TDR技術を用いた炉内水位計の開発

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カテゴリ: 第15回
TDR 技術を用いた炉内水位計の開発 Development of the Reactor water level measurement system using the TDR technology 中国電力株式会社林司Tsukasa HayashiMember 中国電力株式会社谷川稔Minoru TanigawaMember GE 日立ニュークリアエナジー 中村岳人Gakuto NakamuraNon Member Abstract The water level in the nuclear reactor measures it by measuring the differential pressure of a vapor phase part and the liquid phase part in the nuclear reactor. However, the temperature in the storage container becomes the high temperature at the time of the SA such as the Fukushima accident, and the water in the datum level device evaporates, and nuclear reactor water level becomes immeasurable. We developed a technique to measure the water level in the direct furnace by applying TDR (time-domain reflectometer ) technique of GE Hitachi for the purpose of evading such a situation, and measuring the reflection time of the pulse jointly and planned the diversification of the hydrograph. Keywords: SA instrumentation, reactor water level,TDR technology,LPRM,divergence,direct measurement, technique unlike the differential pressure measurement , high accuracy, TRACG , widespread measurement span 1.はじめに 現行の原子炉水位計は原子炉内の気相部と液相部の差圧を検出することにより検出している。 福島第一原子力発電所事故では,格納容器内が高温となったことおよび原子炉圧力が減少したことに起因し差圧式水位計基準面器内の基準水が減圧沸騰し喪失したことが原因で水位計の機能が喪失した。 従って,現行の水位計を含め原子炉水位計に求められる条件および改善点,言い合えると原子炉水位計に要求される新たな条件は次となる。 (1) 差圧式水位計における信頼性の向上 ・喪失した基準水の復旧(水張り)による機能復旧 ・基準面器に接続する計装配管を保温することにより格納容器内温度上昇により沸騰現象を緩和 (2) 原子炉水位計の多様化 ・差圧式以外の水位計の導入:差圧式以外の方式で原子炉水位を測定,過酷事故(以下SA という。)時でも使用可能な水位計の追設 (3) 測定レンジは有効炉心頂部(以下TAF という 。)~有効炉心下端(以下BAF という)以下 ,連続で炉心内の実水位が計測可能 ・炉心が露出した場合でもある程度まで実水位を計測可能 ・TAF~BAF 以下まで,リアルタイムで連続して実水位を計測可能 以上から,GE Hitachi Nuclear Energy が使用済燃料プール水位計開発に応用した 時間領域反射率測定法 (以下TDR という)の技術を炉内に適用し,前述した差圧式以外の原理により原子炉水位を測定する技術を開発することにより,炉内水位計測に多様性を持たせる観点から2015 年9 月からGE Hitachi Nuclear Energy へ本水位計の開発を委託し共同で進めてきた。 2.システム開発の経緯 現行の水位計 現行の原子炉水位計を図に示す。原子炉水位は,原子炉外に設置した基準面器により原子炉内部の気相 部(L)と液相部(H)の差圧を検出することにより計測している。水位計は,通常運転に使用するもの,燃料交換時に使用するものといった用途に応じて数種 類設置されている。