特集記事「美浜 3号機再稼働までの道のり(第2回)ソフト面の対応」
公開日:特集:美浜 3号機再稼働までの道のり(第 2回)ソフト面の対応
関西電力株式会社 美浜発電所 所長 高畠 勇人
1.はじめに2.ハード面の対応
2.1
安全対策工事
2.2
長期停止中の設備維持管理2.3 40年超え運転に向けた取組み
3.ソフト面の対応
3.1 安全対策工事および再稼働管理体制
2.1で述べたように、美浜 3号機の安全対策工事は、狭い敷地の中で多岐に亘る大規模な工事を並行して実施する必要があった。これらの工事について、安全を十分に確保した上で遅滞なく、かつ効率的に作業を進めるために工事エリア別のワーキンググループ( WG)やインフラ関係等の WGを発足させ、関係するメーカ・協力会社を交えた各工程・エリア調整等を行う工事管理体制を構築した。(図 20)また、再稼働を確実に達成するためには、使用前検査や許認可記載事項に基づく社内標準の整備等の工事以外の対応も着実に進める必要があり、この対応として再稼働検討会議を発足し、各対応の進捗状況・課題等の管理・解決を行った。(図 21、22)
(1) 安全対策工事管理体制
安全対策工事管理体制は、副所長(技術)を統括責任者、運営統括長(3号機)を工事・エリア関係取り纏め責任者とし、その配下に 32m構台周り、使用済燃料ピット(SFP
12
※ 2)周り、燃料取替用水タンク(RWST ※ 3)周り、取水口、防潮堤、緊急時対策所周り、中央制御室周り、タービン
3
建屋、原子炉補助建屋、格納容器(CV ※ 4)・アニュラスの各エリア別 WGを設置するとともに、インフラ、核物質
4
防護( PP ※ 5)設備移設、水処理他系統管理、地元対応に
対する WGを設置し、WG毎に責任者を定めた。(図 20)
各エリア WGは、当社社員、メーカ・協力会社で構
成されており、毎週、会議を開催することで、関係者が
一体となり細部の調整を円滑に進めることができた。ま
た、毎月 1回、発電所内で各エリア WG間の情報共有
※
2:Spent Fuel Pit
※
3:Refueling Water Storage Tank
※
4:Containment Vessel
※
5:Physical Protection
図 20安全対策工事管理体制(2016年 8月発足)
および発電所幹部への状況報告を行うことで、関係者全員が全体進捗の把握と連携調整が確実かつ容易に行うことができ、かつ、各課題に対する迅速な判断を可能とすることで不要な工程遅延を防止することができた。更に、毎月 1回、上位機関である原子力事業本部に進捗報告と課題共有を行うことで、経営層のタイムリーな判断を得ることも可能とした。
(2) 再稼働検討会議
2019年 5月に安全対策工事の課題対応が山場を越えた状況を踏まえ、工事以外の課題にも視野を拡大するとともに、これまで各 2基を再稼働させてきた高浜発電所、大飯発電所および原子力事業本部の知見・経験を最大限反映し、美浜 3号機の再稼働に万全を期すため、所内で再稼働検討会議を発足した。再稼働検討会議は、所長を座長、副所長を総括責任者、運営統括長を全体管理者とし、その配下に設置許可確認 WG、工認確認 WG、検査実施対応 WG、再稼働前点検対応 WG、保安規定対応 WG、再稼働前対外対応 WGの 6つの WGを設置した。(図 21)
また、安全対策工事完了が間近になった 2020年 8月に、工事中心の管理体制から再稼働メニュー中心の管理体制に移行し、確実に再稼働を進めるべく再稼働検討会議の再編を行った。再編後は、新たに工程管理 WG、環境整備 WGを設置するとともに、設置許可確認 WG、工認確認 WGを廃止した。(図 22)
各 WGは、特に対応が必要な事項をアクションプランとして策定し、毎月 1回、発電所幹部への状況報告を行うことで、確実かつ迅速な対応を展開することができた。また、各 WGは、安全対策工事を所管しない管理課を中心に構成し、全員が一丸となって取り組むことで所内の人的資源の有効活用を図った。
各 WGの概要を以下に示す。
a.設置許可確認 WG
5
「重大事故(SA ※ 6)時の運用が記載されている設置許
6
可添付十」、「設計基準事故( DBA ※ 7)時の運用、設備および重大事故等対処設備が記載されている設置許可添付八」のまとめ資料内容を確認し、設置・配備予定の設備、整備予定の社内標準への反映漏れがないかを確認する。再編時に、設備面の対応が完了していたことから、運用面の対応を保安規定対応 WGに移管し、本 WGは廃止した。
b.工認確認 WG
工事計画認可図書に記載されている設備対応が抜けなく反映されていることを確認する。また、適切な時期までに設備対応が実施されるよう実施計画を策定する。運用については、保安規定対応 WGと連携し、抜けなく反映する。再編時に、設備面の対応が完了していたことから、運用面の対応を保安規定対応 WGに移管し、本 WGは廃止した。
