解説記事 プラントライフマネジメントの将来像 ~ IAEA PLiM-5 会議報告 ~
公開日:1.緒言
International Conference of Nuclear Power Plant Life Management (PLiM会議)は、国際原子力機関(IAEA)が4~5年に一度の頻度で主催する国際会議である。プラントライフマネジメント(PLM)とは、ライフサイクル全体を通じて原子力発電所の高信頼性と安全性を維持するために必要な技術とマネジメントの総称である。IAEA加盟国では、それぞれの業務慣習や規制制度を踏まえ、PLMが様々なプログラム(日常的に実施されるものと、アドホックなものを含む)として展開されている。その範囲は保全学会の関心分野と大きく重なっている。PLiM会議は、関係者がPLMの良好事例を持ち寄って議論を重ねることにより、外形上の違いを超えたPLMの本質を把握し、その将来像を見定める機会となる。著者は、2022年11月28日〜12月2日の期間にウィーンで開催されたPLiM-5会議でプログラム委員を務め、初期の準備段階から企画を担当したことから、本会議について報告する。
2.PLiM-5会議の構成と論点
PLiM会議は、局を異にする二つの課(原子力エネルギー局Nuclear Power Engineering Sectionと核安全・セキュリティ局Operational Safety Section)が共同で事務局を務めることから、他のIAEAの技術的な国際会議と一線を画する。これは、長期運転(LTO)への対応という重要で明瞭な目標を据え、これまでの経験から得られた知識をすべての関係者に適切な手段で共有し、ふさわしい形で事業者と規制機関の調和を図り、安全性と信頼性を共に向上させるというPLMの理想像に合致する。
PLiM-5は、これまでの会議の伝統を踏襲し、六つのカテゴリーで論文(contribution paper)を募集した。
1) Approaches to PLMは、LTOに向けたIAEA加盟国の政策や、PLMのための組織戦略など、大局的な議論が期待されるセクションである。
2) Economics of PLMでは、PLMを通じてプラントの経済性を高めるためのプラクティスを募集する。今回は特に、サプライチェーンの維持や既設プラントを電力網のベースロード以外にも活用するプログラムの紹介が期待された。
3) Ageing Management and Preparation of LTOでは、高経年化対策のための研究開発成果の多くが紹介される。今回は特に、廃止措置プラントから採取された試料の評価プログラムの報告が期待された。
4) Configuration and Modification Management for Safety Enhancement and Improved Reliabilityでは、プラントの大規模改修(Refurbishment)、大型機器の交換、設計拡張状態のための設備の追加など、プラントの性能を向上させるプログラムの報告が期待された。革新的な燃料の採用もここに分類される。
5) Stakeholder Engagement, Human Factors and Managerial Aspectsでは、PLMに必要な人的資源の維持、組織管理、知識管理等が扱われた。特にLTOに向けたステークホルダエンゲージメントの報告が積極的に募集された。
6) Regulatory Approaches to Ageing Management and LTOでは、IAEA加盟国におけるLTO規制の準備や実施、IAEAのSALTO (Safety Aspects of Long-Term Operation) ミッションの報告が募集された。
最終的に、プログラムは6件の基調講演と17のテクニカルセッション、4のパネルディスカッション、3つのサイドイベントで構成された。
開会式では、東京大学の関村直人氏が講演して、PLiM会議の歴史を振り返ると共に、日本のPLMの最新動向を紹介した。そして、PLiM-5の要となる論点として、次の四項目を提示した[1]。
① Knowledge accumulation and research and development for ageing management progrmmme (AMP)s
② Risk-informed decision making (RIDM) for LTO
③ Obsolescence management
④ Incentive of stakeholders for operation of existing and future plants
ここからは、提示された論点に沿って会議のハイライトを纏めると共に、会議を通じた著者の所感に基づいてPLMの将来像を論じる。
3.知識の蓄積とAMPの開発
