解説記事「もんじゅ廃止措置の動向 ~ その2 もんじゅ廃止措置第2段階の概要 ~」
公開日:1.はじめに
2018年から開始された高速増殖原型炉もんじゅにおける廃止措置は、廃止措置第1段階の主要工程となる2次系ナトリウムの抜取り・固化及び燃料体取出し作業を完遂し、2023年度より廃止措置第2段階へ移行した。本稿では、前号(保全学 vol.23 2024 №1)「もんじゅ廃止措置の動向 〜 その1 もんじゅ廃止措置第1段階の完遂 〜」【1】に引続き、もんじゅ廃止措置第2段階の概要を説明するとともに、廃止措置の進捗に伴い変化する性能維持施設の見直しとそれに合わせた保全プログラムの構築及び本格的解体が開始される廃止措置第3段階に向けての取組みについて解説する。
2.もんじゅ廃止措置第2段階の位置づけと
主要作業【2】
もんじゅ廃止措置第2段階は、2023年度から2031年度にかけ、2032年度より開始される廃止措置第3段階からの本格的な廃止措置(ナトリウム機器の解体撤去)に向けての準備期間と位置付けている。そのため、廃止措置第2段階前半では、第1段階で抜き取った2次系ナトリウムの搬出作業と原子炉容器内に残るしゃへい体等(制御棒集合体、中性子しゃへい体、中性子源集合体、固定吸収体、模擬燃料体等の総称。)の取出し作業を進めることとなる。また、廃止措置第3段階における本格的解体作業を安全かつ円滑に実施するため、解体技術基盤整備、解体時に発生する一般及び放射性廃棄物等の保管・処分に対する準備、解体に向けた施設運用の合理化の検討等多岐にわたる作業を進める必要がある。
もんじゅは、前号でも記載したように燃料体が炉内に装荷された状態から廃止措置へ移行した。そのため、廃止措置第2段階においても廃止措置における多岐にわたる作業と廃止措置第2段階期間中の施設安全確保のための設備点検・検査等が工程上、要員上の競合関係となることから、各課題の進捗に合わせ資源配分を最適化することを念頭に廃止措置第2段階を計画的に進めていくこととなる。特に、資源配分の最適化に関しては、性能維持施設の考え方を廃止措置第2段階のプラント状態に応じて再整理し、設備点検・検査等の設備保全作業の合理化検討を進め、廃止措置第2段階の完了条件を満足するために必要な主要作業と設備保全作業をより効果的に推進を図っていく。以下に廃止措置第2段階における作業の概要を記す。
2.1ナトリウムの搬出作業【3】
廃止措置第3段階でナトリウム機器を開放し解体するには、作業安全の観点から解体対象機器内に出来るだけナトリウムを残留させないことが重要である。そのため、廃止措置第2段階前半の主要作業として施設からナトリウムの搬出を進めていく。
廃止措置第2段階では、先ず既設タンク及び一時保管タンクに保管されている2次系ナトリウムを再度溶融し、輸送用タンクに移送、施設外へ搬出する。その他、通常の移送操作により系統設備からの抜出しが可能なナトリウムをバルクナトリウム、抜出位置と設備構造の関係から専用の治具を用いて抜出すことが必要となるタンク底部のナトリウム等を残留ナトリウムと称し、これらについても可能な限り回収し、搬出することを目指す。搬出されるナトリウムについては英国企業との間でナトリウム処理に係る施設の準備やナトリウム処理等の基本的な枠組みについて合意契約がなされた。
2.2しゃへい体等取出し作業【4】
廃止措置第3段階では原子炉容器の解体が予定されている。原子炉容器内には、燃料体の他にもしゃへい体等が装荷されており、いずれかの段階でこれらを取り出す必要がある。取出しは、原子炉容器解体時に特殊な工法で取出すことも可能であるが、取出し時のリスクを避けるため、原子炉容器内にナトリウムが存在する廃止措置第2段階中に燃料交換設備を利用してしゃへい体等の取出し作業を行う。第1段階終了時に炉心等に残存するしゃへい体等は599体あり、2026年度内完了を目標に2023年6月よりしゃへい体等取出し作業に着手した。