c.検査実施対応 WG
安全対策工事、起動前点検、追加点検、検査、訓練等を反映した再稼働工程の策定・管理を実施する。また、適合性確認検査等の要領書作成状況や様式 8(各設備に対する要求事項やその確認方法等を整理した表)の整備状況等を進捗管理する。
※
6:Severe Accident
※
7:Design Basis Accident
d.再稼働前点検対応 WG
不具合・懸案事項の確実な処理、長期停止を踏まえた再稼働前点検計画の策定およびメーカ・協力会社等との連携を行い再稼働時のトラブル防止に万全を期すための実施計画を策定する。
e.保安規定対応 WG
保安規定審査対応を円滑に進めるとともに、社内標準に許認可の内容が適切に反映されていることを確認する。また、事故時の対応を行う緊急安全対策要員等に対する力量付与教育訓練、事故対応訓練、力量管理を行う。
f.再稼働前対外対応 WG
地元をはじめとする地域住民への積極的な理解活動、議会・行政への説明等を行うとともに、社外関係者の視察受入れを推進することにより、再稼働に必要な理解を得られるよう計画し、実行する。
g.工程管理 WG
残作業、追加点検、起動前点検、検査等を網羅的に管理し、再稼働に向けた工程管理を確実に実施するために再編時に発足させた。
h.環境整備 WG
お客さま目線も含めた現場清掃、機器表示整備、構築物整備、ロッカー等の環境整備を検討・推進するために再編時に発足させた。
図21 再稼働検討会議(2019年 5月発足 )
図22 再稼働検討会議(2020年 8月再編)
特集:美浜 3号機再稼働までの道のり(第 2回)ソフト面の対応
3.2 再稼働に向けた訓練
新規制基準への適合においては、安全対策工事による
様々な設備の設置・配備(ハード面の対応)に加え、各要
員に対して、万一の事故発生時に備えた各設備を用いた事
故収束対応の力量の確保(ソフト面の対応)が必要となる。
実用炉規則の改訂(2019年 10月 2日)に伴い、重大事
故等対処施設の使用を開始するにあたり、あらかじめ必
要な教育および訓練を実施することが明記されたことか
ら、これまで当社にて自主的に実施していた要員への力
量付与に対して、再稼働プロセスの一環として、力量付
与教育訓練および力量付与方法の妥当性検証を行った。(図 23)また、事故制圧訓練やプラント起動操作に特化した特別訓練等も行った。
図23 再稼働プロセスにおける教育訓練
(1) 力量付与教育訓練、妥当性検証
実用炉規則の改訂に伴い、新規制基準への適合に係る保安規定変更認可申請の審査において、力量付与教育訓練等に関する事項が明確化され、重大事故等対処設備に
7
対する運転上の制限(LCO ※ 8)が適用開始される日(使用
前検査終了日等)までに力量付与教育訓練および妥当性
検証を実施することが必要になった。
重大事故等対処設備に対する LCO適用開始が 2020年
12月 24日となったのに対し、2019年 7月より力量付与
のための机上教育を開始していたが、実機またはモック
アップを用いた現場教育については、現場工事が完了し、
ハード環境が整わないと実施できないことから 2020年
4月より順次開始することとなった。特に安全対策工事
が全て完了しないと配備ができなかった大容量ポンプや
電源車等の可搬型重大事故等対処設備(資機材含む)を用
いた訓練については、 2020年 11月の開始となり、短期
間で効率よく訓練を実施する必要があった。
a.力量付与教育訓練
緊急安全対策要員は、当社社員と協力会社で構成されており、給水要員、電源復旧要員、設備対応要員、運転支援要員、消火活動要員、ガレキ除去要員の各役
※ 8:Limiting Condition for Operation
割別に机上教育および実機またはモックアップを用い
た現場教育訓練を行った。
机上教育訓練は、保安規定に定める重大事故シーケ
ンスに応じて適切な手順書を選択できること、指揮者
との連携が適切に行えることを目的として実施した。
現場教育訓練は、実機またはモックアップを用いた機
器の取扱い方法の習得および現場での手順書に従った
実機配置の確認・模擬操作による手順の習得を行った。
また、限られた期間の中で教育訓練を効率的かつ確
実に行うことを目的に以下の取組みを行った。(a) 先行プラントの実績活用
当社における再稼働先行プラントである高浜発電所および大飯発電所の訓練を視察するとともに、蓄積されてきた訓練整備資料、訓練管理データベース作成等のノウハウを学び、これらを美浜に展開することで訓練準備の効率化を図った。また、原子力安全推進協会
8
(JANSI ※ 9)による再稼働支援活動を活用し、四国電力㈱伊方発電所員から訓練準備や実施のノウハウを学んだ。
(b) 訓練キーマンの設定