PLiMは原子力材料研究者のための会議ではないが、研究畑の参加者からは、廃止措置プラントから採取された材料等を活用した興味深い研究プロジェクトが紹介された。SMILEはStudsvikが実施する2021年から5か年のプロジェクトであり、スウェーデンの3つの廃止措置プラントから材料を採取し、実際の劣化を評価する[2]。日本も、浜岡1、2号機から採取したステンレス鋳鋼やコンクリートの劣化評価など、複数の機関からのプロジェクトの概要と結果を共有した[3]。
EDFのJayet-Gendrot氏は、900MWe PWRにおける具体的なLTO対策について丁寧に紹介した[4]。評価項目は、プラントの保全活動に着目したコンプライアンスレビュー、経年劣化のレビュー、プラント安全の再評価、に大別される。予見可能な劣化に対しては先行的な緩和策が採用される。例えば、炉心そうまでの距離が短い12体の燃料集合体にはハフニウム棒を挿入し、原子炉容器ベルトラインの中性子束を45%低下させて中性子照射脆化を抑制するという対策が取られる。
各国からの多数の発表を通じ、IGALL(International Generic Ageing Lessons Learned)の活動が国際社会に定着していることが確認された。会議参加者とのコミュニケーションからも、IGALLの真の価値に改めて気付かされることになった。例えば、日本に限らず、各国の規制機関のスタッフは、国内の他組織の専門家から孤立しやすい。IGALLの活動は、規制機関に所属する専門家に国際的に連帯する機会を提供する。コミュニティには、海外規制機関のメンバーに加え、自国の事業者やTSOに所属するPLM関係者も含まれる。国際的な専門家コミュニティという監視役が介在することで、事業者と規制機関の専門家が、個人として、公式かつ率直な形で意見交換することが可能になる。日本はIGALLの立ち上げ時に主導的な役割を果たしたが、今では自国の高経年化対策を正当化するためにIGALLを引用する程度に成り下がっているのではないか、と自省した。今一度、国レベルで戦略的にIGALLを活用することで、規制を含む国内のPLMコミュニティを強化するべきである。
東京大学が企画したサイドイベントでは、日韓中の産業界から現場に立脚した研究課題が紹介され、ウィーンにいる参加者と議論するため時間が設けられた。日本からは関西電力の寺地巧氏が講演し、大飯3号機加圧器スプレイライン配管溶接部のひび割れについて丁寧な紹介を行って、欧州でPWRのAMPに従事する専門家達から多くの質問を受けた。イベントはアジア圏の夕方の時間帯に企画され、出国制限の厳しい中国からもオンラインでの参加者を得て、活発な議論が行われた。
4.LTOのための意思決定
LTOは国ごとの規制基準を満たせば実現できるというものではない。まだ顕在化していない事象への備えや社会環境の変化等、多様なリスクを考慮して意思決定を行う必要がある。知識の蓄積に応じて規制制度自体を変えていくことも求められる。PLiM-5会議では、各国のLTOに向けた取り組みが紹介され、幅広くステークホルダーを巻き込みながら意思決定を行うことが、LTOを成功させるだけでなく、原子力業界の信頼性を高めることに繋がることが示された。
フランス・エネルギー気候総局(DGEC)のRaud氏は、脱炭素とエネルギー安全保障の目的を達成するためのフランスの原子力政策について紹介した[6]。政府は、2050年のエネルギーミックスに関する六種類のシナリオを研究し、その中でLTOという選択肢を除外しないことに価値があることを確認した。運転年数に上限はないが、各プラントは10年毎に定期安全レビューを行うことが求められる。"10年点検"と呼ばれる停止期間を使って欧州加圧水型炉(EPR)に近い水準まで安全性を向上させるプラントだけが、次の10年間の運転へと移行できる仕組みとなっている。LTOに必要な投資はGrand carénage(直訳すると、大規模な整形外科手術)と呼ばれ、2014~25年の国内総額で500億ユーロと見込まれている。
米国は、事業者(EPRIのYoung氏が講演予定だったが、代演となった)とNRCが、別々の視点からPLMにおけるリスク情報活用について報告した。EPRIではLTOに向けた研究の一環としてリスク重要度に基づくAMPの開発を進めており、選択溶出(selective leaching)とケーブル劣化に関するリスクマトリクスを整備したことが報告された[7]。米国NRCのSmith氏は、現在のLicense Renewal (LR)制度は決定論的なアプローチであるが、NEIとの対話に基づいてリスク情報を活用した手法に段階的に取り組む方針であることが説明された[8]。最初は機器の性能検証(EQ)の対象ではないケーブルと選択溶出について、リスク情報を用いたAMPパイロット版の試運用を開始したことが報告された。また、Smith氏はsubsequent LRの実現に至る米国のLTOの歴史を概観し、同僚のHiser氏はSLRにおける評価の着眼点について丁寧に解説した[9]。