しゃへい体等取出し作業では、廃止措置第1段階の完了により原子炉容器内に燃料体は存在せず、1次主冷却系配管内にナトリウムを充填・循環しておく必要はなくなった。そこで、しゃへい体等取出し作業時、1次主冷却系のナトリウムの約44%を既設ドレンタンクに抜取り・固化作業を実施し、原子炉容器のナトリウム液位をNsL(通常レベル)からSsL(システムレベル)まで低下させ、しゃへい体等取出し作業への影響を最小化しつつ1次主冷却系配管内に液体ナトリウムが存在しない状態とすることとした。これにより、取出し作業中のナトリウム漏えいの発生リスクを低下させること、放射性液体ナトリウムを保有する系統のうち、原子炉容器を除く1次主冷却系、オーバフロー系、純化系及び充填ドレン系の運用を停止することを成立させ、設備点検・検査に要する期間、要員等を他の作業に振り分けることが可能となる。
原子炉容器のナトリウム液位をNsLからSsLまで低下させることは、これまでナトリウム中で動作していた関連機器の一部が不活性ガス(アルゴンガス)雰囲気中で動作することとなるため、ナトリウム中と比べ燃料交換装置の浮力低下、熱収縮による機器への影響と原子炉容器からオーバフローするナトリウムを介した純化系系統が使えなくなることに対する影響が考えられた。これに対して、浮力低下に対する吊り上げ時の荷重設定値の変更、熱収縮に対する燃料交換装置のグリッパ位置の設定値変更及び純度悪化に対する系統内への不純物持ち込み対策の徹底を行い、更に動作試験を事前に行い検証した後、2023年6月2日〜7月3日に原子炉容器から202体のしゃへい体等の取出し作業を実施した。また、その際に得られたデータをもとに評価した結果、ナトリウム液位をSsLまで低下させた状態での機器動作トルク、アルゴンガス純度及びナトリウム純度に影響が見られなかったことから、その後のしゃへい体等の取出し作業もナトリウム液位を低下させた状態で継続できる見通しを得た。
2.3解体技術基盤の整備【5】
国内初の試みとなる原子炉施設の大型ナトリウム機器の解体作業を安全かつ確実に進めるためには、解体技術の選定と合わせ解体工事のガイドラインを作成するとともにその検証・習熟が必要となるが、もんじゅにおいては、ナトリウム機器の解体についての技術的な知見、経験が少ない。このため、海外炉における知見と大洗研究所における実験施設の解体経験を基に非放射性ナトリウム設備、放射性ナトリウム設備及び特殊設備(原子炉容器、コールドトラップ等)の順に解体技術の難易度を上げながら解体技術の検証・習熟を行い、廃止措置第2段階及び第3段階を通じて継続的に技術基盤整備を進めていく。なお、廃止措置第2段階では、非放射性ナトリウム設備の解体着手に必要な技術基盤整備と放射性ナトリウム設備及び特殊設備の概略技術基盤整備計画を進める。また、このうち非放射性ナトリウム設備の解体着手に必要な技術基盤整備については、小規模かつ構造がシンプルな2次メンテナンス冷却系等の解体を通じ、解体技術の選択肢の妥当性確認、技術実証の基盤を構築する。
2.4ナトリウム機器解体に向けた準備【5】
バルクナトリウムを系統設備から抜取り、抜出した後にも機器・設備の構造上、系統設備内にナトリウムが残留する。この残留ナトリウムは、機器解体作業時のリスクであり、作業中に予期せぬ事態を招くトリガーとなる。そのため、残留ナトリウムによるリスクの顕在化防止・抑制に対し、作業安全確保の選択肢を準備することが極めて重要となる。