安全対策工事や使用前検査等で現場が輻輳する中、短期間で訓練を実施するために、各課(室)に訓練キーマンを設定した。キーマンは四国電力㈱の説明会や先行プラントの視察に参加し、訓練にどのような準備が必要かを理解するとともに、定期的に会議を開催し工事進捗と訓練工程の連携を密にすることで、円滑に訓練を進めた。
(c) 訓練に対する士気向上
各課(室)が再稼働に向け、安全対策工事や使用前検
査対応等に注力している中、訓練についても目を向け
確実に実施してもらうために、発電所幹部より訓練が
再稼働プロセスの重要な要件の 1つであることを各
課(室)に伝えることで、訓練実施者の士気を高めた。
また、発電所幹部が訓練の様子や現場の状況を確認し、
改善意見を出すことで、効率的な訓練への改善を図った。
運転員の力量付与については、運転員の認定実習に
重大事故発生時の対応を定め、机上、現場、シミュレー
タ教育訓練を行った。特に中央制御室においては、中
9
央制御盤取替( CBR ※ 10)に伴い、アナログ式からデジタル式となり監視・操作のユーザーインターフェースが大きく変わったことから、 2018年 10月からシミュレータを用いて通常操作や事故・故障対応の習熟を図る訓練を行うとともに、習熟訓練後も反復訓練を実施し、訓練を通じて得た気付きによる改善等を行った。
※
9:JApan Nuclear Safety Institute
※
10:Control Boards Replacement
b.妥当性検証
力量付与方法の妥当性検証として、「現場シーケンス訓練」による成立性確認を行った。本訓練では、重大事故の代表シーケンスに対して、緊急時対策本部と中央制御室(運転員)および現場(緊急安全対策要員)の連携が図られ、手順書に従い必要な操作が制限時間以内に完了できることを確認した。また、訓練全体の各ポイントで設けられている制限時間に加え、個別操作手順についても各操作が制限時間以内に完了できることを確認した。(図 24)
(2) 事故制圧訓練
事故制圧訓練では、全交流電源および蒸気発生器によ
る原子炉の除熱機能が喪失する事故等を想定し、緊急時
対策所をはじめとする初動対応、事故進展への対応、現
図24 現場シーケンス訓練の様子
場の実動訓練、原子力事業本部の緊急時対策本部との連携等の総合的な訓練を行った。また、本訓練では、福井県原子力安全専門委員会による確認も行われた。
(3) プラント起動操作特別訓練
プラント長期停止後の再稼働に備え、起動操作に万全を期すことを目的に発電室の当直班毎に起動操作に特化した「プラント起動操作特別訓練」を行った。(表 6)
3.3 新規制基準に基づき新規策定や変更が必要となる社内標準等の本格運用に向けた取組み
新規制基準に基づく保安規定の変更に伴い、関連する
社内標準の新規制定・改正を行っており、再稼働に向け
ては、これらを遵守し業務が行える環境を構築すること
が必要となった。
新規制定・改正した社内標準のうち、現場作業への影
響が大きい、資機材管理、火災防護、内部溢水防護につ
いては、当社社員、メーカ・協力会社に対し運用や申請
書類等の説明会を開催し、関係者の理解向上を図った。
また、本格適用前に試運用期間を設けることで、ルール
表6 プラント起動操作特別訓練の内容
の習熟を図るとともに、従来から使用していた申請書の
切替えに伴う、申請書の再申請・審査の時間を確保した。
また、美浜発電所では、発電所活動で想定されるリス
クを事前に抽出し、そのリスクの除去または低減対策に
ついて、関係者で検証するリスクレビュー会議を都度、
開催しており、本会議においては、発電所活動で想定さ
れるリスクを体系的に整理した表(通称:リスク管理シ
ステム)を使用している。このリスク管理システムに資
機材保管、火災影響、溢水影響、竜巻影響、アクセスルー
ト影響を追加することで、新規制基準適用を踏まえたリ
スクの除去・低減活動を実施できる仕組みを構築した。
3.4 再稼働工程の各ステップでの点検
約 10年間にも及ぶ長期停止期間中に実施した数々の
工事の影響や当社再稼働先行プラントよりも停止期間が
長期化していた影響を踏まえ、今回の再稼働に、より万
全を期すため、再稼働工程の各ステップで「総点検」や「集
中的な安全確認」として現場の一斉点検・確認を行った。
本点検・確認は、美浜発電所の社員やメーカ・協力会
社社員の他、総点検では、再稼働経験のある大飯発電所
からの社員、集中的な安全確認では、過去のトラブル
等の知見を多くもつ当社 OBを加えて技術伝承も兼ねて
行った。また、各点検・確認の開始前に発電所幹部より
意識付けを行うことで、点検・確認に対する士気向上を
図った。(図 25)
(1) 総点検
総点検は、復水器真空上昇時、 1次冷却材系統水張前、 1次冷却材系統昇温・昇圧前の計 3回のステップで、100名 /回以上、延べ約 320名の体制で点検を行った。また、
特集:美浜 3号機再稼働までの道のり(第 2回)ソフト面の対応
図25 点検開始前の発電所幹部による意識付け
