解説記事 「ASMEにおけるリスク情報を 活用するための規格開発の新動向」
公開日:(国研)日本原子力研究開発機構
髙屋 茂 Shigeru TAKAYA
1. はじめに
米国機械学会(American Society of Mechanical Engineers, ASME)では、従来からリスク情報を活用するための規格基準類の開発が進められており、代表的なものに軽水炉配管の供用期間中検査プログラム(Risk-Informed In-Service Inspection, RI-ISI)がある[1]。また、近年の新しい取組みとして、非軽水炉型革新炉を対象に含めた維持規格の開発整備が進められており、2017年に、システム化規格概念を適用して、液体金属炉用維持規格に対する代替検査要求を定めるCode Case N-875が発刊された後[2]、当該成果を踏まえて、2019年には、リスクの概念を全面的に採用した新しい維持規格Boiler and Pressure Vessel Code, Section XI, Division 2: Requirements for Reliability and Integrity Management (RIM) Programs for Nuclear Power Plantsが発刊された[3]。設計分野でも、非原子力分野も対象に含め、リスク情報を活用し設計の合理化を目指す規格(Plant Systems Design, PSD)の新規策定のための検討が精力的に行われている[4]。このうち、本解説記事では、著者が開発整備に関わっているCode Case N-875及びSection XI, Division 2について概要を紹介する。
2.米国における非軽水炉型革新炉に対する
規制動向
ASME規格について説明する前に、米国における非軽水炉型革新炉に対する規制動向について簡単に述べる。
米国では、エネルギー、環境、安全保障問題に対応するため、エネルギー省の支援により民間主導で多種多様な非軽水炉型革新炉の開発が積極的に進められている。中でもテラパワー社が提案するナトリウム冷却炉及びXエナジー社が提案する高温ガス炉についてはAdvanced Reactor Demonstration Programにおいて最有力炉型に選定され、2028年頃までの運転開始を目指した開発が行われている[5]。
一方、米国Nuclear Regulatory Commission (NRC) も、非軽水炉型革新炉に対する効果的で効率的な規制の整備の必要性を認識し、その実現に向けた活動を実施中である[6-8]。また、米国議会は、2019年に原子力エネルギー革新・近代化法(Nuclear Energy Innovation and Modernization Act, NEIMA)を制定し、NRCに対して、非軽水炉型革新炉の規制に関し、2年以内に、既存の規制の枠組みの中でリスク情報を活用したパフォーマンスベースな許認可評価手法の利用性を向上させるための戦略等を開発すること、また、2027年末までに炉型に依存しない規制体系を構築することを指示した[9]。NRC、米国議会とも、1990年代に複数の非軽水炉型革新炉を対象に規制整備に係る課題を検討した経験[10]から、非軽水炉型革新炉は安全機能に関する設計が既存軽水炉と大きく異なり、既存軽水炉を対象に整備した規範的なガイド類が適用できないことを認識するとともに、炉型別に規範的なガイド類を整備するのではなく、炉型に依らず統一的に適用可能な規制体系を整備することに注目している。
NRCは、NEIMAへの対応として、官民一体で実施された許認可近代化プロジェクト(Licensing Modernization Project, LMP)に参加し、同プロジェクトで開発された、リスク情報を活用した、パフォーマンスベースで適用炉型を限定しない、許認可ベース事象の選定や構造物等のクラス分類、深層防護の適切性の評価等に関するガイダンス[11]の技術評価を行い、2020年にエンドースしている[12]。また、非軽水炉型革新炉用の新しい規制体系(10 CFR Part 53, "Risk-Informed, Technology-Inclusive Regulatory Framework for Advanced Reactors")の開発に取り組んでいる[13]。更に、民間で策定された仕様規格の技術評価も進めており、非軽水炉型革新炉の供用前検査(Preservice Inspection, PSI)及び供用期間中検査(Inservice Inspection, ISI)に関しては、本解説記事で概説するSection XI, Division 2が、2022年にエンドースされた[14]。