そこで、図1に示すナトリウム機器解体のプロセスを想定し、残留ナトリウムの位置、残留ナトリウムの回収方法、設備解体工法・治具を含む開放時の安全対策の選択、残留ナトリウムの状態及び量に応じた安定化処理方法の選択、解体撤去物の洗浄及び洗浄廃液の性状、廃液処理について検討を行うこととした。その上で、まずは、解体前に必要なプロセスであるこれらの判断・選択に必要な評価・技術開発として、バルクナトリウム搬出後の残留ナトリウム量等の評価、機器・設備内の残留ナトリウムの確認、残留ナトリウム量の低減、残留ナトリウム安定化処理について技術開発を進めていく。
(1)残留ナトリウム量等の評価【6】
バルクナトリウムとしてドレン回収可能なナトリウムとは別に炉内配管や機器内部には、通常ドレンでは回収不可能なナトリウムが残存する。バルクナトリウム回収後の総残留ナトリウム量は、回収量より推定できるものの、機器・設備内に残るナトリウムの位置や量について正確に把握することは難しい。それらは主に大型のタンク底部に残るもの、丸底形状の原子炉容器底部で抜取り可能な配管より下に残るもの、原子炉容器ナトリウム液面に設けられたポケット状の構造に残るもの、傾斜のある配管、配管のベント部、配管と弁構造の組合せ部等広く分布して残るもの等が考えられるが、解体作業の本格化に向け残留ナトリウムの残存位置や量を把握することは作業安全の観点からも重要となる。そこでまず、もんじゅ全体の構造から残留位置と量の推定を行うこととした。この推定に際しては、各種図面を用いたモデルリングによる容積計算等を行う手法や運転履歴等を用いて評価にあたることとした。
(2) 内部確認による残留ナトリウム量等の確認【6】
ナトリウム冷却高速炉のナトリウム機器・設備は、不純物の生成や火災等の発生防止のため、機器・設備を開放して初期残留ナトリウム量等を直接目視で確認することはできない。しかし、配管及び設備機器の構造上、ナトリウムの残留する可能性は高く、非破壊検査による残留ナトリウムの位置や量を把握することは、その後の残留ナトリウムの回収や機器解体における安全性と確実性を高めるものとなる。そこで配管や機器・設備解体の作業安全への影響が大きいと考えられる箇所を中心に放射線透過撮影による機器・設備外部からの観察を行い、内部残留ナトリウムの状態や量の確認を試みた。
図2は、(1)項において机上推定した配管部位における放射線透過撮影結果の一例であるが、透過画像により机上推定部位に配管内のナトリウム残存状態が確認された。
図2 機器図面におけるナトリウム残留位置推定と
放射線透過撮影像の比較
これにより配管内に残存するナトリウム部位の特定に対しては、非破壊検査によるアプローチも可能であると一定の評価を得られた。
(3) 残留ナトリウムの回収【5】
バルクナトリウムの抜取り・抜出しによって多量にナトリウムを保有するリスクを大幅に低減できるものの機器や設備内に残留するナトリウム量の低減は、解体作業時の安全確保のために検討が必要となる。そこで機器・設備に構造上残留しているナトリウムの更なる回収を行うための方法を検討する。回収方法としては、大型タンク底部の残留ナトリウムに対し、既存のドレンノズルとは別に新たなノズルを配置し、ナトリウムを昇温して吸引ドレンする方法や構造物の壁面を穿孔して抜出す方法などが挙げられる。何れの方法にしてもナトリウム取扱い上のリスクを十分考慮した上で、穿孔場所の選定や穿孔方法の検討と技術評価を行い試験運用から開始する。
(4) ナトリウムの安定化処理方法の評価・選択【5】
アルカリ金属であるナトリウムは、空気中の酸素、二酸化炭素、湿分(水)等と容易に反応する。特に水との反応においては、反応時に発生する水素との反応熱により火災を引き起こす恐れがある。また、反応により生成されるナトリウム化合物は、強アルカリ性であり、そのエアロゾルによる人体への影響は大きく、解体作業を進めていく上で暴露等による問題も解決しなくてはならない。