JANSIより米国の 40年超プラントの経年劣化事象からトリップ・出力変動に結び付く可能性のある部位の紹介があったことを踏まえ、 3回目の総点検においては、安全上重要なポンプの振動診断や、はんだ付け部等の赤外線サーモグラフィによる温度確認も行った。(図 26)
(2) 集中的な安全確認
集中的な安全確認は、原子炉起動前、発電機並列前、
定熱到達後の計 3回のステップで、 140名 /回以上、延
べ約 430名の体制で確認を行った。
総点検および集中的な安全確認は、その対象を自身の
図26-1 安全上重要なポンプの振動診断
図26-2 赤外線サーモグラフィによる温度確認
担当範囲や機器に限定せず、資機材の配置状況等をはじめ、あらゆる視点で点検・確認を行った結果、保温材に隙間がある等、影響の大小に関わらず、現場の詳細にわたり約 460件もの気付き事項を抽出し、直ちに処置を行うことができた。また、当社社員、メーカ・協力会社でチームを構成し、点検・確認を行ったことで、点検・確認に対する様々な視点・経験の共有を図ることもできた。
3.5 プラント運営監視体制の強化
通常の発電所運営は、3交替勤務者(発電室等)と日勤者(管理課、保修課等)により行われており、平日夜間・休祭日においても、万一の事故発生時の初動対応要員として、当社社員と協力会社の計 41名(燃料装荷中は 49名)が常駐している。再稼働においては、更なるプラント運営への監視・即応体制の強化を目的に、燃料装荷から総合負荷性能検査完了までの約 2か月間を特別な監視体制期間として、平日夜間・休祭日の常駐要員を増強し、事故対策室を拠点とした工程管理や気付き事項発生時の初動対応等を行うとともに TV会議による関係各所との速やかな情報共有を行った。
(1) 平日夜間・休祭日の常駐要員の増強
特別な監視体制期間では、通常の要員に加え、発電室
1名、特別管理職 10名、メーカ・協力会社 10名以上を
増員し当番体制に組み込んだ。また、最終的な昇温・昇
圧から定熱到達までの間を「重要な局面」として、更に発
電室 4名、特別管理職 1名、メーカ・協力会社 20名を
増員した。(図 27)
メーカ・協力会社を含めて監視体制の強化を図ったこ
とで、本期間中の現場の気付き事項に対し、昼夜を問わ
ず速やかに対応することができた。また、重要な局面で
は、発電室当直課長クラス 1名が中央制御室に常駐する
ことで、運転操作実績等の確認や警報発信時の状況把握
について、運転員の手を煩わせることなく、タイムリー
図27 平日夜間・休祭日の常駐要員の増強
に当番体制との連絡を取り合うことができた。
(2) TV会議による情報共有
社内として原子力事業本部・福井事務所・東京支社・
本店と、社外として福井県・原子力規制委員会と TV会
議を接続できる環境を構築し、特に福井県とは定例会議
により日々の情報共有を行った。(計 63回)
定例会議では、再稼働工程・検査の進捗、主要運転パ
ラメータ、モニタリングポスト指示値、気象状況に加え、
2次系水質の報告も適宜行った。定例会議以外において
は、原子力事業本部と 24時間接続を行うことで、タイ
ムリーな情報共有を図った。(表 7)
TV会議による定例会議を実施したことで、関係個所
と直接会話ができ、各地の事務所を経由した個別の問い
合わせの労力と時間が削減される等、効率的な対応がで
きた。また、定例プレスにて、再稼働工程の進捗状況を
適宜公表し、タイムリーな情報公開に努めた。
3.6 再稼働に伴う他発電所・他部門からの応援
前項までで述べたように、再稼働に係るハード・ソフト面の対応は多岐に亘るものであり、これら再稼働業務を精度良く進めながらその他の業務も実施する必要が
表7 TV会議の概要
あったことから、発電所は慢性的な繁忙感に陥っていた。これを緩和するため、他所へ再稼働応援要請を行った。
再稼働応援は、 2017年 5月~ 2021年 10月の間、原子力部門管内(原子力事業本部、高浜発電所、大飯発電所)のみでなく、火力部門等から適宜、計 81人の要員の派遣を受けた。(表 8)
これらの応援者は、それぞれの力量に応じて安全対策工事に係る業務をはじめ、検査対応、再稼働関連作業、総点検・集中的な安全確認、日常業務等、様々な業務を助勢した。
表8 再稼働応援要員
この応援派遣は、「全社一丸となって美浜 3号機の再稼働を果たす !」という強い思いが形となった取組みであり、大きな助けとなった。また、特に火力部門からの応援者にとっても、原子力安全を学ぶ等貴重な機会になっていたと考える。
*
今回は、安全対策工事および再稼働管理体制、再稼働に向けた訓練、新規制基準に基づき新規策定や変更が必要となる社内標準等の本格運用に向けた取組み、再稼働工程の各ステップでの点検、プラント運営監視体制の強化といった「ソフト面」の対応について紹介した。
次回は、地元理解活動、再稼働で得た知見および課題、新型コロナウイルス感染予防・拡大防止への対応について紹介する。
(2021年 12月 10日)