カナダの取り組み[10]は、LTOの意思決定に関する別の側面を浮き彫りにした。AENLのGottschling氏はカナダにける既設炉の大型改修計画の概要を説明した。オンタリオ州では2017~33年の期間に10基の改修及びLTOが計画されていた。州政府はプロジェクトの適切性を確認するため、Darlington 2号機の改修が計画通り2020年に予算内で完了することを、残る9基の改修に踏み切る条件に設定した。計画が順調に完了したことにより、原子力業界に対する信頼確保に成功し、改修プロジェクトの継続が決定することになった。
PLiM-5会議では日本の良好事例についても、様々な角度から紹介された。関村氏による包括的な講演を踏まえ、資源エネルギー庁の安良岡悟氏がLTOに向けた日本の国プロの全体像を紹介し[11]、個々の研究開発の成果もテクニカルセッションやポスターセッションで公開された。関西電力からは、田中剛司氏がパネルディスカッションに登壇し、自社におけるLTOの意義と取り組みを語ると共に、地元を中心としたステークホルダーから信頼を獲得するための取り組みについて紹介した[11]。同社の寺地巧氏はPWRのLTOに向けた技術的な取り組みを解説した[12]。日本のBWRに関しては、LTOに向けた東海第二発電所の取り組みを日本原子力発電の菊池勝氏が説明し[13]、その審査について原子力規制庁の塚部暢之氏が紹介した[14]。現場の第一線の担当者による多層的な説明により、日本の事例の全体像が把握できたことは高く評価された。
5.陳腐化に対抗するためのマネジメント
テクニカルセッションとパネルディスカッションの多くで、LTOに不可欠な技術基盤の維持や、PLMにおける革新的な技術の適用についての議論が交わされた。これは、サプライヤーの製造中止や撤退による交換部品の欠品を防ごうというレベルの話に留まらず、戦略的に設備を更新することでプラントの安全性と信頼性を継続的に向上させることが関係する。
例えば、美浜3号機の炉内構造物交換の事例[15]では、メーカにおける技術伝承の側面や、耐震性能を向上させるという点に着目された。また、三菱重工業における計装制御品の近代化の報告[16]では、デジタル化を進めることで保全性が向上するという効果に注意が向けられた。
海外事例と比較して、日本が遅れている分野も顕在化した。その一例は、積層造形(AM)技術の原子力分野への適用である。欧州委員会共同研究センター(EC-JRC)のMartin氏は、NUCOBAMプロジェクトを紹介した[17]。ここでは、原子力グレードの要求を満足するAM製品の製造方法と品質保証の規格化を目指し、CEAを中心とした13機関によるラウンドロビンが進められている。既に規格原案は完成しており、2024年中旬の発刊を目指している。日本機械学会は2023〜29年の期間で原子力用AM技術の事例規格を作成するとしており[18]、欧州とはかなり差が開いている状況である。サプライチェーン再構築のニーズが大きい国ほど革新的な製造技術の実用化が進みやすいという側面があるかもしれず、日本でも国レベルの対応が必要だと感じられる事例であった。別の例として、アルゼンチンでは、サプライヤーの撤退に伴って、LTOを迎えるAtucha 1号炉のために、国立研究所内に機器の性能検証(EQ)のための施設を設置する等の対応を丁寧に展開してきたことが紹介された[19]。日本でも、新技術の開発自体はサプライヤーが競争的に実施し、試験設備は資源エネルギー庁が提供する等の住み分けが可能であり、戦略的な予算措置が期待される。
6.PLMのインセンティブ
プログラム案の検討を具体化させはじめた2021年夏の段階で、欧米のプログラム委員たちは気候変動への対応をPLiM-5の主要テーマとして取り上げることに否定的であった。カーボンニュートラル(CN)のための投資は原子力に流入しておらず、逆に電力市場からLTOを見据えたプラントを追い出す効果があるとの見立てである。米国や欧州からの論文投稿も低調であった。しかし、第二回のプログラム会議の最中にロシアのウクライナ侵攻が始まり、PLiM会議への風向きは一変した。参加申し込みやエキシビション出展の申し出が急増し、プログラム委員会にもCNへの潮流に合わせた既設炉の幅広な活用を会議の軸にしようという機運が高まった。
そこで、パネルディスカッションの一部としてCNへのチャレンジとPLMのベースロード以外への活用を取り入れることで、主要な関係者をPLiM-5会議に招待することにした。集められた報告はCNがLTOに厳しい環境の中で、関係者が知恵を絞って実施してきたプロジェクトの成果である。この中には、フランスEDFの負荷追従と長期的な経年劣化の重畳が与える影響を緩和するための研究開発[20]、米国Constellationの水素製造拠点プロジェクト[21]、中国SPICの原子力プラント排熱の暖房利用[22]が含まれる。