先行する海外のナトリウム冷却高速炉の廃止措置においては、機器・設備解体前に必要に応じて残留ナトリウムを安定な化合物に転換する安定化処理を行い、上記の作業リスクへの対応を図っており、機器や設備による安定化処理方法の使い分けやナトリウムと湿分の急激な反応を可能な限り抑えるため、反応処理時間の長さについてもその効果確認と有効性の評価が行われている。
海外ナトリウム冷却高速炉の廃止措置で実施されてきた安定化処理方法の代表例としては、図3に示すように炭酸ガスと湿分を供給する炭酸化法、窒素ガスと湿分を供給するWVN法、窒素ガスと過熱蒸気を供給するSHS法の三つが挙げられる。これら安定化処理方法は、それぞれに用いられるキャリアガスの種類、含有される湿分量等により異なるが、基本的にはキャリアガス中の湿分と流量を調整することでナトリウムの反応量や反応速度を人為的にコントロールしながら安定した化合物に変化させていくものである。上記に挙げた安定化処理方法は、それぞれの方式により反応条件、反応の速度、反応の範囲、反応深さ、反応後の2次生成物が異なることから反応熱による温度上昇と反応生成物となる強アルカリ溶液や固化物の体積膨張が機器・設備へ与える影響についても検討課題となる。また、反応させる範囲を確実に隔離する方法についても検討を加えておく必要がある。
3.廃止措置第2段階移行時における
資源活用の課題【7】
廃止措置を進めるにあたっては、限られた資源を有効に活用するため、廃止措置の進捗に応じて資源の再配分を適宜行う必要があり、この手段の一つとして、性能維持施設の見直しを行う。
図4 もんじゅ廃止措置段階の安全機能の変化
図4は、もんじゅ廃止措置段階における安全機能の変化の概念を表したものである。廃止措置プラントにおいては、廃止措置の進捗に伴い安全機能の要求レベルが変化するため、変化に応じて適切な時期に性能維持施設を見直すことで、設備の維持管理のために投入する資源を最小化することが可能となる。具体的には、使用しない設備を速やかに廃棄対象設備とすることや特別な保全計画に移行して必要最低限の保全のみ実施するなどの適切な管理状態へ移行し、発生した余剰資源を廃止措置に必要な箇所に配分することである。
もんじゅは、他の廃止措置プラントと異なり、燃料が装荷された状態から廃止措置へ移行したため、性能維持施設についても設備の大部分を運転段階と同じように維持したまま廃止措置に移行した背景がある。そこで廃止措置第2段階への移行にあたっては、廃止措置第1段階の完了に伴う安全機能の要求レベルを再整理し、性能維持施設の見直しを行うことが課題の一つとなる。
廃止措置第1段階での炉としての安全機能要求は、廃止措置移行前と大きな違いはなかった。しかし、廃止措置第1段階における燃料体取出しをはじめとした作業の完遂に伴い廃止措置第2段階では、炉安全としての設備への安全機能の要求レベルは軽減されることになる。今後、さらに廃止措置が進捗することで、「止める・冷やす・閉じ込める」といった原子力災害の防止に係る機能や大規模損壊対応といった機能維持のための安全機能の要求といった観点よりも、ナトリウム機器解体、放射線管理及び作業安全といった廃止措置自体の作業に合わせた安全管理への要求に変わっていくこととなる。そこでこれらの変化を踏まえた上で、廃止措置の各段階における安全機能の要求レベルに応じ、プラントの安全を満足しつつ、廃止措置を安全、確実に、かつ、できる限り速やかに推進できるよう性能維持施設を見直すことが重要となる。
4.性能維持施設の見直し【7】
4.1廃止措置第2段階開始時点における
リスクの変化