著者紹介
著者:高畠 勇人所属:関西電力株式会社美浜発電所長専門分野:原子燃料設計、炉工学
1.はじめに2.ハード面の対応
2.1
安全対策工事
2.2
長期停止中の設備維持管理2.3 40年超え運転に向けた取組み
3.ソフト面の対応
3.1 安全対策工事および再稼働管理体制
2.1で述べたように、美浜 3号機の安全対策工事は、狭い敷地の中で多岐に亘る大規模な工事を並行して実施する必要があった。これらの工事について、安全を十分に確保した上で遅滞なく、かつ効率的に作業を進めるために工事エリア別のワーキンググループ( WG)やインフラ関係等の WGを発足させ、関係するメーカ・協力会社を交えた各工程・エリア調整等を行う工事管理体制を構築した。(図 20)また、再稼働を確実に達成するためには、使用前検査や許認可記載事項に基づく社内標準の整備等の工事以外の対応も着実に進める必要があり、この対応として再稼働検討会議を発足し、各対応の進捗状況・課題等の管理・解決を行った。(図 21、22)
(1) 安全対策工事管理体制
安全対策工事管理体制は、副所長(技術)を統括責任者、運営統括長(3号機)を工事・エリア関係取り纏め責任者とし、その配下に 32m構台周り、使用済燃料ピット(SFP
12
※ 2)周り、燃料取替用水タンク(RWST ※ 3)周り、取水口、防潮堤、緊急時対策所周り、中央制御室周り、タービン
3
建屋、原子炉補助建屋、格納容器(CV ※ 4)・アニュラスの各エリア別 WGを設置するとともに、インフラ、核物質
4
防護( PP ※ 5)設備移設、水処理他系統管理、地元対応に
対する WGを設置し、WG毎に責任者を定めた。(図 20)
各エリア WGは、当社社員、メーカ・協力会社で構
成されており、毎週、会議を開催することで、関係者が
一体となり細部の調整を円滑に進めることができた。ま
た、毎月 1回、発電所内で各エリア WG間の情報共有
※
2:Spent Fuel Pit
※
3:Refueling Water Storage Tank
※
4:Containment Vessel
※
5:Physical Protection
図 20安全対策工事管理体制(2016年 8月発足)
および発電所幹部への状況報告を行うことで、関係者全員が全体進捗の把握と連携調整が確実かつ容易に行うことができ、かつ、各課題に対する迅速な判断を可能とすることで不要な工程遅延を防止することができた。更に、毎月 1回、上位機関である原子力事業本部に進捗報告と課題共有を行うことで、経営層のタイムリーな判断を得ることも可能とした。
(2) 再稼働検討会議
2019年 5月に安全対策工事の課題対応が山場を越えた状況を踏まえ、工事以外の課題にも視野を拡大するとともに、これまで各 2基を再稼働させてきた高浜発電所、大飯発電所および原子力事業本部の知見・経験を最大限反映し、美浜 3号機の再稼働に万全を期すため、所内で再稼働検討会議を発足した。再稼働検討会議は、所長を座長、副所長を総括責任者、運営統括長を全体管理者とし、その配下に設置許可確認 WG、工認確認 WG、検査実施対応 WG、再稼働前点検対応 WG、保安規定対応 WG、再稼働前対外対応 WGの 6つの WGを設置した。(図 21)
また、安全対策工事完了が間近になった 2020年 8月に、工事中心の管理体制から再稼働メニュー中心の管理体制に移行し、確実に再稼働を進めるべく再稼働検討会議の再編を行った。再編後は、新たに工程管理 WG、環境整備 WGを設置するとともに、設置許可確認 WG、工認確認 WGを廃止した。(図 22)
各 WGは、特に対応が必要な事項をアクションプランとして策定し、毎月 1回、発電所幹部への状況報告を行うことで、確実かつ迅速な対応を展開することができた。また、各 WGは、安全対策工事を所管しない管理課を中心に構成し、全員が一丸となって取り組むことで所内の人的資源の有効活用を図った。
各 WGの概要を以下に示す。
a.設置許可確認 WG
5
「重大事故(SA ※ 6)時の運用が記載されている設置許
6
可添付十」、「設計基準事故( DBA ※ 7)時の運用、設備および重大事故等対処設備が記載されている設置許可添付八」のまとめ資料内容を確認し、設置・配備予定の設備、整備予定の社内標準への反映漏れがないかを確認する。再編時に、設備面の対応が完了していたことから、運用面の対応を保安規定対応 WGに移管し、本 WGは廃止した。
b.工認確認 WG
工事計画認可図書に記載されている設備対応が抜けなく反映されていることを確認する。また、適切な時期までに設備対応が実施されるよう実施計画を策定する。運用については、保安規定対応 WGと連携し、抜けなく反映する。再編時に、設備面の対応が完了していたことから、運用面の対応を保安規定対応 WGに移管し、本 WGは廃止した。
c.検査実施対応 WG