図1 に炉内水位計構成図,表1 に各種水位計と計測レンジを示す。 本システムは,水位手前にある測定の基準点を定めるトリガー"A"を用いる。システムはパルスを送信し反射間の時間をプロットし"A"トリガーおよび水面でのインピーダンス変化点との距離に相当する気相距離を三種すすることにより水位を求める。図2 に想定フローを,図3 に測定原理を示す。 基準面器 図1 原子炉水位計構成図 表1 各種水位計と測定レンジ 図2 測定フロー TDR 技術の概念 本システムはケーブルによるインピーダンスの違いによりもたらされる不連続性を特定するためのTDR を用いている。同軸の導線を伝わる特有の形のパルスを送信し,いくつかのインピーダンスの不連続部において,入射信号に対して送信元へ返送されるパルスが発生する。増加するインピーダンス変化は元のパルスを増調するような反射を作り,減少するインピーダンス変化は元のパルスを減調するような反射を作る。反射パルスは時間の関数としてプロットされ,伝播速度に基づき距離が算出される。 図3 測定原理 プローブの炉内への据付 TDRプローブは図4に示すとおり最外周の局部領域モニタ(以下LPRM という。)位置に配置する。炉内への固定はLPRM 同様,トップガイド底部にプランジャーで固定する。測定スパンとしては,TAF から下部プレート以下約1.8m のBAF-6ft(島根2 号機実証試験のため仮設定))まで測定可能。原子炉底部へはイン コアハウジングにインコアフランジにより固定。 図5 プランジャー形状変更およびカバーチューブ内機器配置 図4 TDR プローブの炉内への据付 プランジャー形状変更およびカバーチューブ内 機器配置 図5 にプランジャー形状変更およびカバーチューブ内の機器配置を示す。TDR プローブを炉内に装荷するためには,LPRM を用いてTDR プローブを炉心内に固定する必要がある。LPRM は島根2 号機の場合,31 本で炉心の出力分布を計測している。LPRM は中性子束の計測により炉心性能の評価,また安全保護系(以下RPS という。)インターロック,ロッドブロックモニタ (以下RBM という。)等RPS インターロックに用いられている。 従って,TDR プローブの収納もさることながら,検出器,移動型モニタ校正管(以下TIP という。)をチューブ内に残し,炉心内の出力評価ができない領域を現状から拡大しないことおよびTAF~BAF 以下までの水位の測定レンジを満足することがプローブ成立の条件となる。これらを克服する観点から従来のLPRM プランジャーの形状を変更し問題を解決した。プランジャー変更により従来のLPRM と比較して強度に問題がないことについては,有限要素法(以下FEM という。) 解析により確認した。 機能確認試験 概念設計終了後,実際に水位計測が既存の差圧式水位計と同等以上の性能で測定可能であるかどうか,静的試験および動的試験により確認した。 静的試験 眼球法にて手動で計算して求めた水位と自動計算で得た水位が一致することを確認した。図6 に実水位(眼球法)と水位測定結果を示す。 図6 実水位と水位測定結果 動的水位試験 高速と低速で水位を変えながら動的水位試験を実施し,計算した水位変化が実際の水位変化にどの程度近くなるかを調べた。高速と低速で水位を変化した結果, 計算値が水位変化にほぼリアルタイムで迅速に応答することを確認した。図7 に低速,高速の過渡変化結果を示す。 低速 高速 図7 低速および高速の過渡変化 その他試験 バブル試験 バブル(ボイドを再現したもの)が水位測定に与える影響について確認した。バブルが存在すると,バブルがTDR プローブ内を上方に移動してTDR トレース基準線にさざ波(ノイズ)が発生し,バブルの数が増えるにつれてさざ波も増加する。しかしバブルが存在しても水位計測可能であることが確認できた。 高温高圧試験 TDR プローブを高温高圧容器内に設置し,水位を変化させて追従状態を確認した。結果として,大気圧で実施した試験同様,良好な結果がえられた。 ミュレーション試験 ケーブル,TDR プローブの寸法,材料特性(低効率や誘電率など)の変化が,システムの電気的応答に与える影響を直接評価することを目的として実施した。 様々なケーブル構成で得たシミュレーション結果が, 実験結果とよく一致していることが確認できた。 解析試験結果(TRACG 解析) SBO 時のバイパス領域及びTDR プローブ内水位 図8 にStation Blackout(以下SBO という。)シナリオの二相水位比較を示す。水位は約700 秒でバイパス領域において低下し始め,約1,650秒まで低下し続け, そこでADS が開くと水位は約200 秒間,一時的に上昇し,その後,低下を続ける。