3.液体金属炉の供用期間中検査要求を定めるCode Case N-875の開発
3.1開発背景
ASME 規格体系では、Boiler and Pressure Vessel Code, Section XIが、原子力機器を対象とした維持規格である。その内、Division 1が軽水炉用であり、2017年版までは、Division 2がガス炉用、Division 3が液体金属炉用という構成であった。2019年版からは、ガス炉用維持規格及び液体金属炉用維持規格は、適用炉型を限定しない新しいDivision 2に置き換えられている。
液体金属炉用維持規格であるSection XI, Division 3について、もう少し詳しく説明する。Section XI, Division 3は、元々、米国におけるクリンチリバー増殖炉開発プロジェクトの一部として開発整備されたものであり、タイトルは液体金属炉用となっているが、実態としてはナトリウム冷却炉への適用を想定したものと考えられる。プロジェクトの中止に伴い、クラス1機器の許容基準等、一部の重要な規定が「準備中」という未完のまま、規格の改定作業も中断された。このため、実質的には使用不可能な状態であった。
2012年、次世代炉としてナトリウム冷却炉に大きな期待が寄せられる中、この状況に対応するために、ASMEに、JSME/ASME Joint Task Group for System Based Codeが設置され、システム化規格概念に基づく検査要求の導出手法、及び同手法に基づく液体金属炉クラス1機器等に対する検査要求に関する検討が行われた結果、2017年にCode Case N-875の策定に至った。なお、対象を液体金属炉に限定したCode Caseであるが、基本的な考え方や開発手法は、炉型を問わず適用可能であり、ASMEにおける非軽水炉型革新炉の維持規格開発について先駆的な役割を果たすとともに、後述の通り、開発成果は適用炉型を限定しない新しいSection XI, Division 2にも反映されている。
3.2 システム化規格概念
Code Case N-875の開発に際して、基本原理として採用されたシステム化規格(System Based Code, SBC)概念とは、構造物等に適用される複数の規格基準に含まれる技術項目の間で余裕を相互交換可能にすることにより、余裕の重複を避け、余裕を適正な水準に合理的に設定することを目標とする、柔軟な規格基準体系として我国で発案された概念である[15]。まず、対象とする構造物等が満足すべき信頼性(= 1 - 破損確率)の目標値(目標信頼性)を設定し、これに基づき、余裕の適正化や技術項目間の余裕の交換等を実現する。システム化規格概念については、過去に本誌で解説記事が掲載されているので[16]、そちらも参考にして頂きたい。
3.3 炉の特徴を考慮した検査要求の設定フロー
適切に純度管理されたナトリウムは構造材料との優れた共存性を有する一方、光学的に不透明であることや化学的に活性であることから、ナトリウム中やナトリウムを内包する機器の検査に、既存の非破壊検査手法を適用することは困難である。また、これら機器の使用環境についても、既存の軽水炉と比較して、高温、低圧である等の違いがある。合理的な検査要求を設定するためには、このような個別の炉の特徴を適切に考慮する必要がある。
Code Case N-875では、この課題に対応するために、図1に示す検査要求の設定フローが与えられており、このフローに従った評価を満足する場合に、表1に示す代替検査要求の適用が認められる。
図1 システム化規格に基づく検査要求設定フロー[2]
表1 Code Case N-875の代替検査要求[2]
対象部位 |
検査要求 |
液体金属を内包する機器の溶接部 |
連続漏洩監視 |
炉内構造物 |
検査要求なし |
検査要求の設定フローは、ステージ1とステージ2の二つの評価から構成される。
ステージ1では、目標信頼性を設定するとともに、構造物等の信頼性がこれを満足することを、顕在化の可能性がある劣化メカニズム等を考慮して評価する。ステージ1の評価を満足する場合、ステージ2に進む。
ステージ2では、欠陥の検知性を評価する。深層防護の観点から、ステージ1の評価結果に依らず、欠陥が発生した場合を想定する。従来の非破壊検査等による直接的な検知の他、モニタリング手法等を活用した間接的な検知も活用する点が本フローの特徴の一つであり、このために新しく二つの指標が導入されている。一つ目はMaximum Acceptable Leak(MAL)で、冷却材バウンダリに適用される。炉心損傷頻度(Core Damage Frequency, CDF)等の有意な増加に至らない冷却材の最大漏洩量をMALとして設定し、MALに至る前に漏洩を検知することで、間接的に欠陥の存在を検知する。二つ目はUnintentional Discontinuity(UID)であり、冷却材バウンダリ以外に適用される。温度や流量等の意図しない変化であり、MALと同様、CDF等の有意な増加に至らない最大変化量がUIDとして設定される。更に、直接的、間接的いずれの方法でも欠陥の検知が不可能な場合には、構造物等の破損の想定を工学的に排除できる十分保守的な追加条件の下で信頼性評価を行い、目標信頼性を満足することが示された場合には、検査要求が免除される。これは、システム化規格概念における、検査とそれ以外の技術項目間の余裕の交換の一例である。
