にトラブル等のDB を構成し,優れた テゴリ分類・検索機能を用いてSIAT が検知・捕捉した兆候から,過去の類似の事象を抽出し が予兆
のうちに早期に分析し,運転員・保修員に事象,原 因および対策等の分析結果を提示し,早期に事象を収束 させることを目的としてシステムを 計・構成した。
Watson の分析・検索機能
Watson は大量の文書を素早く解析し,その内容について様々な角度で分類する。特定用語について時系列での頻出度合い用語間の関連性・関連度合い,さらには感 分析など様々な分析が可能である。これらの機能を用いて大量の文書を分類し検索性の良いデータベースを構築することが可能である。
に分類されたデータベースをWatson により検索する。Watson の検索は のキーワードによる検索ではなく文脈での検索が可能である。例えば「温度が に上昇した」,「温度が に上昇しなかった」という事象があったとする。前者は,温度上昇自体が 事象だが、後者は,温度が上昇しなかったことが 事象である。このような場合,単純に「温度」,「上昇」というキーワ ードの羅列だけで検索すると両件ともヒットしてしまう。
一方,Watson の場合,まず「温度が上昇した例は?」のようにキーワードを文章にして問い合わせることが可能で,さらにその 答も前者の 上昇した ースの提示するということが可能である。
2 3 システム構成
1 にSIAT とWatson が連携したシステム構成を示す。SIAT と連携させるAI であるWatson は医学,銀行だけではなく保守管理の分野でも実績を有している。
また,Watson 上で展開するDB としては原子力安全
協会(以下JANSI という。)により公開されている国内の原子力 (以下NUCIA という。)のトラブルおよび保全品質 約3,900 件とした。加えて,島根オリジナルデータとして,島根1,2 号機の事故記 ,トラ

ブル末満の事象,不 合データを含む保守記 等を入力する計画としている。NUCIA データの を表1 およびニューシア の分類を 2 に示す。


1 SIAT Watson 連携システム構成

表 1 ニューシアへの (2018 年3 月末現在)

2 ニューシア の分類
Watson はデータをクラウド上で取り扱うことになるた セキュリティも 要な扱いとなる。今回は,必要な個所に中間サーハ,データダイオード等を 置することにより,クラウド側から発電所の運転監視用計算機(以 下プロコンと言う。)へ影響が及ばないよう配慮した。
2.4 プラント監視とWatson の関係
2.2 でも記載したが,Watson はクラウド上でデータを取扱うことに加え国内のトラブル に合致していること等が 要な条件となる。従って,DB として するデータは公開されていることが大前提なる。SIAT と連携した場合,Watson のDB は,公開されていること,国の
が示されていることに加え,事象発生から原因究明, 対策まで一連の対応として事象が されていることが
要であることからJANSIのNUCIAデータを教師データとして した。
Watson への データ
ニューシア (国内の原子力
(BWR/PWR )
島根オリジナルデータ
・島根1,2 号機トラブル記
・島根1,2 号機出力制限等トラブル末満の事象
・日 保守,定期点検記 (点検時の特記含む)
・保修依 票
Watson の活用
・DB として したニューシア等の事象を テゴリ分類(事故・事象を内容 原因で分類)
・キーワードにより テゴリ枠を特定
・SIAT との連携(SIAT が捉えた の兆候をキーワードその他で分類,特定した テゴリから事象の を把握して提示,対策が完了した後,Watson DB に当該事象をフィードハックしDB の充実を る(DB の充実)
SIAT が検知・捕捉した予兆との連携
システムはSIAT が捉えたプラントの に至る前の 態すなわち予兆をWatson のDB にあるNUCIA データの テゴリ分類に精度良く振り分けることが最も 要である。言い換えるとSIAT とWatson をどのようにして関連付けるかが 要である。これは,SIAT とWatson を関連付ける鍵として事象に関連したキーワードを選定した場合,あらかじ 分類されたWatson DB の な テゴリに高確率で同等の事象であるという 点から振り分けることができるかということである。例えばWatson DB では「漏えい」が発生したとの結果であっても,SIAT が捉えた予兆の時点では,「漏えい」は発生していない可能性もある。
従って,他のパラ ータの変化,プラント全体の
等双方で共 な事 を見つけキーワードとして
定する必要がある。現在, 定中のキーワードは分類・振り分けの鍵として,現在のところ最も であると考えているが,今後,使用して行く過程でも最 であるとは断言できない。以上から,システムの信 性や分析速度を向上させる 点から,運用しながら,更に最 なキーワードを選定することが必要である。
さいごに
今回,SIAT にAI であるWatson を連携させること
により,可能な範囲でトラブルおよびトラブル末満の 事象の分析について原因究明の一端をヒト以外に担わせ ることができた。
さらに,この連携により,事象の 態把握,原因 定, 対策まで早期に対応できる目途がついた。
しかしながら, ( )で 明したとおり,現在の

SIAT とWatson 連携の鍵であるキーワードが末来も最であるとは言えないことから,今後システムを運用しな がら,より なキーワードを選定し,システム全体の信 性および分析速度の向上に努 ていきたい。

以上
参考文献
ja.wikipedia.org/wiki/ワトソン_(コンピュータ)
ワトソン(コンピュータ)-WikIpedia
-ウィキペディア
一般社団法人 原子力安全 協会ホームページ原子力 公開ライブラリー(NUCIA)
jpn.nec.com/ai/solution/optimization.html
プラント監視故障予兆監視 ソリューションINEC
jpn.nec.com/techrep/journal/g15/n02/pdf/150213. pdf
"インハリアント分析技術(SIAT)を発電所向け故障予兆監視ソリューション-NEC"

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