性能維持施設の見直しを行う上では、各段階が移行するタイミングに合わせ、安全機能の要求レベルの変化、すなわちリスクの変化を捉えることが最も重要となる。以下に廃止措置第1段階が完了した時点におけるリスクの変化についてまとめる。
(1)原子炉容器(炉心)から燃料体が取り出されており、原子炉内のナトリウムを循環する必要がない。
(2)原子炉の停止期間が長いことからナトリウムの放射化程度は低レベルであり、燃料体の崩壊熱も低い。
(3)燃料破損を起こすことなく廃止措置第1段階が終了したことから、原子炉容器周りを除き、放射能汚染が少ない。
(4)しゃへい体等取出しを低ナトリウム液位で行うこととしたことにより、1次系ナトリウムが抜き取られ、ナトリウム漏えいリスクが低下する。
(5)バルクナトリウムについては、所外搬出後にはリスクが軽減する。(ただし、搬出対応における再溶解時に一時的にナトリウムの漏えいリスクが増加する。)
なお、廃止措置第2段階後半の見直しについては、別途実施する予定としている。これは、廃止措置の進捗(しゃへい体等取出し作業や水・蒸気系等発電設備の解体撤去作業など)による設備の要求条件、状況の変化を踏まえ、運用・維持方法の変更、既存設備の再使用、移設や改造、設備更新及び代替設備への移行等も鑑みた要否判断を行う必要があるためである。
4.2廃止措置第2段階における性能維持施設
(1)原子力災害の防止に係る機能
廃止措置第1段階で燃料体の取出し作業が完了したことで、廃止措置第2段階においては、すべての使用済み燃料は炉心等から燃料池へ移動された状態となっている。そのため、原子力災害防止のために重要な安全機能である「止める」「冷やす」「閉じ込める」といった機能は、廃止措置第1段階では原子炉容器まわりを中心として整理していたが、廃止措置第2段階では使用済み燃料の保管場所が燃料池に限定されたため、原子炉容器周りの機能は不要となる。この結果として、廃止措置第2段階前半には、原子炉容器まわりの機能である未臨界維持機能、炉心形状の維持機能及び燃料を安全に取り扱う機能は維持不要となる。これは原子炉容器、炉外燃料貯蔵槽からの燃料体取出しが終了したことによるものであり、具体的に原子炉容器まわりの機能維持不要となる設備としては、炉心燃料集合体、制御棒関連機器、中性子源集合体、中性子しゃへい体およびサーベイランス集合体、固定吸収体などが挙げられる。
また、燃料池まわりを中心に「止める」「冷やす」「閉じ込める」の未臨界維持機能、冷却機能及び冷却水保有機能が要求されることとなり、燃料池水冷却浄化装置や燃料池の性能維持が引き続き必要となる。
一方で、燃料体とナトリウムを施設内に保有している状態という点では廃止措置第1段階と変わらないため、大規模損壊への対応に必要な機能は廃止措置第1段階と変わらない。そのため、設備としても電源応急復旧機能としての電源車や大規模火災に対する消火機能を担う可搬型消火設備などの性能維持が必要となる。
(2)廃止措置の安全確保
廃止措置第2段階では、原子炉容器からの取出し対象が燃料体からしゃへい体等に変更となる。しゃへい体等取出し作業にて使用する設備は、燃料体取出し作業と同様に燃料交換設備等を使用するため、性能維持施設に変更はないが、要求される機能については燃料体を安全に取り扱う機能からしゃへい体等を取り扱う機能に変更する。また、系統内や環境へ放出する放射性物質の放出管理、放射線監視機能を担うプロセスモニタリング設備についても一部維持期間を終了できる設備となる。これは、燃料体取出し作業が完了したことにより汚染の恐れがなくなるエリアが発生し、該当エリアの放射線管理・監視機能が不要になるためである。ただし、環境へ放出する放射性物質の管理及び監視は、管理区域の解除まで維持することとなる。