以上のように、基本ロジックとして、構造物等が目標信頼性を満足するという条件のもとで、プラントの特徴を考慮し、柔軟に検査手法の選定することが可能なフローとなっている。フローに沿った具体的な評価事例については、文献[17-19]に示されている。
3.4 目標信頼性導出手法
3.3で説明したフローに従った評価を実施するためには、構造物等に対する目標信頼性の導出が必須となる。このため、新たに確率論的リスク評価(Probabilistic Risk Assessment, PRA)モデルを活用した目標信頼性導出手法が、Mandatory Appendix I Derivation of Component Target Reliabilities from Plant Safety Requirementsとして整備された。同Appendixは、システム化規格概念に関する検討において提案された手法が元となっている[20]。図2に示す通り、通常のPRAでは、構造物等の故障確率が入力データであり、プラントの安全に関わるリスク指標(CDF等)が出力であるのに対し、提案手法では、PRA解析モデルを逆方法に利用することによって、プラントレベルのリスク指標に対する目標値から、構造等の目標信頼性を導出することを可能にした。
図2 目標信頼性導出手法
3.5 信頼性評価手法
目標信頼性と比較するために、構造物等の信頼性を評価する必要がある。特に、ナトリウム冷却炉等の非軽水炉型革新炉においては、運転実績が限られることから、統計的な手法ではなく、解析的に構造物の信頼性を評価できる手法が求められる。しかしながら、Code Caseの検討当時、ASME Boiler and Pressure Vessel Codeに該当する手法は存在しなかった。一方、JSMEでは、システム化規格開発の一環として、高速炉機器の信頼性評価に関するガイドラインの開発が進められていたことから、当該ガイドライン案のうち、基本的な評価手順等を規定する本文を参考に、Mandatory Appendix II Procedure for Structural Reliability Evaluation for Passive Components of Liquid-Metal Reactorsが整備された。評価手順を図3に示す。図1の検査要求設定フローに対応して、対象機器の要求機能と使用環境を考慮して破損シナリオを同定した後、確率変数の設定を含む数学的モデル化を行い、信頼性を評価する流れとなっている。なお、JSMEにおいても、2017年に「高速炉機器の信頼性評価ガイドライン」[21]が策定されている。
図3 信頼性評価手順
4.適用炉型を限定しない新しい維持規格
RIMの開発
4.1 開発背景
液体金属炉用維持規格に対するCode Case N-875の開発成果を踏まえ、ASMEでは、その後、2019年に、より全面的にリスク概念を活用し適用炉型を限定しない新しい維持規格であるSection XI, Division 2 : Requirements for RIM Programs for Nuclear Power Plantsが策定された[3]。
RIMは、元々、南アフリカ共和国における高温ガス炉開発プロジェクトにおいて合理的な検査要求を設定するために提案され、ASMEでの規格化検討が開始された[22]。南アフリカ共和国でのプロジェクトの中断によって一時活動が停滞したものの、その後の米国における軽水炉型Small Modular Reactorや非軽水炉型革新炉の開発機運の高まりに呼応して、適用対象を限定しないTechnology-neutralな維持規格として検討が再開され、規格化に至った。なお、RIMでは、既存の軽水炉用維持規格であるSection XI, Division 1のように、機器や部位毎の具体的な検査要求(検査方法、範囲、割合、頻度等)は与えない。その代わりに、プラントの特徴を考慮した適切な検査要求、より正確には、モニタリング及び非破壊検査(Monitoring And Non-Destructive Evaluation, MANDE)に関する要求を含むRIMプログラムを設定するための基本的な手順を規定している。このため、炉型を問わず適用可能となっている。