安全対策工事、起動前点検、追加点検、検査、訓練等を反映した再稼働工程の策定・管理を実施する。また、適合性確認検査等の要領書作成状況や様式 8(各設備に対する要求事項やその確認方法等を整理した表)の整備状況等を進捗管理する。
※
6:Severe Accident
※
7:Design Basis Accident
d.再稼働前点検対応 WG
不具合・懸案事項の確実な処理、長期停止を踏まえた再稼働前点検計画の策定およびメーカ・協力会社等との連携を行い再稼働時のトラブル防止に万全を期すための実施計画を策定する。
e.保安規定対応 WG
保安規定審査対応を円滑に進めるとともに、社内標準に許認可の内容が適切に反映されていることを確認する。また、事故時の対応を行う緊急安全対策要員等に対する力量付与教育訓練、事故対応訓練、力量管理を行う。
f.再稼働前対外対応 WG
地元をはじめとする地域住民への積極的な理解活動、議会・行政への説明等を行うとともに、社外関係者の視察受入れを推進することにより、再稼働に必要な理解を得られるよう計画し、実行する。
g.工程管理 WG
残作業、追加点検、起動前点検、検査等を網羅的に管理し、再稼働に向けた工程管理を確実に実施するために再編時に発足させた。
h.環境整備 WG
お客さま目線も含めた現場清掃、機器表示整備、構築物整備、ロッカー等の環境整備を検討・推進するために再編時に発足させた。
図21 再稼働検討会議(2019年 5月発足 )
図22 再稼働検討会議(2020年 8月再編)
特集:美浜 3号機再稼働までの道のり(第 2回)ソフト面の対応
3.2 再稼働に向けた訓練
新規制基準への適合においては、安全対策工事による
様々な設備の設置・配備(ハード面の対応)に加え、各要
員に対して、万一の事故発生時に備えた各設備を用いた事
故収束対応の力量の確保(ソフト面の対応)が必要となる。
実用炉規則の改訂(2019年 10月 2日)に伴い、重大事
故等対処施設の使用を開始するにあたり、あらかじめ必
要な教育および訓練を実施することが明記されたことか
ら、これまで当社にて自主的に実施していた要員への力
量付与に対して、再稼働プロセスの一環として、力量付
与教育訓練および力量付与方法の妥当性検証を行った。(図 23)また、事故制圧訓練やプラント起動操作に特化した特別訓練等も行った。
図23 再稼働プロセスにおける教育訓練
(1) 力量付与教育訓練、妥当性検証
実用炉規則の改訂に伴い、新規制基準への適合に係る保安規定変更認可申請の審査において、力量付与教育訓練等に関する事項が明確化され、重大事故等対処設備に
7
対する運転上の制限(LCO ※ 8)が適用開始される日(使用
前検査終了日等)までに力量付与教育訓練および妥当性
検証を実施することが必要になった。
重大事故等対処設備に対する LCO適用開始が 2020年
12月 24日となったのに対し、2019年 7月より力量付与
のための机上教育を開始していたが、実機またはモック
アップを用いた現場教育については、現場工事が完了し、
ハード環境が整わないと実施できないことから 2020年
4月より順次開始することとなった。特に安全対策工事
が全て完了しないと配備ができなかった大容量ポンプや
電源車等の可搬型重大事故等対処設備(資機材含む)を用
いた訓練については、 2020年 11月の開始となり、短期
間で効率よく訓練を実施する必要があった。
a.力量付与教育訓練
緊急安全対策要員は、当社社員と協力会社で構成されており、給水要員、電源復旧要員、設備対応要員、運転支援要員、消火活動要員、ガレキ除去要員の各役
※ 8:Limiting Condition for Operation
割別に机上教育および実機またはモックアップを用い
た現場教育訓練を行った。
机上教育訓練は、保安規定に定める重大事故シーケ
ンスに応じて適切な手順書を選択できること、指揮者
との連携が適切に行えることを目的として実施した。
現場教育訓練は、実機またはモックアップを用いた機
器の取扱い方法の習得および現場での手順書に従った
実機配置の確認・模擬操作による手順の習得を行った。
また、限られた期間の中で教育訓練を効率的かつ確
実に行うことを目的に以下の取組みを行った。(a) 先行プラントの実績活用
当社における再稼働先行プラントである高浜発電所および大飯発電所の訓練を視察するとともに、蓄積されてきた訓練整備資料、訓練管理データベース作成等のノウハウを学び、これらを美浜に展開することで訓練準備の効率化を図った。また、原子力安全推進協会
8
(JANSI ※ 9)による再稼働支援活動を活用し、四国電力㈱伊方発電所員から訓練準備や実施のノウハウを学んだ。
(b) 訓練キーマンの設定
安全対策工事や使用前検査等で現場が輻輳する中、短期間で訓練を実施するために、各課(室)に訓練キーマンを設定した。キーマンは四国電力㈱の説明会や先行プラントの視察に参加し、訓練にどのような準備が必要かを理解するとともに、定期的に会議を開催し工事進捗と訓練工程の連携を密にすることで、円滑に訓練を進めた。