水位は約2,200 秒まで低下し続け,その後,低圧非常用炉心冷却装置が注入を開始すると容器は再冠水を始める。TDR プローブ水位応答はシミュレーションの前段階でバイパス水位応答と一致していることが確認できた。 図8 SBO シナリオの二相水位比較 同様に中破断LOCA 時のバイパス領域及びTDR プローブ内の水位についても,シミュレーションの全段階でバイパス水位応答と一致していることを確認した。 SBO 時のバイパス領域及びTDR プローブ内ボイド率若干の差異は見受けられるがTDR プローブ及びバイパス領域において,ボイド率は良く合致していることを確 認した。 TDR プローブにおいてTRACG コードを用いてこの設計でいくつかの想定過渡事象/事故シナリオを評価 した。TRACG の結果から、TDR プローブの設計は、解析対象事象のさまざまな段階(炉心露出、流出、再冠水)における、さまざまな加圧・減圧速度での炉心部分の水位変化を追跡できることが明らかになった。 この評価は沸騰水型原子炉(以下BWR という。)であるBWR/6 により実施したものであるが,BWR/5 とBWR/6とでは原子炉の設計に皮得,安全設備である非常用炉心冷却系(以下ECCS という。)のネットワーク設計についても類似点があることから,解析結果はBWR/5 に直接適用することが可能である。 3.TDR 水位計の特徴 3.1 システムの長所 TDR 技術を用いた炉内水位計の長所はTDR プローブが直接炉水と接触することにより水位を測定できることができる他種々の長所が確認できた。 TAF~BAF 以下6ft(島根2 号機の試験用設定) まで水位計測が可能である。従って,SA 計装として活用可能である。 LPRM カバーチューブ中にTDR プローブを1 本収納するのみであり,格納容器ペネトレーションを貫通するのはMI ケーブル1 本のみであるため設置が容易である。(ペネトレーションを多く必要としない。) 精度が高く,リアルタイムかつ連続で水位を計測することが可能である。 TIP 案内管及びLPRM 検出器をカバーチューブ内に残すため,炉内の不監視領域がなくなるとともに,RPS,RBM インターロックに関しても現状と全く変更する必要がない。 炉内及び格納容器内は静止型及び受動型の部品しかないため保守が容易である。また,コントローラのような電子機器は環境の良い部屋へ設置することが可能である。 4.さいごに 炉内水位計はBWR では原子炉に直接接続した基準面器内の気相部(Low)と液相部(High)の差圧を計測す ることにより水位を測定している。冒頭にも記載した が,福島事故のように格納容器内の温度が高温になる と基準面器内の水が蒸発あるいは減圧沸騰してしまい, その結果容器内の水が喪失し水位計測が不能となる。 今回開発したTDR 技術を用いれば基準面器は不要である。TDR による水位計はプローブが直接水と接触することによるインピーダンスの変化がもたらすパルスの戻り時間を検知し,水位を演算するものである。 従って,前述したが,プローブは直接,原子炉水と接触かつ連続・リアルタイムで原子炉水の変化を測定することができることが大きな特徴である。これらの特徴を最大限に生かしてSA 時の水位計測,あるいは通常時の水位計測多様化の観点から期待できるものと考えている。 また,本水位計は炉心最外周部のLPRM カバーチューブに実奏して炉内に装荷することを考えている。詳細は今後,解析により確認することにしているが,SA 時炉心損傷は温度が高く,反応度の高い燃料が装荷されている中心部から始まり,外周部へ拡大して行くものと推定される従って,炉心内の水がなくなった後も, 熔融が最外周部まで拡大し,当該LPRM を損傷させるまでは,水位計測は可能である。この時,原子炉底部の損傷がなければBAF 以下6ft(島根2 号機の試験用水位設定)までは実水位すなわち,現在,原子炉水位が何㎜であるか測定が可能である。 今後,実炉への装荷にあたり実機と同サイズのプローブ,ケーブル長さによる試験装置による確認・検証試験を行い信頼性,保守性の確認を確実に実施し実炉に適用したい。 以上 参考文献 From Wikipedia, the free encyclopedia “Time-domain reflectometer” Potential Impact of “Microwave from Concrete Walls” on GEH Spent Fuel Pool Level Monitor (White Paper)
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