4.2 基本フロー
RIMの基本フローを図4に示す。システム化規格概念と主要概念を共有しており、後述のとおり、Code Case N-875の内容が、新しいSection XI, Division 2に反映されている。
図4 RIMの基本フロー[3]
基本フローの各ステップについて簡単に説明する。
まず、RIM Program Scope Definitionでは、RIMプログラムの対象とする構造物、系統及び機器(Structure, System and Component, SSC)を具体的に特定する。なお、設計時のクラス分類に依らず、プラントの安全性と信頼性に影響を及ぼし得る構造物等は、全て対象に含める。
次に、Damage Mechanism Assessmentでは、供用中に顕在化の可能性がある劣化メカニズムを、設計、製作、運転、既存知見、PSI及びISI等の情報を考慮して、同定する。また、個別の炉型で考慮すべき劣化メカニズムが、考慮要否のクライテリアとともにMandatory Appendix VII Supplements for Types of Nuclear Plantsに与えられており、こちらも考慮する。なお、現状では、軽水炉及び高温ガス炉用のSupplementのみが整備されているが、液体金属炉(ナトリウム冷却炉)用及び溶融塩炉用のSupplementの整備が、Section XIにおける優先課題として挙げられており、鋭意検討が進められている。
Plant and SSC Reliability Allocationでは、Damage Mechanism Assessmentと並行して、プラントレベル並びにSSCレベルの目標信頼性(Reliability Target, RT)を設定する。プラントレベルのRTは、PRAで定義される設計基準事象のリスク、頻度、放射性物質の放出に関する規制上の制限から定める。但し、稼働率の観点から別途目標値を定めても良い。次に、プラントレベルのRTを満足するために必要となるSSCレベルのRTを導出する。SSCレベルのRTの導出手法は、Code Case N-875の手法が取り入れられ、Mandatory Appendix II Derivation of Component Reliability Targets from Plant Safety Requirementsとして与えられている。
続くIdentification and evaluation of RIM strategyでは、同定された劣化メカニズムを考慮して、SSCレベルのRTを満足するためのRIM Strategyを立案するとともに、その有効性を評価する。RIM Strategyでは、設計、製作、運用、モニタリング、試験、検査、運転、保全等、信頼性に影響を及ぼす要因を全て考慮する。これは、RTを満足するために、手厚い検査を実施するよりも、設計等で対応した方が合理的である可能性があるからである。このため、RIMは設計段階から適用検討を開始することが推奨される。
更に、Evaluation of Uncertaintiesにおいて、SSCの信頼性評価に関する不確実性を考慮して、RIM Strategyに必要な追加を行う。但し、具体的に何を追加すべきかについては、現状、例示等はない。
RIM Program Implementationでは、立案したRIM Strategyに基づいてRIM Programを具体化する。MANDEの対象となったSSCについて、RTを満足するために必要なMANDEクライテリア(検査手法、感度、頻度等)についてもここで設定する。Mandatory Appendix V Catalog of NDE Requirements and Areas of Interest及びMandatory Appendix VII Supplements for Types of Nuclear Plantsに、劣化メカニズムに対応した標準的な検査手法と検査範囲が与えられており、これを参考にする。また、Mandatory Appendix IV Monitoring and NDE Qualificationに、MANDEに対するパフォーマンスベースの品質要求が規定されている。なお、既存の目視試験や体積試験に関する一般事項が本文で規定されているが、有効と認められる場合は、規定されていない代替試験方法を適用してもよい。代替試験方法の設定手法としては、Code Case N-875の検査要求設定フローが取り入れられており、Nonmandatory Appendix A Alternate Requirements for NDE and Monitoringとして整備されている。更に、検査で見つかった指示に対する具体的な許容基準については、炉型別にMandatory Appendix VII Supplements for Types of Nuclear Plantsで与えられている。