ConstellationのOtgonbaatar氏は、米国と自社における原子力水素戦略について紹介した[21]。米国では、バイデン政権の水素政策(産業・運輸部門用"水素ハブ"の整備に80億ドルの拠出と、税制優遇を行う)の追い風を受け、既設炉を中核とした水素ハブ整備の機運が高まっている。Constellation社は水素消費地の分析を踏まえ、イリノイ州北部を水素ハブの第一候補地としている。同社の提案は、既設炉を中核として大規模な電気分解方式の水素プラントを整備し、電力網への出力調整に利用すると共に、アンモニア製造、航空機燃料、長距離トラック用燃料の原料として水素(と廃熱)を供給する計画である。2021年8月には、比較的小規模な水素需要地であるニューヨーク州北部に位置するNine Mile Point発電所で実証試験を開始した。まずは、政府の支援を受けて、所内で消費される水素を製造するための1MWの設備を2022年内に稼働させており、スケールアップに向けた検討も加速させている。米国DOEのTokey氏は、Davis-Besse, Prairie Island, Palo Verdeの各発電所における水素製造実証プログラムも紹介した[23]。米国は、非電化部門の脱炭素のための水素利用という大きな目的を掲げ、それを実現するための手段の一つとして原子力を位置づけているのに対し、日本における"原子力水素"の議論は主従が逆転している印象を持った。日本の原子力業界に、20年後の水素消費地の地理的分布をイメージできる人がどのくらい存在するだろうか。米国の良好事例をキャッチアップするために喫緊に取り組むべき事案である。
SPICのDou氏は、中国の4発電所におけるプラント廃熱の暖房利用プロジェクトについて報告した[22]。エネルギー利用率の観点では比較的小規模なプロジェクトであるが、原炭の暖房利用が大気汚染の原因となっている中国において"クリーンな暖房"の社会的意義は大きい。原子力施設と公衆の価値類似性を高めるための投資には貨幣換算できない価値があり、Stakeholder Engagementを促進する効果がある。原子力政策が転換点を迎えた今、日本でクリーンな暖房に相当するものが何なのかを真剣に考えるべき時期に来ていると感じた。
会議を通じて、長期的なPLMプロジェクトが、国レベルの産業基盤の発展に与える影響の大きさが再確認された。カナダからは、LTOが原子力事業の持続性に与える影響を学ぶことができる。一連の改修プロジェクトでは、一定の雇用や設備投資を州内で実施することが求められており、2033年のプロジェクト完了まで長期的な経済活動が期待される[9]。会議では、こうして強化された産業基盤を用いて、小型モジュール炉の新設へと繋げる道筋も示された[24]。米国WestinghouseのForrai氏もLTOプロジェクトがプラント新設に必要な産業基盤と人材の長期的な育成に重要であることをパネルディスカッション[25]とWomen in Nuclear が主催したサイドイベントで繰り返し強調した。Managerial Aspectsに関するテクニカルセッションでは、コロナ禍で加速された働き方の変化が、プラントで勤務する人材の確保に与える影響に注意喚起された。PLMプロジェクトのもつ予見可能性と科学的な面白さのバランスが、将来の人材を惹きつける可能性に言及された[26]。
7.PLiM開催までの経緯
最後に、PLiM-5会議開催までの経緯について、短く紹介させて頂きたい。この会議はブタペスト(2002年), 上海(2007年), ソルトレークシティ(2012年), リヨン(2017年)と回を重ねており、PLiM-5はアジア圏で2021年に開催されることが期待されていた。会議の重要性とIAEA予算の執行計画を踏まえ、暦年を毎回奇数とする4年毎の開催へと周期を変えることが議論された。日本のPLM関係者は、40年超プラントの再稼働予定を念頭に入れながら、国際社会と共にLTOに関する議論を喚起するため、関西地区でPLiM-5を開催することを提案した。資源エネルギー庁をホストとし、多くの関係組織(特に、電事連、三菱総研、日本エヌ・ユー・エス)の協力を得て、2022年5月に大阪で開催すべく準備が進められた。日本側は、どこを拠点にしてもコロナ禍でハイブリッド開催は避けられないと考えていたが、IAEA側が対面開催に拘ったこともあり、調整が難航した。結局、2022年1月の段階で検疫上の制限が解除されていなかったことが最大の障害となり、PLiM-5会議の半年延期、およびウィーン国際センターを拠点としたハイブリット開催への変更が決定された。
大阪開催を予定していたこともあり、PLiM-5への日本の貢献は質・量ともに特筆すべきものがあった。会議の共同議長は、在ウィーン国際機関日本政府常駐代表の引原毅大使が務めた。先に紹介した発表の他にも、経年劣化管理に関する研究開発成果を中心に、多くの報告が日本から行われ、高い評価を得た。またテクニカルセッションやパネルディスカッションの座長や書記として議論の取りまとめに尽力した方も多かった。