前述の設備に関連して、管理区域における立入制限等の管理を行うための放射線監視を担うエリアモニタリング設備の一部においても、廃止措置第2段階移行に伴い放射線レベルが変動する可能性が著しく低い状態となることを確認したことから、連続監視とせず、適宜実施する作業の内容に応じて放射線測定を実施することで放射線管理を行うこととし、性能維持を終了することとした。なお、燃料体を保管する燃料池や廃棄物処理系等については、性能維持を継続する。
4.3廃止措置の各段階における性能維持台数
今回整理した廃止措置第2段階前半における安全機能を基に性能維持施設を見直した結果及び廃止措置工程全体の性能維持台数の推移を図5に示す。
廃止措置第2段階後半以降の性能維持施設については適宜見直しを行うため、あくまで現時点の想定推移となるが、廃止措置第2段階への移行に伴い、廃止措置第1段階では約425台程度であった性能維持施設は、廃止措置第2段階前半に向けた今回の見直しをもって約380台程度まで低減することが可能となる。
5.おわりに
2018年から開始された高速増殖原型炉もんじゅにおける廃止措置は、廃止措置第1段階における燃料体取出し作業を完遂し、2023年度より廃止措置第2段階へ移行した。廃止措置第2段階への移行は、本格的な廃止措置段階へ一段歩みを進めたことであり、この第2段階における多くの課題に取り組み、安全かつ遅滞なく遂行し、国内初の高速炉廃止措置プラントとしての技術知見の積み上げと実証を行うことが、国内唯一の原子力研究開発機関として原子力機構に求められる責務であると考える。
今後のもんじゅの廃止措置を進めるに当たっては、海外炉における知見とともに、原子力機構が有する原子力施設であり、同じ敦賀地区で解体が先行するふげんの知見や成果をもんじゅの廃止措置に反映し、安全の確保や効率的な廃止措置の推進に努めるとともに、人員を相互に動員して協業することにより更なるシナジー効果を考慮した廃止措置活動に取り組んでいく。また、これらのもんじゅ廃止措置については、関係機関とも協力して効果的に進めるとともに、工事・作業を安全に行うだけでなく、得られる知見やデータを将来に繋げて行けるよう、データベース化及び技術体系の構築等に取り組み情報の発信、普及に努めていく。
参考文献
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[2] 成瀬 恵次、松井 一晃、小幡 行史、澤崎 浩昌、後藤 健博、城 隆久 "「もんじゅ」廃止措置第2段階(1)「もんじゅ」廃止措置計画全体像における第2段階の位置付け" 日本原子力学会 2023年秋の大会
[3] 西野 友貴、倉本 新平、成瀬 恵次、西野 一、後藤 健博、竹内 徹 "「もんじゅ」廃止措置第2段階(2)「もんじゅ」ナトリウム保有リスクの低減" 日本原子力学会 2023年秋の大会
[4] 福島 翼、倉本 新平、西野 友貴、西野 一、内橋 昌也 "もんじゅ廃止措置第2段階の状況 その2「もんじゅ」ナトリウムリスクの低減に向けた取り組みと保全の合理化" 日本保全学会 第19回学術講演会
[5] 伊藤 健司、近藤 哲緒、中村 保之、松野 広樹、長沖 吉弘、佐久間 祐一 "ふげん及びもんじゅの廃止措置への取組みについて"デコミッショニング技法 №63 2022
[6] 磯部 祐太、林 長宏、谷垣 考則、三好 伸明、川名子 翔、小幡 行史、小林 孝典 "「もんじゅ」廃止措置第2段階(3)ナトリウム機器解体に向けた検討及び残留ナトリウムの評価" 日本原子力学会 2023年秋の大会
[7] 大野 史靖、成瀬 恵次、松井 一晃、小幡 行史、澤崎 浩昌、後藤 健博、城 隆久、内橋 昌也 "もんじゅ廃止措置第2段階の状況 その1「もんじゅ」廃止措置計画第2段階移行に伴う性能維持施設の見直し" 日本保全学会 第19回学術講演会
(2024年5月9日)