最後に、Performance Monitoring and RIM Program Updateで、MANDEの実施結果や新知見等を考慮してRIMプログラムの該当部分を再評価し、RIMプログラムの必要な更新を行う。
4.3 エキスパートパネルの活用
4.2で概説したとおり、基本フローに沿って実際にRIMプログラムを策定するためには、様々な評価や判断が必要となる。RIMでは、その妥当性を確認するためにエキスパートパネル(RIM Expert Panel, RIMEP及びMANDE Expert Panel, MADEEP)を活用する。MANDEEPは、MANDEクライテリアの策定に、RIMEPは、MANDEクライテリア以外の全てのRIMプログラムの策定に責任を有する。適切な人材でエキスパートパネルを構成するために、各エキスパートパネルのChair及びMemberの要件が定められている。例えば、RIMEPのChairの場合、プラント及びSSCの信頼性並びにPRAに関する幅広い基礎的知識を有していることの他、検査及びモニタリング等に関する実務知識を有すること、大学等での4年以上の履修、15年以上のリスク及び信頼性に関する業務経験が求められる。
4.4 今後の展開
現状Section XI, Division 2の対象は、Division 1と同様、発電用原子力プラントのみであるが、現在開発が進められている非軽水炉型革新炉の中には、医療用アイソトープの製造等、発電以外を目的とするものがある。このため、Section XI, Division 2の対象を非発電用原子力プラントにも適用するための検討が現在進められている。基本フローについては、非発電用原子力プラントにも適用可能であることから、主に、発電用原子力プラントへの適用を前提としている用語の見直し等、編集上の修正が全面的に行われている。審議が順調に進めば、2023年版に反映の予定である。
また、既述のとおり、炉型別Supplementの開発整備が重要課題として認識されており、液体金属炉(ナトリウム冷却炉)用及び溶融塩炉用の添付について検討が進められている。更に、ガス炉での利用が想定されるグラファイト材へのRIMの適用についても関心が高まっており、2022年に新たにタスクグループが設置された。
このように、適用炉型を限定しないというRIMの特徴を活用し、適用範囲を拡大するための取組みが精力的に行われている。
5.まとめ
ASMEにおけるリスク情報活用のための規格開発の新動向として、液体金属炉の検査要求を定めるCode Case N-875及び適用炉型を限定しない新しい維持規格Section XI, Division 2の概要を紹介した。いずれもリスク情報を活用した炉型に依らず適用可能な基本フローと個別の炉型に応じた規定の組み合わせという構成は共通であり、NRCが志向する炉型を問わず統一的に適用可能な規制体系とも整合している。
アクセス性の観点からだけでなく、劣化メカニズムへの対応の観点からも、設計段階から供用期間中検査要求を検討することの重要性が認識され、軽水炉型Small Modular Reactorや非軽水炉型革新炉の開発が進む中、Section XI, Division 2の改定作業が活発に行われている。なお、Code Case N-875は、JSMEとASMEの連携により開発されたが、現在も両者の連携は継続されており、ASME/JSME Joint Working Group on RIM Processes and System Based Codeにおいて、Section XI, Division 2の改定案が新規提案され、審議されている。
JSMEにおいても、Code Case N-875の成果を参考に、高速炉用維持規格が新規策定された[23]。また、システム化規格において、またRIMにおいても、最も重要な指標である目標信頼性について、更なる検討が進められている。
今回紹介したリスク情報を活用するための規格開発の活動が、既存軽水炉を含め、より効果的で効率的な保全の実現のために少しでも参考になることを期待する。
参考文献
[1] ASME: "Case N-716-3 Alternative Classification and Examination Requirements", 2021 ASME Boiler and Pressure Vessel Code, Code Cases, Nuclear Components (2021).