(c) 訓練に対する士気向上
各課(室)が再稼働に向け、安全対策工事や使用前検
査対応等に注力している中、訓練についても目を向け
確実に実施してもらうために、発電所幹部より訓練が
再稼働プロセスの重要な要件の 1つであることを各
課(室)に伝えることで、訓練実施者の士気を高めた。
また、発電所幹部が訓練の様子や現場の状況を確認し、
改善意見を出すことで、効率的な訓練への改善を図った。
運転員の力量付与については、運転員の認定実習に
重大事故発生時の対応を定め、机上、現場、シミュレー
タ教育訓練を行った。特に中央制御室においては、中
9
央制御盤取替( CBR ※ 10)に伴い、アナログ式からデジタル式となり監視・操作のユーザーインターフェースが大きく変わったことから、 2018年 10月からシミュレータを用いて通常操作や事故・故障対応の習熟を図る訓練を行うとともに、習熟訓練後も反復訓練を実施し、訓練を通じて得た気付きによる改善等を行った。
※
9:JApan Nuclear Safety Institute
※
10:Control Boards Replacement
b.妥当性検証
力量付与方法の妥当性検証として、「現場シーケンス訓練」による成立性確認を行った。本訓練では、重大事故の代表シーケンスに対して、緊急時対策本部と中央制御室(運転員)および現場(緊急安全対策要員)の連携が図られ、手順書に従い必要な操作が制限時間以内に完了できることを確認した。また、訓練全体の各ポイントで設けられている制限時間に加え、個別操作手順についても各操作が制限時間以内に完了できることを確認した。(図 24)
(2) 事故制圧訓練
事故制圧訓練では、全交流電源および蒸気発生器によ
る原子炉の除熱機能が喪失する事故等を想定し、緊急時
対策所をはじめとする初動対応、事故進展への対応、現
図24 現場シーケンス訓練の様子
場の実動訓練、原子力事業本部の緊急時対策本部との連携等の総合的な訓練を行った。また、本訓練では、福井県原子力安全専門委員会による確認も行われた。
(3) プラント起動操作特別訓練
プラント長期停止後の再稼働に備え、起動操作に万全を期すことを目的に発電室の当直班毎に起動操作に特化した「プラント起動操作特別訓練」を行った。(表 6)
3.3 新規制基準に基づき新規策定や変更が必要となる社内標準等の本格運用に向けた取組み
新規制基準に基づく保安規定の変更に伴い、関連する
社内標準の新規制定・改正を行っており、再稼働に向け
ては、これらを遵守し業務が行える環境を構築すること
が必要となった。
新規制定・改正した社内標準のうち、現場作業への影
響が大きい、資機材管理、火災防護、内部溢水防護につ
いては、当社社員、メーカ・協力会社に対し運用や申請
書類等の説明会を開催し、関係者の理解向上を図った。
また、本格適用前に試運用期間を設けることで、ルール
表6 プラント起動操作特別訓練の内容
の習熟を図るとともに、従来から使用していた申請書の
切替えに伴う、申請書の再申請・審査の時間を確保した。
また、美浜発電所では、発電所活動で想定されるリス
クを事前に抽出し、そのリスクの除去または低減対策に
ついて、関係者で検証するリスクレビュー会議を都度、
開催しており、本会議においては、発電所活動で想定さ
れるリスクを体系的に整理した表(通称:リスク管理シ
ステム)を使用している。このリスク管理システムに資
機材保管、火災影響、溢水影響、竜巻影響、アクセスルー
ト影響を追加することで、新規制基準適用を踏まえたリ
スクの除去・低減活動を実施できる仕組みを構築した。
3.4 再稼働工程の各ステップでの点検
約 10年間にも及ぶ長期停止期間中に実施した数々の
工事の影響や当社再稼働先行プラントよりも停止期間が
長期化していた影響を踏まえ、今回の再稼働に、より万
全を期すため、再稼働工程の各ステップで「総点検」や「集
中的な安全確認」として現場の一斉点検・確認を行った。
本点検・確認は、美浜発電所の社員やメーカ・協力会
社社員の他、総点検では、再稼働経験のある大飯発電所
からの社員、集中的な安全確認では、過去のトラブル
等の知見を多くもつ当社 OBを加えて技術伝承も兼ねて
行った。また、各点検・確認の開始前に発電所幹部より
意識付けを行うことで、点検・確認に対する士気向上を
図った。(図 25)
(1) 総点検
総点検は、復水器真空上昇時、 1次冷却材系統水張前、 1次冷却材系統昇温・昇圧前の計 3回のステップで、100名 /回以上、延べ約 320名の体制で点検を行った。また、
特集:美浜 3号機再稼働までの道のり(第 2回)ソフト面の対応
図25 点検開始前の発電所幹部による意識付け
JANSIより米国の 40年超プラントの経年劣化事象からトリップ・出力変動に結び付く可能性のある部位の紹介があったことを踏まえ、 3回目の総点検においては、安全上重要なポンプの振動診断や、はんだ付け部等の赤外線サーモグラフィによる温度確認も行った。(図 26)