8.結言
IAEAのGrossi事務総長は初日に登壇して挨拶し、LTOは賢いエネルギーミックスのための影の英雄(Unsung Hero)であり、技術的な議論が活発に行われることを期待すると述べた[27]。PLiM-5を通じて、影の英雄としてのPLMの役割は関係者により明確に認識され、PLMという仕事に誇りを持てるように促されたことは重要な成果である。先に見てきた通り、開会式の講演で提示された四つの論点についても、議論を深めることができた。この成果を国内のプラクティスに的確に反映できたか否かは、四年後までに明らかになるだろう。
PLMを通じて強化される原子力産業の技術基盤が、プラントの新設やリプレースにとって極めて有用であることは自明である。残念なことに、日本では、原子力に対して好意的なコミュニティの中でさえLTOと新設・リプレースが対立する概念のように語られている。PLiM-5の会場では、同時期に行われていた日本の政策転換の動きが好意的に語られていたが、著者はその詳細を会議資料等で確認するにつれ、落胆してしまった。"革新炉"といった言葉を振り回すことで既存のプラントと未来のプラントを分断するイメージが醸成され、思慮の浅い言動が増殖しているように思えてならない。私たちは、PLMによって原子力業界の信頼と技術力が次世代へ繋がっていくというビジョンを、明確に示さなければいけない。
PLiM-5では、ハイブリッド開催という利点を生かし、締め切りまでに提出された論文、発表スライド、及びビデオがアーカイブされ、事前登録した参加者はオンデマンドで視聴することが可能になった。PLiM-5の議事概要はIAEAの技術図書(TECDOC)として、論文及び著者が許諾した発表スライド等はTECDOCの補足資料として、いずれ公開される予定である。PLiM-5会議のテクニカルセッションは三つの会場に分かれて並列開催されたが、メイン会場の講演は(基調講演やパネルディスカッションを含め)今のところ会議のホームページから視聴することができる。特に東大・関村教授の開会講演[1]と、電中研・長野浩司氏がファシリテートしたパネルディスカッション[28]は非常に評判が良かったので、ぜひ視聴して頂きたい。会議ビデオは http://streaming.iaea.org/23082 で公開されている。また、参考文献には、発表者、セッション番号、論文番号等の情報を、公開されたプログラムに基づいて示している。
参考文献
[1] N. Sekimura, Opening Session, ビデオは
http://streaming.iaea.org/23083の48:30頃からである。
[2] A. Jenssen, 3-3, Paper 74
[3] 例えばY. Miura, 3-3, Paper 28
[4] S. Yayet-Gendrot, Plenary technical, Paper 46
[5] Panel discussion 3
[6] G. Young, 1-1, Paper 30
[7] B. Smith, Plenary technical, Paper 66
[8] A. Hiser, 6-3, Paper 67
[9] A. Gottshling, Panel 3
[10] S. Yasuraoka, 1-1, Paper 42
[11] T. Tanaka, Panel 3
[12] T. Terachi, 1-4, Paper 7
[13] M. Kikuchi, 1-2, Paper 14
[14] N. Tsukabe, 6-2, Paper 82
[15] T. Tatsuno, 4-1, Paper 9
[16] M. Noguchi, Plenary technical, Paper 23
[17] O. Martin, 4-1, Paper 68
[18] K. Murakami, 6-3, Paper 18
[19] E. Maita, 4-1, Paper 59
[20] S. Richard, Panel 1
[21] U. Otgonbaatar, Panel 1
[22] J. Tokey, Panel 4
[23] Y. Dou, Panel 1
[24] J. Moore, Panel 4
[25] S. Forrai, Panel 4
[26] K. Murakami and C. Van Drunen, 5-1
[27] R. M. Grossi, D. G. Remark
[28] K. Nagano, Panel 3, ビデオはパネルの冒頭部分が切れているが、大半はhttp://streaming.iaea.org/23089 の0:00から視聴できる。
(2023年3月1日)