[2] ASME: "Case N-875 Alternative Inservice Inspection Requirements for Liquid-Metal Reactor Passive Components", 2021 ASME Boiler and Pressure Vessel Code, Code Cases, Nuclear Components (2021).
[3] ASME: "Requirements for Reliability and Integrity Management (RIM) Programs for Nuclear Power Plants", 2021ASME Boiler and Pressure Vessel Code, Section XI, Division 2 (2021).
[4] R. Hill, M. deLamare, J. Harper, J. Shook: "New ASME Standard on Plant Systems Design", Proc. of ASME 2022 Pressure Vessels & Piping Conference, PVP2022-80241 (2022).
[5] U.S. Department of Energy: "Infographic: Advanced Reactor Development" (2022).
https://www.energy.gov/ne/articles/infographic-advanced-reactor-development
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[8] U.S. NRC: "NRC Non-Light Water Reactor Mid-Term and Long-Term Implementation Action Plans", ML17164A173 (2017).
[9] U.S. Congress: "Nuclear Energy Innovation and Modernization Act", Public Law 115-439 (2019).
[10] U.S. NRC: "Issues pertaining to the advanced reactor (PRISM, MHTGR, and PIUS) and CANDU 3 designs and their relationship to current regulatory requirements", SECT-93-092 (1993).
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[12] U.S. NRC: "Guidance for a Technology-Inclusive, Risk-Informed, and Performance-Based Methodology to Inform the Licensing Basis and Content of Applications for Licenses, Certifications, and Approvals for Non-Light-Water Reactors", Regulatory Guide 1.233 (2020).
[13] U.S. NRC: "Rulemaking Plan on "Risk-Informed, Technology-Inclusive Regulatory Framework for Advanced Reactors"", SECY-20-0032 (2020).
[14] U.S. NRC: "Acceptability of ASME Code, Section XI, Division 2, "Requirements for Reliability and Integrity Management (RIM) Programs for Nuclear Power Plans," for Non-Light Water Reactors", Regulatory Guide 1.246 (2022).
[15] Y. Asada, M. Tashimo, M. Ueta: "System Based Code - Principal Concept", Proc. of 10th International Conference on Nuclear Engineering, ICONE10-22730 (2002).
[16] 浅山、森下: "システム化規格の概念と展開", 保全学, Vol. 11, No. 2, pp. 13-18 (2012).
[17] S. Takaya, T. Asayama, Y. Kamishima, H. Machida, D. Watanabe, S. Nakai, M. Morishita: "Application of the System Based Code Concept to the Determination of In-Service Inspection Requirements", ASME Journal of Nuclear Engineering and Radiation Science, Vol. 1, paper 011004 (2015).
[18] S. Takaya, Y. Kamishima, H. Machida, D. Watanabe, T. Asayama: "Determination of ISI Requirements on the Basis of System Based Code Concept", Nuclear Engineering and Design, Vol. 305, pp. 270-276 (2016).
[19] S. Takaya, T. Asayama, H. Yada, A.T. Roberts, F.J. Schaaf: "Development of In-Service Inspection Rules for Liquid-metal Cooled Reactors Using the System Based Code Concept", ASME Journal of Pressure Vessel Technology, Vol. 142, paper 021601 (2020).
[20] K. Kurisaka, R. Nakai, T. Asayama, S. Takaya: "Development of System Based Code (1) Reliaiblity Target Derivation of Structures and Components", Journal of Power and Energy Systems, Vol. 5, pp. 19-32 (2011).
[21] 日本機械学会: "発電用原子力設備規格 高速炉機器の信頼性評価ガイドライン", JSME S NX7-2017 (2017).
[22] K.N. Fleming, J. Fletcher, N. Broom, R. Gamble, S. Gosselin: "Reliability and Integrity Management Program for PBMR Helium Pressure Boundary Components", Proc. of 4th International Topical Meeting on High Temperature Reactor Technology, HTR2008-58036 (2008).
[23] 日本機械学会: "発電用原子力設備規格 高速炉維持規格", JSME S NA2-2021 (2021).
(2022年11月29日)