(2) 集中的な安全確認
集中的な安全確認は、原子炉起動前、発電機並列前、
定熱到達後の計 3回のステップで、 140名 /回以上、延
べ約 430名の体制で確認を行った。
総点検および集中的な安全確認は、その対象を自身の
図26-1 安全上重要なポンプの振動診断
図26-2 赤外線サーモグラフィによる温度確認
担当範囲や機器に限定せず、資機材の配置状況等をはじめ、あらゆる視点で点検・確認を行った結果、保温材に隙間がある等、影響の大小に関わらず、現場の詳細にわたり約 460件もの気付き事項を抽出し、直ちに処置を行うことができた。また、当社社員、メーカ・協力会社でチームを構成し、点検・確認を行ったことで、点検・確認に対する様々な視点・経験の共有を図ることもできた。
3.5 プラント運営監視体制の強化
通常の発電所運営は、3交替勤務者(発電室等)と日勤者(管理課、保修課等)により行われており、平日夜間・休祭日においても、万一の事故発生時の初動対応要員として、当社社員と協力会社の計 41名(燃料装荷中は 49名)が常駐している。再稼働においては、更なるプラント運営への監視・即応体制の強化を目的に、燃料装荷から総合負荷性能検査完了までの約 2か月間を特別な監視体制期間として、平日夜間・休祭日の常駐要員を増強し、事故対策室を拠点とした工程管理や気付き事項発生時の初動対応等を行うとともに TV会議による関係各所との速やかな情報共有を行った。
(1) 平日夜間・休祭日の常駐要員の増強
特別な監視体制期間では、通常の要員に加え、発電室
1名、特別管理職 10名、メーカ・協力会社 10名以上を
増員し当番体制に組み込んだ。また、最終的な昇温・昇
圧から定熱到達までの間を「重要な局面」として、更に発
電室 4名、特別管理職 1名、メーカ・協力会社 20名を
増員した。(図 27)
メーカ・協力会社を含めて監視体制の強化を図ったこ
とで、本期間中の現場の気付き事項に対し、昼夜を問わ
ず速やかに対応することができた。また、重要な局面で
は、発電室当直課長クラス 1名が中央制御室に常駐する
ことで、運転操作実績等の確認や警報発信時の状況把握
について、運転員の手を煩わせることなく、タイムリー
図27 平日夜間・休祭日の常駐要員の増強
に当番体制との連絡を取り合うことができた。
(2) TV会議による情報共有
社内として原子力事業本部・福井事務所・東京支社・
本店と、社外として福井県・原子力規制委員会と TV会
議を接続できる環境を構築し、特に福井県とは定例会議
により日々の情報共有を行った。(計 63回)
定例会議では、再稼働工程・検査の進捗、主要運転パ
ラメータ、モニタリングポスト指示値、気象状況に加え、
2次系水質の報告も適宜行った。定例会議以外において
は、原子力事業本部と 24時間接続を行うことで、タイ
ムリーな情報共有を図った。(表 7)
TV会議による定例会議を実施したことで、関係個所
と直接会話ができ、各地の事務所を経由した個別の問い
合わせの労力と時間が削減される等、効率的な対応がで
きた。また、定例プレスにて、再稼働工程の進捗状況を
適宜公表し、タイムリーな情報公開に努めた。
3.6 再稼働に伴う他発電所・他部門からの応援
前項までで述べたように、再稼働に係るハード・ソフト面の対応は多岐に亘るものであり、これら再稼働業務を精度良く進めながらその他の業務も実施する必要が
表7 TV会議の概要
あったことから、発電所は慢性的な繁忙感に陥っていた。これを緩和するため、他所へ再稼働応援要請を行った。
再稼働応援は、 2017年 5月~ 2021年 10月の間、原子力部門管内(原子力事業本部、高浜発電所、大飯発電所)のみでなく、火力部門等から適宜、計 81人の要員の派遣を受けた。(表 8)
これらの応援者は、それぞれの力量に応じて安全対策工事に係る業務をはじめ、検査対応、再稼働関連作業、総点検・集中的な安全確認、日常業務等、様々な業務を助勢した。
表8 再稼働応援要員
この応援派遣は、「全社一丸となって美浜 3号機の再稼働を果たす !」という強い思いが形となった取組みであり、大きな助けとなった。また、特に火力部門からの応援者にとっても、原子力安全を学ぶ等貴重な機会になっていたと考える。
*
今回は、安全対策工事および再稼働管理体制、再稼働に向けた訓練、新規制基準に基づき新規策定や変更が必要となる社内標準等の本格運用に向けた取組み、再稼働工程の各ステップでの点検、プラント運営監視体制の強化といった「ソフト面」の対応について紹介した。
次回は、地元理解活動、再稼働で得た知見および課題、新型コロナウイルス感染予防・拡大防止への対応について紹介する。
(2021年 12月 10日)
著者紹介
著者:高畠 勇人所属:関西電力株式会社美浜発電所長専門分野:原子燃料設計、炉工学